マネージャーになると、部下の個性に合わせてマネジメントスタイルを変えていくことが必要になります。
今回はその際に役に立つ心理学理論をご紹介します。
その名も「観客効果」です。
本連載では、ビジネスで活用できそうな心理学理論や重要なキーワードをご紹介しております。
今回はモチベーションに関連するキーワードとして「観客効果」「社会的促進」「社会的抑制」の3つをご紹介していきたいと思います。
組織運営を行う上で、知っておいて損はない理論(現象)でございますので、これを機に抑えておきましょう。
観客効果(Audience Effect)とは、他人から見られているという状態によって引き起こされる作業効率の変化のことを意味します。
観客効果には、以下の2種類あります。
今回はこの2つの変化について解説していきます。
社会的促進は、トリプレット氏(Norman Triplett インディアナ大学)が1898年に最初に提唱したと言われています。
トリプレット氏は、自転車競技において、一人で走ったときのタイムより、競争させた方がタイムが縮まったという事象を発見し、その理由を調べるために実験を行った結果、他人と一緒に作業をさせた方が作業効率が良くなるという現象を発見しました。
その後、ノースカロライナ大学のオールポート教授(Floyd Henry Allport ハーバード大学博士号)によって研究が進められ、後に「社会的促進」という名称で提唱されました。
オールポート教授はその後もこの分野の研究を続けて、1924年に社会的促進の逆の現象である「社会的抑制」も起こるという発見をしました。
このオールポート教授の論文から100年ほど経っていますが、社会的促進と社会的抑制の原因は未だによくわかっておりません。
多くの研究者が様々な仮説を打ち立てて実験を繰り返しておりますが、確かな原因はまだ解明されていないようです。
しかし、わかってきている部分もあります。
批判もあるところですが、社会的促進・社会的抑制が起こりやすい作業の性質というものがあるようです。
まず、社会的促進については、単純作業で、かつ慣れている作業で発生しやすいといわれています。
一方で、複雑な作業や慣れていない作業については、社会的抑制が発生しやすいそうです。
ということは、単純作業で、かつ慣れている作業については、あえて観察者を置いた方が、社会的促進が発生しやすいということになります。
これは実務でも応用できそうな事例です。
例えば、テレマーケティングや事務作業などの慣れてしまえば単純な作業となっていく業務において、ある程度業務の習熟度が上がった時点であえて観察者を置けば、社会的促進を意図的に発生させられるかもしれません。
その結果、通常よりも良い業績を出すことが期待できます。
一方で、M&Aコンサルや会計コンサルなどの複雑な作業においては、観察者を置いてしまうと社会的抑制が発生しやすくなる可能性があるため、あえて観察者を置かずに、コンサルタントの裁量に任せる部分を増やすという方法が考えられます。
いずれにしても、個別の業務及び個別の従業員の性格に応じて実務上の取り扱いを変えなければならないでしょう。
そういう意味でも、今回の観客効果(社会的抑制・抑制)を知っておいて損はないと思います。
今日は短い記事でございましたが、内容としては比較的重要度の高いキーワードです。
日々行う業務の中で、社会的促進が発生しやすい業務・従業員と、社会的抑制が発生しやすい業務・従業員をよく観察し、適宜対応を分けて行きましょう。
難易度が高いことではありますが、マスターできれば一段上のマネジメントができるかもしれません。
ではまた次回の記事でお会いしましょう。
WARCで働きたい!WARCで転職支援してほしい!という方がもしいらっしゃれば、以下よりメッセージをお送りください。
内容に応じて担当者がお返事させていただきます。