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2024/03/31 更新

公認会計士試験の合格率はどのくらい?30代の転職へのメリットも解説

公認会計士の資格は、就職・転職・独立開業のいずれにも役立つビジネス系の国家資格です。近年は人材不足で、受験者も増えています。しかし、公認会計士の資格試験は非常に難易度が高く、何年かかけて受験勉強しないと合格できません。

この記事では、公認会計士の資格取得方法や仕事について、30代で転職のために資格取得を目指す方に向けて解説します。合格率のほか、資格試験の概要・資格を取るメリットも紹介するので、ぜひ参考にしてください。

公認会計士とは

公認会計士は企業や会社の監査・会計のスペシャリストです。主な勤務先は監査法人や会計事務所ですが、一般企業の経営企画など経営戦略の仕事や、高度な事務系の仕事に転職するのにも有利に働きます。公認会計士の主な業務は、以下に挙げるようなものです。

  • 監査業務(企業の財務諸表をチェックし、適正であると証明する)
  • 税務業務(税についての相談・税務署類の作成など)
  • MS業務(公認会計士の知識と経験を生かした企業のコンサルティング業務)
  • 税務・会計・経理のサポート業務(会計帳簿・税務に関する書類作成の代行など)

監査業務・税務業務・MS業務は公認会計士の独占業務と呼ばれ、公認会計士の資格がある方でないとできません。また、公認会計士は税理士会に申請書類を提出し、面接と研修を受けて登録を認められると税理士の業務も担えるようになります。税務・会計・経理に関する業務を請け負いたい方は積極的に登録しましょう。

公認会計士試験とは

公認会計士の試験は、短答式と論文式の2つで構成されています。難易度は、弁護士・不動産鑑定士・医師・税理士などと並ぶ高さです。以下に、公認会計士試験の特徴と形式について解説します。

公認会計士は3大国家資格の一つ

公認会計士資格は、弁護士資格・不動産鑑定士資格と並んで3大国家資格と呼ばれている資格です。国家資格の中でも最難関の部類に入り、試験に合格して公認会計士資格を取得する方は、毎年およそ10人に1人しかいません。

また、公認会計士試験の合格後には実務試験があります。実務試験は監査法人で働きながら週1~2日程度一般財団法人会計教育研修機構が運営する実務補習所に3年間通い、修了考査を受けなければなりません。

修了考査は年1回しか実施されませんが、合格率は60%以上あるうえ何度も受けられるので、諦めずに受けましょう。また、公認会計士として正式に認定を受けて仕事をするためには、修了考査に合格後、公認会計士名簿への登録が必要です。

公認会計士試験の形式

公認会計士試験は年齢・性別・学歴・国籍を問わず、誰でも受験できます。試験は短答式試験と論文式試験の2段階で、短答式試験は4科目で年2回、論文式試験は5科目で年1回実施されています。論文式試験は短答式試験に合格しないと受験できません。

もし、短答式試験に全科目合格した・論文試験の一部科目だけ合格した場合は、受験後2年間は合格した科目の受験を免除してもらえる制度があるので、積極的に利用しましょう。また、以下のような資格や学歴を有する方も試験科目免除の対象です。

試験の種類

一部科目免除対象者

全科目免除対象者

短答式試験

  • 税理士資格保有者
  • 税理士試験の簿記論と財務諸表論の科目合格者か免除者
  • 会計専門職大学院で特定の科目を修得し、修士の学位を取得した者
  • 上場会社、国・地方公共団体等で会計か監査関連業務経験が7年以上ある者
  • 商学か法律学の教授か准教授を3年以上している者
  • 商学か法律学の博士号取得者
  • 高等試験(司法科・行政科)合格者
  • 司法試験、旧司法試験第2次試験の合格者

論文式試験

  • 商学か法律学の教授か准教授を3年以上している者
  • 商学か法律学の博士号取得者
  • 高等試験の本試験合格者
  • 司法試験、旧司法試験第2次試験の合格者
  • 税理士資格保有者
  • 企業会計や監査に関して一定以上の能力を認定されている者

なし

公認会計士試験の合格率

公認会計士試験は、短答式試験も論文式試験も合格率が低いのが特徴です。受験者は20代が最も多く、年齢が上がるほど少なくなるので、合格者も若年者ほど多い傾向があります。

令和5年度の公認会計士試験合格率は以下に解説するとおりです。

令和5年・公認会計士試験の短答式試験(1次試験)合格率

令和5年公認会計士短答式試験の1次試験は、11,401人が受験し1,182人が合格(※1)、2次試験は12,518人(一部免除者を含む)が受験し合格は921人でした(※2)。合格率は1次試験が10.3%、2次試験が7.3%です

(※1)参考:金融庁「試験結果の概要 (令和5年公認会計士試験第Ⅰ回短答式試験)」

(※2)参考:金融庁「試験結果の概要 (令和5年公認会計士試験第Ⅱ回短答式試験)」

令和5年・公認会計士試験の論文式試験(2次試験)合格率

公認会計士試験の論文式試験は年1回だけ実施され、短答式試験に合格した方だけ受験できます。令和5年度の論文試験受験者は4,192名で、合格者は1,544名でした。合格率は36.8%です。公認会計士論文式試験の合格率は長年、35%前後と高い水準で推移しています(※3)。論文式試験は、短答式試験より通過しやすい傾向があるのが特徴です。

(※3)参考:金融庁「令和5年公認会計士試験合格者調」

令和5年・公認会計士試験の最終的な合格率

公認会計士の最終合格率は、論文式試験合格者数を願書提出者数で割ると計算できます。令和5年の公認会計士試験最終合格率は7.6%でした(※4)。令和4年の最終合格率は7.7%(※4)でしたので少し減ったように見えますが、論文試験合格者数は令和4年が1,456人(※4)、令和5年が1,544人(※4)なので、合格者数は増加しています。

また、願書提出者には試験欠席者も含まれているため、実質的な合格率はこれよりも数ポイント程度高いと考えられます。

(※4)参考:金融庁「令和5年公認会計士試験合格者調」

過去5年間の短答式試験(1次試験)合格率

令和元年~令和5年の5年間、公認会計士試験の短答式試験(1次試験)受験者は年々増加しています。短答式試験の合格率の推移は以下のとおりです(※5)。

試験実施年

第Ⅰ回受験者数

第Ⅰ回合格率

第Ⅱ回受験者数

第Ⅱ回合格率

令和元年

6,610人

16.6%

5,604人

12.7%

令和2年

7,245人

15.7%

5,616人

12.90%

令和3年

9,524人

21.60%

※新型コロナウイルスのため中止

令和4年

9,949人

12.0%

9,870人

7.9%

令和5年

11,401人

10.3%

13,794人

8.8%

(※5)参考:求人・転職MS Agent「【令和5年公認会計士試験】論文式試験の合格発表速報!結果発表後の流れもご紹介」

ここ5年間の短答式試験(1次試験)合格率は、第Ⅰ回試験よりも第Ⅱ回試験のほうが合格率は低い傾向が見られます。第Ⅰ回試験の合格率は令和3年までは16%~21.6%と高い確率で推移していましたが、令和4年と令和5年は10%台まで下がりました。第Ⅱ回試験の合格率は、年によってばらつきが見られるのが特徴です。短答式試験全体の合格率を見ると、令和に入ってからの5年間は10%〜20%で推移しているのがわかります。

過去5年間の論文式試験(2次試験)合格率

公認会計士試験では、短答式試験より論文試験のほうが合格率が高いのが特徴です。令和元年~令和5年の論文試験受験者数と合格率を表にします(※6)。

試験実施年

受験者数

合格率

令和元年

3,792人

35.3%

令和2年

3,719人

35.9%

令和3年

3,992人

34.1%

令和4年

4,067人

35.8%

令和5年

4,192人

36.8%

(※6)参考:金融庁「令和5年公認会計士試験合格者調」

短答式試験同様、ここ5年間、論文式試験の受験者も増加傾向です。しかし、論文式試験の合格率は毎年34%〜36%の間で安定しています。

分類別で見る公認会計士試験合格率

公認会計士試験の合格率を年代・職業・学歴などの要素で分析すると、それぞれに特徴的な傾向があるのがわかります。要素ごとに解説するので、参考にしてください。

年代別合格率

公認会計士資格試験は、短答式も論文式も、若い方ほど合格率が高いのが特徴です。この下に、金融庁が令和5年に発表した20歳未満~65歳以上までの最終合格率を表にします。(※7)。

年代

受験者数

合格率

20歳未満

36人

63.9%

20歳以上25歳未満

1980人

49.3%

25歳以上30歳未満

1059人

33.6%

30歳以上35歳未満

456人

26.8%

35歳以上40歳未満

270人

14.1%

40歳以上45歳未満

159人

12.6%

45歳以上50歳未満

88人

5.7%

50歳以上55歳未満

63人

3.2%

55歳以上60歳未満

33人

0%

60歳以上65歳未満

25人

4%

65歳以上

23人

0%

(※7)参考:金融庁「令和5年公認会計士試験合格者調」

公認会計士試験は、大学生を含む20歳以上25歳未満の受験者が最も多いのが特徴です。令和5年は10代の合格率が最も高くなっていますが、例年は20代が最も合格率も高くなります。

職業別合格率

公認会計士試験の合格率を職業別にみると、最も高いのは現役大学生です。次に多いのは現役大学院となっています。しかし、近年は無職の方が合格するケースが増え、令和5年の最終合格率は31.6%に達しました(※8)。

(※8)参考:金融庁「令和5年公認会計士試験合格者調」

社会人で働きながら合格した方の職業は、会社員や公務員のほか、会計事務所員など普段から会計や税務の仕事にかかわっている方が多いのが特徴です。

学歴別合格率

公認会計士になる方は高学歴で、最終学歴は大学卒・大学院修士課程卒のどちらかの方がほとんどです。出身大学は慶応義塾大学と早稲田大学が圧倒的に多くなっています(※9)。

(※9)参考:資格Times「公認会計士試験に強い大学は?学歴・学部との関係から難易度まで徹底解説!」

公認会計士試験は法律や会計に関する幅広い知識が求められるので、合格に有利な学部はありません。しかし、慶応義塾大学や早稲田大学を始め、公認会計士試験に向けた学習支援を手厚く行っている大学はあります。将来、公認会計士を目指す高校生は一度調べてみましょう。

会計士試験の合格率が低い理由

公認会計士試験の合格率が低いのは、試験内容が難しいだけではありません。よく挙げられる3点について解説するので参考にしてください。

①学習量の多さ

公認会計士試験は、短答式試験が4科目、論文式試験が6科目あるうえに。出題範囲も幅広く、満遍なく試験対策するのは困難と感じる方が多いのも事実です。

また、公認会計士試験は短答式・論文式ともに総点数が合格点を超えている・全科の得点が満点の40%以上、の2点を満たさないと不合格です。合格ラインは短答式が500点満点で350点前後、論文式が700点満点で420点前後と考えてください(※10)。

(※10)参考:史彩監査法人「公認会計士試験の合格率は低い?難しい理由や取得のメリットを解説」

②専門性の高い知識が必要

公認会計士試験は短答式試験も論文式試験も、大学レベルの専門的な知識を問う問題しか出題されません。マークシート式の短答式試験でも丸暗記ではとても対応できないので、単語の一つひとつから丁寧に勉強しましょう。とくに、論文式試験では、実務での対処法や対処の手順の記述・計算問題など実務で求められる知識の有無を問われるのが特徴です。

公認会計士試験の出題範囲は、毎年6月に金融庁の「公認会計士・監査審査会」サイトで公表されます(※11)。また、出題範囲は時々変更されるので、受験する年には必ず確認するようにしてください。

(※11)参考:公認会計士・監査審査会「令和5年試験について」

③短答式試験に科目合格制度がない

公認会計士試験では、論文式試験にのみ税理士試験の科目合格制度のような一部科目免除制度が設けられています。合格発表日より2年を経過するまでは不合格だった科目の受験だけになるので、論文式試験を再受験をする方は願書提出時に忘れず申請しましょう。

一方、短答式試験には一部科目免除制度がありません。1科目でも不合格になったら、次回受験する時も全科目受験する必要があります。逆に、短答式試験全科目に合格できれば、合格発表日より2年を経過するまで短答式試験が免除され、論文式試験のみで受験可能です。

公認会計士試験はどのくらい難しいのか

公認会計士試験の難易度は税理士より難しく、司法試験・司法書士試験より易しいのが特徴です。この記事では公認会計士試験と税理士・司法試験を比較して実際の難易度を比べます。

合格に必要な勉強時間

個人差がありますが、公認会計士試験に合格するには3,000時間程度の勉強時間が必要とされています。3,000時間の勉強時間を1年で満たすとなると、1日当たり8時間以上の勉強時間が必要です。勉強に専念できる環境を作るのが理想ですが、ほとんどの方は学業や仕事があるので、年単位で学習計画を立てています。

公認会計士試験に合格した方が試験勉強にかけていた年数は、2~4年程度が平均です(※12)。専門的な問題ばかりが広範囲に出題される試験なので、効率のよい学習計画を立てて実行しましょう。自分で勉強したり学習計画を立てたりするのが難しい方は、資格試験のスクールに通うのがオススメです。

(※12)参考:公認会計士資格スクールCPA「公認会計士試験の勉強時間は?実際合格まで何年かかる?」

税理士試験と比較

税理士試験は、必須科目2科目・選択科目7科目で構成されています。選択科目は3科目受ける必要がありますが、所得税法か法人税法のどちらか1科目が必須で、あとの2科目は自由選択です。

税理士試験は1科目から受験可能で、科目合格制度もあります。科目合格制度は、一度合格した科目はその後ずっと免除になるのが特徴です。「税理士試験は公認会計士より難易度が低い。」と言われる理由には、科目合格制度の存在が挙げられます。

しかし、税理士試験合格に必要な勉強時間の目安は2,500時間~3,000時間程度、準備年数は5年程度(※13)必要なので、難易度としては公認会計士と大差ありません。

(※13)参考:グッドスクール「税理士は独学で試験合格できる?無理?テキストや勉強時間なども解説」

司法試験と比較

司法試験は、日本で最難関と呼ばれるほど難しい資格試験で有名です。試験は毎年1回、4日間の日程で行われます。公認会計士試験と異なり、受験資格も以下のように厳しく設定されているのが特徴です(※14)。

  • 法科大学院修士課程の修了者
  • 司法試験予備試験の合格者
  • 法科大学院課程在学中で法第4条第2項第1号に規定する学長の認定を受けている者

(※14)参考:法務省「令和5年司法試験受験案内」

司法試験は出題範囲が非常に広い・受験生のほとんどが難関と呼ばれる大学や大学院の卒業生である・受験回数に制限があるなどの点からも、公認会計士より難易度が高いのが事実です。また、司法試験合格に必要な勉強時間は3,000時間~10,000時間と考えてください(※15)。

(※15)参考:アガルートアカデミー「司法試験合格に必要な勉強時間と配分を徹底解説!弁護士になるのに何年かかる?」

公認会計士になるメリット

公認会計士になると、さまざまなメリットがあります。この記事では、収入・活躍の場・就業の3点を取り上げて解説するので参考にしてください。

安定した高収入を得られる

公認会計士は、収入が安定していて高額なのが1つのメリットです。厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査によると、平均年収は746.6万円でした(※16)。公認会計士の年収が高い理由としては、仕事の専門性が高い・仕事の需要が多く安定している・景気に左右されにくいの3点が挙げられます。

(※16)参考:厚生労働省「jobtag」

公認会計士はスキルを磨いたり、働き方を工夫したりすると1,000万円~3,000万円もの高収入にも手が届くようになります。しかし、公認会計士の年収は、男性より女性のほうが低いのが事実です。女性は家庭・出産・子育てに合わせて、一時的でも契約社員・パート・アルバイトなどの雇用形態を選ぶケースが多いからではないかと考えられます。

活躍のフィールドが広い

公認会計士は、働く場所もキャリアの幅も広いのが特徴です。90%の方は監査法人か会計事務所に就職していますが、税理士法人・コンサルティング会社・一般企業・公共団体・教育機関などに就職する方もいます。経験を積めば将来的に独立開業も可能なのが魅力です。

公認会計士は会計・監査・税務・コンサルタントなど従来の業務ばかりでなく、スタートアップ企業のサポートなどさまざまな業務に関われます。公認会計士資格が転職に有利といわれるのは、キャリアの幅が広いのも1つの理由です。

需要が高く就職・転職にも有利

財務会計に関して専門的な知識を持つ公認会計士は、企業にとって欠かせない存在です。企業などお金が動くところがある限り仕事はなくならないので、仕事にありつけない自体に陥る可能性はほとんどありません。とくに、近年は公認会計士も人手不足で、会計事務所でも採用に苦労しているところが多くなってきています。

公認会計士の有資格者は就職・転職のどちらにも有利で、始めからある程度高水準の年収を期待できるのもメリットです。

30代からでも公認会計士の資格取得して活躍する道はある

公認会計士は仕事の幅が広く、需要も安定している資格です。30代の方でも転職して活躍できる場はあります。公認会計士試験は非常に難関で合格には相当な努力が必要なので、なるべく若いうちに意思を固めて勉強に取り組んでください。

30代の方が公認会計士の資格を持って転職する場合は、資格よりこれまでのキャリア・スキル・実務経験が問われるのが事実です。転職するまでに財務や経理などの仕事を経験しておくと、転職活動で有利に働くでしょう。

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株式会社WARC

WARCエージェントマガジン編集部

「人材紹介の『負』の解消を目指す、新しい転職エージェント」をビジョンに、ハイクラス人材紹介事業を展開しているWARC AGENT。WARCエージェントマガジン編集部は、このビジョンを支えるために、転職者に役立つ情報を執筆し、個々のキャリア形成をサポートしていきます。