記事FV
コラム
2024/06/26 更新

【経営学理論】株式とは?制度やそのメリットについて解説

はじめに

本連載では、ビジネスで活用できそうな経営学理論や重要なキーワードをご紹介しております。

今回は、知っているようで意外と知らない「株式」という制度について解説していきます。

1.株式とは

株式という制度を本格的に学んだことがある人の多くは、商学部か法学部の出身だろうと思います。

「会社法」という難しい科目を履修した人が必ずと言っていいほど学ぶ分野です。

そして、会社法上の株式とは、以下の定義で説明されることが多いです。

株式とは、均等に細分化された割合的単位の形をとる会社の社員たる地位である。

これを読んで一発でわかったあなたは天才です。

少し解説を加えますと、会社法上の「社員」という用語は、その会社を共同で所有し、運営する構成員という意味があります。
我々が日ごろ使う「社員」は、従業員という意味なので、この点が異なるところです。
そのため、よりわかりやすく説明すると、株式とは、株式会社の所有者としての地位そのものを意味します。

例えば、100株の株式を発行している会社があったとして、私がそのうちの10株を持っていたとすると、私はその会社の10%の所有権を有する社員(構成員)です。
この割合が高くなればなるほど、会社の経営や意思決定について影響を及ぼすことができます。

もし特定の一人が株式の100%を所有しているなら、その人が完全な所有者ですので、自分で何でも決定することができます。

2.株式制度のメリット

株式という制度は、不特定多数の人から少額の資金を少しずつ集める際に重宝する法的な技術で、非常に便利な制度です。

例えば、皆さんが、以下のような事業を行いたいと思ったとします。

  • 事業概要:香辛料の輸入販売
  • 事業プロセス:海外に行く→香辛料を仕入れる→帰って来る→販売する
  • 利益獲得方法:香辛料の売却益
  • 必要経費:1億円(船代などを含む)
  • 売却時予想価額:2億円
  • 利益予想:1億円

この香辛料は、他国では非常に安価で販売されていますが、自国では希少かつ大人気で、値段が高騰しているとします。
その結果、ほぼ確実に1億円の利益が見込める状況です。

こんなとき、必要経費である1億円をすぐに出せる人は多くありません。

この連載の読者は皆さんハイレベルなので、もしかしたらポケットマネーで出せる人もいるかもしれませんが、通常はなかなか1億円という大金を出せません。
そこで、第三者からお金を集める必要が出てきます。

この際に利用されるのが株式制度です。

例えば以下のような条件で株式を発行します。

  • 価額:1株あたり10万円
  • 発行株数:1,000株
  • 利益分配予想額:1株あたり20万円
  • 利益分配方法:香辛料の売却益を持分割合に従って分配

上記の条件を見てわかるとおり、株式制度というものは本来「みんなで少しずつお金を出し合って事業を興して、利益を山分けしましょう」という制度です。
事業に参加して利益を上げたい人は株式を買って、出資をすれば良いわけです。

10万円程度なら出せる人は多いでしょうし、その10万円がほぼ確実に20万円になるなら尚更参加したい人は多いでしょう。
これなら上手に宣伝をすれば1億円くらいなら集められそうです。

しかし当然のことながら、事業にはリスクが伴います。
上記の事業では、渡航中に船が沈没するかもしれませんし、他国での香辛料の調達に失敗するかもしれません。
もしくは、自国での香辛料ブームが終わってしまうことも考えられます。
その他にも様々なリスクがあります。

株式という制度では、このリスクも細分化されるので、リスク分散という意味でも便利な制度となっています。

仮に必要資金である1億円を全部自分で負担していた場合は、損失も全部自分で負担しないといけませんが、株式制度を利用して株式を保有している人たちは、自分のリスクは株式で出資した金額が上限となります。
つまり、1株10万円で購入した人のリスクは「10万円」までとなります。

たとえ、事業を行っていた人が大失敗して他人に損害を与え、1億円以上の損害が発生したとしても、株主はその損害を賠償する義務を負いません。
あくまでも10万円の株式が紙切れになるだけです。

このような責任を「間接有限責任」といいます。

一方で、利益が予想以上にたくさん出た場合は、上限なく分配されます。

このように、株式制度は、事業を行いたい人にとっては「資金調達がしやすくなる」というメリットがあり、事業に参加したい人にとっては「リスクを抑えて事業に参加することができる」というメリットを持っています。

3.株主の権利

株主の権利には、以下の2つの種類があります。

  1. 自益権
  2. 共益権

それぞれご説明いたします。

(1)自益権

自益権とは、権利行使の結果が、当該株主個人にだけ帰属する権利をいいます。
言い換えれば、株主の個人的利益のための権利です。

代表的な権利は、利益配当請求権です。
いわゆる配当をもらう権利です。

その他にも、残余財産分配請求権というものもあります。
これは、会社が解散する際に、残った財産を分配してもらう権利です。

(2)共益権

共益権とは、権利行使の結果が、株主全体に帰属する権利をいいます。
言い換えれば、全株主の利益のための権利です。

代表的な権利は、株主総会での議決権です。
株式会社では、最低でも毎年1回、株主総会という会議が開かれ、その年の経営計画等について多数決による決議がとられます。
この会議に出席して議決権を行使すると、その結果は株主全員に帰属します。

仮に議案が反対多数で否決されたとしても、賛成多数で可決されたとしても、本人がどちらに投票したかにかかわらず、その多数決の結論が株主全員に帰属します。

その他にも、会社に対する解散請求権なども共益権に含まれます。
株主総会において解散決議がなされると、会社は解散し、残余財産があれば株主の持分割合に応じて分配されます。

以上のように、株主には自分のためだけの権利(自益権)と株主全員の利益のための権利(共益権)が与えられています。

おわりに

ということで今回は、株式という制度について基礎的なところをお話させていただきました。
ここ数年でNISAなどの普及に伴って株式投資が流行っています。

しかし、株式という制度を理解した上で投資を行っている人は少ないので、最低限の基礎的な内容については知っておいた方が良いと思います。

また、ベンチャー企業で働く皆さんについては、多くのベンチャーがIPO(新規上場)を目指しています。
その関係で、ストックオプションという権利を付与されることもあると思うので、株式という制度に対する理解はあった方が良いと思います。

この記事が皆様の理解の助けになれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ではまた次回の記事でお会いしましょう。

【お問い合わせ】

WARCで働きたい!WARCで転職支援してほしい!という方がもしいらっしゃれば、以下よりご連絡ください。
内容に応じて担当者がお返事させていただきます。

転職相談はこちら

コラムの関連記事

プラットフォーム型ビジネスモデルとは

エージェンシー問題とは

効率的市場仮説とは

経営戦略理論・RBVとは

三新活動とは

ビジネスモデルとは

集団浅慮とリスキー・シフトとは

プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)とは

プロダクトライフサイクルの意味

ステークホルダーの意味や種類

沈黙の螺旋とは

PEST分析について

株式の制度やメリット

完全競争と不完全競争

M&Aの基礎知識

サーバントリーダーシップ理論とは

モラルハザードとは

経済学理論「逆選択」とは

情報の非対称性とは

組織心理学「PM理論」とは

パスゴール理論とは

心理学理論に基づくマネジメント

経営学の全体像

経営戦略の4つのレベル

経営戦略の4段階

高い業績を出す組織を作る方法

変革型リーダーシップ理論

カリスマ的リーダーの特徴

意思決定モデル4類型

組織内の「いじめ」対処法

科学的管理法と人間関係論

組織を崩壊させる「ゆでガエル理論」とは

ゲシュタルト心理学分野とは

権力の腐敗とは

組織内で起こる「同調現象」とは

マネジメントにおける「観客効果」とは

「自己検閲」と「マインドガード」

「集団極性化」とは

「傍観者効果」の危険性

「組織コミットメント」とは

モチベーションに影響を与える「心理的契約」

早期離職の心理学

早期離職を防ぐ可能性のあるRJP理論

サボる人間の心理学

職務特性理論とは

心理学に基づくストレス対処法

人事評価で気をつけたい認知バイアス

マネジメント理論「XY理論」とは

人材採用で気をつけたい「ハロー効果」

組織開発でも使える単純接触効果

ビジネスでも重要な恋愛心理学

ビジネスでも使える認知的不協和理論

ダニングクルーガー効果とは

極限の集中状態に入る条件

内発的動機づけの意味

「マジカルナンバー」とは

人事や採用担当が学ぶべき心理学

ベンチャー監査役の業務内容

ベンチャー内部監査で活かせる資格

ベンチャー総務の業務内容

ベンチャー人事の業務内容

ベンチャー労務に活かせる資格

ベンチャー法務に求められる能力

ベンチャーPR/IRの業務内容

ベンチャーの経営企画で活かせる資格

ベンチャー財務部の業務内容

ベンチャー経理経験の価値が高い理由

経営管理部門の採用の難しさ

応募が集まる求人票とは

職務経歴書の書き方とは

人材紹介という仕事に対する向き合い方

情シスのリモートについて

情シスで求められる志向性

年収から見た情シス市場の変化

ベンチャーにおけるCxOの役割

ベンチャー企業の基本類型

求人数から見た情シス市場の変化

M&A全体の流れ

5F分析とは

スタンドアローン問題

サンクコスト効果(コンコルドの誤謬)

SWOT分析とは

著者画像

株式会社WARC

瀧田桜司

役職:株式会社WARC 法務兼メディア編集長/ 学歴:一橋大学大学院法学研究科修士課程修了(経営法学)及び京都大学私学経営Certificate/ 資格:司法試験予備試験・行政書士など/ 執筆分野:経営学・心理学・資格・キャリア分野のコラム記事を担当させていただく予定です

満足度98%のキャリアコンサル

無料カウンセリングはこちら