社会のIT化が進む現在では、企業においてもITシステムはなくてはならないものになっています。ITシステムを運用管理できる人材は広く求められており、そのための知識やスキルを保有していることを認定する資格が「ITILファンデーション」です。
この記事では、ITILファンデーション試験の概要や受験方法、難易度、取得するメリットなどを解説しています。ITILファンデーションは世界に通用するIT資格ですので、取得してキャリアアップや転職に役立てましょう。
ITILファンデーションとは、システムの運用管理に関する資格であり、イギリスの政府機関が認定する世界共通の資格です。取得すると、ITサービスマネジメントやITILに関する知識を保有していることが客観的に証明されます。
ITサービスマネジメントとは、利用者が問題なく快適にITサービスを利用できるよう、利用者目線に立って継続的に改善していく活動全般を指します。ITIL(Information Technology Infrastructure Library、アイティル)は、イギリスの政府機関がまとめたITサービスマネジメントの成功事例集で、ITサービスの考え方を整理したものです。
多くの企業ではIT部門や情報システム部門といった部署で、会社が利用するITサービスの維持管理を行っており、マネジメントにはITILの知識が活かされています。
ITIL資格は5つのグレードに分類されており、ファンデーションは最も低いグレードになります。全体的な構造や活動の概要を問う基礎的なレベルであり、誰でも受験可能です。ファンデーション資格を取得すると上位グレードが受験可能になります。
ITILファンデーションは、これまでに行われていた「ITIL V3」と、2019年から試験が開始された新バージョンの「ITIL 4」の2種類の受験が可能でした。2023年7月31日をもってITIL V3試験は終了となりましたので、これから受験する場合はITIL 4のみとなります。
エンジニア目線の実務的な内容だったバージョン3に対し、バージョン4ではより事業戦略のような上流視点にも踏み込んだ内容になりました。日本ではITIL V3が最も普及しており、今後も取得したバージョン3の認定資格は有効です。
ファンデーション資格取得後は上位グレードにも挑戦し、ランクアップを目指しましょう。
ITIL試験はCBT方式(コンピュータを利用した試験)で行われます。国家資格のように試験日は設定されておらず、自分のスケジュールに合わせて試験日やテストセンターを決めることができます。
試験時間は60分で、多項選択式(四肢択一)で40問出題され、合格するには65%(26問)以上の正解が必要です。公式書籍の持ち込みは不可で、合格発表は試験後すぐに行われます。
ITIL資格には以前は有効期限がありませんでしたが、2023年1月より更新制になりました。対象資格は3年の有効期限内に、更新のための研修受講と受験が必要です。
ただし、ITIL V3は対象外ですので、すでに資格を保持している場合は今後も更新は不要です。ITIL 4で上位グレード取得を目指している場合は、期限内の上位資格受験もしくは更新が必要になります。
ITILファンデーション取得後、上位グレードを取得する計画が無い場合は、ITIL V3、ITIL 4とも更新は必要なく、資格は有効のままです。
ITILファンデーションの受験料は以下の通りになっています。日本の国家資格・公的資格などと比べ受験料が高額な点は、デメリットといえるでしょう。ただし、受験料が安くなる方法もありますので一緒にご紹介します。
ITILファンデーションV3はプロメトリック社とピアソンVUE社で受験の申し込みができます。プロメトリック社で受験する場合の受験料は57,431円(税込み)、ピアソンVUE社で受験する場合は43,890円です。
どちらもバウチャーチケットの受験チケットが利用可能です。「バウチャーチケット購入センター」で受験チケットを購入すると、20%前後の割引価格で購入することができますので、お得に受験したいという人はぜひ活用してみてください。
ITILファンデーションV4はプロメトリック社で受験が可能で、受験料は67,793円(税込み)になっています。
こちらもバウチャーチケットが利用可能です。「バウチャーチケット購入センター」で受験チケットを購入すると、20%前後の割引価格で購入することができます。公式電子書籍付きの割安チケットもありますので、上手に活用してみてください。
ITILファンデーションの難易度や合格率についても見ていきましょう。
ITILファンデーションはITIL資格の中でも最もグレードの低い、入門者向けの資格です。難易度は、IT資格の難易度を分類した「ITスキル標準」では一番下のレベル1と低く、ITパスポートと同じレベルになっています。
ITサービス分野には他に情報技術者試験の「サービスマネージャー」資格がありますが、こちらは高度情報処理技術者資格であるため非常に難関です。そのため公的な資格でありながら取得が比較的容易なITILファンデーションが人気となっています。
ITILファンデーション合格の目安となる学習時間は20時間程度と言われています。出題範囲はあらかじめ決まっており、参考書や過去問などの受験対策本を使ったり、Webサイトの利用などで独学でも合格が可能です。独学の場合、試験対策期間は2週間から1ヶ月程度みるとよいでしょう。
ITILで使われる用語に慣れ、「なぜそうするのか?」という本質に関わることを理解して、合格を目指しましょう。独学が難しい場合には、ITILを運営するPeople Certにて公式な研修を受けることも可能です。
ITILファンデーション試験の合格率は公表されていませんが、約50%程度と言われています。日本語で受験できることもあり人気の資格となっていて、日本人の合格者は累計17万人を超えています。
ITILファンデーション試験を受験するには、「プロメトリック社」と「ピアソンVUE社」のサイトで申し込みが可能です。プロメトリック社ではITIL V3、ITIL 4ともに受験できますが、ピアソンVUE社ではITIL V3のみ申し込みできます。
試験日は決まっておらず、いつでも申し込むことができますが、予約できる期日が決まっていたり、変更・キャンセルの場合は手数料が発生することも考慮しましょう。
プロメトリック社を利用する場合、申し込みの手順は以下のとおりです。
申し込みの前に、まずバウチャーチケットを購入しておきます。プロメトリック社のサイトから、プロメトリックIDを作成後、予約画面を開いてログインします。受験者情報を確認し、必要な情報を入力後、試験予約を行いましょう。
試験予約の際にはバウチャーチケットの受験チケット情報も入力します。「受験が可能な認定試験」の選択画面では「People Cert」を選択してください。申し込みした日時、会場にて受験となります。
試験を予定する日の60日前から予約が可能で、最短で試験日の3営業日前まで予約手続きが可能です。試験日の29日前以降の変更やキャンセルには手数料1,188円(税込み)がかかります。
ピアソンVUE社を利用する場合は以下の手順になります。
こちらも申し込みの前にバウチャーチケットの受験チケットを購入しておきます。ピアソンVUE社のサイトからアカウントを作成し、配信元である「People Cert」の試験予約ページを開いてログインします。試験名、テストセンター、試験日を検索・入力し、個人情報の確認、清算の手続きに進みます。
申し込みした日時、会場にて受験となります。
ITILファンデーション資格を取得するとさまざまなメリットが得られます。主なメリットは以下の3つがあげられます。
ITILファンデーションは、ITサービスマネジメントやITILに関する基礎知識を保有していることを証明する世界共通の認定資格です。取得者は世界標準レベルのITサービス知識があると客観的に認められます。
日本の国家資格である「サービスマネージャー」資格と比べると取得しやすく、知名度は世界各国に広がっているため、IT業務の経験が浅い人にはとくにメリットが大きいといえるでしょう。
情報システムに求められるITサービスの利用者の満足度の向上や、システム運用の改善と効率化につながる内容を学べるため、業務においても非常に有用な資格と言えます。
ITILファンデーション資格は、ベンダーフリー(特定の製品のメーカーや販売店にとらわれない)な汎用性の高い資格です。IT業務上の常識的な問題も含まれており、きちんと学習すれば誰でも合格が可能な内容です。
そのため、資格取得によって、ITILファンデーションの知識が活かせる情報システム部門やIT部門へのキャリアアップにもつながるでしょう。
ITILファンデーションの資格保有者は、世界標準レベルのITサービスマネジメントの知識があることが証明されますので、自社での専門部署配属だけでなく、資格を活かした良い条件の転職も視野に入ってきます。
ITILファンデーション資格はIT業界では知名度の高い資格ですので、転職時にも有利になります。世界標準レベルのITサービスマネジメントに関する基礎知識があることを客観的に証明できることは、転職に際して大きなアピールポイントになるでしょう。
システムやソフトウェアなどを販売するITベンダーをはじめ、多くの企業で「ITサービス関連業務に従事する人は、ITILファンデーション資格が必須」となっています。そのような企業への転職や、ITコンサルタント、インフラエンジニアなどへのキャリアパスも開けてくるでしょう。
ITILファンデーション資格は、ITシステムを運用管理する情報システム部門やIT部門で欠かせない資格の一つです。世界共通の資格でありながら、試験の難易度は低めですので、ITサービス関連の資格取得の第一歩として選ぶのも良いでしょう。
ITILファンデーションを取得すると、ITサービスマネジメントやITILに関する基礎知識を保有していることの証明になり、キャリアアップや転職にも有利になる可能性があります。また、上位資格の取得を目指すなどさらなる高みを目指すことも可能です。
この機会にぜひITILファンデーション試験にチャレンジして、世界に通用する資格を手に入れましょう。