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コラム
2024/05/08 更新

組織で起こる怖い現象である「自己検閲」と「マインドガード」について解説します

毎年発生する企業の不祥事ですが、そこには少なからず集団心理による悪い現象が起こっています。

今回はその集団心理の中でも特に気をつけないといけない「自己検閲」と「マインドガード」について解説していきます。

はじめに

本連載では、ビジネスで活用できそうな心理学理論や重要なキーワードをご紹介しております。

今回は、組織の中で知らず知らずのうちに発生してまっている現象についてご紹介したいと思います。
心理学分野としては、集団心理における「自己検閲」と「マインドガード」という理論が該当します。

これらの現象は、いつの間にか組織内で蔓延し、少しずつ組織を弱体化させてしまう原因にもなるものです。
特に日本人にとってはかなり身近な現象なので、これを機に抑えておきましょう。

1.自己検閲とは

自己検閲とは、集団内に存在する同調圧力によって自己の意見が封殺される前に、あえて自分で発言を抑制してしまう心理現象をいいます。
定義からしてちょっと難解な言葉ですが、簡単にいうと、周りから同調圧力をかけられる前に自分で勝手に発言を控えてしまうという現象です。
話す前にいろいろと考えてしまいがちな日本人にとってはとても身近な心理現象と言えます。

この心理現象は、集団内でどういう意見を言えば気に入られるのか、どういう意見を言えば嫌われるのかという価値観がすでに存在している場合によく起こる現象です。
ビジネスでいえば、企業風土や文化などに大きく左右される現象です。

例えば、イケイケドンドンの雰囲気が強いベンチャー企業の場合、企業風土としてネガティブな発言が許されない雰囲気が発生します。
そんな中でネガティブな意見を言おうものなら、集団で叩かれるか、役員たちに怒鳴られることになるでしょう。
このような同調圧力がすでに存在している状況では、そもそも発言をしないという選択をするのが妥当な判断です。
これが自己検閲です。

この他にも、ママ友の中での同調圧力、友人同士での同調圧力など様々な事例が存在しますので、日々身近で発生している心理現象といえます。

2.マインドガードとは

次にマインドガードについて見ていきましょう。

マインドガードとは、集団内の価値観や意見が明確になっている状況下で、当該集団内のメンバーが自組織の意思と異なる意見を自組織に近づけないようにする現象をいいます。
別名心理的防衛ともいいます。

この現象は、自組織の文化や意見と食い違う意見・見解・価値観を徹底的に排除するために、ガードマンが勝手に発生して、組織に近づけないように弾き返す現象です。
人間の不思議行動の一つと言って良いかもしれません。

例えば、学校のクラス内に特定グループが発生し、そのグループ内で共通の価値観が根付いているとします。
何週間も一緒にいて遊んでいたら、徐々に子供ながらに決めたルールみたいなものがそのグループ内で出来上がっていったような感じです。
我々も子供の頃、そういう事があったと思います。

これが徐々にエスカレートしていくと、自分たちのグループ内ルールに反する価値観を持った同級生を徹底排除し、仲間はずれにするという行動がよく見られます。
これもマインドガードの一種です。
子供の頃から比較的身近に発生している現象です。

このマインドガードはビジネスの世界でもよく起こります。
例えば、とある企業がミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を制定し、組織の中に浸透させたとします。
そして、その会社の採用担当がそのMVVを独自に解釈し、その採用担当が勝手に思い込んでいる「自社の組織文化」と合わないと感じる人間をどんどん落とすという現象が起こったりします。
これもマインドガードの一例といえます。

このような勝手な思い込みや活動によって、本来であれば採用されていたはずの優秀な人材を多く逃してしまい、目に見えない損失が膨らんでいきます。
もちろん、極めて優れたMVVが設定され、採用担当が正しくそれを理解している場合にはプラスの効果を生む活動ですが、多くの場合は悪い方向で働いてしまうのがマインドガードです。

この現象の難しい点は、ガードマンが善意に基づいて活動していることが多いという点です。
自分の活動は自組織のためになるだろうと思って行っているのです。
それゆえに、組織のトップも気づきにくいですし、仮に気づいたとしても厳しく取り締まることがし辛いのです。

3.負の効果の防止方法

再度簡単にまとめますと、自己検閲は、組織の既存価値観等による自主的な発言抑制で、マインドガードは組織の既存価値観に反する意見の排除という現象でした。
いずれも自組織の中に多様な意見・価値観が入ってこなくなる現象であるがゆえに、基本的には組織に負の効果をもたらすものです。

大きな不祥事を起こした会社の多くでは、自己検閲やマインドガードが組織内で発生していることが多く、それによって多様な価値観が組織内に入ってこないがゆえに偏った価値観に基づく意思決定がなされ、最終的には違法な暴走を招いてしまいます。
しかも、自己検閲やマインドガードは、経営者の関知しないところで勝手に発生してしまうものであるため、その制御やコントロールが非常に難しいという特徴を有しています。
特にワンマン経営者の場合、強いリーダーシップがあることで、かえって自己検閲・マインドガードを誘発してしまうことが多いため、より事態は深刻なものとなります。

たしかに、集団としての結束力を維持するためには、意見や価値観の同質化というものが必要になってきます。
しかし、集団で一致団結して間違った方向に突っ走ってしまうのはただの危険行為です。
だからこそ、組織の長(主に経営者)は常に多角的視点を持っていないといけません。

その方法として挙げられるのは、以下の2つです。

(1)外部アドバイザーの意見を聴く

経営者は、会社の中での権限が最も広く、様々なことを独断で決められる立場にいます。
中小企業やベンチャー企業ではその権限がより強固なものとなりますので、ほぼ自分一人で意思決定を行うことができます。

しかし、一人の人間の脳みそなんてたかが知れていますから、大抵は間違いだらけの意思決定になってしまいます。
その上、組織内で自己検閲やマインドガードが自然発生してしまっているため、自分の間違いを指摘してくれる人もほとんど現れません。
そこで、経営者は常に外部のアドバイザーを持っておくべきだと思います。

このアドバイザーは、歯に衣着せぬ物言いをしてくれる人の方が適任者です。
旧友でも良いですし、弁護士や会計士などの士業でも良いです。
経営者仲間でも良いかもしれません。

いずれにしても、自分の意見に対して客観的に批判してくれる誰かを持っておくべきです。
違法な事業行為を行って人生と会社を終了させた経営者の多くには、このアドバイザーの存在が欠如していることが多いです。
経営者は常に複数のアドバイザーを持つように努めましょう。
多様な意見に耳を傾けられなくなったら、黄色信号です。

(2)従業員の話を素直に聴く

誠に残念な話ではありますが、経営幹部や経営陣というのは、自分より下の従業員の話を聴くことがとても苦手です。
素直に部下の話を聴ける人は1割もいないでしょう。
恐ろしいのは、本人たちは「自分は部下の話もちゃんと聞ける良い管理職だ」と思っている点です。
権限が広く、強力になっていくにつれて、人は無意識的に権力に飲まれていきます。
だからこそ、意識的に周りの従業員の意見を聴かないといけません。

部下に対していくら「本音で話そう」とか「言いたいことがあるなら何でも言って」と言ったところで何も語ってくれません。
従業員側からすると、本音で話すことにメリットが一切無いからです。
自分の評価を落とすリスクだけを抱えることになるので、通常は本音で話すことはありません。

また、上司に対する信頼も大抵はありませんから、尚更本音で話すことはありません。
その結果、良い視点を持っていても言わない、深刻な問題を発見しているけど発言しないという自己検閲が蔓延します。

そもそも管理職や経営陣は、従業員が上層部に対して本音で話す際に、どれほどの勇気が必要なのかを理解しなければなりません。
一般的な従業員にとっては「本音で話す」という行為そのものが、極度のストレスを伴う行為なのです。
上層部にネガティブな指摘をすること、事業の問題点を報告すること、様々な本音を話すことに対して、極めて強いストレスとプレッシャーがかかります。

このような状況下で、従業員の本音を引き出すためには、上層部側に高度なコミュニケーション能力が必要になってきます。
自ら率先して組織内の問題点や弱点を挙げ、それについて従業員に率直な意見を求めるなどの工夫も必要です。
けして偉そうにせず、あくまでも対等な人間として、素直に人の話を聴ける経営者であり続けてください。
それが最も重要なことだと思います。

おわりに

ということで今回は集団心理の分野から、自己検閲とマインドガードについて解説させていただきました。
どんな会社・組織でも多かれ少なかれ発生している現象なので、これを機に意識してみると良いかもしれません。

ではまた次回。

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株式会社WARC

瀧田桜司

役職:株式会社WARC 法務兼メディア編集長/ 学歴:一橋大学大学院法学研究科修士課程修了(経営法学)及び京都大学私学経営Certificate/ 資格:司法試験予備試験・行政書士など/ 執筆分野:経営学・心理学・資格・キャリア分野のコラム記事を担当させていただく予定です