建設業界で非常に重要な役割を果たす「建設業経理士」という資格が存在します。この資格は、一般的な簿記試験とは異なり、建設業に特化した知識やスキルが求められます。
本記事では、建設業界で働きたい方や建設業経理士試験に興味を持っている方々に向けて、建設業経理士の年収や資格取得のメリット、試験内容などについてまとめて紹介します。
建設業経理士とは、建設業振興基金が行う「建設業経理試験」に合格した人のことです。この試験に合格することで、建設業界において専門的な会計知識や会計処理能力を持っていることが証明されます。
経理と聞くと商業簿記や工業簿記を学ぶ簿記のことを思い浮かべますが、「建設業経理検定試験」とは別の試験です。建設業経理試験では、建設業に特化した内容を学ぶことになります。
建設業は一般的に、仕事を受注してから実際に工事が始まり、お金が動くという特殊な性質を持っています。そのため、建設業に特化した「建設業経理士」という資格が設けられているのです。
建設業経理士の資格を持っている人を雇用することは、企業にとってもメリットがありますので、資格を持っていれば採用の際に有利になるでしょう。
企業が建設業経理士の資格を持った人を雇用すると、公共工事を受注する際の経営事項審査で有利になります。
経営事項審査では、企業内に建設業経理士の2級以上の資格を持った人の人数で「公認会計士等の数値」として評価され、企業の健全性を示す指標となります。
建設業経理士の2級以上の資格を持っているだけで、公共工事を受注する確率が上がるため、企業にとっても資格を持った人を雇うことは大きなメリットと言えます。
建設業経理士の資格取得がおすすめな人は、以下のような人です。
建設業経理試験では、建設業に特化した会計処理について学ぶため、建設業の経理・会計担当に興味がある方や、建設業界での職に就きたい方におすすめです。
求人ボックスのデータによると、経理職の正社員の平均年収は約396万円です。
一般事務職の年収は304万円となっており、その差は約100万円近くあります。
また、建設関連の企業では、公共工事を増やしたいと考える場合、建設業経理士の資格を持つ人には資格手当が支給されることがあります。これは、建設業経理士の2級以上の有資格者が多く在籍しているほど、経営事項審査の評価が高まるためです。
結論として、建設業界で経理職として働く場合、建設業経理士の資格を持つことは年収が上がる可能性が高いと言えます。
建設業経理士の資格を取得するには、建設業経理士試験に合格する必要があります。
以下では、建設業経理士試験について紹介します。
建設業経理士試験には、初級の4級から上級で難易度の高い1級まで、複数のレベルがあります。
以下に、建設業経理士試験の種類と必要な知識を紹介します。
資格 | 内容 |
---|---|
建設業経理士4級 | 簿記の基本的な仕組みを理解する必要がある |
建設業経理士3級 | 初歩的な実務を担える知識が必要 |
建設業経理士2級 | 実践的な建設業の簿記や原価計算、会社会計に関する知識が必要 |
建設業経理士1級 | より専門的な建設業原価計算、財務分析、財務諸表に関する知識が必要 |
建設業経理士試験は、1年を上半期と下半期に分けて年に2回行われます。
上半期の試験は毎年9月に開催され、1級から2級の受験ができます。下半期の試験は毎年3月に行われ、1級から4級までの受験が可能です。
試験への受験申込方法は、建設業振興基金のウェブページからインターネットまたは書面による申し込みが可能です。
建設業経理士試験の受験資格には特別な制限はありません。年齢や学歴、国籍を問わず、誰でも受験することができます。
ただし、1級の試験と他の級の試験は同じ日に受けることはできません。その点には気を付けてください。
資格 | 受験料 |
---|---|
1級(1科目) | 8,120円 |
1級(2科目同時) | 11,420円 |
1級(3科目同時) | 14,720円 |
2級 | 7,120円 |
3級 | 5,820円 |
4級 | 4,720円 |
建設業経理士試験では、一般的な簿記の知識に加えて、建設業に関する特別な内容も問われます。建設業で必要な知識も試験で出題されるのです。
資格 | 試験内容 |
---|---|
4級 | 簿記の基本的な仕組みが問われる |
3級 | 基礎的な建設業の簿記や原価計算に関して問われる |
2級 | 実践的な建設業の簿記や原価計算、会社会計に関して問われる |
1級 | より専門的な建設業原価計算、財務分析、財務諸表に関して問われる |
第30回建設業経理士試験(1〜2級)および第40回建設業経理事務士試験(3〜4級)は、令和4年3月13日に実施されました。試験の合格率は、以下のようになっています。
資格 | 合格率 | 合格率の範囲 |
---|---|---|
4級 | 77.8% | 70~80%程度 |
3級 | 58.3% | 60%程度 |
2級 | 44.8% | 30~60% |
1級財務諸表 | 20.4% | 25~30%程度 |
1級財務分析 | 23.5% | 25~30%程度 |
1級原価計算 | 12.0% | 25~30%程度 |
4級や3級を受けるのであれば、市販のテキストや問題集を購入したり、図書館で貸し出しを利用して独学で勉強するだけでも、合格する可能性が高いです。
独学での勉強に不安がある方や、より効率的に学習したい方には、通信講座や建設業振興基金が提供する3・4級特別研修を受けることもおすすめです。これらの研修を受けることで、よりサポートを受けながら効果的に勉強することができます。
建設業経理試験に合格すれば、建設業界において専門的な会計知識と会計処理能力を証明できます。
建設業経理士2級以上の資格を持つ人を雇用することは企業にとってもメリットがあるので、将来建設業界での就職や転職を考えている方は、この資格を取得することで採用のチャンスを高めることができるでしょう。