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建設業経理士の道を切り拓く|資格試験の概要と取得に伴う利点や留意点を解説

2023/12/05 更新

簿記は経理職に求められる代表的な資格とされていますが、その中でも建設業の経理職には独自の知識が必要です。建設業経理士資格がその特殊な要求に応えるものであり、建設業界で経理職を目指す方には非常に適しています。

本記事では、建設業の財務や経理の職に興味を抱く方々を対象に、建設業経理士資格について詳しく解説します。

建設業の経理士が果たす役割

建設業の経理職も他の業界の経理と同じく、企業の資金の流れを管理する役割があります。多くの業界では製品が完成してから売買の取引が行われ、その際にお金のやり取りが発生しますが、建設業界では建造から引き渡しまでの期間が長く、工事完了前にもお金の流れが発生するなど、独自の会計処理が求められます。

通常の経理と異なり、建設業では1年以上かかる工期が一般的で、決算時にはまだ建物が完成していない場合が多いです。建設業の会計処理には「完成工事未収入金」などの特殊な項目があり、これらは通常の簿記では対処できません。

このような建設業における経理の仕事には特別な知識が必要です。そこで、建設業経理に特化した「建設業経理士試験」が存在します。この資格は必須ではありませんが、所有していると建設業界で非常に評価され、転職の際にも有利になるでしょう。

建設業経理士試験について

建設業経理士資格は、建設業振興基金が主催する建設業経理試験で取得できる民間資格です。

この試験に合格することで、財務や経理に関する広範な知識に加えて、建設業特有の会計処理方法にも詳しいことが示されます。

国家資格ではないため、建設業で働くために絶対に必要なわけではありませんが、この資格を有することで企業側も入札時に有利になり、有資格者に対する需要が高まるでしょう。

以下では、建設業経理士試験の概要について紹介します。

建設業経理士(事務士)試験の種類について

建設業経理士資格には1級から4級までのクラスがあり、1級ほど難易度が高く、合格率も低いです。3級と4級は建設業事務士と呼ばれています。令和4年3月(1級・2級については9月)の各級の試験合格率は次の通りです。

建築業経理士試験の種類と合格率

  • 建築業事務士試験4級:77.8%(※1)
  • 建築業事務士試験3級:58.3%
  • 建築業経理士試験2級:33.8%
  • 建築業経理士試験1級(財務諸表):21.2%
  • 建築業経理士試験1級(財務分析):44.5%
  • 建築業経理士試験1級(原価計算):15.2%

それぞれの級で必要な知識やスキルは以下の通りです。

出題範囲

求められるスキル

4級

「簿記のしくみ」に関する知識

最低限の実務に対応できる

3級

「建設業の簿記」「原価計算」に関する知識

簡単な実務に対応できる

2級

「建設業の簿記」「原価計算および会社会計」に関する知識

一般的な建設業の実務に対応できる

1級

「建設業原価計算」「財務諸表」「財務分析」に関する知識

会計関連の法に関する専門知識や、財務分析・経営分析のスキルも求められる

(※1)参考:一般社団法人建設業復興基金建設業経理検定

建設業経理士試験のスケジュール

建設業経理士試験は、1~2級は年に2回(9月・3月)、3~4級は年に1回(3月)行われます。

級の区分

上期

下期

建設業事務士試験4級

3月

建設業事務士試験3級

3月

建設業経理士試験2級

9月

3月

建設業経理士試験1級

9月

3月

建設業経理士資格の受験申し込みには、以下の2つの方法があります。

  • インターネットでの申し込み:https://www.keiri-kentei.jp/exam/secondhalf/internet.html
  • 書面での申し込み:各都道府県建設業協会の窓口または郵送請求により受験申込書を入手
  • 郵送請求先:〒105-0001 東京都港区虎ノ門4-2-12 (一財)建設業振興基金 経理試験課 試験係

建設業経理士試験の受験資格について

建設業経理士試験の受験資格には、学歴や年齢、国籍等の制限はありません。

複数の級を同日に受験することは可能ですが、1級に関しては他の級と同じ日に受験することは不可能です。ただし、1級の複数科目を同じ日に受験することは認められています。

受験料については、級ごとに以下の金額が必要です。

  • 4級:4720円
  • 3級:5820円
  • 2級:7120円
  • 1級:8120円
  • 1級(2科目):11420円
  • 1級(3科目):14720円
  • 2級・3級併願:12620円
  • 3級・4級併願:10220円

建設業経理士試験の試験内容について

試験内容は以下の表に示す通りです。

級の区分

試験内容

建築業事務士試験4級

簿記のしくみ

建築業事務士試験3級

建設業の簿記 原価計算

建築業経理士試験2級

建設業の簿記 原価計算 会社会計

建築業経理士試験1級

財務諸表 財務分析 原価計算

建設業経理士試験1級の試験では、「財務諸表」、「財務分析」、「原価計算」の各科目ごとに合否判定が行われます。

これらの科目に合格すると、科目合格が認められ、合格通知を受け取った日から5年間は、既に合格した科目についての受験が免除されます。

建設業経理士の資格を取得するメリットとは

建設業経理士の資格を取得することで、以下のような利点があります。

  • 建設業を目指す方にとって非常に有益
  • 企業側にもメリットがあり、需要が高まっている

建設業経理士の資格は、建設業を志望するだけでなく、企業にとっても大きなメリットがあります。そのため、この資格の需要は非常に高いです。以下、それぞれのメリットについて詳しく説明します。

建設業を目指す方にとって非常に有益

建設業を目指す方にとって非常に有益です。前述の通り、建設業界の会計処理は特殊であり、高度な専門知識が求められます。

建設業経理士の資格は、建設会社や土木会社での勤務に必須とまでは言えませんが、就職・転職を考える上でこの資格を取得していることは非常に有利です。資格を取得することで、建設業界での専門的な経理知識を有していることが証明されます。特に建設業界を志望する方には、建設業経理士2級以上を目指して取得することをオススメです。

企業側にもメリットがあり、需要が高まっている

建設業経理士の有資格者は企業にとって大きな利点となります。企業が公共工事に参加する場合、必ず「経営事項審査」を受ける必要があるため、建設業経理士2級以上の有資格者を雇用している企業は、その資格の種類や人数に応じて「経営事項審査」で加点され、仕事を受注する際に大きなアドバンテージを享受できます。

公共インフラの老朽化や自然災害の増加などにより公共工事の需要が増加している中、建設業経理士有資格者への需要は一段と高まっているのです。

建設業経理士の資格を取得する際に留意すべきポイント

建設業経理士の資格取得において、資格単体だけでは汎用性が低いため、同時に日商簿記の資格を取得することがおすすめです。その理由やダブルライセンスの勉強法について以下で説明します。

汎用性が低い理由

建設業経理士の資格は、その性格上、建設業界の経理に特化しており、他の業界での就職や転職においては、この資格があるだけで有利になるとは限りません。

このため、建設業経理士は、経理の分野においてもっぱら建設業界での仕事に興味を持っている方に向いていると言えます。

建設業界以外を志望する方は、ほかの検定受験もしておきましょう。

日商簿記検定を取得するべき理由

建設業経理士の資格が建設業界に特化しているため、他の業界では有効に活用できないこともあります。そのため、将来的に他の業界での転職を考えている方は、日商簿記検定の受験も検討しておくと良いでしょう。

どちらの資格も経理事務に関連するものであり、共通する内容も多いです。建設業界独特の会計方法や用語に関する知識は、建設業経理士の資格試験で特に求められる部分になります。

日商簿記と建設業経理士の資格を両方取得しようとしている方は、日商簿記を先に勉強することが効率的です。

建設業界の方には建設業経理士は必須資格

建設業経理士は、建設業界においては必要な資格です。企業側にとっても、建設業経理士の資格は大きなメリットがあるため、建設業に特化した仕事を希望する方には非常にオススメです。将来的に他の業界への転職を考えている場合は、日商簿記検定とのダブルライセンスを目指すことも良いでしょう。

建設業の経理職を探す際には、転職エージェントがおすすめです。転職エージェントは、建設業経理を含むバックオフィスの転職に強みを持ち、これまでに多くの成功事例を有しています。専門のキャリアアドバイザーに相談することで、ミスマッチを避けつつスムーズに転職活動を進めることができるでしょう。

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株式会社WARC

WARCエージェントマガジン編集部

「人材紹介の『負』の解消を目指す、新しい転職エージェント」をビジョンに、ハイクラス人材紹介事業を展開しているWARC AGENT。WARCエージェントマガジン編集部は、このビジョンを支えるために、転職者に役立つ情報を執筆し、個々のキャリア形成をサポートしていきます。