司法試験は最も難しい資格試験の一つとして知られています。合格後は高い社会的評価を受けることができるでしょう。しかし、具体的な司法試験の内容は意外にも広く知られていません。また、難易度や仕事との両立の可能性なども十分に理解されていないのではないでしょうか。
そこで、この記事では司法試験の概要について解説します。受験を考えている方はぜひ一読してみてください。
司法試験は、裁判官・検察官・弁護士を目指す方が職務に必要な知識・応用能力を有しているかどうかを判定する試験です。これらの職務に就くためには必須の国家試験であり、その難易度は最も高いものの一つとされています。
仕事の性質を考慮すると、正義感のある人にとっては特に向いている資格です。また、生活面を考慮すると、合格すればその努力に見合ったリターンが期待できる資格でもあります。難易度は高いものの、一度取得すれば生涯有効でしょう。
では、具体的にはどのような人が司法試験を受験できるのでしょうか。また、試験の日程や内容についても知りたい人も多いと思います。以下では、試験の具体的な情報に焦点を当ててまとめるので、参考にしてください。
司法試験はこれまで例年5月中旬に開催されていましたが、2023年度からは7月中旬に実施され、結果は11月下旬に発表されるように日程が変更されました。最新の情報を確認することが必要ですので、注意してください。
試験は通常、中1日を挟んだ5日間にわたり行われます。試験地は全国に7か所あり、以下がその一覧です。
願書は、法科大学院、郵送、法務省などで入手可能です。願書の提出方法は郵送(書留)のみであり、法務省の司法試験委員会宛に送付する必要があります。
司法試験の受験資格
受験資格は上記の通り限定されています。十分な時間をかけることができるのであれば、法科大学院でのしっかりとした準備が可能です。働きながら弁護士を目指す場合や最短での合格を目指す場合は、予備試験に合格して受験資格を得ることになります。
なお、司法試験の受験料は28,000円であり、参考までに予備試験の受験料は17,500円です。どちらも受験申込書に収入印紙を貼り付けて支払う必要があり、現金など他の方法では支払いができません。
司法試験は短答式と論文の2つの試験があります。短答式で合格点に達すると論文も採点され、最終的な合否が判定されます。各受験科目は以下の通りです。
短答式の科目
論文式の科目
各科目の問題数と配点については以下の通りです。
短答式の問題数と配点
論文式の問題数と配点
どれか1科目でも最低ラインに達していない場合は不合格となるので、注意してください。
次に司法試験の難易度を見てみましょう。まず合格率を確認します。2019~2021年の3年間の合格率は次のようになっています。
司法試験の合格率
実施年 | 合格率 |
---|---|
2019年 | 33.63% |
2020年 | 39.16% |
2021年 | 41.5% |
上記3年間では、30~40%(※1)の間を推移し2020年・2021年では40%前後になっています。しかし2019年以前ではほとんど30%を切っています。2014年の22.6%・2016年の22.9%など、20%台前半も珍しくありませんでした。それを考慮すると、近年では合格率が上昇傾向にあると言えます。
(※1)参考:日本弁護士連合会
他の資格試験と司法試験の合格率を比較してみましょう。
2019年 | 2020年 | 2021年 | |
---|---|---|---|
司法書士(※2) | 4.39% | 5.17% | 5.14% |
税理士(※3) | 18.1% | 20.3% | 18.8% |
医師(※4) | 89.0% | 92.1% | 91.4% |
公認会計士(※5) | 10.7% | 10.1% | 9.6% |
簿記検定1級 (※6) | 8.5%/9.8% | 13.5% | 7.9%/9.8%/10.2% |
司法試験の合格率は他の資格に比べて高い傾向がありますが、これには理由があります。司法試験は医師と同様に受験資格が限定されており、専門知識を学習している人が対象となっています。全ての受験者が時間とお金をかけて一定の知識を身に付けているとも言え、それが合格率を高めています。
ただし、逆に考えると、専門的に勉強している層ですら30~40%しか合格できないとも言えます。難易度が高く合格が難しい資格であることは事実です。
(※2)参考:日本弁護士連合会
(※3)参考:国税庁
(※4)参考:旺文社 教育情報センター
(※5)参考:金融庁
(※6)参考:商工会議所
司法試験は幅広い内容を含み、その難易度も高いため、何年もかかって挑戦する受験者が少なくありません。できるだけ短い期間での合格を目指すなら、効率を重視し、かつ十分な勉強時間を確保することが重要です。以下に、具体的なポイントを3つ確認してみましょう。
司法試験に短期で合格する方法
それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。
働きながらまたは最短での合格を目指す場合、法科大学院のコースではなく、通常は予備試験のコースが一般的です。最初に予備試験を突破するための準備が肝要でしょう。
予備試験の科目と試験形式は司法試験と同じく、短答式と論文式です。(ただし、予備試験にはプラス口述試験もありますが、そこで失敗することは滅多にありません)。両者の試験は科目が一部共通しているため、予備試験の勉強は司法試験の準備にも寄与します。
短答試験では足切り点を効果的にクリアし、同時に論文試験への対策に時間を確保する必要があります。これを実現するためには、1年のような短期で合格を目指す場合、実質的には独学では難しいと言えるでしょう。
予備試験の合格率は極めて低いですが、予備試験経由で司法試験に合格する確率は高まります。予備試験を突破することは、司法試験合格への大きな一歩と言えるでしょう。
早い時期から問題解決に集中することも重要です。短期間で合格するためには、効率が鍵となります。知識の吸収と問題演習、論文作成といったアウトプットを組み合わせることで、短時間でも知識をしっかりと定着させやすいです。
また、問題解決は答案作成のスキル向上や弱点の発見に役立ちます。これも効率的な学習において非常に重要です。論文については、問題の事例が長文であるため、読解と答案作成に時間がかかります。早い段階から問題を解くことで、スキルとスピードの向上に寄与するでしょう。また、弱点を見つけることは、改めて取り組むべきポイントが明確になるという利点があります。これにより、学習をより効果的に進めることができます。
更に、実践に向けて論文のスピードなど、暗記よりも多くの対策が必要です。この意味でも、問題解決は非常に有益でしょう。
勉強時間を確保するためには、隙間時間を有効に活用することが必要です。短期で合格する人々は、隙間時間を最大限に活かしています。
移動時間や待ち時間など、たとえ5分や10分でも勉強できるように、即座に準備を整えることがおすすめです。暗記カードやスマートフォンのアプリなど、テキストよりも持ち運びが容易なツールを活用しましょう。長時間確保できるときは答案作成などに充て、隙間時間は細かい学習や復習に最適です。
次に、司法試験合格後の進行についてまとめます。大まかには以下の通りです。
司法試験合格後の進行
司法試験に合格しても、弁護士や検察官になるには、上記の手続きをクリアする必要があります。これは受動的にクリアできるものではなく、最低限の努力が求められます。ただし、試験合格自体は比較的労力と時間がかかりません。この段階に来れば、最後の一歩です。最後のタスクとして頑張りましょう。
それでは、合格後に必要な手続きを詳しく見ていきましょう。
司法試験に合格したならば、「司法修習」を受講することが必要です。司法修習は、法律の専門家としてのトレーニングや学習が行われる全国の「修習地」でのプログラムをいいます。約1年の期間で、最後に修了試験(二回試験)に合格する必要があります。
この修習期間中には、実務能力だけでなく職業倫理や意識を身につけるためのトレーニングも実施されます。特に裁判官や検察官を目指す場合、司法修習は就職活動の一環ともなるので、注意してください。
カリキュラムに基づいて、判決書の起案や裁判の立会いなど、実際の事件を題材に法律を適用して結論を導く訓練や学習が行われます。
なお、司法修習期間中は「給費制」が適用され、基本給付金や住居給付金、移転給付金などの収入が得られます。基本給付金は13万5,000円、住居給付金は家賃支払い者を対象に上限3万5,000円となっています。
司法修習を受講しながらも、同時に雇用活動も進める必要があります。以下は雇用先の例です。
司法試験合格者の雇用先の例
合格後、雇用活動を開始することが一般的ですが、早い方は司法試験直後から説明会に参加し始めます。5大法律事務所を希望する場合、予備試験の発表前後や法科大学院の最終学年の夏ごろには、人選も兼ねてのインターンに参加することが一般的です。
活動を進めるにあたっては、司法試験の成績通知書のコピー、大学や法科大学の成績表、履歴書や職務経歴書を準備しておく必要があります。また、自己PRをしっかりまとめ、名刺も用意しておくことが必要です。
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