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2024/09/06 更新

不正対策のプロ、公認不正検査士(CFE)について。難易度や資格試験の解説

公認不正検査士(Certified Fraud Examiner)について

公認不正検査士(CFE)は、不正対策のエキスパートであることを示す国際的な資格です。

不正行為には、動機、手段、正当化の3つの要因が存在するとされています。これらの要因を理解し、疑惑が浮上したときに即座に対処できるスキルを身につけることが、公認不正検査士の資格取得の目的です。

公認不正検査士が組織内に存在することで、企業は不正を未然に防ぐことができ、そのために経営者や監査法人から高い注目を浴びることができます。

公認不正検査士協会の会員のみが持つ特別な資格

公認不正検査士の資格は、公認不正検査士協会の会員にのみ与えられる特別な資格です。

公認不正検査士協会は、アメリカを拠点とする不正調査のエキスパートとして世界的に知られています。公認不正検査士は、協会が厳格な認定基準を設け、不正対策の専門性を高めた専門家に与える資格です。

資格取得の目的は、不正の動機や手段、正当化といった3つの要因に対する理解を深め、疑惑が生じた際に迅速に対処できるスキルを身につけることです。

公認不正検査士が組織内に存在すれば、企業は不正を未然に防ぐことができ、そのために経営者や監査法人から高い注目を集めることができます。

公認不正検査士協会は、2005年に日本で設立されました。会員数は約2,400人で、そのうち約1,700人が公認不正検査士の資格をほじしてる。

公認不正検査士の主な業務

公認不正検査士の主な業務には、以下のようなものがあります。

  • 記録から不正を検査する
  • 従業員による横領、汚職、利益相反、保険詐欺などを調査する
  • 組織のデータや取引記録、財務諸表を分析する
  • 文書や帳票から不正の兆候を見極める
  • 不正疑惑のある人物や証人と面談する
  • 報告書を作成する
  • 調査結果を報告する
  • 法廷で証言をする
  • 訴訟を支援する
  • バックグラウンドを調査する
  • 会計記録の復元をする

不正を防止するために、データや財務諸表の分析、証人面談などを実施します。また、面談や分析を行った結果を報告するための、報告書作成など幅広い業務を担う役割があります。

必要な知識

公認不正検査士に必要な知識は、会計知識、法律知識、犯罪心理学、調査手法の4つが挙げられます。これらの知識を正しく理解することは資格取得の鍵になるでしょう。

  1. 会計知識 財務分析の基本や監査の基本知識、応用力等が必要です。財務諸表等を分析し、隠ぺいや改ざんがないかを確認するために活かせます。
  2. 法律知識 不正検査を実施する上で、気を付けなくてはいけない法的要素の理解が必須です。法律知識がないままでは、不正を見抜くことはできません。
  3. 犯罪心理学 なぜ不正を犯すのか、その要因になる心理的根拠を知ることで、不正防止につなげられます。
  4. 調査手法 不正を発見した際、どのように調査をすれば正しく不正疑惑を解明できるか手法を知る必要があります。

公認不正検査士試験の難易度

公認不正検査士の合格率は非公開になっているため、正確な難易度はわかりません。

ただし、公認不正検査士協会の日本支部である一般社団法人日本公認不正検査士協会の個人会員数は2,419人(※1)であり、そのうち1689人が公認不正検査士の資格を保有しています。法人会員は、2021年時点で68社だと判明しているため、年々合格者が増えていることがわかるのではないでしょうか。

受験者の中には、公認会計士合格者や内部監査の経験がある方が多いです。ただし、公認不正検査士と同様の資格である内部統制評価指導士や内部監査人に比べると比較的難易度が低い資格だと言えるでしょう。理由は、他の資格に比べて受験資格が緩い点や受験しやすい点、さらに受験対策用のテキストなどが明確にされているため、勉強しやすいからです。

こういった状況から、公認不正検査士の資格難易度は、勉強をしっかりすれば取得できるレベルだと推測できます。

(※1)参考:一般社団法人日本公認不正検査士協会

公認不正検査士(Certified Fraud Examiner)のキャリア

公認不正検査士は、さまざまな職種やフィールドで活躍することができます。例えば、会計不正を見抜く会計士や不正取引を調査する捜査官、懲戒処分や訴訟対応をする弁護士など、様々なキャリアの選択が可能です。

以下では、公認不正検査士の主な職業について紹介します。これを参考にしてください。

①BIG4監査法人

BIG4監査法人には、以下の4つが含まれます。

  • - PwCあらた有限責任監査法人
  • - 有限責任 あずさ監査法人
  • - 有限責任監査法人トーマツ
  • - 新日本有限責任監査法人

もちろん、これ以外の中小や準大手の監査法人でも、不正・コンプライアンス関連の業務が行われています。ただし、専門の部署がありプロジェクトを安定して受注している法人は多くないため、公認不正検査士が必要とされる機会はBIG4と比べるとあまり多くないと考えておくべきです。

②BIG4監査法人系FAS

BIG4監査法人系FASには、以下のようなものが存在します。

  • PwCアドバイザリー合同会社
  • 株式会社KPMG FAS
  • デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
  • EY トランザクション・アドバイザリー・サービス株式会社

FASはFinancial Advisory Serviceの略で、これらの監査法人やその系列のFASでは、ガバナンス・リスク・コンプライアンス領域(GRC)やフォレンジック領域(不正調査)の業務が担当されます。

CRGは、「規制や法令への対応」や「不正の予防」など、その名の通り、ガバナンスやコンプライアンス、リスク管理を中心とした業務です。不正調査は、「不正調査」や「不正に関する係争対応」などのアドバイザリーが主な業務になります。

公認不正検査士(Certified Fraud Examner)の資格取得のステップ

ここまで読んできて、公認不正検査士について理解ができたでしょうか。最後は、公認不正検査士の資格を取得するための流れについて解説をします。

公認不正検査士の資格に興味を持った方は、資格取得の流れを理解し、試験に挑戦してみてください。

受験資格について

公認不正検査士の受験資格は以下の要件になっています。

  • 受験申請時点ならびに試験実施日時点で、個人会員または法人会員所属員であること
  • 受験申請時点で40点以上の資格点数 を有すること
  • 4年制の大学を卒業して学士の学位がある方(資格点数40点) は、受験資格あり
  • 不正対策関連の業務経験が8年以上ある方 (常勤経験年あたり5点×8年=40点) は、受験資格あり

資格・経験

資格点数

証明書類

短期大学士、準学士、または、同等の学位 (学士の学位で資格点数を加算する場合は使用不可) 注:日本国内の教育機関に限る。海外の教育機関は個別に確認が必要。

20点

英文の卒業証明書 (英文の学位授与証明書も可) (いずれも原本に限る) (学位授与証書・卒業証書は不可)

学士、または、同等の学位

40点

修士、または、同等の学位

+5点

英文の修了証明書 (英文の学位授与証明書も可) (いずれも原本に限る) (学位授与証書・修了証書は不可)

博士、または、同等の学位

+10点

参考:一般社団法人日本公認不正検査士協会

受験科目と試験内容について

試験内容は4つの分野で構成されています。それぞれの分野で合格点以上をクリアしなくては、公認不正検査士の資格合格はできません。

以下でそれぞれについて、解説するのでしっかり内容を理解し、合格を目指してください。

①財務取引と不正スキーム

一つ目は、.財務取引と不正スキームです。

以下の内容で構成されています。

  1. 会計
  2. 財務分析の基本
  3. 監査基準の概要
  4. 各種不正スキームに関する知識など

4択もしくは2択問題で構成されています。出題数は2時間の試験時間で125問です。

75%以上の正答率、94問以上の正解で合格となります。

②法律

二つ目は、法律についてです。

以下の内容で構成されています。

  1. 法制度の概要
  2. 不正に関する法律
  3. 調査における個人の権利
  4. 訴訟手続き
  5. 雇用・IT関連法など

財務取引と不正スキーム同様で、4択もしくは2択問題で構成されています。出題数は2時間の試験時間で125問です。

75%以上の正答率、94問以上の正解で合格できます。

③不正調査

三つ目は、.不正調査についてです。

以下の内容で構成されています。

  1. 書類証拠の取り扱い
  2. 面接調査
  3. 情報源の活用
  4. 不正取引の追跡調査
  5. 調査報告書作成のポイントなど

こちらも、財務取引と不正スキーム同様で、4択もしくは2択問題で構成されています。出題数は2時間の試験時間で125問です。

75%以上の正答率、94問以上の正解で合格となります。

④不正の防止と抑止

四つ目は、不正の防止と抑止についてです。

以下の内容で構成されています。

  1. 人間行動の理解
  2. 犯罪原因論
  3. ホワイトカラー犯罪
  4. 職業上の不正
  5. 不正防止プログラム
  6. 不正検査士の倫理など

こちらも、財務取引と不正スキーム同様で、4択もしくは2択問題で構成されています。出題数は2時間の試験時間で125問です。

75%以上の正答率、94問以上の正解で合格となります。

受験方法について

公認不正検査士を受験するには、期日内までに願書の申し込みが必須です。

【願書申込期間】

▼会場受検

  1. 3月上旬~4月上旬頃まで
  2. 9月上旬~10月中旬頃まで

▼CBT
・随時

【試験日程】

▼会場受検

  1. 6月中旬頃の2日間
  2. 12月上旬頃の2日間(年2回)

▼CBT
・随時

受験料について

初回のみ、4科目分の受験料支払いは一括が条件とされています。

  • 個別で受験される場合(初回受験)
    公認不正検査士の資格試験を受験するには公認不正検査士協会の会員になる必要があります。事前に入会手続きをしてから申し込み用にしてください。

  • 公認不正検査士協会にすでに入会済みの受験者(初回の受験)
    個人会員:27,500円(受験登録料:5,500円(税別) + 科目受験料:5,500 円(税別) × 4科目)
    法人会員:22,000円(受験登録料:免除 + 科目受験料:5,500 円(税別) × 4科目)
    ※法人会員特典として、受験登録料は免除されます。

  • 2回目以降の受験の方
    5,500円(各受験科目ごと)
    受験2回目、3回目の方は、受験科目分の受験料のみの支払いが可能です。1科目5,500円のため、必要な科目のみ支払うようにしましょう。

公認不正検査士(CFE)に認定について

公認不正検査士の認定を受けるには、試験合格以外にも手続きが必要です。

  1. CFE 資格試験に合格する
  2. 法人会員所属員の方 または 会員期限切れの場合
  3. 日本公認不正検査士協会マイページより入会手続きをする
    日本公認不正検査士協会マイページより公認不正検査士の資格認定申請を行う
  4. 必要書類 ( 資格点数 50 点を証明する書類 + 推薦状 (3 通) + 顔写真 ) を日本公認不正検査士協会に送付

書類郵送後は、日本公認不正検査士協会から本部の認定委員会へ申請され、委員会の審査を経て公認不正検査士の資格が認定されます。資格が認定されるまでには、本部での審査を含めて、書類提出から 2〜3 か月かかる場合があるので、急ぎの方は余裕をもって受験するようにしましょう。

参考:一般社団法人日本公認不正検査士協会

キャリアアップのために公認不正検査士資格取得をめざそう

公認不正検査士は、不正や隠ぺいを防止するための知識があることを証明する国際的な資格です。企業経営において、不正や不祥事はあってはならない事態であり、これを未然に防ぐ公認不正検査士の需要はますます高くなっています。試験の合格率は公開されていませんが、年々合格者が増えているのは間違いないでしょう。

試験内容である4つの分野をしっかり勉強すれば、必ず合格できます。今回の記事で、公認不正検査士に興味を持った方は、積極的に試験に挑戦してみましょう。

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