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情報システム
2025/05/30 更新

情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)とは?基礎知識・ISO27001・認証取得の流れを解説

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「ISMSってよく聞くけど、実際どう役立つの?ISO27001との違いも知りたい」企業の情報資産を守るうえで、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)は今や不可欠な仕組みです。サイバー攻撃の脅威が高まる中、管理体制の強化を検討する企業は年々増加しています。

この記事では、ISMSの定義や導入・認証取得のプロセス、運用のポイントを、分かりやすく解説します。組織のセキュリティ体制を強化したい方は、ぜひご一読ください。

情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)とは

ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)は、企業の情報資産を守るための仕組みです。IT環境が高度化し、サイバー攻撃や内部不正のリスクが高まる中、信頼性のある情報管理体制の構築が欠かせません。ここでは、ISMSの基本的な定義と目的、そして導入が求められる社会背景とその重要性について解説します。

ISMSの定義と目的

ISMSとは「情報資産をリスクから守るための管理の仕組み」です。正式には「Information Security Management System」の略で、企業が保有する情報を適切に保護し、安心してビジネスを運営するための枠組みを指します

この仕組みの核心にあるのが、情報セキュリティの三要素「機密性」「完全性」「可用性(CIA)」です。ISMSはこれら3つの観点をバランスよく維持することで、企業の信頼性を高める土台となります。

ISMS導入の背景と重要性

ISMSの導入が強く求められるようになった背景には、社会全体のIT依存度の高まりがあります。クラウド活用やリモートワークの普及により、企業内外の情報が常にネットワークを介してやりとりされる現代において、セキュリティ事故のリスクは格段に増しているのです。

リスクを放置しておけば、経営上の損失はもちろん、取引先や顧客からの信頼も失いかねません。だからこそ、組織的かつ継続的に情報セキュリティを管理する仕組みとして、ISMSの導入が求められているのです。

ISMSを導入することで、企業は単なる「対症療法」ではなく、「予防策としてのセキュリティ体制」を構築できます。これは経営リスクを抑えるだけでなく、社外からの評価や入札条件にも関わるため、ビジネスチャンスを広げる重要な一手ともいえるでしょう。

ISMSの国際規格「ISO/IEC 27001」とは

ISMSを実践する際の基本となるのが「ISO/IEC 27001」です。これは国際的に認められた情報セキュリティマネジメントの標準規格であり、ISMSを効果的に構築・運用・改善するための具体的なルールが定められています。ここからは、ISMSの信頼性を支える国際規格について詳しくみていきましょう。

ISO/IEC 27001の概要

ISO/IEC 27001とは「ISMSの設計・運用・改善に必要な要求事項を体系化した国際規格」です。2005年に国際標準として発行され、現在では日本を含む多くの国で採用されています。

日本国内ではJIS Q 27001としても同等の基準が用いられています。

ISO/IEC 27001の特徴は、企業や組織の規模や業種を問わず適用できる「汎用性の高さ」です。そのため、大手企業はもちろん、中小企業や医療機関、大学など、情報資産を扱うすべての組織で導入できます。

また、規格では「情報資産の特定」「リスクの洗い出しと評価」「対策の実行と監視」といった一連のプロセスが定められており、それに従って運用することで、セキュリティリスクを一貫してコントロールできます。

ISO認証を取得することで、組織が国際的に認められた情報セキュリティ基準を満たしていると示すことができ、社外からの信頼性も格段に向上します。

ISO/IEC 27001の要求事項とPDCAサイクル

ISO/IEC 27001が重視しているのは「継続的な改善」です。単に一度仕組みを整えれば良いというものではなく、PDCAサイクルを回しながらセキュリティ体制を常にブラッシュアップしていくことが求められます。PDCAとは、以下の4つのサイクルです。

  • Plan(計画)

組織の状況やリスクを分析し、情報セキュリティ方針や目的を定める

  • Do(実行)

策定した方針に基づき、各種セキュリティ対策を実施する

  • Check(確認)

取り組みの効果を評価し、改善が必要な点を洗い出す

  • Act(改善)

評価結果を踏まえ、対策を見直し再計画する

ISO/IEC 27001では、これらのプロセスを繰り返すことで、情報セキュリティの成熟度を継続的に高めていくことを目指しています。

要求事項は、適用範囲、リーダーシップ、リスクと機会への対応、文書化された情報の管理、パフォーマンスの評価など多岐にわたります。それぞれの項目を組織の実情に応じて取り入れ、実効性のある運用に落とし込むことが、認証取得への近道となるでしょう。

ISMSが重視する情報セキュリティの3要素(CIA)

ISMSを理解するうえで欠かせないのが、情報セキュリティの基本原則である「情報セキュリティの3要素」です。それぞれの要素について、以下で詳しく解説します。

機密性(Confidentiality)

機密性とは「情報を許可された人だけが閲覧・使用できるようにすること」です。

企業には顧客情報、社内文書、設計図、契約書など、外部に漏れると大きな損失を招く情報が多数存在します。これらを第三者や不正アクセスから守ることが、機密性を確保する目的です。具体的な対策としては以下のようなものがあります。

  • アクセス制御の強化(ID・パスワード、二要素認証)

  • 社外持ち出しの制限(USBメモリの使用禁止など)

  • 機密データの暗号化(通信や保管データの暗号化)

  • 社内へのセキュリティ教育(情報取り扱いのルール徹底)

とくに昨今では、クラウドサービスやリモートワークの普及により、社外で情報を取り扱う機会も増えています。そうした状況でも、第三者に見られない環境を整えることが、信頼される企業への第一歩です。

完全性(Integrity)

完全性とは、「情報が正確かつ改ざんされていない状態を保つこと」を意味します。どんなに高度なセキュリティ対策をしても、データが勝手に書き換えられていたら意味がありません。

企業活動では、正確な数値や文書に基づいて意思決定がなされるため、情報の信頼性が欠けると重大な損害に発展します。こうしたリスクを防ぐために、次のような対策が効果的です。

  • データへの変更履歴の記録(ログ管理)

  • ファイルのバージョン管理やバックアップ

  • 改ざん検知システムの導入(WAFやハッシュ値の活用)

  • デジタル署名や承認フローの徹底

完全性の確保は、信頼できる情報基盤をつくるための重要な柱です。

可用性(Availability)

最後の要素、可用性とは「必要なときに、必要な人が情報にアクセスできる状態を維持すること」です。

災害やサイバー攻撃、機器の故障などにより、システムが停止すると業務に大きな支障が出ます。たとえば、医療機関で電子カルテにアクセスできなくなれば、診療が中断され、命に関わる事態に発展しかねません。ECサイトでは、わずか数時間の停止でも売上に直結する損失が発生します。

そのため、以下のような対応が求められます。

  • データの冗長化(RAID構成やクラウドによるバックアップ)

  • システムの多重化(予備サーバーの設置)

  • 定期的な障害訓練や復旧マニュアルの整備

  • UPS(無停電電源装置)や耐災害センターの活用

可用性の確保は、万一の事態にも「止まらない業務」を支えるセキュリティの根幹です。

▼情報セキュリティの3要素について詳しくはこちら

情報セキュリティの3要素(CIA)とは?機密性・完全性・可用性の意味と具体例まとめ

ISMS認証取得の流れとメリット

ISMSを導入するだけでなく、第三者機関による「認証」を受けることで、組織の情報セキュリティ管理体制が国際的な基準を満たしていることを客観的に示すことができます。ここでは、ISMS認証を取得するまでのステップと、認証取得によって得られる具体的なメリットについて確認していきましょう。

ISMS認証取得のステップ

ISMS認証の取得には計画から審査まで、いくつかのステップがあります。以下の流れを押さえておきましょう。

  • 現状分析とギャップ評価

    現行の情報セキュリティ体制を確認し、ISO/IEC 27001の基準と照らし合わせて不足点を洗い出す。

  • リスクアセスメントと方針策定

    重要な情報資産を特定し、それに対するリスクを評価。対応方針や目標を定める。

  • ISMSの構築と運用開始

    教育、手順書、管理策を整備し、実際にISMSを運用。

  • 内部監査とマネジメントレビュー

    社内での監査と、経営層による運用状況の確認を実施。問題点を整理し、是正。

  • 外部審査の申請と受審

    認証機関へ審査を依頼し、一次・二次審査を受ける。二次審査で問題がなければ認証が発行される。

  • 認証取得と継続的改善

    一度取得した後も、定期的なサーベイランス審査や再認証審査により継続的な改善が求められる。

これらのプロセスを計画的に進めることが、認証取得の成功と安定運用につながります

ISMS認証取得のメリット

ISMS認証を取得することで得られるメリットは、単なる「お墨付き」にとどまりません。実際には、経営・取引・組織文化にまで好影響を及ぼすさまざまなメリットがあります。

おもなメリットは以下のとおりです。

  • 顧客や取引先からの信頼向上

  • 情報漏洩や不正アクセスのリスク低減

  • 法令や規制への対応強化

  • 社内の意識改革と情報資産の棚卸し
     

  • 競争力の向上と新規事業への展開支援
     

このように、信頼の向上やリスク低減、競争力の向上にもつながります。つまり、ISMS認証は「守りのセキュリティ対策」であると同時に、「攻めのビジネス戦略」としても活用できる資産なのです。

ISMS運用のポイントと注意点

ISMSは一度導入すれば終わりではありません。情報セキュリティを取り巻く環境は常に変化しており、制度として定着させるには継続的な運用と改善が不可欠です。ここでは、ISMSを形骸化させずに活かすための運用のポイントと、陥りやすい注意点について解説します。

継続的な改善とPDCAサイクル

ISMSを有効に保つには「PDCAサイクルを地道に回し続けること」が重要です。導入時の盛り上がりだけで終わらせず、日々の業務の中にセキュリティ意識を根付かせる必要があります。

このサイクルを回すには、定期的な内部監査やマネジメントレビューが欠かせません。監査では「手順どおりに運用されているか」「ルールが現状に合っているか」を確認し、経営陣がレビューで方針の妥当性を判断することで、継続的な改善が可能になります。

従業員教育と組織全体での取り組み

メールの誤送信による個人情報漏洩や不審メールの添付ファイルを開いてしまうことでウイルス感染などの事故を防ぐには、技術的対策だけでなく「人への教育」が不可欠です。

具体的には、以下のような取り組みが推奨されます。

  • 年1回以上の全社セキュリティ研修の実施

  • eラーニングやクイズ形式による理解度向上

  • 新入社員・中途社員へのセキュリティオリエンテーション

  • 情報漏洩・違反時の明確な罰則と再発防止教育

また、単なるルールの押しつけではなく、「なぜこのルールが必要なのか」を丁寧に伝えることが、従業員の納得感と実行力につながります。

ISMSの本質は、「組織全体で情報を守る文化を築くこと」です。一部の専門部署に任せるのではなく、経営層から現場までが一丸となって取り組む姿勢が、長期的な制度定着に結びつきます。

情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)で組織の情報資産を守ろう

情報セキュリティマネジメントシステムは、企業の情報資産を保護し、信頼性の高い経営を支える仕組みです。サイバー攻撃や内部不正のリスクが増す中、ISMSの導入により、機密性・完全性・可用性を確保しながら、継続的な改善と組織全体の意識向上を実現できます。

また、ISO/IEC 27001認証を取得することで、対外的な信頼性が高まり法令遵守や取引条件の強化にもつながります。ISMSは単なるセキュリティ対策ではなく、将来のビジネスを支える重要な経営基盤といえるでしょう。

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