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2024/09/11 更新

税理士試験の難易度・受験資格|仕事と両立して合格するためのポイントを紹介!

税理士試験は、非常に難しい国家試験の1つですが、仕事をしながら勉強したり、独学で合格する人もいます。

この記事では、税理士になりたい人に向けて、試験の日程や科目などの概要を紹介しつつ、仕事をしながら税理士試験に合格する方法について紹介しています。税理士職に向いている人の特徴や、税理士の求人を探す際のヒントについても触れているので、参考にしてください。

税理士試験について

税理士試験は、税理士になるために必須の国家試験です。この試験は、税理士に必要な知識と応用能力を評価するもので、その難易度は高いとされています。

税務に関わる業務に携わることができる唯一の資格は、法律で認められている税理士だけです。税理士は税理士法により、税務代理、税務書類の作成、税務相談などの独占業務を行うことができます。

税理士資格は一度取得すれば、一生有効であり、更新手続きなどは必要ありません。

参考:国税庁「税理士試験」

税理士試験の日程

税理士試験は、毎年8月に1回実施されます。

受験場所は、国税庁が発表する「税理士試験受験案内」に記載されている都道府県のいずれかです。2022年度には、北海道、宮城県、埼玉県、東京都、石川県、愛知県、大阪府、広島県、香川県、福島県、熊本県、沖縄県、さらに群馬県、神奈川県、京都府でも試験が実施されることが発表されました。具体的な試験会場は受験票に記載されており、自分で選ぶことはできません。

税理士試験の申し込みは、各国税局または沖縄国税事務所から配布される申込用紙を使用して4月半ば〜5月半ばごろに行います。受付期間は約10日間しかないため注意しましょう。書類を送付するか、国税電子申告・納税システム(e-Tax)​​で申し込むことができます。

税理士試験の受験資格

税理士試験の受験資格は、以下の条件のうち、どれか1つを満たす必要があります。

学識に関する受験資格

  • 大学・短大または高等専門学校を卒業していて、社会科学の科目を1科目以上履修していること
  • 大学3年生以上で社会科学の科目(※)を1科目以上含む62単位以上を取得していること
  • 一定の専修学校の専門課程を修了した者で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者
  • 司法試験合格者
  • 公認会計士試験の短答式試験に合格した者

(※)令和5年4月1日以降、科目の範囲が緩和され、税理士試験の受験資格が拡大しました。以前は「法律学に関する科目」または「経済学に関する科目」に制限されていましたが、社会科学に変更されたことで、受験資格が緩和されました。

資格に関する受験資格

  •   日商簿記検定1級に合格している
  •   全経簿記検定上級に合格している

職歴に関する受験資格

  •   法人または個人事務にて会計に関する事務に2年以上従事している
  •   銀行、信託会社、保険会社等において、資金の貸付け・運用に関する事務に2年以上従事している
  •   税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助事務に2年以上従事している

これまでは、高校生や大学1〜2年生が税理士試験を受験するためには、日商簿記1級などの合格が必要でした。しかし、2023年度からはこれが廃止され、高校生以上であれば誰でも「簿記論」と「財務諸表論」の試験を受けることができるように改訂されています。ただし、税法3科目についてはほかの条件を満たした上での受験が必要です。

税理士試験の試験科目

税理士試験には、以下の5科目があります。

税理士試験の必修2科目

  • 簿記論
  • 財務諸表論

税理士試験の選択3科目

  • 住民税
  • 事業税
  • 酒税法
  • 相続税法
  • 消費税法
  • 所得税法
  • 法人税法
  • 国税徴収法
  • 固定資産税

「簿記論」「財務諸表論」は、どちらも合格する必要がある必修科目です。選択科目については、9科目のうち3科目を選択して受験することが可能ですが、「所得税法」または「法人税法」のいずれかを1科目を必ず選択する必要があります。

税理士試験を受験する際、5科目を一度に受験する必要はありません。各科目の合格ラインは、すべて60%と決められています。

税理士試験の難易度

税理士試験の難易度は、難しいと言われるものの具体的にイメージしにくいと感じる人もいるかもしれません。以下の表を参考に、税理士試験の合格率からその難易度を判定してみましょう。

税理士試験の合格率

実施年

合格率

2019年

18.1%

2020年

20.3%

2021年

18.8%

年度によってバラつきはありますが、税理士試験の合格率は最低でも15%前後から最高でも20%前後です。

税理士試験は5科目で、必修の2科目に加えて、選択式の3科目に合格しなければなりません。選択科目ごとの合格率はそれぞれ13%前後であり、いずれにしても税理士試験は難易度が高いことがわかります。

ほかの試験との比較

税理士試験の難しさを理解するために、一般的に税理士試験と比較される公認会計士試験や簿記検定1級試験の難易度を考えてみましょう。以下の表を参照してください。

試験名

2019年

2020年

2021年

税理士

18.1%

20.3%

18.8%

公認会計士(短答式1回)

16.6%

15.7%

12.1%

公認会計士(短答式2回)

12.7%

12.9%

7.9%

公認会計士(論文式)

35.3%

35.9%

34.1%

簿記検定1級

9.8%

13.5%

10.2%

簿記検定1級については、年2回の試験のうち2020年6月の試験が中止されたため、11月試験の合格率を参考にしています。

こうして比較してみると、税理士試験の合格率は必ずしも低くないことがわかります。ただし、税理士試験の合格には通常約3,000時間の勉強が必要といわれており、時間をかけて勉強した結果としての合格率も考慮すべきです。

各科目の合格率

税理士試験には、必修2科目と、選択式の9科目、合計11科目があります。それぞれの科目ごとの合格率をチェックしてみましょう。

科目名

2019年

2020年

2021年

簿記論

17.4%

22.6%

16.5%

財務諸表論

18.9%

19.0%

23.9%

所得税法

12.8%

12.0%

12.6%

法人税法

14.7%

16.1%

12.8%

相続税法

11.7%

10.6%

12.8%

消費税法

11.9%

12.5%

11.9%

酒税法

12.4%

13.9%

12.6%

国税徴収法

12.7%

12.2%

13.7%

住民税

19.0%

18.1%

12.7%

事業税

14.8%

13.1%

12.6%

固定資産税

13.7%

13.5%

13.8%

必修科目である簿記論と財務諸表論については、年度によって前後するものの、ほかの科目と比較して合格率が20%前後と、高い水準とみることができます。

一方、選択科目はいずれも12%〜13%の範囲で、どの科目を選んでも簡単ということはありません。自分の得意分野をよく考えて受験すると良いでしょう。

税理士の業務内容

税理士の業務内容には、以下のようなものがあります。

税理士の業務内容

  • 税金に関する申告、申請
  • 税務書類の作成
  • 税務相談
  • 決算業務
  • 試算表の作成
  • 会計の指導や相談

税金に関連する仕事は、税理士法によって定められた税理士の独占業務です。そのほかにも、決算や会計の指導、相談など、会計関連の業務があります。会計業務は、公認会計士が不在の場合などに依頼されることがありますが、公認会計士とは異なり、監査業務は行いません。監査は公認会計士の独占業務です。

また税理士でも、社会保険労務士の資格を持っていない場合、労働衛生に関連する業務は行えません。一方、年末調整に関わる業務は税理士の仕事であり、社労士が行うことはできません。

税理士の働き方

税理士の働き方は、大きく分けると以下の3つです。

税理士の働き方

  • 税理士法人:税理士が集まって法人化した事務所で勤務税理士として働く
  • 企業内税理士:企業に所属し、企業内で税務関連の業務を担当する
  • 独立:自営業の税理士として、独自の税理士事務所を運営する

税理士は、税理士試験に合格してもすぐに「税理士」として活動できるわけではありません。税理士としての登録には、2年間の実務経験が必要であり、その後に日本税理士会連合会に登録することができます。

税理士として、税理士法人や一般企業で経験を積んだ後に、独立開業やフリーランスの税理士として働くという選択肢もあります。

税理士試験に仕事をしながら合格する方法

これまで見てきたとおり、税理士試験は難易度が高い試験ですが、仕事をしながら合格を目指すことは可能です。実際、2021年の試験結果を見ても、受験者と合格者の約7割以上が26歳以上で占められています。

税理士試験に仕事をしながら合格するためには、以下の方法があります。

仕事をしながら税理士試験合格を目指す方法

  • 科目合格制度を利用する
  • 仕事をしながら勉強できる環境を整える

上記の方法について詳しく紹介します。

参考:国税庁「令和3年度(第71回)税理士試験結果」

科目合格制度を利用する

科目合格制度は、科目ごとに合格を認定する制度です。税理士試験では、合格が必要な5科目を1つずつ受験し、合格を目指すことができます。

この方法を選ぶと、1年ごとに1科目ずつ合格できれば、5年で税理士資格を取得できます。一度に合格するのは難しい試験ですが、時間をかけて少しずつ前に進めば、着実に資格取得へ近づいていけます。

仕事をしながら勉強できる環境を整える

仕事をしながら勉強できる環境は人それぞれ違います。たとえば、昼間は今の職場で仕事をこなし、仕事帰りにカフェや静かな場所で過去問や参考書を活用し、独学で学び続ける人もいます。一方で、以下のような方法で効率的に勉強をする人も多いでしょう。

  • サポートありの税理士事務所で働く
  • 資格スクールに通う

税理士事務所のなかには、まだ税理士試験に合格していない人をアシスタントとして雇用し、試験合格までのサポートをしてくれるところがあります。試験前の休暇、自習室を確保、勤務時間を専門学校へ通学する時間帯を避けるなどの配慮が含まれます。合格後には、その事務所で税理士として働くこともできるため、試験に安心して臨むことができるでしょう。

一方、資格スクールは合格までのサポートをしてもらえますが、費用がかかる上、自分のペースで学習するのが難しい場合や、仕事との両立が難しい場合もあります。

税理士に向いている人の特徴

税理士には、以下のような性格やスキルのある人が向いています。

  • 慎重に作業が進められる人
  • コツコツと作業ができる人
  • コミュニケーションスキルが高い人
  • 企業の経営に興味を持っている人

税理士の仕事は税金に関連する業務を担うため、ミスの許されない慎重な作業が必要です。業務内容は主に裏方で目立つことは少ないですが、着実に仕事を積み重ねることが求められ、コツコツと地道な作業が苦にならない人にこそ向いているといえるでしょう。

受験資格緩和で広がる税理士試験の可能性

また、税理士は経営者とのコミュニケーションやチームとの情報共有、サポートが必要な場面もあります。企業の経営や税金対策に興味を持ち、適切なコミュニケーションも取らなければなりません。

税理士試験は難易度の高い国家資格でありながら、最近では受験資格が緩和されています。そのため、興味がある人にはチャレンジしていただきたい試験です。また、仕事をしながら税理士試験に合格する方法もあるため、検討してみることをおすすめします。

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