簿記2級とはどんな資格なのか、疑問をお持ちの方は多いかもしれません。特に経理職への転職を考えている場合、簿記2級の取得が有益なのか迷うこともあるでしょう。
この記事では、簿記2級の概要や評価、その資格を活かせる仕事について紹介します。さらに、経理職への転職と簿記2級の関係性、経理職への転職のヒントやアプローチにも触れるので、参考にしてください。
簿記の検定には、3種類あります。「日商簿記」「全経簿記」「全商簿記」です。この中で、日本商工会議所が主催する「日商簿記」が最も大規模で、同時に広く知られています。
3種類の検定の違いは、基本的に難易度と受験者対象の違いです。確固たるルールではないですが、全経簿記は経理専門学校の生徒、全商簿記は商業高校の生徒を対象にして難易度が設定されています。この一方で、日商簿記は社会人向けの試験で、難易度が高く、ほかの2つに比べて合格率が低い試験です。
そのため、社会で通用する簿記の資格としては、一般的に日商簿記が挙げられることが多いです。日商簿記2級の資格は、財務諸表を読み解き経営状況を把握するなど、高度な簿記と財務に関する知識があることを証明するものとなっています。
日商簿記には、1級〜3級と、初級、原価計算初級の5段階のレベルが設定されています。それぞれの級の試験科目や対象者、難易度については、以下の表を見てみましょう。
簿記のレベル | 科目 | 対象者 | 難易度 |
---|---|---|---|
1級 | 商業簿記、会計学、工業簿記、原価計算 | 大企業経営者、会計指導者 | 合格率7〜10% |
2級 | 商業簿記、工業簿記 | 中小企業経営者、会計主任 | 合格率20〜30% |
3級 | 商業簿記 | 中小企業経理部、一般記帳者、営業・管理部門 | 合格率30〜50% |
初級 | 商業簿記(入門)、工業簿記(入門) | 商業簿記入門者、工業簿記入門者 | 合格率50〜60% |
原価計算書初級 | 原価計算、工業簿記(入門) | 工業簿記入門者 | 合格率80〜90% |
1級と2級の大きな違いは、科目数が2級では1級の半分しかないことです。学習にかかる時間も、2級の合格には通常平均で250〜500時間ほど必要とされるのに対し、1級の合格には500〜1,000時間が必要とされています。
さらに、採点方式にも差があるのが特徴です。2級の場合、約70点を取れば合格となる一方、1級では点数ではなく、受検者の上位10%前後が合格とされるという点も、難易度の高さを示しています。
簿記2級の資格は、基本的な簿記知識だけでなく、実務レベルにより近い内容の技術や知識も学ぶことができます。そのため、簿記2級の保持者は即戦力とみなされ、転職や就職の際に有利になるのがメリットです。
簿記2級の資格を活かせる職業の一例を以下に挙げてみましょう。経験などによって年収が異なることがあるため、目安として記載しています。
【簿記2級を活かせる職業】
追記すると、簿記1級の資格を活かせる職業には、企業の経理部門、財務チーム、マーケティング、そして経営管理などがあります。
一般的には転職を考える際に、履歴書や面接でアピールできる資格としては、簿記2級以上です。実際に簿記2級の資格を持つことで、採用時にどのような評価を得ることができるか、以下で紹介します。
簿記2級は、就職や転職の場で、以下のように評価されます。
簿記2級については、まず資格試験の主催者である商工会議所が、以下のように述べています。
「企業活動や会計実務を踏まえ適切な処理や分析を行うために求められるレベル」
(参考:商工会議所の検定試験「2級」)
そのため、簿記2級の取得は「経理に関する幅広い知識を把握している人材」として評価され、就職や転職の際に適切な評価を受けることができます。
また、先述したとおり、簿記2級の合格率は20〜30%ほどであり、合格するためには250〜500時間もの学習が必要です。要するに、簿記2級の資格は多くの学習を積んだ証ともいえ、資格の保持者は努力家としての印象を持たれやすくなります。
実際の求人を見てみると、未経験者を歓迎する企業であっても簿記2級の取得者を優遇、あるいは歓迎といった表記が多々あります。求人の内容からも、転職の際に有利になることがわかります。
ただし、簿記2級を持っているだけで必ずしも採用されるわけではありません。年齢、実務経験の有無、応募者の数、地域性、人柄なども大きく影響します。
実務未経験でも簿記2級があれば転職できるか、実務経験がない人にとっては気になる点でしょう。
結論として、未経験の方でも簿記2級の保有者を歓迎する経理の求人がたくさんあります。ただし、経験者を優遇する求人や、即戦力を求める求人も多いため、求人内容を事前によく確認しましょう。
未経験者が新しい仕事に就く場合、最初は経験者のアシスタント(補助)業務を行うのが一般的です。最初は簡単なデータ入力などから始めて、徐々に知識を身につけていきます。未経験の場合、簿記2級の資格を持っていることは、実務の段階からでも有利になります。簿記2級程度の知識があれば、最初はアシスタントの役割であっても業務内容の把握が早く、即戦力として成長する可能性が高まるでしょう。
また、経理の仕事に転職する際には、簿記2級だけでなく、パソコンスキルも磨いておくことをおすすめします。
転職市場において、市場価値や需要が高まるのは20代後半〜30代後半の年齢層です。この年齢層では、経理の経験がなくても、それまでの社会経験から社会人としてのマナーやスキルが身についていると考えられます。同時に、フットワークがよく、成長の余地が大きいと見なされるため、多くの企業がこの世代の転職希望者を歓迎しています。
ただし、求人広告では年齢制限が禁止されているため、40代や50代の方でも求人への応募が可能です。経理職への転職も、年齢を理由にあきらめる必要はありません。しかし、長年1つの企業で働いた後の転職の場合、年収が低下する可能性があることも考慮すべきです。求人情報に「40代も活躍中」「ベテラン歓迎」などの表記があれば、期待が持てます。注意深く求人内容を読み、自分が適応できる環境かどうかを確認してください。
経理職へ転職する際のポイントには、以下のようなものがあります。
経理への転職活動時のポイント
それぞれについて紹介します。
経理職の求人は、主に1〜2月と6〜7月に公開されることが多いです。
日本では多くの企業が3月末に決算を行うため、経理業務の繁忙期は4月(決算後)および5月(税務申告期間)です。このため、人材の確保を4〜5月に向けて進める企業が増え、その前の1〜2月に求人が増えることがよくあります。また、株主総会が終わり、繁忙期が過ぎた6〜7月も求人が増える理由です。この時期は企業が人材の確保に集中できる余裕が生まれるため、優秀な転職候補者を募るチャンスといえます。
また、別の視点からは、1月の新年度入社を目指す転職者が増える10〜11月も求人が増える傾向にあります。4〜5月に向けて人材育成の時間があるため、未経験者向けの求人も増えることがあります。
簿記2級の資格に注目してしまいがちですが、面接対策も非常に重要なポイントです。資格があるからといって必ず採用されるわけではありません。面接でいいパフォーマンスができるよう、しっかりと面接対策をしておきましょう。
経理の面接では、具体的な経理の知識を問われることがある一方で、経験者は実務や工夫について聞かれることもあります。自己PRや転職理由、志望動機などを問われるのは、一般的な面接と同じです。企業の理念や経営方針をしっかり理解し、面接に臨みましょう。
将来のキャリアビジョンを明確にし、逆質問にもしっかり対応できるよう準備することで、面接に自信を持つことができます。
簿記2級は、簿記や財務に関する高度な知識があることを示し、この資格を取得している人は即戦力として評価されることが多いため、転職のときに役立ちます。さらに、根気よく勉強できる真面目な姿勢が認められることもあり、さまざまな意味で転職には有利となるため資格取得をおすすめします。