司法試験は、弁護士などを志す方がクリアしなければならない最も厳しい資格の一つとして認知されています。司法試験の内容や難易度、合格率について知りたいと思う方も多いのではないでしょうか。
受験を考えるにあたって、まずは全体像を理解することが肝要です。この記事では、司法試験の合格率をはじめ、試験の内容、難易度、勉強方法に関する情報から合格後のプロセスまでをまとめました。司法試験受験を考えている方は、最後まで読んでいただき、十分な準備に役立ててください。
司法試験は、弁護士、検察官、裁判官を志す方が、職務遂行に必要な学識や応用能力を評価される試験です。これらの職務に就くためには、国家試験である司法試験に合格することが不可欠であり、その難易度は高いと一般に認識されています。なお、一度合格すれば資格は終身有効です。
現行の司法試験は、2006年から2011年にかけての移行期間を経て導入され、それ以前の試験を旧司法試験、現行のものを新司法試験と呼び分けることがあります。
司法試験の合格率の推移を総括します。
司法試験の合格率 ※ 単位:%
実施年 | 合格率 | 男性の合格率 | 女性の合格率 |
---|---|---|---|
2014年 | 22.6 | 23.8 | 19.2 |
2015年 | 23.1 | 24.5 | 19.1 |
2016年 | 22.9 | 23.9 | 20.4 |
2017年 | 25.9 | 27.9 | 20.2 |
2018年 | 29.1 | 30.4 | 25.8 |
2019年 | 33.6 | 35.6 | 28.7 |
2020年 | 39.2 | 41.0 | 34.6 |
2021年 | 41.5 | 43.4 | 37.3 |
2022年 | 45.5 | 48.1 | 39.9 |
合格率が徐々に高くなってきており、その傾向は近年とくに顕著です。司法制度の改革などにより受験資格にかかわる厳格化が進んだ結果、新司法試験に完全に切り替わった2011年から受験者の人数が減少しています。これは、受験資格を得るまでにふるいにかけられているとも言えます。受験できる人が絞られている分、受験者のレベルが高まっているということです。資格を得る困難さはありますが、受験資格が得られればそれだけで合格に近付けていると考えることができます。
男女の合格率に差がありますが、この差については理由の分析が進められているところです。短答式試験の合格率に男女で差があることが原因で、それは学習環境などに基づくのではないかという意見などがあります。当然ですが、能力の差があるわけでも、合格基準に差があるわけでもありません。
参考:「司法試験合格者の状況」基礎的な統計情報(2022年)(日本弁護士連合会)
司法試験と比較されることの多い他の資格の難易度についてまとめます。
2022年の他の資格との比較
資格 | 合格率 | 勉強時間 |
---|---|---|
司法試験 | 40%前後 | 3,000~8,000時間 |
司法書士 | 5%前後 | 3,000時間 |
税理士 | 20%前後 | 3,000時間 |
医師 | 90%前後 | 5,000時間 |
公認会計士 | 10%前後 | 4,000時間 |
簿記検定1級 | 10%前後 | 800時間 |
他の資格と比較しても、司法試験は最難関の1つであることがよくわかります。
なお合格率は、その試験の受験資格に大きく影響されるため、単純に難易度の違いとは言えません。たとえば医師試験の合格率は非常に高いですが、これは医学部への入学や大学での勉強など、試験に至るまでの難易度が非常に高く、受験者のレベルが高いためです。
なお司法試験合格に必要とされる勉強時間に幅がありますが、これは受験資格を得るルートによるものです。受験資格については後ほどまとめます。
次に司法試験の合格者の平均点についてまとめます。
2022年の点数状況 | |
---|---|
合格点 | 750点 |
最高点 | 1287.56点 |
最低点 | 464.97点 |
合格者平均点 | 802.22点 |
短答式試験の合格点
2022年の点数状況 | |
---|---|
合格点 | 96点 |
最高点 | 169点 |
最低点 | 39点 |
合格者平均点 | 123.3点 |
短答式試験は175点満点です。
論文式試験の合格点
2022年の点数状況 | |
---|---|
合格点 | 700点前後※ |
最高点 | 639.17点 |
最低点 | 207.41点 |
合格者平均点 | 387.16点※ |
論文式試験は1,400点満点です。
※論文式試験の合格点は発表されていませんが、合格者の総合平均点(短答式+論文式)から同短答式試験の平均点を引いた650~700点前後が目安と考えられます。
参考:法務省「令和4年司法試験の結果について」
司法試験は、弁護士・裁判官・検察官の志望者が合格すべき国家試験です。法曹三者と称されるこれらの職務に就くためには、必要な知識と応用能力が求められ、その評価が行われます。既に述べたように、司法試験は難易度が高く、公認会計士や税理士、司法書士、医師と並ぶ難関の一つです。また、取得した資格は終身有効であり、更新手続きは必要ありません。
以下に、司法試験の日程、受験資格、試験科目について詳細に解説します。
司法試験は2023年度から7月中旬に実施されます。これに先立ち、2022年までは5月中旬に行われていました。試験は4日間のうち3日間が論文式試験で、最終日が短答式試験です。論文式試験の第2日と第3日の間に中日が挟まれています。試験結果は11月下旬に発表されます。
受験地は全国7か所で、具体的には札幌市、仙台市、東京都、名古屋市、大阪市、広島市、福岡市です。願書は法科大学院、郵送、法務省などで入手可能であり、提出は法務省の司法試験委員会に郵送(書留)する形で行います。
司法試験の受験資格には2つの種類があります。具体的には、法科大学院過程の修了者および司法試験予備試験の合格者が受験資格を有します。なお、司法試験予備試験の受験資格は特に規定されておらず、予備試験に合格した者は誰でも司法試験を受験可能です。
司法試験の受験料は28,000円であり、参考までに予備試験の受験料は17,500円です。これらの料金は受験申込書に収入印紙を貼り付けて支払います。支払いは現金など他の方法では受け付けられません。
司法試験は短答式と論文式の2つの試験形式から成り立っています。各試験科目は以下の通りです。
短答式の科目
論文式の科目
短答式は上記3科目で、論文式は4科目です。問題数と配点はそれぞれ異なりますが、論文式は最終的な合否判定において1,400点/800点の比率が乗じられ、1,400点満点に換算されます。
どちらの試験形式も最低ラインが設定されており、最低ラインを満たしていない科目が1つでもある場合は不合格となります。具体的には、短答式試験は満点の40%、論文式試験は同25%が最低ラインです。特に短答式試験での不合格例が多い傾向にあります。
司法試験は難易度が高く、多くの受験者が何年もかけて挑戦しています。具体的には、最近のデータを見ても初めて受験する割合が70%強であり、3~5回目の受験者が15%前後という傾向があります。
合格までの短期間での勉強方法について、以下にまとめます。
短期間で司法試験に合格するための方法
難易度の高い資格である司法試験において、短期間での合格を目指すなら、戦略的な方針を立て、計画的な学習時間を確保することが重要です。各方法について、詳細に見ていきましょう。
司法試験受験資格を得るための手段として、予備試験があります。法科大学院に在籍していない方が司法試験に挑む場合、働きながら又は最短で合格を目指すなら、予備試験ルートがよく利用されます。
予備試験は司法試験と同じ科目と試験形式を持ち、さらに口述試験も行われますが、口述試験で不合格になることはほぼありません。科目が共通しているため、予備試験の勉強は司法試験の勉強にも役立ちます。
短期間で合格を目指すなら、独学は難しいと考えるべきです。通学や通信講座を利用するのが一般的であり、特に短答試験の足切り点を効果的にクリアし、論文試験の対策時間を確保することが重要です。応用的な問題に取り組むよりも、基本的で確かな理解を広げる学習が求められます。
できるだけ早い時期にアウトプット学習に切り替えることも重要です。知識の暗記にかける時間を早めに終え、実際の問題解決の練習に時間を充てることは、短期合格への一環です。アウトプットは知識の定着を促し、答案を書くスキルの向上や自身の弱点の発見にも寄与します。
スキマ時間を有効に活用することも合格に向けて重要です。短期合格を目指す方は、細かい時間帯を最大限に利用しています。司法試験に必要な勉強時間は3,000~8,000時間とされています。まとまった時間も大切ですが、小さな時間の積み重ねも重要です。
勉強道具を用意し、移動中や待ち時間など、いかなるスキマ時間でも勉強に活用できるようにする工夫が役立ちます。持ち運びやすいツールやアプリの利用もおすすめです。アプリには一問一答形式の問題集や単語帳があり、これらはスマートフォンで手軽に学習できます。
司法試験の合格後、即座に弁護士や裁判官として働くことができるわけではありません。また、勤務先が自動的に定まるわけでもありません。合格後も進むべき道はあります。法曹になるまでの流れは以下の通りです。
司法試験合格後の進路
これらのステップは通常同時に進められます。ただし、一般企業への就職の場合とは異なり、やや特殊な側面もあるため、合格後の進路についての理解が重要です。各ステップで実施すべきことについて説明していきます。
司法試験合格者はまず、「司法修習」を1年間受けます。この修習は全国の「修習地」で行われ、判決書の起案や裁判の立ち会いなど、実務を学ぶ訓練が含まれます。修了試験(二回試験)に合格する必要があります。
司法修習では、実務能力の向上だけでなく、法曹としての職業意識や倫理観の養成も行われます。特に裁判官や検察官志望者にとっては、この修習は就職活動としても意味があるので重要です。
修習期間中は「給費制」が適用され、基本給付金、住居給付金、移転給付金などが支給されます。基本給付金は13万5,000円であり、住居給付金は上限3万5,000円が適用されるのが一般的です。
司法修習と同時に、就職活動も行わなければなりません。
司法試験合格者の就職先の例
通常、合格が確定した後に就職活動を始めますが、司法試験直後から説明会に参加することもあります。特に5大法律事務所を目指す場合は、予備試験発表前後や法科大学院最終学年の夏にはインターン参加が重要です。
必要書類には、司法試験成績通知書のコピー、大学・法科大学院の成績表、履歴書、職務経歴書などが含まれます。また、自己PRをまとめ、名刺の準備も行っておくべきです。
司法試験に合格後の進路選びは、転職エージェントがおすすめです。合格者の中で弁護士を志す人が多い中、法律事務所への転職には慎重な計画が必要です。他の職種と比べて就職プロセスが特殊な側面もあり、情報収集や求人探しの手段は多い方が望ましいと同時に、信頼性の高いチャネルで効率的に情報を得ることが成功の鍵です。
法律事務所への転職を考えるなら、転職エージェントがおすすめです。転職エージェントは事務職・バックオフィスに特化した転職エージェントもあるので、法律事務所の求人が豊富に掲載されています。同時に、一般企業の法務部の求人も取り扱っています。充実した案件が多いため、自分の条件に合った転職先・就職先を見つけやすくなっています。
司法試験は法曹の道を歩む者にとって突破しなければならない最難関の資格試験とされています。高い難易度は確かですが、一度受験資格を得れば合格する可能性もある試験です。合格後は司法修習を受けながら就職先を模索します。充実の転職・就職先を見つけるために、ぜひ転職エージェントを活用してみてください。