「ベンチャー企業での経理業務は実際どうなの?」「平均年収やメリット・デメリットに関する情報を知りたい」。経理として働く場合、大手企業とベンチャー企業のどちらが向いているのか、企業規模による違いが悩ましいところです。業務内容や年収が企業の規模によって違いがあるのかも気になります。
この記事では、大手企業との違いも交えつつ、ベンチャー企業での実際の状況や魅力について詳しく紹介します。同時に、ベンチャー企業への転職を考える際の重要なポイントも紹介します。
ベンチャー企業の経理の主な業務は、結論からいうとほかの大手企業や中小企業との業務内容に大きな違いはありません。以下は主な業務内容です。
ベンチャー企業は組織として未成熟なため、マニュアルがないことがあります。そのため、特定の業務が割り当てられるのではなく、むしろ自主的に作業の段取りをして、業務を進めていく必要があります。
さらに、人数が少ない場合、業務内容は幅広くなることがあります。たとえば、財務戦略の立案や資金調達のサポート、予算策定、財務分析などです。中小企業や大企業では、これらの役割は専門の部門や担当者によって行われますが、ベンチャー企業では経理担当者が幅広い業務に携わることが求められることがあります。
ベンチャー企業というと、「仕事がきつい」「マニュアルが存在しない」といったネガティブな印象を持つ人もいるかもしれません。そこで、実際のベンチャー企業における経理業務はきついのか、またきついといわれる背景について紹介します。
最初に、経理の担当者が少人数であるという点です。多くのベンチャー企業は、小規模から中規模であり、従業員数が100人以下の場合が多いとされています。しかし、ベンチャー企業は従業員数の定義がないため、中小企業か大企業かの境界があいまいです。
中小企業や大企業の経理は、一般的な業務を分散させることで負担を軽減しています。ベンチャー企業では限られた人数で運営されているため、さまざまな業務を1人が担当することがあったり、業務量が多いことがあります。
そのため、経費削減が重要視され、人件費削減が行われることがあるため、少人数になる場合があります。
次に、マニュアルが整っていないことです。ベンチャー企業は急速な成長を遂げるため、業務プロセスが頻繁に変更されることがあります。組織は新しい戦略やアプローチを試みるため、既存の業務内容をマニュアル化するための時間やリソースが限られている場合があります。
さらに、ベンチャー企業はお金や人材に制約を抱えることが多いです。そのため、マニュアル作成に手間をかける代わりに、ほかの優先事項に充てることもあります。組織の成長に伴い、マニュアルの整備に取り組む余裕が生まれる可能性もありますが、初期段階ではマニュアル作成に十分な時間を割くことが難しいかもしれません。
最後に、経理業務以外の業務を任せられることがあるという点です。繰り返しになりますが、ベンチャー企業はお金や人材の制約を抱えています。そのため、経理担当者には複数の業務を兼任することがあります。
たとえば、人事・労務管理、総務、法務、経営戦略の立案やビジネスプランの策定などです。しかし、これらの業務を経理担当者が兼任する際にも、専門的な知識とスキルが求められます。経理業務においても会計原則や税務法などの専門的知識のほか、データの正確性や機密性への高い意識が必要です。
ここまでベンチャー企業がきついといわれる理由について紹介しました。以下に、ベンチャー企業の経理の魅力について紹介します。
ベンチャー企業の経理の魅力の1つは、業務が幅広く、経験を積む機会が増えることです。なぜなら、ベンチャー企業の経理は、通常の経理業務に加えて、人事・労務管理、経営戦略やビジネスプランの立案など、ほかの業務も担当することがあるためです。
これにより、さまざまな業務に携わりながら経験を積むことができます。組織の全体像を把握し、ビジネスに対する幅広い視点を持つことができるでしょう。
さらに、限られたリソースの中で業務を行う必要があるため、効率的な業務運営やさまざまな課題の解決スキルを向上させる機会でもあります。通常、経理の業務はルーティーン的で単調な場合が多いですが、ベンチャー企業では役割が多岐にわたるため、経験が向上し成長の機会が豊富です。
2つ目の魅力は、役員との距離が近く、経営学を学ぶ機会があることです。なぜなら、ベンチャー企業では、社長や役員との距離が近く、経営陣の意向を把握しやすい状況が多いためです。
起業したばかりの場合、社長や役員と同じフロアで隣同士に座り、業務を行うことも珍しくありません。そのため、日々の業務を通して会社の成長を肌で感じることができます。経営者の考えや会社の戦略について学び、ビジネスの本質を深く理解することが可能です。役員との密接な連携を通じて、実践的なビジネス知識や経営スキルを磨くことができるでしょう。
また、新たなビジネスを展開する際、経営陣からアドバイスを求められることもあります。その際、経理の立場から、自分の影響力や貢献度を高めるチャンスです。経営の全体像を垣間見ることで、経営学を学ぶ機会が広がり、自己成長の可能性が広がるでしょう。
3つ目の魅力は、経理のマニュアルを1から作成する楽しさがあることです。ベンチャー企業は組織としてまだ成熟段階にないため、経理の作業手順が確立されていないことがあります。
経理担当者は、自分の手でマニュアルを作成することで、組織の業務を整理し、効率的に遂行するチャンスを得ることができます。業務マニュアルは、手順を標準化して業務をスムーズに進める役割です。マニュアルを作成する過程では、自分の知識と経験を整理し、他人に伝えるスキルも向上させることが可能となります。経理業務のマニュアル作成は、組織に対する貢献度を高め、自己成長の機会を広げる手段となるでしょう。
ベンチャー企業と大手企業の経理の違いについて、以下にまとめました。
状態 | ベンチャー企業 | 大手企業 |
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仕事の幅 |
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マニュアルの有無 |
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福利厚生 |
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ベンチャー企業においては柔軟性やさまざまな経験を手にすることが可能ですが、一方で不確実性や福利厚生の制約も存在します。大手企業においては安定性や専門性が求められる傾向がありますが、組織の複雑さから一部の業務に特化することも一般的です。
ベンチャー企業は、大手企業とは異なる業務内容や作業スタイル、労働環境などあらゆることに違いがあります。さらに、ベンチャー企業ならではの働くうえでマインドセットが必要です。そのため、ベンチャー企業の経理ポジションに向いている人の特徴を以下に5つ紹介します。
ベンチャー企業に向いている人の1つ目の特徴は、成長意欲を持っている人です。その理由は、ベンチャー企業では成長が不安定でありリスクも存在しますが、成長意欲がある人はこれをチャンスと見て、積極的に経験を積み、スキルを向上させることができるからです。
たとえば、「キャリアアップをしたい」「今まで経験したことのない業務にチャレンジしたい」といった、上昇志向が強い人がこれに当たります。経理は通常、ルーティンワークが多く、一度仕事を覚えてしまえば淡々と仕事を進められますが、ベンチャー企業では経理以外の業務も経験できることがあります。ルーティンワークに留まらず、経営管理などワンランク上の業務にチャレンジしたいという人にはやりがいを感じられるでしょう。
一方、随時変化する状況に合わせて、異なる業務に取り組むことが苦手な人や、決まった業務を黙々とこなすことを好む人には向いていないかもしれません。
2つ目の特徴は、どんな仕事にも積極的に取り組むことができる人です。ベンチャー企業は不確実性が高く、チャレンジが日常的ですが、前向きな人はこれをチャンスとして捉え、成長と成功へ向けて積極的に努力することができます。
たとえ失敗や挫折があっても、そこから学びを得て迅速に立ち直ることができるでしょう。前向きな人は、自分のモチベーションを高く持ち、自主的に目標を設定し努力することができます。彼らは組織の一員としての役割を果たし、組織全体の成長に貢献することができるでしょう。
3つ目の特徴は、将来的に起業を考えている人です。その理由は、ベンチャー企業での経験を通じて、起業に必要なスキルと洞察を養うための絶好のチャンスがあるからです。
ベンチャー企業では、実際のビジネス運営に必要なスキルやノウハウを身につけることができます。将来的に自分のビジョンを実現させたいと考える人は、さまざまなアイディアを形にするために必要な経験と知識を積み重ねたいと思うでしょう。こうした志向を持つ人にとって、ベンチャー企業は理想的な場所です。経営陣に近いところで働くことができ、実際の経営業務に触れ、将来の起業に向けた準備を進めることができます。
4つ目の特徴は、うまく手を抜きながら効率的に仕事ができる人です。この理由は、ベンチャー企業が業務の量が限られている場合が多く、頑張りすぎると精神的な負担が大きくなる可能性があるからです。
そのため、効率的な方法で業務を行い、時間管理や優先順位を考えながら、仕事を適切にバランス良く進めることが求められます。さらに、効率的な方法やツールを利用してタスクを管理し、重複する作業や無駄な手間を最小限に抑えることが必要でしょう。
また、ほかのチームメンバーに業務を委任し、協力体制を築くことで、業務を効果的に分散させる方法も重要です。業務に集中し、成果を出すことに注力する姿勢が求められ、限られたリソースを最大限に活用するベンチャー企業ならではの働き方が必要となります。
5つ目の特徴は、即戦力として活躍できる人です。即戦力とは、特別な教育やトレーニングを必要とせず、すぐに業務に取り組み、結果を出せるスキルを指します。
ベンチャー企業では、人員が不足しており、研修体制が十分ではありません。さらに、業務の幅も広く、迅速な行動が求められます。そのため、即戦力がある人は非常に価値があるでしょう。
経理のおいては、経理の概念や手続きに熟知し、財務報告や予算管理などの業務に専門性を持っている人が即戦力として向いています。さらに、会計ソフトやパソコンなどのツールの使用経験があり、データ分析や報告書の作成をスムーズに行えるといいでしょう。ベンチャー企業では、スピーディな意思決定が必要な場合もあるため、経理業務において即戦力として活躍できる人は重要です。
ベンチャー企業の経理職の年収は、いくつかの要素によって異なります。一般的に、経験年数やスキル、業務範囲、企業の規模や業界、地域などが給与に影響を及ぼします。
参考情報として、経理職の平均年収は約500万円前後、大手企業や外資系企業では約600万円前後、中小企業では約400万円前後とされています。ベンチャー企業は成長過程にあるため、大企業と比較すると給与水準はやや低めのケースも見られますが、同時に成長に伴って昇給や報酬の見込みもあります。
ただし、これは一般的な目安であり、個人の状況によって実際の年収は大きく異なる可能性があります。具体的な給与に関しては、各企業や個人の条件にもとづいて交渉や調整が行われますので、個々の状況によって異なることを考慮してください。
ベンチャー企業における経理の需要は、高いといえます。新しいビジネス展開や成長させるためには財務面の管理が重要であり、経理の専門知識とスキルが欠かせません。
ベンチャー企業は資金調達や投資活動を必要とするため、正確な財務情報を提供する必要があります。また、経理は企業の持続的に存続するため、経営陣が重要な意思決定を行う際にも重要なサポートを提供します。
このため、ベンチャー企業では経理のプロフェッショナルな役割が重要であり、需要が高いです。経理の専門知識とベンチャー企業の特有の状況を結びつけたスキルを持つ人は、市場で高く評価されています。
ベンチャー企業に関する理解が深まったところで、実際にベンチャー企業の経理職に転職を考える場合に、注意すべきポイントについて、以下に2つ紹介します。
経理のスキルを保持しておくことは、ベンチャー企業に限らず経理職への転職を考える場合に必要な要素です。経理の基本的な知識と実務経験は、業務を円滑に行う基盤となるからです。
基本的な経理スキルには、会計原則、財務報告、予算管理、税務処理、監査手続きなどが含まれます。また、経理ソフトウェアやツールの知識も欠かせません。これらは日々の業務だけでなく、データ分析や財務諸表の作成にも活用されるからです。経理スキルの保持と向上に取り組むことは、ベンチャー企業での経理職への転職において競争力を高めるためのポイントとなります。
転職を考える際、ベンチャー企業について深く理解することが重要です。なぜなら、ベンチャー企業は成長過程にあり、業務環境や経済状況が大手企業と異なるからです。
多くのベンチャー企業は設立から間もなく、今後の成長を目指す段階にあることが多いです。そのため、創業時期は収益が安定しておらず、不安定な部分もあります。そのため、転職先のベンチャー企業のビジネスモデル、戦略、資金調達の仕組みなどを理解することが重要です。
このような理解を深めることで、ベンチャー企業の経理業務において、適切なサポートを提供したり、柔軟に対応したりするスキルが向上します。
ベンチャー企業の経理職に転職を考えるなら、転職サイトを活用してみましょう。ベンチャー企業の経理職への転職において、市場や求人情報を効率的に入手できるからです。
また、ベンチャー企業の内部情報は実際に入社しない限り把握するのが難しいこともありますが、転職サイトでは顧客としてベンチャー企業との関係があるため、求められる人材のプロファイルなども知ることができ、求人情報との適合度を確認するのに役立ちます。
ベンチャー企業の経理は、成長意欲のある人におすすめします。成長過程にある企業における経理業務は多岐にわたり、財務戦略の策定や業績分析などに関与するチャンスが豊富です。
ベンチャー企業は新たな価値を生み出す企業であり、自分のアイデアや提案が組織に取り入れられ、経営に貢献するチャンスがあります。また、経理業務だけでなく、ほかの業務にも関わることが多く、スキルや知識の幅を広げることが可能です。
成果が早く反映される環境では、自分の成長や成果が目に見えて実感できるため、やりがいやモチベーションも高まります。ベンチャー企業の経理業務は、自己成長を望む人にとって魅力的なキャリアパスといえるでしょう。