学校でもビジネスでも常に発生リスクがある「いじめ」という問題。
この問題について、どのような類型が存在し、どう対処すべきでしょうか。
この点について考えてみたいと思います
本連載では、ビジネスで活用できそうな心理学理論や重要なキーワードをご紹介しております。
今回のキーワードは、組織内における「いじめ」です。
ここ数年、学校内でのいじめが社会問題化してきていますが、御存知のとおり社会人になってもいじめは存在します。
組織が大きくなればなるほど、どこかの組織で必ず起こっていることで、それが後々大きな問題につながることもあります。
この「いじめ」に関する対処法については、まだ正解は見つかっていません。
しかし、いくつかの理論を学ぶことで、解決のヒントになることもあると思うので、今回はいじめに関連する理論を紹介しつつ、対処法について私見を語っていこうと思います。
戸田修一さんの著書「動物行動に学ぶ人間学」では、動物界でのいじめについて、2つの類型が存在するとされています。
一つがカラス型です。
日本でも有名なカラスは、社会性及び知性がとても高い鳥類として有名で、集団組織を形成します。
そして、その組織の中には厳格な上下関係が存在します。
このカラスの組織内で発生するいじめでは、主に「自分の身分の一つ下の身分の者をいじめる」のだそうです。
つまり、自分の地位を脅かす可能性がある者をいじめることで、自己の地位を守ろうとするのです。
もう一つが、ニワトリ型です。
こちらも皆さん御存知のとおり、あのニワトリですが、ニワトリはあまり頭の良い動物ではありません。
私も飼育係で育てていたことがあるのでよく知っていますが、どちらかというと知能は低い動物です。
このニワトリの組織内では、主に「最も弱い個体をいじめる」といういじめが行われます。
しかも、ニワトリのいじめは集団で行われます。
特定の個体(最も弱い個体)がターゲットになり、その個体を多くのニワトリが集団でいじめます。
このいじめは、ハトにおいても同様の傾向が見られるそうで、ハトの場合は当該個体が死ぬまで続けるという特徴があるそうです。
上記の2つの類型を人間社会にあてはめて考えると、カラス型が社会人でよくあるいじめの類型といえ、ニワトリ型が小中高でよくあるいじめの類型といえそうです。
カラス型とニワトリ型のいじめが発生する条件にはどのようなものがあるのでしょうか。
この点について考えていきましょう。
私が思うに、人間界でカラス型のいじめが発生する条件は、以下の4つの条件が揃ったときであると考えています。
上記の条件の中で特に重要なのは「無能な上司が暇である」という点です。
そもそも、いじめという行為自体が、暇人にしかできませんので、上司が暇であるという状態が最も危険な状態だと思います。
無能な人間は時間を持て余すと本当にろくなことをしませんので注意が必要です。
組織が大きくなって、業務が安定して管理職が暇になってくると、いじめの発生リスクが高くなります。
そのため、事業が安定期に入ったら、経営陣は注意深く組織を観察するべきです。
大抵どこかで良からぬことが発生しています。
続いて、人間界でニワトリ型のいじめが発生する条件は、以下のようなものが考えられます。
こちらも「集団が全体的に暇である」という条件が重要だと考えています。
小中高でニワトリ型のいじめを多く見てきた経験から述べさせていただくと、やはり集団が全体的に暇であるという状況でないと、いじめは発生しづらいと思うのです。
中学3年生や高校3年生などの受験直前期などには、明らかにいじめが減少します。
そして、集団内に暇な人間が多いと、最初は時間つぶしのための軽い遊びのつもりで弱い人間を弄り始めます。
それが少しずつエスカレートして、取り返しがつかないレベルのいじめに発展していきます。
ニワトリ型のいじめはそのようにして徐々に深刻化していくものだと思っています。
また、ニワトリ型の場合、集団の平均的な知能が低いことが多いので、自分たちが行っている犯罪行為を犯罪だと認識していないことがほとんどです。
さらに、いじめがエスカレートしていく中で、気性の荒い人間がより幅を利かせるようになっていくので、集団内のブレーキ役がいなくなっていきます。
正常な判断能力と知能を持った大人であれば、いじめをしている自分を客観視できるため、組織内の自浄作用が期待できます。
しかし、知能の低い集団はそういう「客観視」という能力をほとんど、ないしは全く持っていません。
誰かに指摘されたとしても、自己を顧みる能力を持っていないため、それを自分への敵対行動とみなすだけで一切改善しようとはしません。
むしろ反論してくることの方が多いくらいです。
ニワトリ型は小学校で最も多く発生するいじめの類型だと思いますが、中学生、高校生でも知能が低い集団内ではよく発生します。
もちろん、大人の世界でもです。
もし自分の子供がそのターゲットにされたとしたら、という想定を常に考えておくべきです。
そして、理性のある人間の行動ではないという点を忘れないようにしてください。
相手はニワトリレベルの脳なので、高度な日本語で説明しても意味をなさないことが多いです。
大人のいじめであっても、場合によっては深刻な状況になり得ます。
働く場所を選び間違うと、キャリアそのものを汚されてしまうことがあるので注意が必要です。
そこで以下では、大人のいじめと子どものいじめに分けて、対処法を検討してみます。
大人のいじめについて、カラス型・ニワトリ型で対処法を考えてみましょう。
なお、以下では会社側の視点でみた対処法であり、被害者側の対処法ではありません。
被害者側になってしまった場合の選択肢は限られていて、人事部や法務に相談して異動させてもらう(または加害者を異動させる)、もしくは転職するなどがあります。
誰とも争わずに済む最も効果的な方法は転職です。
いじめが発生していて、それを放置するような会社に居続けるのは、キャリア的にも人生としても損失が大きいので、転職を検討するのが合理的かもしれません。
まず、大人のカラス型のいじめでは、無能な上司と優秀な上司の存在が不可欠です。
両方無能又は両方が優秀であればそもそもカラス型は発生しません。
ということは、カラス型のいじめを発生させない最も簡単な方法は、優秀な人間を管理職にすることです。
上司と部下が双方共に優秀な人間であれば、双方が自己の能力を上げることに専念しますし、全体最適の観点から業務を行いますので、いじめそのものが発生しづらい構造になります。
そのため、優秀な人間を管理職に任命するのが最も簡単で効果的な手段です。
しかし、優秀な人材がいつも豊富にいるはずもないため、時には致し方なく社歴の長さなどで判断してあまり優秀ではない人間を管理職に任命せざるを得ない状況もあるかもしれません。
その場合は、そのあまり優秀とは言えない上司を忙しくしましょう。
いじめなどを行う暇が無いほどタスクを与えると良いと思います。
ただ、あまり優秀ではない人の場合、自分でそのタスクを一切処理せず、部下に放り投げる可能性もあるので、経営陣による監視が必要不可欠となります。
また、あまり優秀ではない人間がよくやることとして、自分を優秀に見せるためにマッチポンプ型の成果を上げることがあります。
こちらについても経営陣の監視が必要です。
例えば、自分で意図的に問題を発生させて、それをこれ見よがしに火消しすることで「私がいないと組織は回らないでしょ」というアピールをするのです。
これはけして珍しいことではなく、無能な管理職がよくやるやり方です。
自分で問題を発生させるという点が危険で、ここでその問題を優秀な部下のせいにするわけです。
それによってカラス型のいじめを行っていきます。
経営陣は日頃経営に集中していることが多いため、現場で何が起こっているかを正確に把握することが困難な場合があります。
そして、優秀ではない人間は、自分にとって不利益となる情報をあえて遮断して、上に報告しないという技術にだけは長けていることが多いため、尚の事経営陣が気づけないことが多いです。
そのため、経営陣は意識的に最下層の従業員との対話を大事にしてください。
組織や経営にとって本当に重要な情報は、現場のメンバーが保有しています。
ニワトリ型のいじめが大人の世界で発生する場合、その多くは組織内の平均的な知能が低いから発生しています。
不思議なことに、平均的な学力がとても高い組織(プロフェッショナル集団の組織)では、いじめなどの問題はほとんど起こりません。
いじめを行うような人間は、周りの人たちからこれでもかというほど注意され、逆に潰されることが多いからです。
※もちろん例外的に残念な組織も一部存在します
最近はベンチャー企業でも、何らかの基準によって学力によるフィルターをかけることが多くなりましたが、これは正しい方法だと思います。
組織内の学力が低いことによるメリットはほとんどないので、学力の高さを基準にしてフィルターをかけることには合理性があります。
ただし、何をもって「学力が高い」といえるのかは検討が必要です。
SPIのように仕事で一切使わないであろう算数問題が解けることを学力と考えるのか、それとも何らかの専門分野を持っていて、その分野で高い専門性と学習実績を持っていることを学力が高いというのか。
それぞれの会社がしっかり考えて定義づけしないといけません。
そしてその基準の明確性を何らかの試験を課すことで分析するのか、それとも資格を保有していることや実務経験で判断するのかを決めておくべきです。
現実的には、試験を作成する工数などの問題があると思うので、学歴・資格・実務経験の3つの要素を総合的に考慮することになると思います。
それによって、組織内の平均的な学力を統一することで、ニワトリ型のいじめをする人たちをある程度排除することができます。
また、学力に関する基準を設けることと並行して、性格がキツイ(気が強い)人物の採用に対して慎重になるべきだと思います。
我が強い、気が強い、攻撃的、他責傾向など様々な表現方法がありますが、いずれにしても、性格的側面はじっくり分析する必要があります。
たしかに、高い業績を出す人間というものは、多かれ少なかれ我が強いです。
しかし、我が強い ≒ 能力が高いということではありません。
私の知る限りでは、本当に優秀な人はむしろ温和な性格で、対外的にもおとなしい人が多いです。
一方で対外的に気が強い人や気性が荒い人は、見せかけの能力ということが多いです。
この違いをしっかりと理解し、分析した上で、採用に踏み切ったほうが失敗を減らせると思います。
少なくとも温和な人たちだけの集団ではニワトリ型のいじめはほとんど発生しないので、良好な人間関係を築きやすい組織になります。
続いて、子どものいじめへの対処法について考えてみましょう。
こちらについてもカラス型とニワトリ型に分けて検討していきます。
なお、今回は親の視点で対処法を述べていきます。
まずカラス型についてですが、小学生レベルの子ども社会でカラス型が発生することは少ないと思います。
少なくとも私はほとんど見たことがありません。
一方で、中学校・高校になると明確に階層ができます。
それが先輩・後輩の上下関係です。
体育会系の部活動ではこの階層が強く意識され始める時期です。
ここではカラス型のいじめがよく発生しています。
中高でカラス型のいじめが発生しやすい部活動としては、野球、サッカー、バスケ、バレーなどの主に体育会系の部活動です。
そして、このいじめが厄介な点は、その部活動を辞めると当該スポーツができなくなるという点にあります。
たしかに、いじめ自体はなくなる可能性が高いのですが、辞める側に大きなデメリットが発生します。
このデメリットは、中高生にとって非常に大きなものであり、なかなか承諾できないでしょう。
この場合、保護者が学校に乗り込んでいじめを行っている上級生を辞めさせるという方法もありますが、学校側が協力的に対応してくれるケースは稀だと思います。
私の知る限り、ほとんどの学校ではいじめは存在しないものとして扱われますし、あの手この手で穏便に済ませようとしてきます。
更に酷いところでは、その部活動の主力選手であるという理由で、処分を一切しないことが多いです。
対面上は協力的な姿勢を見せつつ、結局は何もしないという学校が多いでしょう。
その結果、いじめられている学生は更に酷い制裁を受けることがあります。
教育関係者を非難したいわけではないですが、教員や学校側に過度な期待をしない方が良いと思っています。
「最終的に子供を守れるのは親だけ」ということを理解しておいた方が良いです。
私が保護者ならば、いじめが発生している可能性がほんの少しでもあったら、すぐに子供と本音で話します。
すぐには話してくれないかもしれませんが、根気強く、毎日でも話を聞こうとします。
その上で、解決策をいくつか提示します。
一つは、外部のクラブ活動に転籍することです。
名門の私立中学や私立高校であれば、いじめ自体がほとんど発生しないので、このような対応をする必要性自体が乏しいのですが、公立中学や公立高校では、いろいろな学力の生徒が集められる結果、いじめが発生しやすい構造になっています。
そのような狭く苦しい世界の中で、子供のスポーツに関する才能を潰すのは非常に勿体ないです。
そのため、外部のクラブ活動への参加も選択肢に入れ、より広い視野で子どもの選択肢を提示してあげるべきです。
私の知る限り、外部のクラブチームの方が、まだ人間的にもまともな選手が多いです。
それに、ハイレベルな技術を持っている人も多いので、そういう場所に行った方が子どもにとってもプラスになるでしょう。
次に、その学校からの転校も視野に入れます。
意外と知られていませんが、中学校や高校は転校可能となっています。
確かに手続は大変ですし、面倒な交渉も発生することが多いです。
しかし、子どもの命を守ることの方がより重要だと思うのです。
私なら即断即決で引っ越します。
この選択肢は極めて強い効果を持っていて、成功事例も多い方法です。
もう20年以上前の話ですが、私の同級生(女の子)が酷いいじめにあいまして、それを知ったお父さんが、極めて早い段階で引っ越しを決断して、すぐに転向していったのです。
その数年後に、彼女と話す機会があったのですが、本当に楽しそうな学校生活を送っていて、別人のようでした。
環境をガラッと変えてしまうという選択は、親にしかできないことなので、選択肢の一つとして、常に持っておくべきことだと思います。
そもそもいじめが発生している学校で、当該いじめを根絶できる可能性はゼロに近いです。
たとえ一時的な(表面的な)解決ができたとしても、多かれ少なかれいじめは再発します。
いじめを行うような人間が存在している時点でその学校は詰んでいますし、その人間が改心するなんてことはほとんどありえないです。
そういう人間は大抵大人になってもいじめをし続けていますから。
また、周りの大人(教員)らが管理できる範囲は極めて限定された時間帯と範囲だけです。
学校内には死角が山ほど存在しますから、証拠を残さずにいじめを行うことも容易いです。
そんな場所に子どもを放置することがけして正解だとは思えません。
だからこそ、親として子供に複数の選択肢を提示してあげてください。
意思決定は子どもが行うべきですが、選択肢を増やす活動は親がするべきです。
それによって、子の心はだいぶ救われます。
小中高で発生するいじめの多くは、ニワトリ型のいじめです。
身体的に障害を持っている子、運動が苦手な子、勉強が苦手な子、何らかの身体的特徴を持っている子、貧しい家庭の子。
これらの弱みを持っている子たちは、大抵いじめの標的になります。
このようないじめで本当に恐ろしいことは、加害者側の親もまた同類であることが多いという点です。
つまり、いじめを学校に抗議等した場合、加害者側の親が逆上して、何らかの仕返しをしてきたり、何らかの嫌がらせをしてきたりすることがよくあります。
関東ではあまりそういう話を聞かないですが、私の地元では毎年のように発生していました。
子どもは親の鏡なので、問題のある子どもの親も同類であることが非常に多いのです。
そして、地方であればあるほど、人間の属性が固定的(一族が引っ越さずに長く居続ける)なので、代々受け継がれていく負の連鎖が発生しやすいです。
このような地域的なニワトリ型のいじめに対しては、カラス型と同様、その組織からなるべく早く離れることを検討するべきです。
手段の例としては、引っ越し、転校、受験です。
私は、加害者側の子や親が心を入れ替えて反省するなんていう事例を見たことがないので、引っ越しが一番手っ取り早い方法だと考えています。
危険な人間たちに近づかないという冷静な判断を行うべきです。
下手に感情的になって戦闘を開始してしまうと、次は何をされるかわかりませんから。
ただし、社会的制裁は行っても良いと思います。
加害者側から何らかの具体的傷害を受けた場合、病院に行って診断書をもらい、かつ、警察に被害届を出しましょう。
子どもであっても傷害は犯罪ですから、しっかり社会的に履歴を残してやったら良いと思います。
必要に応じて民事裁判を起こして損害賠償請求もしていいと思いますが、住所等が知られますのである程度仕返しのリスクについても覚悟もしておくべきです。
また、もし自分の子どもが通う小学校で、いじめが頻繁に行われるのであれば、早い段階でお受験も検討してください。
公立小学校の場合、いじめを行うような集団が、そのまま同じ中学校に移行することが多いです
そうなると、小中で何年にも渡る辛い経験を子どもにさせることになるので、それだけは避けるべきです。
このような状況から脱却するためにも、お受験によって平均学力が高い子どもたちしかいない場所に我が子を送る方が良いと思います。
中学受験・高校受験で偏差値が高い高校に行かせるというのは、非常に有効な手段です。
なぜなら、偏差値が70を超えるような学校では、ほとんどいじめが発生しないからです。
今日はいじめというテーマで記事を執筆させていただきました。
私自身子育て世代に入っているので、知人たちが子育てで悩んでいるのを知っています。
その中にはいじめの問題が含まれています。
親として、子どもにどのような選択肢を提示できるのか。
一度深く考えてみてはいかがでしょうか。
いつ誰が標的になってもおかしくない時代なので、子どもたちをしっかり守っていきましょう!
また、いじめは大人の社会でも常に発生している事象なので、自分自身が見て見ぬふりをする大人にならないようにしましょう。
誰かのために行動できる人であってください。
では、また次回の記事でお会いしましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
WARCで働きたい!WARCで転職支援してほしい!という方がもしいらっしゃれば、以下よりメッセージをお送りください。
内容に応じて担当者がお返事させていただきます。