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2024/08/18 更新

税理士試験の簿記論とは?試験内容や合格率・簿記1級との違いも解説

税理士試験の受験を考えている人の中には、「簿記論」という試験内容を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。簿記論とは、税理士試験において「財務諸表論」と同じ必須科目であり、税理士になるには、簿記論と財務諸表論の2科目合格が条件です。

今回は税理士試験合格のために絶対に必要になる「簿記論」について解説します。具体的な試験内容や簿記論の合格率、簿記1級との違いなど、簿記論にまつわる情報についてまとめているので、参考にしてください。

税理士試験とは

「税理士試験」は、税理士となるのに必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的として行われます。税理士になる方法はいくつかありますが、最も一般的な方法が税理士試験です。

国家試験である税理士試験には、他の国家試験と異なり、受験資格が設けられています。税理士試験の受験資格を得るには、学歴・職歴・資格のいずれかの条件を満たす必要があります。大学や短大で税に関する専門知識を学んだ経験や、経理などの実務経験、または簿記1級を持っている、などです。

また、税理士試験は科目ごとに合否が判断されるという特徴があります。税法系で3科目、会計法で2科目合格しなくては、税理士試験には合格できないです。

税理士試験の簿記論とは

簿記論とは、税務や会計のスペシャリストとして働く税理士に必要不可欠、かつ業務の中核に当たる知識を習得できる試験科目です。

簿記論の「簿記」は、帳簿記録の略であり、企業の経営活動を帳簿に記録し、その記録から企業の経営状況を明らかにすることを目的としています。もちろん、経営状況を明らかにするためには、財務諸表が必要ですが、財務諸表を作成する際にルールが求められます。そのときに必要なルールが簿記です。

つまり、簿記論では財務諸表作成に必要なルールと実際の計算を学ぶと認識しておきましょう。

簿記論と財務諸表論の違い

税理士試験の必須科目である簿記論と財務諸表論ですが、この2つには明確な違いがあります。

<簿記論>

企業の活動を記録・計算し、その記録に基づいた集計方法が問われる

<財務諸表論>

企業が株主など社外に報告するために必要な書類である財務諸表の作成・考え方が問われる

上記からもわかるとおり、簿記論は「記録」、財務諸表論は「開示」することを目的としているものです。そのため、試験内容や学ぶ内容は異なります。ただし、簿記論と財務諸表論は、切り離せない関係にあるため同時に勉強を進めれば、双方の理解が進むので効果的といわれています。

簿記1級と税理士試験の簿記論の違い

簿記論と間違われることが多い試験が、簿記1級です。

簿記1級とは、日本商工会議所や各地商工会議所が行う検定のことをいいます。受験資格はなく、簿記や会計に関する試験の中で最高峰といわれる試験です。主な試験内容は、工業簿記と原価計算で、工業簿記に重きを置いて勉強する人が多いでしょう。

一方、簿記論とは税理士試験の必須科目の1つです。税理士試験に合格するためには、避けては通れない試験といえます。簿記1級の試験と違う点は、税理士試験を受けるには受験が必要だということです。そのため、簿記論を受験するにも受験資格が求められます。

簿記1級と簿記論は上記のような違いがあるので注意してください。

簿記論の試験概要

簿記論について理解できた次は、簿記論の試験概要について解説します。これから税理士試験を受験予定の方は、簿記論を理解した上で試験対策をしてください。

出題内容

簿記論では、経営活動における取引の記録や集計、計算方法などルールに関する出題がされます。

試験時間は120分で、例年ほぼすべての計算問題が出題される傾向にあります。以下は、簿記論の出題範囲です。

<出題範囲>

  • 複式簿記の原理
  • 記帳・計算および帳簿組織
  • 商業簿記・工業簿記

出題範囲に原価計算は含まれません。試験は大問で3問出題されます。第1問と第2問では、個々の論点ごとの出題、第3問は決算処理に関する総合問題です。

試験問題数が多い点が簿記論の特徴としてあげられます。そのため、制限時間内にすべて回答することは困難であり、計算のスピードや回答できる問題の取捨選択が重要です。

出題形式

簿記論の試験時間は、2時間です。

大問が3題あり、合計100点の試験で構成されています。

  • 第1問:25点
  • 第2問:25点
  • 第3問:50点

各大問の注意事項や資料が用意されているので、それらの条件に沿って複数の問題を解いていきます。

試験内容は、すべて計算問題で出題されますが、事例に対し法律の規定等を活用した応用力が求められるので注意しましょう。また、時間内に処理しきれないほどの問題量から、計算能力と事務処理能力が見られているといわれています。

簿記論の難易度

次は簿記論の難易度について解説します。会計試験の最高峰といわれている簿記1級と比べても「難しい」といわれる簿記論です。難易度を理解し、十分な試験対策を行いましょう。

合格ライン

簿記論だけに合格ラインはありません。

税理士試験には、合格基準があります。合格基準を超えるためには、各科目の正解率をあげることが前提ですが、「〇点取れば合格」という明確な基準はありません。そもそも、税理士試験は、受験者全体の成績から、相対評価で上位から合格者が決まるといわれています。そのため、合格率とはそのパーセンテージに含まれている上位得点者であり、上位得点者でないと合格ができないということです。

ただし、簿記論は税理士試験をはじめて受験する人が受ける科目なので、選択科目の中でも人気がある「法人税法」や「所得税法」に比べると難易度は高くないでしょう。

合格率

簿記論の合格率は、令和元年と令和2年で上昇しています。

平成21年以降では最高18.8%(※1)、最低8.9%でしたが、それ以外は12%〜14%を推移しています。以下は、過去5年間の合格率です。

年数

合格率

平成28年度

12.6%

平成29年度

14.2%

平成30年度

14.8%

令和元年度

17.4%

令和2年度

22.6%

(※1)参考:国税庁「令和3年度(第71回)税理士試験結果」

勉強時間

簿記論合格に必要な時間は、300〜400時間、500〜1,000時間など、さまざまな情報がインターネット上に掲載されています。結論、必要な勉強時間は、経験や知識量によって異なるということです。

たとえば、すでに簿記1級相当の知識を持っている受験者であれば、簿記論の大半知識が身についています。その上で、簿記論の試験対策をするため、勉強時間は比較的少なくても合格を狙えるでしょう。しかし、簿記の知識がなく、これから基本的なことも含め勉強を始める初心者は、かなりの時間がかかると考えておきましょう。人によっては、1,000時間以上かかることもあります。

大切なことは、勉強を継続することです。自分の経験や知識に合わせて、効率的に勉強をして試験対策をしてください。

簿記論と簿記1級ではどちらが難しい?

簿記1級と簿記論は、出題範囲の8〜9割が同じで、レベル感も同等だといわれています。どちらも難易度が高いといわれている難問試験です。

合格率で比較すると、簿記1級は13.5%(※2)、簿記論は22.6%(※3)と、簿記1級の方が合格率が低いです。しかし、簿記1級には受験資格がないため、まったくの未経験で受験している人も含まれると考えると、合格率が下がる可能性は高いでしょう。

また、簿記論は簿記1級に比べると出題範囲の予想がしにくく「対策がしにくい」といわれています。

そのため、出題範囲がほとんど同じでも簿記論のほうが難しいと考えていたほうがいいでしょう。

(※2)参考:商工会議所の検定試験「1級受験者データ(統一試験)」

(※3)参考:国税庁「令和3年度(第71回)税理士試験結果」

簿記論は独学でも合格できる?

簿記論の合格に独学で臨むのは、不可能ではありません。しかし、オススメはしないです。

独学では、市販のテキストと問題集のみで勉強をする方法をいいます。さまざまな問題集やテキストが販売されていますが、簿記論を含め税理士試験はかなり難易度が高いです。そのため、独学で勉強するとなると莫大な時間がかかるだけでなく、試験対策にポイントを絞ることができず、諦めてしまう人が多いでしょう。一般的には、予備校や通信講座を利用して勉強します。

ただし、独学で合格している受験者も稀にいます。自分の知識や集中できる勉強のやり方に合わせて、簿記論の合格を狙うようにしましょう。

簿記論を独学で勉強するコツ

簿記論を独学で勉強する場合の、勉強のコツが気になる方は多いのではないでしょうか。「予備校の費用は高いため独学で勉強したい」「周囲を気にせず一人で集中して勉強したい」という方には独学がオススメです。以下では、独学で簿記論を合格するための勉強方法について解説します。独学での合格を考えている方は参考にしてください。

①1日のうち3時間は勉強時間を確保する

簿記論の合格には、最低でも300時間以上の勉強が必要だといわれています。そのため、最低でも1日3時間は勉強時間を確保するようにしましょう。

どうしても「勉強」と聞くと、机に向かって行うものと考える人が多いです。しかし、日中仕事をしている社会人だと、毎日3時間机に向かって勉強する時間を確保することは難しいのではないでしょうか。その結果、十分な勉強時間が確保できず、合格ができないまま税理士試験合格を諦めてしまう人は多いです。

しかし、隙間時間を勉強に活用すれば、1日3時間の勉強時間を確保することはできます。たとえば、会社までの電車時間やお昼休憩で空いている時間などです。これらの隙間時間を有効に活用すれば、1日3時間の勉強時間は確保できる可能性があります。

一度、自分の生活を振り返り無駄にしている時間がないか考えてみましょう。きっと、勉強に変えられる時間があるはずです。

②繰り返し計算練習をして知識と計算力を定着させる

簿記論に合格するには、すべての問題に一通り回答できるようになることが重要です。そのため、繰り返し計算練習を行い、知識と計算力の定着を目指しましょう。

一度勉強したからといって「問題ない」ということはありません。人は必ず忘れてしまう生き物です。一度だけで完璧に吸収できることはないと考え、何度も反復練習をするのが合格への道だといえます。反復練習を繰り返すことで、自分が苦手な分野もわかってくるはずです。何度も間違える分野に関しては、重点的に計算練習を行い、着実な知識の定着を目指しましょう。

③捨て問を見切る力を養う

簿記論の試験内容の特徴として、問題数が多い点があげられます。120分の試験時間では全問解くことが難しいです。そのため、捨て問(解かない問題)を判断する能力が合格へのポイントになります。

判断能力は過去問で養いましょう。まず、過去問に一通り目を通し、確実に正解できる問題とそうでない問題を判断します。簿記論の配点は、傾斜配点なので、先の区分けにより回答できそうな問題には高い配分が割り振られているかを見抜くためです。

解けない問題に時間を取られるよりも、確実に解ける問題で点数を稼いだ方が効率的に簿記論に合格しやすくなります。

簿記論と財務諸表論はどちらを先に勉強するべき?

簿記論と合わせて財務諸表論を一緒に勉強するのが、オススメです。

簿記論では会計の具体的な計算方法を学び、財務諸表論では簿記論で学んだ計算方法や考え、ルールについて学びます。そのため、簿記論と財務諸表論の関係は深く、重複する範囲も多いです。一緒に勉強することで、どちらの知識も身につくといった相乗効果が期待できるでしょう。

簿記論と財務諸表論を同時に勉強するメリット

  • 試験範囲が重複しいている
  • 会計処理の理解が深まる
  • 学習時間が短縮できる

簿記論と財務諸表論を別々に勉強する場合、500時間以上必要になります。そういった意味でも、簿記論と財務諸表論を同時に勉強すれば、勉強時間を短縮でき効率的に合格を目指せるようになります。

効率的に勉強して、簿記論合格を目指そう

税理士試験の簿記論は、非常に難しい必須科目です。税理士試験に合格するためには、必ず通らなくてはいけない難問だといえるでしょう。

しかし、これまで多くの人が簿記論に合格しています。効率的に勉強して、簿記論に合格すれば税理士試験合格ができるということです。

簿記論への合格には、独学でも挑戦することはできます。さまざまな勉強方法や対策情報があるので、自分に合った勉強方法を選択し、簿記論合格を目指してみてはいかがでしょうか。

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