ものの見方や考え方、捉え方などには、各人それぞれにクセが出てきます。
それが個人の価値観となって現れるのですが、その価値観は、良くも悪くも組織に大きな影響をもたらしてしまうことがあります。
そこで今回は、価値観に基づく採用のヒントになる心理学分野をご紹介したいと思います。
本連載では、ビジネスで活用できそうな心理学理論や重要なキーワードをご紹介しております。
今日ご紹介する「ゲシュタルト心理学」は、少し難しい話なのですが、組織構築及び採用においてとても重要な考え方です。
できる限り簡易化してお伝えしようと思っておりますので、ぜひ最後までお付き合いください。
ゲシュタルト心理学とは、心理学の学派の1つで、物事を解釈する際には全体を見て判断するべきで、全体を構造的に見て判断した場合には、解釈が人それぞれ異なってくる可能性があると考える学派です。
当たり前のことを言っていると感じると思いますが、昔の人たちは全く逆の考え方をしていました。
大昔の心理学では、事実は一つであり、客観的に判断すれば全員同じ認識、解釈に至るはずだと考えていたのです。
とても面白い着眼点の違いだなと思います。
事実はいつも一つと考えるか、事実は見方によって変わると考えるかの違いです。
なお、ゲシュタルトとは、ドイツ語で「形態」「姿」を意味する単語です。
同じ文字をずっと見続けているとその文字を認識できなくなったりしますが、それを「ゲシュタルト崩壊」といいますよね。
あれも「形態(ゲシュタルト)を認識できなくなってしまう」という意味です。
このゲシュタルト心理学は、今では様々な分野に派生しているので、それぞれの分野で研究が進んでいます。
そのため、現時点では、ゲシュタルト心理学は「部分ではなく全体を見ることを重視する学派」という程度の理解で良いと思います。
そして、全体を見て判断する場合、人間の認知・認識・解釈には違いが出てきます。
この視点は、組織構築及び採用という場面で極めて重要な視点で、日頃意識しづらいことでもあります。
世の中にはいろいろな考え方の人がいて、中には組織に絶対に適合できない、または自社に絶対に合わない考え方をしている人もいます。
それを見抜く場が採用面接という場なのですが、短い時間で他人の認知・認識・解釈の「違い」を理解することは難しいです。
ただ、分析しやすくするための類型化はできると思うので、今日はこの辺りのお話をさせていただきます。
人間にはそれぞれ思考のクセや行動のクセがあり、そのクセはその人の価値観が顕在化したものです。
そして、本人以外から見ると、その思考や行動のクセそのものがその人の「性格」として認識されます。
この分野の研究は、現在では「パーソナリティ心理学」という学問分野で研究されていて、様々な類型論が存在します。
しかし、それをここですべて解説するのはあまり合理的ではないので、今回は重要な以下の3つの類型だけ解説していきましょう。
なお、名称はとりあえずでつけているだけですので、各自で呼びやすい呼び方に変えていただいて構いません。
では、それぞれ説明します。
ポジティブタイプは、物事を楽観的に捉えがちな類型で、物事を自分にとって都合の良いように解釈するクセがあります。
良く言えば、物事の良いところに着目して、肯定的に捉えようとする人、悪く言えば、あまり深く物事を考えていなかったり、多面的思考ができていなかったりする人です。
このタイプは、基本的に明るい性格の人が多く、社交性も高いです。
そのため、ムードメーカーとしての役割を担うことが多いタイプといえます。
ベンチャーでは気に入られやすい思考傾向だと思います。
業種で言えば営業職、事業開発などに適しています。
一方で、ポジティブシンキングが強すぎる人は、物事の良い面しか見ない(見えない)人が多いので、自分自身の能力について過信が生まれやすく、不注意によるミスを招きやすい傾向があります。
基本的に細部まで調べたりしませんし、ダブルチェックも怠りがちなので、短絡的な思考・行動を取ることが多いです。
それが愛嬌として許される場合は良いですが、重大なミスに繋がることもあるので、精密な作業を必要とする職種(経理・財務など)には若干不向きだと思われます。
ネガティブタイプは、ポジティブタイプとは真逆の人で、物事の負の面に着目するタイプです。
そのため、基本的に消極的で、一見すると付き合いにくいタイプに見えることがあります。
しかし、ネガティブな思考傾向ができるということは、物事の負の部分までしっかり見えているということでもあるので、思考法の活用の仕方次第では極めて有益な視点を提供してくれます。
職種でいえば、融資審査の担当者や内部監査の担当者などに適していて、デフォルト(債務不履行)の兆候や不正の兆候を見逃さずに見つけ出してくれることが多いです。
また、ネガティブシンキング傾向が強い人は、組織のブレーキ役を担うことが多いです。
ベンチャーあるあるですが、組織の中にポジティブシンキング傾向ばかりが集まることが多いので、頻繁に暴走します。
そのまま行くと、大抵は大きな損失を出してしまうのですが、経営陣にネガティブタイプが数人いれば、ある程度ブレーキをかけてくれます。
そういうバランスをとる役割を担うことが多い類型です。
クリティカルタイプは、物事を批判的に考察する傾向が強い類型です。
ここでいう「批判的」とは、物事を多角的に分析して、より合理的な判断をするという意味です。
この類型の人達は、物事を冷静に分析してから結論を出す傾向が強いので、初期段階では情報収集に時間をかけます。
それゆえ、質問も多くなりがちですし、様々なソース(根拠となる資料)を探し出そうとします。
また、細かいところまで注意を払う傾向があるので、大雑把な人からすると「細かくて面倒くさい人」と思われがちです。
しかし、ビジネスにおいては最も貴重なタイプだと思います。
特に専門職(経理・財務・法務・経営企画など)においてはこの思考傾向の人材が重宝されますし、必要です。
ただ、クリティカルシンキングにも大きな弱点があります。
それは、他人との交流が下手な人が非常に多いという点です。
クリティカル傾向が強くなっていくと、他人の言う事を1回で鵜呑みにすることがほぼなくなります。
それゆえ、何でもかんでも質問しますし、後で自分で調べて信頼に足るソースがない限り信用しません。
それを繰り返すと、周りからは「空気が読めない人」だとみなされます。
また、クリティカル傾向が強い人達は、自分の思考力に自信を持っていることが多いため、自分が他人よりも一段深いところまで考えているという認識を持ってしまっています。
そのため、基本的に「自分の方がわかっている」「自分の方が考えている」という態度をとります。
その結果、他人に対して上から目線の発言をしてしまったり、若干攻撃的な物言いをしてしまいがちです。
したがって、諸刃の剣的人間だと思っていただければ良いかなと思います。
以上3つの類型があります。
自社の組織に合うのはどの類型でしょうか。
そして、自分の組織内に必要な類型はどの類型でしょうか。
このあたりの論点を良く考えてから採用活動をすると、要件定義が明確になって採用に成功しやすくなります。
ということで今日は、ゲシュタルト心理学の考え方を出発点として、人間の価値観の類型について3類型だけご紹介しました。
採用活動や組織構築に活かしていただければ幸いです。
ではまた次回。
WARCで働きたい!WARCで転職支援してほしい!という方がもしいらっしゃれば、以下よりメッセージをお送りください。
内容に応じて担当者がお返事させていただきます。