「司法書士試験の難易度はどの程度なの?」「一般的に難関だと言われているけど、どのようにして合格できるの?」。司法書士試験を受験する際に、このような疑問が浮かぶことでしょう。
この記事では、文系国家資格の中でも難易度が高いとされる司法書士試験に焦点を当て、他の資格との比較を交えながら解説します。また、司法書士試験の概要や合格のためのポイントについても説明していますので、ぜひ参考にしてください。
司法書士の試験は、法律に関する高度な専門知識が必要であり、難易度の高い国家資格とされています。以下の表は、司法書士と他の難関資格の合格率を比較しています(※令和4年度のデータを参照。1年に複数回試験のあるものは令和4年12月現在の最新データを使用)。
資格名 | 合格率 |
---|---|
司法書士 | 5.2%(※1) |
簿記2級 | 26.9%(※2) |
公認会計士 | 7.7%(※3) |
宅建士 | 17.0%(※4) |
税理士 | 19.5%(※5) |
社労士 | 5.3%(※6) |
司法試験 | 45.5%(※7) |
他の難関資格と比較しても、司法書士試験は合格率が低いことが分かります。合格率は年ごとに大きな変動はありませんが、わずかに上昇していく傾向があります。それでもなお、5%程度という低さが続いています。
(※1)参考:法務省「令和4年度司法書士試験の最終結果について」
(※2)参考:商工会議所「2級受験者データ(統一試験)」
(※3)参考:金融庁「令和4年公認会計士試験の合格発表の概要について」
(※4)参考:不動産適正取引推進機構「令和 5 年度宅地建物取引士資格試験結果の概要」
(※5)参考:国税庁「令和4年度(第72回)税理士試験結果」
(※6)参考:厚生労働省「第54回社会保険労務士試験の合格者発表」
(※7)参考:法務省「令和4年司法試験法科大学院等別合格者数等」
司法書士試験は、以下の理由により難易度が高いです。
司法書士の難易度が高い理由
それぞれ見ていきましょう。
まず、試験科目の多さが理由として挙げられます。司法書士試験の科目数は、筆記試験11科目・口述試験3科目と非常に多く、範囲が広範です。他の難関資格と比較してもその多さが際立っています。
資格名 | 科目数 |
---|---|
司法書士 | 筆記11科目&口述3科目 |
公認会計士 | 短答4科目&論文5科目 |
簿記2級 | 2科目 |
宅建士 | 4 科目 |
税理士 | 会計2科目&税法2科目 |
社労士 | 8科目 |
司法試験 | 短答式:基本7科目&記述式:選択1科目 |
筆記試験は7月に行われ、午前2時間、午後3時間の計5時間にわたる長時間の試験です。11科目・3つのパートに分かれており、午前の部と午後の部があります。
午前の部は、多肢択一式マークシート(5択)で、4科目・35問・合計105点です。
午後の部も多肢択一式マークシート(5択)で、7科目・35問・合計105点です。
また、午後の部には記述式があり、2科目・2問・合計70点です。
各科目には基準点が設けられており、全体の合計点が高くても、基準点に満たない科目があると不合格となります。基準点は最低限のラインであり、全体の点数を合格点以上まで引き上げる必要も。司法書士試験の出題範囲は広範で、主要科目とマイナー科目に分けて対策をすることが重要です。
筆記試験に合格すると、10月に口述試験が控えています。口述試験は筆記試験を突破した受験者が受験可能で、司法書士としての必要な知識が問われる面接形式の試験です。筆記試験に合格した後も、復習をしっかりと行い、口述試験でスムーズに対応できるように準備しておくことが大切です。
司法書士試験は、範囲が広いだけでなく、内容も複雑で勉強に時間がかかるものが多いのが特徴です。法律の読解力を身につけるのは一筋縄ではいきません。そのため、資格取得までに必要とされている勉強時間も長いのです。
資格名 | 勉強時間 |
---|---|
司法書士 | 3000時間 |
公認会計士 | 3000時間 |
簿記2級 | 250〜350時間 |
宅建士 | 500時間 |
税理士 | 3000〜4000時間 |
社労士 | 500〜1000時間 |
司法試験 | 3000〜10000時間 |
3000時間ということは、1日9時間勉強すると学習期間は1年になります。働きながら合格を目指す場合、もう少し現実的に1日3時間で計算すると3年かかります。
ここで、司法書士試験とほかの資格の難易度を比較してみましょう。司法試験と比較されやすい司法試験、公認会計士、行政書士について、それぞれ詳しいデータを集めたので参考にしてください。
裁判官、検察官、弁護士になるための法曹資格を与える司法試験は最難関の国家試験の一つです。誰でも受験できる司法書士試験とは違い、法科大学院を終了するか予備試験に合格しなければ受験資格は得られません。
資格名 | 司法書士 | 司法試験 |
---|---|---|
勉強時間 | 3000時間 | 3000〜10000時間 |
合格率 | 5.2%(※8) | 45.5%(※9) |
試験科目 | 筆記11科目&口述3科目 | 短答式:基本7科目&記述式:選択1科目 |
受験資格 | なし | 法科大学院終了または予備試験合格 |
司法試験は受験資格が厳しい分、合格率が高い傾向にあります。
(※8)参考:法務省「令和4年度司法書士試験の最終結果について」
(※9)参考:法務省「令和4年司法試験法科大学院等別合格者数等」
公認会計士試験は、弁護士、医師と並ぶほど難易度が高いと言われています。司法書士試験と同じく試験範囲が広く内容が複雑なこと、時間内に回答を終えるのが大変なほど問題の量が多いことが特徴です。
司法書士試験とデータで比較してみましょう。
資格名 | 司法書士 | 公認会計士 |
---|---|---|
勉強時間 | 3000時間 | 3000時間 |
合格率 | 5.2% | 7.7%(※10) |
試験科目 | 筆記11科目&口述3科目 | 短答4科目&論文5科目 |
受験資格 | なし | なし |
受験資格がないこと、合格に必要な勉強時間など、司法書士試験との共通点の多い資格です。
(※10)参考:金融庁「令和4年公認会計士試験の合格発表の概要について」
行政書士も、司法書士と同じく法律系の国家資格です。行政書士は行政へ提出する書類作成の代行や手続き代理、相談業務など行政書類を扱い、司法書士は法務局や裁判所など法律関係の書類を扱います。
資格名 | 司法書士 | 行政書士 |
---|---|---|
勉強時間 | 3000時間 | 800〜1000時間 |
合格率 | 5.2% | 11.2%(※11) |
試験科目 | 筆記11科目&口述3科目 | 法令等科目5科目&一般知識等科目3分野 |
受験資格 | なし | なし |
勉強時間や合格率からもわかるとおり、司法書士の方が少し難易度は高いと言われています。なお、同じ書類を扱う法律系の国家資格として、社労士や司法書士とのダブルライセンスやトリプルライセンスを目指す人も少なくありません。
(※11)行政書士試験「令和4年度行政書士試験/都道府県別試験結果一覧」
司法書士試験に合格するためには、賢明な勉強計画が不可欠です。資格専門の学校に通学する方もいれば、独学で合格を目指す方もいますが、どちらにせよ合格するために心得ておくべき重要な要点があります。
司法書士試験合格のための要点
これらについて探っていきましょう。
基本的な要点ですが、まずスケジュールをしっかり管理し、効果的な勉強時間を確保することが大切です。週ごとに目標を設定し、具体的にいつ何を勉強するのかを計画することが必要でしょう。漠然と勉強するのではなく、具体的な目標を定めて集中して取り組むことが成功への鍵です。
スケジュールを作成する際には、自分の実力を理解し、各科目ごとにどれだけ勉強が必要かを分析し、適切に時間を割り振るように心がけましょう。
司法書士試験は全科目で基準点をクリアしなければならない独特の形式を取っています。全体の点数が高くても、たとえ1つでも基準点に達しない科目があれば合格は難しいです。このため、どの科目も手抜きは許されません。
司法書士試験は相対評価方式を採用しており、基準点は年度ごとに問題の難易度により変動します。択一問題は上位30%程度、記述式は択一の基準点をクリアした受験者の中の上位50%に設定される傾向があるので注意しましょう。
しっかり計画をたてたら終わりではありません。日々の実行力を保つために、モチベーションの維持にも気を配りましょう。実力を向上させるためには、持続的な努力が不可欠です。
特に独学の場合、一人で自己管理し、信念をもって勉強を続けることは容易ではありません。仲間を見つけてモチベーションを維持する環境を整えることは重要です。しかし、全力で試験合格を目指す人にとっては、できる限りのサポートを受けることが望ましいでしょう。
司法書士試験合格に向けた転職には2つの主なアプローチがあります。
勉強時間が確保できない状況であれば、司法書士試験に集中するための環境を整えるために転職を検討してみましょう。
仕事を通じて司法書士試験範囲の知識を身につける方法もあります。法務部門が司法書士の活躍の場となるため、法律事務所や企業の法務部への転職を検討することがおすすめです。
転職の際は、転職サイトを活用してみましょう。Webから応募やスカウトを受けることができるほか、キャリアアドバイザーによるサポートも受けられます。
司法書士試験は高い難易度を誇ります。成功には綿密な計画の策定と、その計画に基づいた着実な勉強が不可欠です。試験は基準点が存在するため、弱点科目の克服も怠ることができません。
これらの理由や低い合格率からも明らかなように、受験と合格は容易ではありません。仕事を完全に辞めずに資格を取得するには、リスクが伴います。しかし、専業受験生として働いていない状況で、司法書士としての資格を目指すのであれば、環境整備が必要です。
真剣に司法書士を志すなら、転職も視野に入れ、自身の状況を見直してみましょう。