簿記2級は、経理の能力を証明する上で非常に重要な資格です。では、この資格を取得することで、どのような職務や業務に活かすことができるのでしょうか。
この記事では、簿記2級の概要と、その資格がどのように仕事で役立つかについて詳しく説明していきます。簿記2級を持つことで得られるメリットについて具体的なイメージを描ける内容となっていますので、転職を考える方や簿記2級の取得を検討している方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
簿記2級とは、通常、日商簿記の2級を指します。
日本における簿記検定は主に以下の3種類あり、それぞれ主催団体が異なります。
簿記検定の種類
特に、日本商工会議所が主催する日商簿記は、受験者数が最も多く、知名度の高い検定です。
日商簿記を取得することで、高度な商業簿記と工業簿記の技術を持ち、経営に必要な数字を扱うスキルがあることを証明できます。資格取得のための検定試験は年に3回行われています。受験資格は必要なく、経歴や年齢にかかわらず、どなたでも受験することが可能です。これまで簿記検定を受けたことがない方でも、2級から受験することができます。
日商簿記は2級以外にも、級ごとにレベルの区別があります。級の種類を難易度が高い順で、以下に紹介します。
日商簿記の級(難易度が高い順)
2級以上の資格を取得することで、実務レベルの経営管理スキルを証明することができます。
企業が求めるのは実務で役立つスキルです。「簿記2級」を経理・経営に関わる部署の求人条件としている企業も多く、2級を取得すれば就職や転職に有利になるでしょう。
簿記1級は2級よりもさらに難易度が高い資格です。1級を取得すると、就職に有利となるだけでなく税理士試験の受験資格を得ることができます。
各レベルの試験科目の範囲、受験者対象、平均的な合格率について以下の表にまとめました。ただし、合格率は例年から割り出した平均的な割合を記載していますが、年により変動することに注意してください。
簿記のレベル | 科目 | 対象者 | 合格率 |
---|---|---|---|
1級 | 商業簿記、会計学、工業簿記 | 大企業経営者、会計指導者、税理士 | 約10% |
2級 | 商業簿記、工業簿記 | 中小企業経営社の経理・会計主任 | 15〜30% |
3級 | 商業簿記 | 中小企業経理部、一般記帳者、営業・管理部門 | 40〜50% |
初級 | 商業簿記(基本原理) | 商業簿記入門者 | 約60% |
原価計算書初級 | 原価計算、損益計算 | 工業簿記入門者 | 約90% |
簿記2級は基礎知識に加えて実務スキルも備えたレベルの資格です。
つまり、企業にとって簿記2級の取得者は「即戦力」といえる存在です。そのため、一般企業の経理・経営部署や、簿記の知識が必要な事業を行う企業では、簿記2級を持っている人を積極的に採用しています。
たとえば、以下のような職業では、簿記2級が採用の際に有利となるでしょう。
【簿記2級が活かせる職業】
簿記2級の知識は職場だけでなく、営業、小売業、サービス業などさまざまな分野で活かすことができるため、幅広い仕事に応用することが可能です。
簿記2級の取得が、採用の際のメリットだけでなく、年収にも影響するのでしょうか。
簿記2級取得者の年収は、年代別に以下のようになっています。
年代 | 20代 | 30代 | 40代 |
---|---|---|---|
平均年収 | 〜500万円 | 350〜600万円 | 600万円〜 |
経験を積むと、年収も順調に上がっていくようです。
厚生労働省が公表した『賃金構造基本統計調査』にもとづいて算出された、2021年の日本人の平均年収は433万円です。簿記2級の資格取得によって、平均以上の年収を得るチャンスが高まります。
年収は勤めている企業や業界だけでなく、正社員か契約社員かといった雇用形態にも影響されます。簿記2級の取得者は通常、正社員として雇用される割合が比較的多いため、年収が高い傾向があります。
簿記2級は仕事をしていく上で、役立つ資格です。具体的には以下のようなメリットがあります。
簿記2級を取得するメリット
それぞれ詳しく紹介していきます。
まず、転職や就職の際に有利となることが大きなメリットです。
簿記2級は実務スキルを証明する資格です。企業は実務スキルがある人材を求めていますが、実際に働く前からその人の実績を正確に評価するのは難しいことです。そのため、簿記2級は企業にとって、人材選択の重要な判断材料となります。
簿記2級の取得は簡単なことではありません。そのため、転職市場での価値は高いです。特に未経験の業界に就職したい場合には、能力を証明できる資格を持っていることが有利に働きます。
資格を持つことで、キャリアの成長や昇進に繋がります。
経理部や財務部での出世を目指す場合、日々の事務作業だけでなく、経営戦略の策定や決算書の作成・分析といった専門的なスキルも求められます。簿記2級以上の資格を取得することで、出世に必要なスキルを身に付けることができます。一部の企業では、昇進に資格取得が条件となっている場合もあります。
さらに、経理部署の従業員だけでなく、公認会計士や税理士としてのキャリアを築く場合にも、簿記2級の知識は不可欠です。
経理の業務だけでなく、簿記2級の知識は多種多様なビジネスシーンで役立ちます。
たとえば、事業主として企業を運営する場面では、経営に関する知識や実務スキルが必要となります。簿記の知識によって、売上だけでなくコスト、利益から差し引かれる税金なども考慮してビジネスを進めるていくことができるでしょう。簿記2級の範囲には工業簿記も含まれるため、販売計画や製造スピードの考案といった、メーカーの製造部門の仕事でも役に立ちます。
さらに、簿記2級の知識を持つことで、決算書の読み解きが可能となり、投資判断にも有利です。
給料面でもメリットがあります。
先述したとおり、簿記2級を取得している人の平均年収は全国平均よりも高い傾向にあります。簿記2級の知識によって仕事の幅が広がるため、昇給や昇進につながっています。また、資格を持つことで、正社員として採用される確率も高まるでしょう。
一部の企業では、毎月の給与に資格手当がプラスして支給されるケースもあります。その額は5000円〜1万円程度が一般的であり、これにより年収も上がるでしょう。
経理職の求人には、簿記2級を取得していれば未経験の方でも歓迎される企業が多く存在します。
企業ごとに異なる求人条件があります。もちろん、経験者のみを募集する場合や、経験者を優遇すると記載がある場合もあります。経理職の求人を探す際には、求人内容をしっかり確認するようにしましょう。
未経験から経理職に就く場合、最初に重要な業務を担当することはないと考えていいです。通常、最初はアシスタントとしてデータ入力などの補助業務から始まり、徐々に実務経験を積んでいきます。
未経験で経理職を目指す際にも、簿記2級の取得は有利です。経験がなくても、必要な知識を習得していることが証明できるからです。経理職ではパソコンを活用した業務が多いため、簿記の資格に加えてパソコンスキルを身につけておくと、より役立つでしょう。
簿記2級は、実務で活用できる経営知識とスキルを証明するための資格です。企業からの需要も高いため、取得すれば就職に有利となります。
特に、実務経験が不足している状態で経理職に就職を希望する場合、簿記2級を取得することで採用される可能性が高くなるでしょう。簿記2級には、収入アップや幅広く活用する場面があるといったさまざまなメリットがあります。