経理部長は、経理部門の責任者として業務を担当しています。
経理部は、会社のお金に関わるさまざまな活動を管理しています。各部署の経費や売上を記録し、それを元に税金の申請書類や決算書などを作成します。これらの業務全体の責任者が、経理部長です。
この記事では、他の役職と経理部長を比較しながら、経理部長の具体的な仕事と責任について説明します。また、キャリアアップのために必要なスキルや資格についても紹介します。
経理部長と財務部長は、全く別の役職です。
経理と財務は一括りにされることがありますが、実際には経理部と財務部は異なる業務を担当しています。経理部は、現在の状況を把握するために、入出金や在庫などを管理することが主な業務です。一方、財務部は、経理部が管理している現在の経営状況のデータを元に、資金の調達方法を考え、資金をどのように使って収益を上げるかを計画したりする業務を担当します。
経理部長は現在の財務状況に焦点を当て、財務部長は将来の経営に向けた計画を練るという違いがあります。
経理部長とよく混同される役職にCFOがあります。CFOは「Chief Financial Officer」の略称で、最高財務責任者を指します。
経理部長は経理部の責任を担当するのに対して、CFOは特定の部署にとらわれず、会社全体を見てお金の使い方や企業の財務管理を行う役職です。
また、CFOと財務部長もよく混同されますが、財務部長は財務部の責任者に過ぎません。CFOは経理と財務の両方に関与し、より大きな責任を持つ役職と言えます。
経理部長の年収は800万円から1000万円以上です。経理部は企業にとって欠かせない部署であり、経理部長はそのトップのポジションですので、相応の年収が期待できます。
ただし、経理部は利益を上げる部署ではないため、部署の業績や個人のスキルが直接給与に反映されることはあまりありません。そのため、経理部長の年収は所属する会社によって大きく異なることがあります。会社の規模や全体の利益状況、事業の将来性、外資系企業かどうかなどが、経理部長の年収に影響を与える要素となります。転職を考える際には、企業情報をよく確認することが大切です。
経理部は企業のお金の動きを管理しています。売上や支出の管理だけでなく、社員の給与や税金など、会社運営に必要な支払い手続きも担当しています。
経理部長は、経理部全体をまとめる役割を果たしており、主に以下の業務に取り組んでいます。
以上が経理部長の主な業務内容です。以下では、それぞれの業務内容を説明します。
経理部長が担う重要な役割の一つは、資金と業績の管理です。つまり、「会社がどれくらいの業績を上げており、どの程度の資金を保有しているのか」を把握することです。
実際に支払った金額だけでなく、将来の支払いや受け取り予定の金額も含めて管理します。各数字を帳簿につける作業は経理部の社員が行い、経理部長はこれらの数字を把握して経営陣に状況を報告します。
資金と業績の管理がうまく行われていないと、必要な支払いの時に資金不足になっている可能性があります。そのため、資金と業績のしっかりとした管理は会社経営の基盤となるでしょう。
なお、経理部と財務部が分かれている会社では、資金管理は財務部長が担当する場合もあります。
経営や予算の管理も、経理部長が担当する業務です。日々の経費や入金額を記録し、お金の動きを管理しながら、経営陣と連携していきます。
経理部は各部署の経費や個人の経費もまとめて計上します。そのため、経理部長は他の部署との連携も必要です。
さらに、何にいくらの予算が使われているかを把握し、分析して経営陣に報告することも経理部長の業務です。「予算が適切であるか」「無駄な経費がかかっていないか」といった情報は、経営方針を決める際に重要であり、非常に大切な業務といえます。
管理職として、経理部長は、経理部全体の管理と人材育成を行うことも業務の一部です。
経理部の業務がスムーズに進むようにするため、常に部署の状況を把握し、必要があれば改善を行います。経理部は個人の成果が目に見えにくい部署でもあるため、社員のモチベーションを維持することも経理部長の責任です。
スキルを持つ人材を育成するには、部下が働く上でメリットのある環境を提供しなければいけません。部下の失敗に対応することや、事前にリスク管理を行うことも、経理部長の業務です。
経理部長の業務内容について説明しましたが、経営部長になるためにはどのようなスキルが必要なのでしょうか。
以下の5つのスキルが重要です。
どのようなスキルなのか、以下で詳しく説明します。
組織のトップとして、部下の教育やアドバイスを行うことがありますので、経理全般の知識を備えておくことが大切です。
経理の知識を証明するために、以下のような資格を取得することができます。
FASS検定は、経理・財務部門で必要とされる実務スキルを評価する検定です。普段実務をしない立場でも、この資格を取得することで企業や部下からの信頼を高めることができます。
その他の資格は、「おすすめの資格」の章で紹介します。
経理部長は、会社の経営にも大きな関与が求められるポジションです。部署に割り振られた業務を管理するだけでなく、「経営」という視点で企業全体のことを、考えるスキルが必要となります。
普段から、「会社がどのように収益を上げていくか、何をすればいいのか」という視点を持ちながら、数字を分析することが重要です。自分たちの業務にとどまらず、中長期で今後の経営計画を考えていきます。
経理部長は、数字に関する専門知識において、経営陣をも上回るプロフェッショナルであるべきです。自分が会社の経営を引っ張っていくという意識を持つことが欠かせません。
経理部門のトップとして部署をまとめる能力も大事なスキルです。管理職は経理の知識だけを追求しても務まりません。
部下をまとめるリーダーシップは、資格を取得したり勉強するだけでは身につかず、経験が大きな要素となります。そのため、部長になる前にはチームのリーダーとして経験を積むことが必要です。個人のタスク処理にとどまらず、責任者として業務をコントロールするバランスを学んでいくことが大切です。
自分の業務に集中するだけでなく、普段から全体を見て積極的にサポートすることで、リーダーシップは身についていきます。
管理職は、日常的に多くの人々と関わります。そのため、コミュニケーション能力も必要です。
社員が働きやすい環境を保つためには、部下たちが円滑にコミュニケーションをとり、彼らの心理的な安全性を確保しなければいけません。威圧的な態度を取ると、部下との信頼関係を築きにくくなります。管理職としてのコミュニケーションスキルを向上させるためには、普段から部下の意見に耳を傾け、上から目線ではなく対等に接することを心がけましょう。
また、経理部は各部署の経費や売上を管理する部署です。経理部長としては、他の部門の責任者や社員との良好な関係構築も大切といえます。
経理部長になるためには、実務経験と実力が欠かせません。経理は専門的な分野であり、そのトップに立つには実務の経験が重要視されます。そのため、経理部に配属されてからすぐに経理部長になることはほぼなく、一般的には5〜10年の経験が必要です。
経理部長を目指す場合、実務経験が3〜5年の段階でリーダーとしての経験を積むことが望ましいです。
また、勤続年数が同じ社員たちの中から経理部長に選ばれるのは1人だけなので、実力も重要です。知識やリーダーシップ能力など、総合的な実力が求められるでしょう。
経理部で部長を目指す方には、役に立つ資格を取得することをおすすめします。資格を持つことで、自身のスキルを客観的に証明することができます。
日本商工会議所が主催する検定です。日商簿記検定には初級、3級、2級、1級の4つのレベルがあり、部長を目指す場合は1級を取得することが目標となります。
日商簿記検定では、企業の経営成績や財政状況を明らかにするための簿記スキルが評価されます。日商簿記検定を取得することで、帳簿をつけるだけでなく、数字を数字を解読する能力を証明することができます。資格の勉強を通じて、経理の業務において重要なスキルを身につけることができるでしょう。
合格率は年ごとに異なりますが、初級と3級は40〜60%程度、2級は20%前後、1級は10%前後の合格率です。1級の取得は難しいですが、その分価値も高いといえます。
税理士資格は、税務の専門家であることを証明する国家資格です。
税理士試験に合格し、税理士免許を取得すると、経営陣に税務に関するアドバイスを提供したり、必要な書類を作成したりすることができるようになります。
試験は5科目で、各科目で60点以上の取得が合格の条件です。合格率は年によって異なりますが、一般的には10〜20%程度です。
公認会計士は、会計監査の専門家であることを証明する国家資格です。
公認会計士試験に合格し、公認会計士免許を取得すると、企業の財務諸表が適切か、内部統制が適切かどうかを監査することができます。これにより、企業の経営全体に対して助言を行う能力を身につけます。経理部長を目指す場合、公認会計士資格を取得することは大きなメリットです。
公認会計士試験は、短答式試験と論文式試験で構成されています。2つの試験に合格するには、最低でも2,500時間の勉強が必要とされています。一般的な合格率は、短答式試験が約20%程度、論文式試験が約40%程度です。
米国公認会計士(USCPA)は、米国公認会計士協会によって認定された資格です。
USCPAの試験では、日本の公認会計士免許とは異なり、国際的な会計基準に関する知識が求められるでしょう。試験は全て英語で行われるため、資格取得は会計専門の英語力も証明できます。国際的に活躍する企業で経理をする場合、USCPAの資格を持っていると有利です。
試験の難易度は日本の公認会計士試験よりも低く、一般的な合格率は50%前後です。ただし、日本在住者の合格率は約40%です。英語が母国語でない場合は、英語の勉強も必要になるでしょう。
TOEICは、世界的に共通の英語力を測るテストです。TOEICテストには、リスニングとリーディングの能力を測るTOEIC L&R(Listening & Reading)と、スピーキングとライティングの能力を測るTOEIC S&W(Speaking & Writing)の2つの種類があります。一般的にはL&Rテストのスコアが英語力の目安とされますが、最近ではS&Wの能力も重要視されています。
外資系の企業や海外に子会社を持つ企業で経理のキャリアを築くには、英語力が必要です。財務諸表を英語で理解したり、各部署とコミュニケーションをとる必要があるからです。経理部長を目指す場合、特にL&Rテストで800点以上の高得点を取得すると有利になります。
TOEICは初心者から上級者まで同じ問題を解くので、問題の難易度はそれほど高くありません。ただし、L&Rテストで最高得点の990点を取得している受験者は全体の1%以下であり、900点以上を取得している受験者もわずか3%です。800点以上を取得している受験者は13%です。高得点を取ることは簡単ではありません。
経理部長は、経理部の責任者です。経理部のトップであり、資金や業績の管理、経営や予算の管理、部署の運営や部下の育成など、さまざまな業務を担当します。経理部長は財務部長や最高財務責任者(CFO)と混同されることがありますが、全く異なる役職です。
経理部長になるためには、経理や経営に関する専門知識だけでなく、コミュニケーション能力や部署をまとめるリーダーシップも必要です。
さらに、経理部長を目指す場合、スキルを客観的に示す資格の取得も重要です。外資系の企業や海外に子会社を持つ企業、または海外企業との取引が多い企業で経理部長を目指す場合は、英語力も求められます。USCPAやTOEICなどの資格を取得することは、有利に働くでしょう。