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2024/08/18 更新

税理士試験の財務諸表論とは?難易度や合格点、勉強方法についても解説

「今よりもキャリアアップしたい」「給与を上げたい」と考えている方は、多いのではないでしょうか。一方、転職やキャリアアップに不安を感じ、現状維持で諦めてしまう人も多いです。しかし、資格を取得すれば転職やキャリアアップはできます。その一つが税理士です。

今回は、税理士試験に含まれる財務諸表論に焦点を当て解説します。税理士は、難易度が高い資格で、保有しているだけで転職活動の際優遇されやすいです。また、現職での昇給や昇格にも効果的だといわれています。転職やキャリアアップを考えている人は、本記事を参考に税理士試験について理解を深め、資格取得を目指してみましょう。

税理士試験とは

税理士になるための試験が「税理士試験」です。税理士試験には、受験資格があります。一定の条件を満たした人だけが受験できるので、税理士試験受験前には必ず条件を満たしているか確認しましょう。

税理士試験の受験資格

  1. 学職による受験資格
  • 法律学または経済学を1科目以上履修し、大学または短大を卒業する
  • 大学3年生以上で、法律学または経済学を1科目以上含む62単位以上を取得する
  • 法律学または経済学を1科目以上履修し、一定の専修学校の専門課程を修了する
  • 司法試験に合格する
  • 公認会計士試験の短答式試験に合格する(平成18年度以降の合格者に限る)
  1. 資格による受験資格
  • 日商簿記検定1級に合格する
  • 全経簿記検定上級に合格する(昭和58年度以降の合格者に限る)
  1. 職歴による受験資格
  • 法人又は事業を行う個人の会計に関する事務に2年以上従事する
  • 銀行・信託会社・保険会社等において、資金の貸付・運用に関する事務に2年以上従事する
  • 税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助事務に2年以上従事する

また、税理士試験は全部で11科目あります。受験者は、11科目の中から必須科目2科目と選択科目3科目を受験し、合格しなくてはいけません。

参考:国税庁「税理士試験受験資格の概要」

財務諸表論とは

財務諸表論とは、税理士試験における必須科目の一つです。財務諸表とは、経営状況や財産状況を報告するための書類であり、財務諸表論では財務諸表の作成手順やルールを身に付けます。

財務諸表論で得られる知識は、税理士にとって必須です。実際に、税理士になれば企業の会計の流れを帳簿につけ、財務諸表を作成する業務が発生します。作成された財務諸表をもとに、金融機関や株主は企業経営を把握し、評価するのです。そのため、税理士が作成する財務諸表は、正しいルールで作成された見やすいものでなくてはいけません。

財務諸表論の基本的な考え方は簿記と同じなので、多くの方は簿記論と同時に勉強をします。ただし、簿記論も財務諸表論も具体的な内容は異なるので、それぞれについてしっかり勉強しなくては合格できないです。

財務諸表論と簿記論の違い

簿記論は、財務諸表論同様に税理士試験の必須科目です。 簿記論では、帳簿の記録・集計の際に用いるルールを学び、実際に計算できることが求められます。出題問題は、簿記の知識を前提とした計算問題がほとんどです。

簿記論に対し、財務諸表論では財務諸表の作成手順や理論を学びます。簿記論で学ぶ会計に対し、具体的な処理方法や理論背景になることを財務諸表論で身に付けるイメージです。簿記論と財務諸表論は、同時に学習を進めていくと効率的に学べるでしょう。

財務諸表論の試験概要

次は、具体的に財務諸表論の試験概要について解説します。試験概要を理解すれば、問題の出題範囲や形式を把握でき、試験対策につながるでしょう。しっかり対策をすれば税理士試験合格も可能なので、参考にしてください。

出題内容

財務諸表論の試験は、120分で実施されます。試験内容は、理論(25点/25点)と計算(50点)の2つです。

理論問題では、会計の基礎理論・応用理論に基づいた数行程度の記述や、文章の穴埋めを求める問題が出題されます。一方、計算問題では貸借対照表や損益計算書を作成する問題が出題されるので、それぞれ入念な対策が必須です。

例年、120分でほぼ回答できるボリュームで出題されます。心配な方は時間配分も考えながら試験に臨むようにしましょう。

出題形式

これまでの財務諸表論の試験傾向として、大問3つで出題されるケースが多いです。

理論問題が2問、計算問題が1問出題されます。理論問題、計算問題共に50点ずつの配分です。どちらか一方ではなく、両方バランスよく勉強しましょう。

財務諸表論の難易度

難易度がかなり高いといわれている税理士試験です。試験合格のためには必須科目の合格は絶対であり、財務諸表論の難易度が気になる方は多いのではないでしょうか。以下では、財務諸表論の難易度について解説します。難易度を知れば、勉強に対するモチベーションアップにもつながるでしょう。

合格ライン

財務諸表論の合格基準は、各科目ともに満点に対して60%の正解が必須です。ただし、実際は試験の合計点が高い上位10%〜15%程度が合格するといわれています。いわゆる競争試験のため、60%ではなく100%の正解率を目指して勉強しましょう。

合格率

令和5年度の財務諸表論合格率は28.1%(※1)でした。内訳は、受験者数13,260人に対し、合格者数3,726人です。前年度の合格率が14.8%だったため、令和5年度では合格率が上がっていることがわかります。合格率向上の要因には、受験資格の緩和により税理士試験受験者数・合格者数の増加を狙った協会の取り組みが影響しているでしょう。

以下は、過去5年間の合格者推移です(※2)。

実施年度

受験者数(人)

合格者数(人)

合格率(%)

令和4年

10,118

1,502

14.8

令和3年

9,918

2,196

23.9

令和2年

8,568

1,630

19.0

令和元年

9,268

1,753

18.9

平成30年

8,817

1,179

13.4

表を見てもわかるとおり、財務諸表論の合格率の振れ幅は非常に大きいです。平成30年は13.4%と低い合格率に対し、令和3年には23.9%まで上昇しました。その後、令和4年には再度14.8%とまで低下しているので、年度によって合格率はさまざまです。ただし、平均的な合格率で見ると、18%程度のため難易度が高いことは間違いないでしょう。

(※1)参考:国税庁「令和5年度(第73回)税理士試験結果表(試験地別)」

(※2)参考:国税庁「税理士試験に関する情報」

勉強時間

税理士試験に合格するには、最低でも450時間、できるならば500時間〜600時間の勉強時間が必要だといわれています。この勉強時間の中で、必須科目である簿記論と財務諸表論、選択科目の3科目を勉強する必要があるので、かなりハードだと考えておきましょう。

特に、財務諸表論は計算と理論の2パターンでの出題形式のため、両方を勉強する必要があり、勉強時間をしっかり確保することが重要です。ただし、財務諸表論は、他の科目が10%(※3)前後の合格率に対し、18%程度の平均合格率なので比較的対策しやすいでしょう。

自分の知識の量や経験に応じて、必要な勉強時間を確保してください。

(※3):国税庁「令和5年度(第73回)税理士試験結果表(科目別)」

財務諸表論は独学でも合格できる?

財務諸表論の合格は、独学でも目指せます。ただし、独学の場合長期間の勉強スケジュールに対し高いモチベーションを維持すること、試験対策・試験準備を自分で入念に行うことが合格の鍵です。これらを、一人で実施するのは極めて難しいでしょう。

もし独学で財務諸表論の合格を目指すのであれば、自分自身で学習スケジュールを立て、必要な情報を自ら収集、主体的に学習に取り組む必要があります。独学の場合、勉強時間以外にも手間や労力がかかることを事前に理解しておきましょう。

勉強に集中して時間を使いたいという方には、通信講座や予備校がオススメです。

財務諸表論を独学で勉強するコツ

金銭的負担や時間の都合上、財務諸表論を独学で勉強せざるを得ないという方もいるかもしれません。独学で勉強する方でも、財務諸表論の合格は目指せます。ただし、効率的な学習と財務諸表論に対する深い理解が必須です。これらを限られた時間内で習得するためには、いくつかコツがあります。以下では4つのポイントにまとめて紹介するので、参考にしながら学習に取り組んでみましょう。

①基本は反復学習

財務諸表論に合格するためには、何度も繰り返し学習するようにしましょう。試験合格に必要な知識をインプットするのはもちろん、アウトプット能力も重要です。インプットとアウトプットを繰り返し行うことで、記憶にも残りやすくなります。

同様に、過去問などを利用した学習をする際は、解答と採点をしっかり行い、間違った個所は繰り返し学習しましょう。繰り返し学習した分だけ、理解が深まり合格に近づけます。

②理論問題と計算問題をバランス良く勉強する

財務諸表論の勉強では、理論問題と計算問題をバランスよく学習しながら理解を深めることが重要です。簿記論の計算と財務諸表論の理論を結び付けられれば、より効率的に理解が進むでしょう。

財務諸表論の理論を理解できれば、簿記の計算問題に対してどのような計算方法で実施されたか理由がわかるようになります。計算のロジックを理解すれば記憶に残りやすく、応用もしやすいです。

③理論は暗記と理解をきっちりする

財務諸表論の理論を理解し暗記していれば。万が一の際でも理論から回答を導くこともできます。

たとえば、計算問題のときです。計算方法を忘れてしまっても、理論を理解していればどのような計算が必要か、逆算ができます。もし理論を覚えていないと、計算方法がわからないまま問題を解けず、諦めることしかできません。

そうならないためにも、計算方法をしっかり理解するために理論を理解し、暗記しておきましょう。

④計算ミスの原因はしっかり把握する

財務諸表論に合格するために重要なことは、計算問題を確実に解答することだといわれています。なぜなら、理論問題に比べ計算問題のほうが確実に点数が稼ぎやすく、対策がしやすいからです。

計算問題は、数字を修正し財務諸表を完成させることが問題のメインになるので、何をすべきかが明確でしょう。一方、理論問題は問題文から出題者の意図を読み取る必要があり、対策が難しいです。

そういった意味でも、計算問題に慣れておくことは、点数を稼ぐために効果的だといえます。過去問で間違えた計算問題は、理解できるまで何度もこなし、身に付けておきましょう。

財務諸表論と簿記論はどちらを先に勉強するべき?

結論として、財務諸表論と簿記論は並行して勉強するのがオススメです。

簿記論では、会計の具体的な計算方法を学びます。そして、財務諸表論では簿記論で学んだ計算方法の考え方やルールを学ぶので、親和性がかなり高いです。そのため、試験範囲が重複している点が多く、学習時間短縮につながります。また、同時に勉強することで、それぞれの理解が深まりやすく、知識として吸収しやすいでしょう。

仮に簿記論と財務諸表論を別々で勉強するなら、それぞれ500時間の勉強時間が必要なため、効率的に勉強するためにも並行して勉強することがオススメです。

財務諸表論に合格して税理士としてのキャリアを目指そう

財務諸表論は税理士試験の中でも合格しやすい科目の一つです。他の科目に比べても合格率が高く、しっかり時間をかけて勉強すれば独学でも合格できる可能性はあります。

財務諸表論に合格し、税理士試験に合格すれば、キャリアチェンジやキャリアアップを叶えることが可能です。莫大な勉強時間が必要な難易度が高い試験ではありますが、焦らずコツコツと試験対策をしてみましょう。

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WARCエージェントマガジン編集部

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