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2024/09/06 更新

弁理士とは?知的財産管理技能士との違い|主な仕事内容や資格の難易度をわかりやすく解説!

現在、コンテンツビジネスや地域創生ブランド・特許の国際出願などが拡大している状況下で、弁理士が活躍できるフィールドはますます広がっています。こうした背景から、弁理士の具体的な仕事内容や、資格取得の難易度に興味を持つ方も多いでしょう。

この記事では、弁理士の業務内容や資格試験の概要、また資格をどのように活かすことができるかなどについて詳しく解説します。同時に、知的財産管理技能士との比較も交えながら情報を提供します。弁理士資格に興味をお持ちの方は、ぜひお読みください。

弁理士とは

弁理士は、知的財産権の取得や知的財産に関する紛争解決を専門的に行う資格職業です。ここで言う「知的財産」とは、人間の知的・精神的な創造活動から生まれるアイディアや創作物で、経済的価値を持つものを指します。簡単に言えば、特定の個人や団体が独占的に所有することができる、価値のある情報や創造物です。具体的な例としては、発明、音楽、営業秘密などが挙げられます。

弁理士の称号を持つには、国家が実施する弁理士試験に合格しなければなりません。弁理士資格は、知的財産分野における最高レベルの国家資格であり、知的財産に関する高度な知識と実務を証明できます。

知的財産管理技能士との違い

 知的財産の管理に関連する資格には「知的財産管理技能士」も存在しますが、それぞれ異なる役割があります。

弁理士は、主に新たな知的財産権を取得するプロセスに関わる役割です。一方、知的財産管理技能士は、既存の知的財産権を最大限に活用する使命を担っています。弁理士は知的財産権の申請手続きなどを行えますが、知的財産管理技能士は知的財産を効果的に管理し、利益を最大化する役割を果たす資格です。

以下に、両者の違いを表にまとめます。

知的財産管理技能士

弁理士

試験の目的

知的財産を管理する技能の習得レベルの測定・評価

弁理士として必要な学識及びその応用能力を有するかどうかの判定

認定期間

期限なし

期限なし※

業務独占

なし

あり※:特許、実用新案等に関する特許庁に対する申請代行業務

名称独占

あり

あり※

企業との関係性

情報・通信、コンテンツ業界、金融業などで知財の社内担当になる

特許事務所に勤務して企業から委託を受ける、製造業などの企業の知財部や法務部に勤務する

※弁理士は認定の期限はありませんが、5年間で70単位(1単位1時間)以上の研修が必要です。

※弁理士だけに許された業務独占は上記の通りですが、弁理士と弁護士にのみ許される業務もあります。

※「弁理士」を名乗るには、試験に合格するだけでなく日本弁理士会への登録も行います。

弁理士の主な仕事内容

弁理士の主な働き方としては、特許事務所への所属や企業内弁理士としての勤務、独立開業といった選択肢があります。

弁理士の主な仕事内容は、次の通りです。

【弁理士の主な仕事内容】

  • 知的財産関連の取得手続き
  • 知的財産関連のトラブル解決
  • 取引関連業務・コンサルティング業務

すでに述べた通り、主となる業務は知的財産権を取得するための業務です。取得に関連する業務と、取得している権利を守る業務が弁理士の仕事といえます。

それでは、弁理士の主な仕事内容について1つずつ見ていきましょう。

知的財産関連の取得手続き

まず、主に行われる業務は、特許・意匠・商標・実用新案などの知的財産関連の取得手続きです。申請された知的財産を客観的に評価し、その後、特許庁に対して申請手続きを行います。具体的には、依頼主のアイディアやデザイン、ロゴマークなどを権利化するための先行事例調査、特許庁への書類作成、申請が拒絶された場合のフォローアップなどです。一般的には、アイディアは特許や実用新案、デザインやロゴマークは意匠、会社名や商品名などの言葉は商標に該当します。

知的財産関連のトラブル解決

知的財産関連のトラブル解決も業務の1つです。申請・登録済みの知的財産を意図的あるいは悪意なく使用しており、権利を侵害しているというケースへの対応を行います。

具体的に行うのは、自社の製品が他社の知的財産を侵害していると警告を受けた、他社の製品が自社の知的財産を侵害していたといった場合のアドバイスです。訴訟に発展した場合には代理人として裁判所での手続を行うこともあります。

取引関連業務・コンサルティング業務

知的財産に関する相談への対応やコンサルティングとして、弁理士は法律や実例に基づいたアドバイスを行います。主な依頼・相談の内容は、自社で開発した技術の権利化、利用しようとしているデザインに問題がないかの確認などです。

弁理士のメインとなる業務は知的財産権の取得に関するものですが、コンサルティングはその前の段階に当たる業務といえます。権利取得の代行案件を得るためにも、コンサルティングは重要な業務です。

弁理士資格の概要

弁理士の資格試験は、短答式筆記、論文式筆記、そして口述という3つの段階から構成され、各試験は年に一度実施されます。

試験の種類によって、異なる方法が取られています。具体的には、五肢択一マークシート(短答式)・記述式論文(論文)・口頭試問(口述試験)です。論文試験には義務と選択があり、それぞれで試験の日付が異なることを覚えておきましょう。さらに、口述試験では、専門知識を問うのみならず、コミュニケーション能力やふるまいも評価の対象です。

受験料は12,000円ですが、これは「特許印紙」を使って支払うもので、「収入印紙」では受け付けていません。混同を避けるため、この点には注意が必要です。

参考:特許庁「令和5年度弁理士試験 受験案内」

次に、試験のスケジュール、資格条件、難易度、科目内容、そして学習アプローチなど、試験に関する重要な詳細について説明していきます。

2023年弁理士資格の試験日程

弁理士試験は例年、短答式が5月・論文式が6月下旬~7月上旬・口述が10月に開催されます。2023年の日程は以下の通りです。

2023年弁理士資格の試験日程

  • 短答式筆記試験:5月21日(日)
  • 論文式筆記試験:7月2日(日)(必須科目)/7月23日(日)(選択科目)
  • 口述試験:10月21日(土)~23日(月)のうち1日

試験日程とともに、申し込みの受付期限や合格発表の期日にも注意してください。参考までに、受付期限と合格発表の期日は以下の通りです。

2023年弁理士資格の申込期間・合格発表期日

  • 短答式申込期間:3月15日(水) ~4月5日(水)
  • 短答式合格発表日:6月12日(月)<予定>
  • 論文式合格発表日:9月25日(月)<予定>
  • 口述試験合格発表日:11月9日(木)<予定>

申し込みの受付期間はもちろん、合格発表を見逃すと受験忘れも起こりかねません。日程はあらかじめ確認しておきましょう。

弁理士試験の受験資格

弁理士試験の受験資格は次の通りです。

  • 短答式筆記試験:なし 学歴、年齢、国籍等による制限は一切なし
  • 論文式筆記試験:短答式試験に合格した者
  • 口述試験:論文式試験に合格した者

短答式、論文式、口述、と順に合格していかなければなりません。ただし免除制度があり、短答式と論文式は一度合格すると翌年・翌々年の2年間は有効で、再受験する際に免除となります。そのほかやや複雑ですが、免除の規定が複数あるので学歴(取得単位)・職歴や過去の合格歴などをチェックしておきましょう。なお、免除期間が設定されている条件もあるので、よく確認しておくことが必要です。

弁理士資格の難易度

弁理士資格の難易度について、類似の資格などと比較してみましょう。類似の内容の知的財産管理技能検定のほか、難易度でよく比較される公認会計士・税理士・医師・弁護士などと比較しました。

資格の種類

合格率

勉強時間

弁理士

6~8%

3,000時間

知的財産管理技能検定2級

40%

50時間

知的財産管理技能検定1級

2~8%

400時間

公認会計士

10%

4,000時間

宅建士

15~18%

300~500時間

税理士

15~20%

3,000~4,000時間

医師免許

90%

5,000時間

弁護士

30~40%

3,000~8,000時間

合格率が低いほど難易度が高いとは言い切れないものの、同じく難関資格として知られる税理士や公認会計士などと同程度のレベルであることがわかります。なお、弁理士は理系出身者が取得するケースが多い資格でもあり「理系の弁護士」とも呼ばれています。


試験科目や出題数

試験科目と出題数については、試験範囲が広範囲であることが特徴です。合格率の低さからもわかるとおり、簡単な試験ではありません。試験科目と出題数については以下の通りです。


短答式試験(全60問・マークシート・3.5時間)

  • 特許・実用新案に関する法令:20題
  • 意匠に関する法令:10題
  • 商標に関する法令:10題
  • 工業所有権に関する条約:10題
  • 著作権法及び不正競争防止法:10題

短答式試験の合格基準は60点満点の65%(39点)です。各科目の最低基準は満点の40%となっており、合格率は10%前後です。1科目でも基準を下回ると不合格となります。

論文式試験

  • 必須科目:特許法・実用新案法(2問)、意匠法(1問)、商標法(1問)
  • 選択科目:理工Ⅰ(機械・応用力学)、理工Ⅱ(数学・物理)、理工Ⅲ(化学)、理工Ⅳ(生物)、理工Ⅴ(情報)、法律から1科目(1問)

必須科目の合格基準は、標準偏差による調整後得点の平均が54点以上かつ47点未満の得点の科目が1つもないことです。選択科目の合格基準は満点の60%以上となっています。合格率は20%台を推移しています。

口述試験(各科目10分)

  • 特許・実用新案に関する法令
  • 意匠に関する法令
  • 商標に関する法令

口述試験の合格基準は、採点基準をABCのゾーン方式として「答えが不十分である場合」のC評価が2科目以上ないことです。合格率は例年90%を超えています。

なお合格者を文系・理系で比較すると、理系学部出身者が7~8割を占めていることが事実です。新しい技術を扱うことも多いため、理系の知識があると有利でしょう。

勉強方法

弁理士試験合格のための勉強時間は、おおよそ3,000時間ほどといわれています。社会人が働きながら勉強して取得を目指した場合、どのぐらいの年月が必要となるでしょうか。平日に3時間、休日に8時間勉強したとして、年間休日110日とすると1年の合計勉強時間は1,645時間となり、2年弱かかる計算となります。

ただし、独学だけでなく、通信講座などで1年コースを受講する人もいるため勉強法は多様です。

方針としては、優先的に短答式の合格を目指しましょう。短答式の試験に合格しなくては次に進めません。特に、論文試験とも重なる特許法・実用新案法・意匠法・商標法などをメインに勉強します。

なお試験は過去に出題されたことのある問題や類題が多いため、過去問のリピート学習は必須です。過去問を解きながら知識を身に付けていく方法と、一通りインプットしてから過去問を解く方法とがあります。

弁理士資格を取得するメリット

弁理士の資格を取得するメリットには、次の点が挙げられます。

  • 高収入を目指せる
  • キャリアの幅が広がる
  • 大学などの研究機関
  • 知的財産経営コンサル

難関資格だけあり、合格すると高い収入を得ることが期待できるでしょう。そのほか、取得によりキャリア面でも幅広く活躍できる可能性が高まります。特に近年は、海外特許やコンテンツビジネスの成長などが、その可能性を後押ししています。

では次に、収入面とキャリア面のメリットについて解説します。

高収入を期待できる

弁理士の年収の相場は700~750万円とよく言われます。厚生労働省による「令和3年度 賃金構造基本統計調査」では、945万円でした。

サラリーマンの平均年収は一般に450万円弱とされているので、弁理士の年収は高いと言えます。

弁理士として年収アップするためには、安定した事務所への就職・転職がスムーズです。安定した事務所は案件が多いほか、スキルを高めることもできます。

さらに海外での特許取得サポートは単価が高いため、英語を使うような外国出願を扱うのも年収アップに繋がるでしょう。特に近年は国でも国際競争力を高めるために知的財産の活用を推進しており、外国出願の必要性が高まっています。

参考:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」

キャリアの幅が広がる

弁理士の資格を取得すると、今後の人生におけるキャリアの幅を広げることができます。特許事務所や企業の知財部などで働くほか、経験を積んで独立を目指すことも可能です。

また世界的に弁理士に対するニーズが高まっているため、さまざまな業界で需要があります。特に、独自の技術やサービスを保有しているベンチャーやスタートアップ企業が多いほか、コンテンツビジネスや企業のブランディングからのニーズも豊富です。将来的に、知的財産がビジネスと結び付く可能性が高いと言えます。

弁理士の特徴を知り転職を成功させよう

弁理士資格は、知的財産分野の専門家として独自の活動が可能な、高い専門性を要する国家資格です。その取得には、幅広い知識を問う多数の試験科目と、それに伴う低い合格率という難関が存在しますが、この壁を乗り越えた先には、大きな可能性とプロフェッショナルとしての確固たる地位が待っています。

資格取得後は、特許事務所や企業の知的財産部での実務経験を積むことが一般的です。そして、これらの経験は、将来的に自分の事務所を開くなど、さらに広いキャリアパスへとつながっていきます。弁理士としての転職やキャリア形成は、一歩一歩、計画的かつ着実に進めることが成功のカギとなります。この資格は、専門性とともに大きな自己成長を約束する道であり、それだけに価値があるといえるでしょう。

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