仕事ではさまざまな種類の文書や資料、顧客への案内文などのビジネス文書を作成します。そのような際に役立つスキルを身につけられるのが、「ビジネス文書検定」です。ビジネス文書検定は、よく使われる文書の形式だけでなく、マナーなども学ぶことができます。
この記事では、ビジネス文書検定試験の概要や対策方法、向いている人、活かせる仕事などを解説しています。日頃の業務に役立てたり、就職や昇級を目指す場合のアピールポイントにもなりますので、ぜひ一度取得を検討してみてください。
ビジネス文書検定は、ビジネス文書でよく使われるパターンや定型句を会得し、作成する能力を育成するための検定です。資格取得の学習を通して、ビジネスマナーや文書作成技術が磨かれ、知識やスキルを身につけることができるようになります。
ビジネス文書検定は、公益財団法人「実務技能検定協会」(※1)が1987年から実施している民間資格であり、以前「ワープロ検定」と呼ばれていた資格があらためられたものです。
そのため、知名度や歴史もありますし、取得によって、ビジネス文書マナーや作成スキルがあることの証明になります。
ビジネス文書検定には3級、2級、1級の3グレードがあり、誰でも受験可能です。3級であれば難易度も低く、試験対策期間も1ヶ月前後で合格も可能ですが、転職や昇給のアピールには2級以上が効果的です。
(※1)参考:公益財団法人 実務技能検定協会「ビジネス文書検定」
ここではビジネス文書検定の概要について解説します。7月と11月の年2回実施されていますので、自分の都合に合わせてスケジュールを立てて受験しましょう。
ビジネス文書検定の試験科目は「表記技能」「表現技能」「実務技能」の3つです。表記技能の領域では、正しいビジネス文書用語や用字が使えることと、書式等の知識が問われます。ここではさまざまな業界の専門用語についても学ぶことが可能です。
表現技能の領域では、礼儀正しい文章や正確でわかりやすい文章が作成できるかが試されます。ビジネス文書検定ではとくにマナーに対する知識や表現が重要視されているため、普段は学ぶことのできない正しいマナーに則った文書を学ぶことが可能です。
実務技能の領域では、社内文書や社外文書が正しく作成できることと、文書の取り扱いについての知識も問われます。社外とのやり取りの多い部署ではとくに大切な領域になります。社内文書と社外文書の違いを理解し、適切な文書の取り扱い方法を体得することがねらいです。
ビジネス文書検定の出題形式は、3級と2級はマークシート形式の選択問題と記述問題です。制限時間内で回答できるように、過去問題を参考にして時間配分を考えておくとよいでしょう。
1級はマークシート形式の選択問題と、ビジネス文書を実際に書き上げる実技の問題となっています。実技問題があるため、3級、2級よりは難易度が高く、時間も長めになっています。問題に応じた文書を適切に書けるように、問題集でしっかり練習しておきましょう。
ビジネス文書検定の試験時間は、3級が120分、2級が130分、1級が140分です。試験は3グレードが同日に行われ、3級は12:00〜14:10、2級は14:50〜17:10、1級は12:00〜14:30の配分になっています。
3級と2級、2級と1級は同日受験する「併願」が可能です。2級と1級の併願の場合、1級が先に開始となりますので、集中力を切らさないように注意が必要です。
ビジネス文書検定3級の試験内容は、基本的な知識と技能が身についており、上司の指示に従って、文書を正しく理解し作成できるかを問われます。2級ではさらに、知識と技能の全般を身につけていることや、自身のみで文書を正確に理解し作成できるかが含まれます。
3級、2級はいずれも選択問題と記述問題であり、試験の難易度も低めです。
1級は、実務に役立つ文章作成技能・知識を充分に理解し、必要に応じて適切な指導をする能力も問われます。選択問題に加え、文書作成実務が試験問題に加わるため、難易度が高くなっています。
ビジネス文書検定の合格ラインは、いずれのグレードも表記技能、表現技能、実務技能の各領域それぞれの得点の60%以上です。
合格率はおおよそ、3級が85%前後、2級が60%前後、1級が30%前後となっています。3級では受験者の大半が合格できますが、1級となると3人に1人しか合格できず、難易度がやや高いという結果です。
ビジネス文書検定の受験料は以下のようになっています。
級 | 受験料 |
---|---|
3級 | 3,800円 |
2級 | 5,200円 |
1級 | 7,000円 |
2級・3級を併願 | 9,000円 |
1級・2級を併願 | 12,200円 |
ビジネス文書検定は1日で行われますが、時間をずらして実施されるため、併願も可能となっています。
ビジネス文書検定の試験会場は、東京23区のほか、札幌市、仙台市、成田市、横浜市、上越市、金沢市、岡谷市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、広島市、高松市、福岡市、熊本市、那覇市の全17会場(※2)です。
受験者増加に伴い、これまで12会場であったものが17会場に増やされました。オンライン受験などには対応していないため、確実に出席できる会場を選んで申し込みしましょう。
(※2)参考:公益財団法人 実務技能検定協会「試験会場一覧[ビジネス文書検定]」
ビジネス文書検定の受験対策は、公式の発行する参考書と問題集を使って学習するのが一般的です。参考書では各業界の専門用語から各種ビジネス文書の基本的な形式やマナー、作成するための技術を学びます。試験では正しいビジネス文書のマナーが重要視される傾向があるのが特徴です。
一通り基本が理解できたら、公式が発行する「ビジネス文書検定 実問題集」で実際の試験の対策を行いましょう。問題集によって知識の理解度を確認したり、学んだ知識を活用する能力を鍛えることができます。
過去問題に何度も取り組むことで出題の傾向や難易度を把握し、制限時間内に答えられるようにしておきましょう。
ビジネス文書検定は、どのグレードの試験でも、公式の参考書と問題集を使って独学で勉強することになります。学習期間は、難易度の低い3級程度であれば、1ヶ月前後が目安です。
ビジネス文書を習得するために、用語や文書の形式などを暗記する学習がメインになります。独学が苦にならず、暗記が得意でコツコツ丁寧に取り組める人が向いているといえるでしょう。1級になると文書作成を指導する能力も問われるため、指導力があるほうが有利です。
ただし、ビジネス文書検定で学ぶ内容は実務で習得できることが大半ですので、ステップアップのための転職などではあまり有効とはいえません。そのため、新卒で就職する人のほうが資格取得によるメリットは大きいといえるでしょう。
正しくビジネス文書を作成する能力があれば、どのような職種でも役に立つため、就職活動などで有効なアピールポイントになる場合があります。ビジネス文書検定がとくに活かせると思われるのは、以下の仕事です。
ビジネス文書検定では広く一般に通用するビジネス文書の基本を学ぶことができるため、一般事務を目指す人にオススメです。正確でわかりやすい文書を作成する能力は、日々の業務で役立つでしょう。
一般事務業務では顧客や取引先に挨拶状や案内文を書く機会が多いため、正しいマナーの文書を作成できる人は重宝されます。また、一般事務では数年に一度しか作成しないような書類も扱いますが、ビジネス文書検定によってさまざまな文書の知識や理解ができていると、そのような際にもスムーズに対応できるようになります。
ビジネス文書検定では、一般的なビジネス文書の基本とともに業界の専門知識・用語を学ぶことができます。経理職では、法律に則って決まった形式で書類を作成することが不可欠であり、そのための知識習得と文書作成が必須です。
ビジネス文書検定によって、経理でよく使用される用語や書類の形式を理解しておくとすぐに業務に取り掛かれるため、大変効率的といえるでしょう。文書形式を理解しているため、さまざまな書類に応用できますし、必要な書類のテンプレートを作ることもできるでしょう。
法務職では、部署特有の書類も多く、文書の形式やマナーもしっかり求められます。法務特有の用語を理解して、適切な文書を作成できる能力が不可欠です。
ビジネス文書検定では、ビジネスで使用される幅広い知識が学べるため、法務に配属された場合でも活用できます。基本的な理解ができていることで、部署ならではの文書の作成も容易に取り組むことができるでしょう。
文書の作成に手間取ることがないため、部署で必要とされる情報の収集などに時間をかけられるようになるメリットもあります。
労務は、労働に関する事務処理や環境整備業務を行う部署です。従業員の勤怠管理や社会保険の手続き、労働契約書の作成などが主な業務です。他部署の社員とのやり取りが多いほか、社会保険事務所や労働基準監督署などとの対応も労務の仕事になります。
労務で扱う書類は形式に則った正確性・マナーを要求されるため、ビジネス文書検定での学びが役立つでしょう。きちんとした理解に則って作成できるため、上司からも高評価を受けることが期待できます。
人事は人材活用に関する業務を行っており、採用や人員配置・教育などを行います。採用見込み者や社外の企業などとのやり取りも多く、マナーに則った文書の作成が不可欠です。
ビジネス文書検定によって基本的な文書作成をマスターしておくと、他の業務への取り組みもスムーズに行えるため、大変役に立つでしょう。人事の業務には人材教育なども含まれますが、そのような場面でも身につけたビジネス知識を役立てることができます。
秘書は担当上司に代わって挨拶状から業務で使用する資料の作成や管理なども手掛けなければなりません。一般の事務員と比較して社外文書を作成する機会も多く、ビジネス文書マナーも必須となるため、ビジネス文書検定が役立ちます。
正しいビジネス文書の知識やスキルがあれば、忙しい業務の中であっても作成に時間を取られることがなく、効率的に業務をこなせます。1級を取得していれば、上司の作成した文書をチェックする能力もありますので、貴重な存在と印象づけることができるでしょう。
ビジネス文書検定は、ビジネスで使用される文書の定型・用語などの理解や、作成するスキルを判定する資格です。ビジネス文書の知識があり本質が理解できていれば、どのような分野の書類であっても応用ができ、不安や手間取ることなく作成できるようになります。
自信を持って仕事に取り組めるようになり、正確に文書作成できるので、上司からの信頼も得られるでしょう。また、ビジネス文書検定は、仕事をしたことがない人でも公式テキストと問題集で学ぶことで合格が可能ですので、学生にもオススメの資格です。
ビジネスの基本を学べ、文書作成スキルの証明となる資格ですので、これから就活する人はぜひ検討してみてください。