本連載では、ビジネスで活用できそうな心理学理論や重要なキーワードをご紹介しております。
今回は、リーダーシップ論の分野から「PM理論」をご紹介したいと思います。
この理論は、マネジメントに関する重要な理論で、1966年に提唱されたものです。
若干古い理論ではありますが、組織心理学分野ではとても重要な理論の一つです。
しかも、心理学の世界では非常に珍しいことですが、日本人が提唱した理論でもあります。
PM理論とは、三隅二不二教授(大阪大学名誉教授)が、1966年にリーダーシップ論の分野で提唱した理論です。
その内容はかなり理解しやすいものです。
まず、PM理論では、リーダーの「行動」に着目します。
そして、リーダーの行動には、以下の2つの機能が存在するという仮説を提唱しています。
例えば、目標達成のための計画策定、進捗管理、部下の指導などの行動がP型(課題達成型)の行動に該当します。
このP型の行動傾向が強い人は、目標達成にこだわる傾向が強いので、成果を上げる人が多いです。
そのため「結果を出すリーダー」という印象を持たれやすいです。
一方で、部下の相談に乗ること、部下を励ますことなどの人間関係の調整活動を行うのがM型(集団維持型)の行動です。
このM型の行動傾向が強いリーダーは、部下から信頼されやすいので「人望があるリーダー」という印象を持たれやすいです。
上記の2つの機能のうち、どちらを重視した行動が多いのかで、リーダーを4つに類型化しようと試みたのがPM理論です。
PM理論では、P型の傾向が強い人を大文字の「P」で表現し、P型の傾向が弱い人を小文字の「p」で表現します。
同様に、M型の傾向が強い人を大文字の「M」、弱い人を小文字の「m」で表現します。
したがって、4つの類型は以下のような組み合わせになります。
内容としてはこれだけです。
シンプルでわかりやすい理論です。
上記の4類型を解説していきましょう!
4つの類型の中で、最も優れたリーダーは「PM型」です。
このリーダーは、課題達成に対するこだわりが強く、かつ、部下や同僚の人間関係にも配慮できる人です。
極稀に存在しますが、そういう人は会社側が手放さないことが多いので、転職市場で見かけることはほとんどありません。
順調に出世して、報酬も上がっていくことが多いので、転職をする理由がないからです。
そのため、もし会社内にPM型がすでにいるのであれば、大切にしましょう。
そして、若手で先々マネジメント層を目指そうと思っている人は、今のうちにPM型の特徴をよく理解し、日頃から行動に注意を払いましょう。
PM型に至るためには、数字を追いかけるだけでもダメですし、部下や同僚との人間関係に気を配るだけでもダメです。
両方ができて初めてPM型となります。
言うは易く行うは難しの典型例ではありますが、極稀に存在しているため、なれないことはないのだろうと思います。
pm型は、課題達成の意欲も弱く(結果を出せない)、かつ、人間関係にも配慮しない(人望もない)人です。
なぜリーダーに選ばれたのかわからないというタイプのリーダーで、正直にいうとリーダーには適していません。
しかし、そういう人を管理職に置いてしまっている会社がかなり多いのが現状だろうと思います。
pm型をリーダーにしたままだと、遅かれ早かれ組織そのものが崩壊していくので、できる限り早い段階で降格、入れ替え等を行うべきだと思います。
そのまま放置していると、優秀な人材から抜けていくことになります。
また、若い頃はPM型の優秀なリーダーだったのに、中年になってからやる気を失って、pm型になってしまった人も少なからず存在します。
やはり人間も老化には勝てないので、心も身体も若い頃のようには動かなくなっていきます。
そうなってしまったリーダーを管理職に置いたままにしても良いことは一つもないので、早めに若い優秀なリーダーに入れ替えて行くべきだと思います。
それができない会社は、優秀な若手を失うことになります。
Pm型は、課題達成の意欲が強いので、業績を出す傾向があります。
しかし、人望はないため、部下から信頼されていません。
このタイプのリーダーは、体育会系営業会社に多い類型で、短期的に見ると良い業績を上げてくれます。
自分の業績に対するこだわりが強いため、部下を脅迫してでも強制的に目標を達成させようとする傾向が強いです。
ときにはそれが行き過ぎて、パワハラをしたり、不正な行為で数字を作ったりもします。
このようなリーダーの場合、長期的に見ると部下のモチベーションを低下させてしまい、組織は徐々に疲弊していきます。
数年もすれば、離職率の上昇となって異変が現れてくるので、時間の経過と共に良好な人材が減少していき、人材不足問題が深刻化していきます。
この類型のままだと、リーダー本人のキャリアにもメリットがあまりありません。
一歩間違うとパワハラで訴えられたりしてその後の人生が詰みます。
せっかくP型の傾向が強いのですから、同時に部下の心にも配慮し、信頼関係を築く努力をすると良いかと思います。
ただ、過去の実務で見てきた事例を顧みると、Pm型のリーダーは大抵「自分は人望もある」と考えています。
この類型のリーダーは、目標を達成するために部下を言葉や態度で追いつめる傾向がありまして、その結果、周りにイエスマンだけが残りやすくなります。
そうすると、周りの人から注意してもらえる機会が激減するため、自分の能力への勘違いに気づけないまま年齢を重ねてしまうのです。
最悪の場合、ナルシズムを併発してしまい、自己愛と自尊心が暴走しがちです。
自分の周りにいる一部のイエスマンたちだけを見て、自分が特別な存在であると勘違いしてしまいます。
この場合、自分を変えるチャンスすら生まれないので、変われないままキャリアの終焉を迎えます。
自分がそうならないように、自分を客観視するスキルだけは失わないようにしないといけません。
最後にpM型は、課題達成能力は低いので、あまり結果を出せるタイプではないですが、部下への配慮や人間関係の構築能力には優れているので、部下からの評判は良いことが多いです。
この類型のリーダーが統括する組織は、大抵良好な人間関係が形成されます。
しかし、目標を達成するために計画を立てたり、自分で戦略を練って実行したりすることが苦手なリーダーなので、仲良しチームで終わってしまいがちです。
数字を追わなくて良いという意味で、経営管理部門などの間接部門のマネージャーとしては活用できそうなリーダーですが、営業部門の責任者には不適格だと思います。
大抵は数字を作れないままで数年過ごすことになるので、降格させられます。
ただ、この類型の人は、元々の人間性はとても良いのですから、後は経営計画の策定スキルや実行力さえあればPM型に変化できます。
P型の能力は努力でなんとでもなると思うので、この類型には伸びしろがあると考えて良いと思われます。
他の方法としては、この類型の上司に、P型の要素が強い部下をつけて、補完関係を形成させるという方法もあります。
すべてのことを一人のリーダーがやる必要はないと思うので、組織を形成する側(主に経営陣)が、上手に組織を構築して、補完し合える組織を作れば、より多くの優秀な人材を有効に活用できます。
リーダーシップ論や組織心理学のテキストの多くで記載されているPM理論ですが、実際の実務でどの程度使えるのかというと、少し難しいと思います。
もちろん、知識的には有益だと思いますし、類型論としても活用可能だと思います。
しかし、そのままこの理論で実務の難問が解決できるという代物ではないです。
確かに、良きリーダーがPM型であるという点は同意するのですが、実務の世界でより重要なのは、PM型になる具体的な方法です。
しかし、そういうメソッド的なものは経営学・心理学の範囲外です。
そのため、類型論と各類型の説明までで終わってしまうことがほとんどなので、PM理論が直接的に実務で活用できるわけではありません。
どうやったら課題解決能力(P型の能力)を高められるのか、どうすれば集団維持能力(M型の能力)を高められるのか。
そういう実務で役に立つ論点の回答については、おそらく我々実務家の方が答えを見つけやすいだろうと思います。
ということで今回は、PM理論について簡単に解説させていただきました。
どのテキストにも記載されているような理論なので、すでにご存知の方の方が多いと思います。
自社のマネージャーたちを類型化するときにでもご活用いただければ幸いです。
では、また次回の記事でお会いしましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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