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2025/06/12 更新

情報セキュリティ インシデントとは?定義・種類・発生時の対応と対策を徹底解説

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「セキュリティ事故は、どこからがインシデントになるの?」と疑問を抱く方は少なくありません。情報セキュリティに関心を持ち始めた学生や、キャリアアップを目指す社会人にとって、インシデントの正確な理解は今や必須の知識です。

この記事ではインシデントの定義から代表的な事例、企業への影響、発生時の対応策、そして未然に防ぐための対策までを一挙に解説します。情報セキュリティを正しく理解し、予防と対策の第一歩を踏み出しましょう。

情報セキュリティ インシデントとは

情報セキュリティインシデントとは何か、明確に答えられる人は意外に少ないかもしれません。単なるトラブルと見過ごしてしまうと、企業活動や社会的信用に大きなダメージを与える可能性があります。以下で、インシデントの定義や考え方を基礎から確認していきましょう。

定義と基本的な考え方

情報セキュリティインシデントとは、情報セキュリティ上の事故や攻撃、脅威となる出来事を指します。たとえば、システムへの不正アクセスや、顧客情報の漏洩などです。

JIS Q 27000:2019では、インシデントを「望まない単独若しくは一連の情報セキュリティ事象、または予期しない単独若しくは一連の情報セキュリティ事象」と定義しています。つまり、企業が定めたルールや仕組みが侵害された瞬間、それはインシデントとして扱われるべき事象なのです。

たとえば、ウイルス感染によって業務が停止した場合は明確なインシデントです。一方、ウイルスは検出されたが防御に成功し、業務に影響が出なかった場合は、後述する「事象」に分類されることもあります。

この定義を理解しておくことで、対応の優先順位や手順を正確に判断できるようになるでしょう。

インシデントと事象・アクシデントの違い

「セキュリティインシデント」「セキュリティ事象」「アクシデント」は似ていますがそれぞれ異なります。これらを区別することは、適切な対応を行うために非常に重要です。

それぞれ以下のように段階的に整理できます。

用語

内容

事象

軽微な出来事

ファイアウォールによる攻撃の検出

インシデント

被害が確認された出来事

顧客情報の一部が漏洩

アクシデント

重大な被害をもたらす出来事

個人情報流出による損害賠償訴訟

「情報セキュリティ事象」とは、ウイルスの検出やアクセスログの異常といった、軽微で被害が発生していない出来事を、「インシデント」は、これら事象の中でも、実際に情報漏洩や業務停止などの影響を及ぼす重大なケースのことをいいます。そして「アクシデント」は、インシデントがさらに進行し、業務の長期停止や法的責任が発生するような深刻な被害に至った状態を意味するので覚えておきましょう。

情報セキュリティインシデントの主な種類

情報セキュリティインシデントは、その発生源や原因によっていくつかのパターンに分類されます。適切な対策を講じるには、それぞれのインシデントがどのような背景で発生するのかを理解することが不可欠です。以下でインシデントの種類について具体的に紹介します。

外部からの脅威によるインシデント

最も多くの組織が直面しているのが、外部からのサイバー攻撃によるインシデントです。とくに標的型攻撃やマルウェア、ランサムウェアの感染は深刻な被害につながります

たとえば、メールに添付された不正なファイルを開いたことでランサムウェアに感染し、社内のファイルが暗号化され業務が停止したという事例があります。また、複数の端末からアクセスを大量に発生させることでサーバーに負荷をかけるDDoS攻撃によりWebサービスがダウンし、顧客対応に支障をきたしたケースも少なくありません。

おもな外部要因のインシデントは以下のとおりです。

  • マルウェア感染

  • ランサムウェア攻撃

  • DDoS(分散型サービス妨害)攻撃

  • 不正アクセス(ID・パスワードの漏洩による侵入)

  • フィッシング詐欺や標的型メール攻撃

これらの攻撃は日々進化しており、常に最新のセキュリティ対策が求められます。

内部要因によるインシデント

情報漏洩やセキュリティ事故の多くは、従業員のミスや不正行為といった「内部要因」が原因です。注意不足によるメール誤送信や、USBメモリの紛失といったヒューマンエラーは、外部攻撃と同等、もしくはそれ以上のリスクをもたらします。

また、内部の人間による意図的な情報持ち出しや改ざんといった「内部犯行」も無視できません。退職予定者が顧客リストを外部に持ち出すなど、情報の不正利用は企業の信用を大きく揺るがすでしょう。

おもな内部要因は以下のとおりです。

  • メールやファイルの誤送信

  • USBやノートPCの紛失・置き忘れ

  • 画面の覗き見や離席中のログイン放置

  • 内部関係者による情報持ち出しや改ざん

内部の脅威は「気づきにくく、防ぎにくい」のが特徴であり、継続的な教育とルール整備が求められます。

環境要因・その他のインシデント

情報セキュリティのインシデントは、サイバー攻撃だけに限りません。自然災害やインフラ障害、物理的な破損といった「環境的な要因」も重大なインシデントを引き起こす可能性があります。

たとえば、地震でサーバールームが被災し、データが一時的にアクセス不能になったケースや、クラウドサービスの大規模障害により業務が停止した事例もあります。これらは偶発的であるがゆえに、事前の備えがなければ被害は拡大してしまうでしょう。

環境要因に含まれるおもな例は以下のとおりです。

  • 地震・台風・火災・落雷による機器故障

  • 外部サービス(クラウド、通信、電力など)の停止

  • 機器の盗難やオフィスの不正侵入

こうした不測の事態にも対応できる体制が、セキュリティリスクに強い組織には欠かせません。

情報セキュリティインシデントの影響とリスク

情報セキュリティインシデントが発生すると、被害は情報漏洩だけにとどまりません。企業の社会的信用、法的責任、経済的損失など、複数の側面に深刻な影響を及ぼします。以下で、影響とリスクを詳しくみていきましょう。

企業活動や社会的信用への影響

情報セキュリティインシデントは企業の信頼を大きく損なう要因となります。とくに顧客情報や取引データの漏洩は、取引停止や顧客離れといった経営リスクに直結するでしょう。

たとえば、大手ECサイトで発生した個人情報の漏洩事件では、数十万人規模の顧客データが流出し、企業ブランドの信用が大きく低下しました。このような事態は、直接的な売上減少だけでなく、メディア報道による風評被害や株価の下落を招く可能性もあります。

被害が大きくなる前に初動対応できるかどうかが、企業の命運を分けるポイントです。

法的・経済的リスク

セキュリティインシデントには法的責任も伴います。個人情報保護法や不正アクセス禁止法といった法律に抵触した場合、企業は罰則や取引停止などのリスクが生じるでしょう。

おもな法的・経済的リスクは以下のとおりです。

  • 個人情報漏洩による訴訟・損害賠償

  • 業務停止による売上損失・復旧コスト

  • 規制違反による罰則や改善命令

  • 信用失墜による株価下落・投資離れ

これらのリスクを未然に防ぐには、日頃から法令順守とインシデント対策の体制を整備しておくことが不可欠です。

情報セキュリティインシデント発生時の対応フロー

情報セキュリティインシデントが発生した際には、迅速かつ的確な対応が求められます。対応の遅れや判断ミスが被害の拡大を招くため、事前にフローを整備しておくことが重要です。以下で対応フローについて、3段階に分けて説明します。

初動対応(検知・通報・封じ込め)

インシデント対応の成否は「初動」にかかっています。異変をいち早く検知し、適切な担当者に連絡を行い、被害が広がらないよう封じ込めることが最優先です。

たとえば、サーバーの異常ログを発見した際には、すぐにネットワークから切り離す、アクセス制限をかけるなどの措置が必要です。また、外部機関や関係者への通報も並行して行う必要があります。

初動対応で重要なのは以下の3点です。

  • セキュリティ異常の早期検知(監視体制・ログ管理)

  • 社内外への迅速な通報と情報共有

  • 被害拡大を防ぐ緊急措置の実行

この段階でのスピードと判断力が、被害を最小限に抑えるカギを握ります。

原因調査と復旧作業

インシデントを封じ込めたあとは、「なぜ起こったのか」を明らかにする原因調査に移ります。これは再発防止策の基盤となる重要なステップです。

原因調査では、ログ分析、アクセス履歴の検証、ウイルスの挙動解析などを通じて、侵入経路や被害範囲を特定します。同時に、破損したデータやシステムの復旧作業も並行して進めましょう。

ポイントは、被害の全容を把握し、業務再開の見通しを早期に立てることです。また、復旧には時間とコストがかかるため、事前にバックアップ体制が整っているかどうかも被害の深刻度を左右します。

報告・再発防止と教育

対応の最終段階では、所管官庁や取引先への報告と、社内外への説明責任を果たすことが求められます。とくに個人情報が漏洩した場合は、速やかに被害者へ通知を行い、対応方針を明示することが企業の信頼回復につながるでしょう。

また、再発を防ぐための対策として、セキュリティルールの見直しや教育訓練の強化も重要です。具体的には以下の施策が効果的でしょう。

  • 再発防止策の文書化と社内共有

  • セキュリティ研修やフィッシング対策訓練の実施

  • マニュアルやチェックリストの整備

こうした取り組みを継続的に行うことで、組織全体のセキュリティ意識が高まり、次なるインシデントを防ぐ力になります。

情報セキュリティインシデントを防ぐための対策

インシデントの被害を最小限に抑えるには、「起こったあと」だけでなく「起こさないため」の予防策が不可欠です。対策は技術的なものに限らず、人的・運用面、そして体制の整備まで多岐にわたります。

ここからは、予防策のポイントを具体的に解説します。

技術的対策の例

技術的対策はインシデント発生リスクを減らす「防御の第一線」です。社内ネットワークや端末を守るために、最低限導入すべき基本的なセキュリティ技術があります。代表的な対策は以下のとおりです。

  • ウイルス対策ソフトやエンドポイント保護ツールの導入

  • ファイアウォールやIDS(不正侵入検知システム)による外部攻撃の遮断

  • OSやアプリケーションの脆弱性をふさぐための定期的なアップデート

  • 社員ごとのアクセス権限の適切な設定

  • 二要素認証やパスワードポリシーの厳格化

技術だけで100%防げるわけではありませんが、これらの基本を徹底することで、リスクを大幅に低減できます。

人的・運用的対策の例

実は、多くのインシデントは「人のミス」や「運用の甘さ」から発生します。だからこそ、従業員一人ひとりの意識改革とルール整備が極めて重要です。以下のような取り組みが効果的でしょう。


  • 新入社員や管理職向けの情報セキュリティ研修の実施

  • メールの宛先や添付ファイルの確認を習慣化する運用ルール

  • USBなどの外部メディアの使用制限

  • 定期的なセキュリティチェックや内部監査の実施

技術が万全でも、使う人間が油断すれば事故は起こります。だからこそ、組織全体でセキュリティ文化を根づかせる必要があるでしょう。

インシデント対応体制の構築

予防策を講じるだけでは不十分で、「万が一」への備えも欠かせません。その中心となるのが、CSIRT(Computer Security Incident Response Team)のようなコンピューターセキュリティインシデントが発生した場合に対応するための専門チーム体制の整備です。以下の対応を一貫して担当します。

  • インシデントの監視・検知・初動対応

  • 社内外への連絡と調整

  • 原因究明と対応報告

  • 再発防止策の立案と展開

加えて、あらかじめ対応マニュアルを整備し、シミュレーション訓練を繰り返しておくことで、有事の際にも迅速な判断が可能になります。社内に専任チームが設けられない場合でも、外部の専門機関と連携する体制づくりが重要です。

情報セキュリティインシデントを理解しよう

情報セキュリティインシデントは、単なるIT部門の課題ではなく、組織全体に関わる重要な経営課題です。情報セキュリティのインシデントは、いつ、どこで起こっても不思議ではありません。だからこそ、事前の備えと継続的な対策が、企業や個人の安全を守るカギとなります。これを機に、あなたの身の回りのセキュリティ対策も見直してみてはいかがでしょうか。

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