本連載では、ビジネスで活用できそうな経営学理論や重要なキーワードをご紹介しております。
今回解説するキーワードは「ステークホルダー」です。
ステークホルダー(Stakeholder)とは、利害関係者という意味で使用されている用語です。
元々Stakeには「賭け金」という意味があり、それをHold(保有)する人という意味で賭け主や賭け金の保管人という意味で使われていた単語です。
その後、エドワード・フリーマン教授(Robert Edward Freeman,バージニア大学経営学教授)が“Strategic Management: A Stakeholder Approach.”という著書(1984年)を出版し、当該書籍内において「利害関係者」という意味で使用したことで、ビジネス界でも広く使われるようになりました。
現在では、フリーマン教授の理論は「ステークホルダー理論」として広く知られています。
ステークホルダーという言葉は今ではもう一般用語となっており、経営学分野だけではなく、会計学、法学、社会学などでも普通に使用されています。
ステークホルダーという用語が普及してきた結果、今では様々な関係者をステークホルダーと認識する動きがでてきており、ステークホルダーがどんどん広義になっていっております。
最近よく語られているステークホルダーの範囲を挙げるだけでも以下のような状態です。
etc...
ここまで意義が広がってくると、単に「ステークホルダー」という単語だけでは混乱を招くおそれがあります。
そのため、ステークホルダーという単語を用いる際は、必ず定義を明らかにした上で使用することをおすすめいたします。
また、ステークホルダー間の利害関係は必ずしも一致していない点にも注意が必要です。
例えば、株主と債権者は双方ステークホルダーですが、両者の利益関係は全く異なります。
したがって、ステークホルダーという単語を用いる場合は、具体的に誰の利益の話をしているのかを明確にしないといけません。
上述の通り、現代のステークホルダーは多義的で、様々なパターンがあります。
そのため、個別具体的な関係者を指して言いたい場合は、言い換えフレーズを覚えておくと便利です。
以下、例示として、法学や経営学分野でよく使われる言い換えフレーズを共有いたします。
一応英語でも記載しておきましたが、私は日本語を使うことを推奨いたします。
なぜなら、英語を用いると、複数の意味で理解することが可能となってしまうからです。
特に日本人が使う英語は曖昧な意味で使っていることが多く、明快ではありません。
例えば、イケてる風なサラリーマンが、お客様のことを「クライアント」ということがありますが、このクライアントという表現には、日本語でいうところの、依頼をいただいている顧客(業務委託者)という意味と、単なる消費者という意味と、サービス提供する可能性がある未来の顧客という意味、さらには贔屓にしているお得意様という様々な意味があって、日本語ではそれぞれニュアンス(微妙な意味合い)が異なります。
そのため、複数の意味で解釈できる場合が多々あるのです。
このような無用な混乱を避けるためにも、極力日本語で表現したほうが良いと個人的には考えています。
同じ分野の専門家同士の会話では、ほとんどストレスなく専門用語を多用して会話をすることができます。
しかし、ほんの少しでも領域が変わると、同じ単語でも少しだけニュアンスが異なる意味で使われていたり、全く意味が異なったりします。
ビジネスの世界で小さな誤解をそのまま放置しておくと、次第に大きなすれ違いが生まれ、それが最終的に大きな損失に繋がるおそれがあるので、会話の中で専門用語を使用する際は、必ず定義を明らかにしておくべきだと思います。
私自身もよく忘れることなので、これは自戒のためにも書き記しておきたいことです。
ということで、今回はステークホルダーについて解説させていただきました。
最近は様々な文献で、いろいろな意味で「ステークホルダー」という用語が使われているので、読み手としてこの用語と向き合うときは、先に定義を確認しておきましょう。
仮に定義が明らかにされていないのであれば、その文献の質はあまり高くないということがわかります。
そういう意味では、ステークホルダーという用語は、良い文献を見分けるツールとしても使えそうですね。
それでは今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回の記事でお会いしましょう。
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