本連載では、ビジネスで活用できそうな経営学理論や重要なキーワードをご紹介しております。
今回は「経営戦略のレベル」に関する基礎的な内容を解説していきたいと思います。
経営戦略とは、会社が目指すゴール(最終目標)までの計画のことを意味します。
学説上は様々な定義がなされていますが、根底にあるものを総合すると、ゴールにたどり着くまでの計画と言って良いでしょう。
ここからはかなり抽象的な話になるので、読み飛ばしていただいても良いのですが、イメージを持っていただくために書いていきます。
まず、会社が設定した最終的なゴールまでの「行き方」は無数に存在します。
最終ゴールまでの距離(到達にかかる期間)が長ければ長いほど選択肢が増えていきます。
その選択肢をできる限り洗い出して、どれが最も自社にとって有利なのかを考え、計画を立てるのが経営戦略です。
そして、経営戦略を立てる際には、ゴールまでの間にいくつかのマイルストーン(中間目標)を設定します。
こちらも最終ゴールまでの距離(期間)が長ければ長いほど多くなります。
通常、あまりに長い期間に渡る計画は実現可能性が乏しいと考えられるため、数年に区切って計画を立てます。
それが「中期経営計画」です。
上場企業の多くでは、中期経営計画を公表しているはずですので、参考になると思います。
経営戦略には様々なレベルが存在します。
学説によって分け方は変わってくると思いますが、主に以下の4段階に分けておけば問題ないだろうと思います。
以下、一つずつ解説いたします。
グループ戦略とは、自社グループ全体の戦略のことを意味します。
グループ戦略は、経営戦略の中でも最も高いレベルで、複数の法人の経営戦略を統合したものになります。
そして、グループ会社が多ければ多いほど戦略が複雑になっていくので、より高度な戦略立案技術が必要になります。
ただ、そこまでの規模の企業ならば、社内に経営企画室又は外部の戦略コンサルがいますので、あまり問題はないと思います。
なお、このレベルの経営戦略に関わった経験がある人は転職市場でも少数派なので、若いうちから関われるなら貴重な経験といえます。
コーポレート戦略とは、企業単体での戦略のことを意味します。
コーポレート戦略においては、自社の強みや弱み、事業ポートフォリオ、市場動向など様々な分析を行って、どこにいくら投資をするのか、どういう状態を目指すのか、どうありたいのかを考えていきます。
このレベルの戦略は、その企業の経営陣で話し合って、中期経営計画としてまとめることが多いです。
コーポレート戦略を練る際に重要な点としては、経営トップ層(主に取締役会)がトップダウンで押し付けた戦略はあまり実現しないということです。
現場の実情を深く理解した上で立案しているのであれば効果的なのですが、多くの経営層が現場を把握できていない状況で経営戦略を策定しています。
その状態のまま作った戦略は、地に足がついていない戦略であることが多いため、現場からすると非現実的で、白けてしまうのです。
そうならないようにするためにも、日頃から現場の声に耳を傾けておくことが必要だと思います。
ビジネス戦略とは、事業単体レベル(事業部レベル)の経営戦略を意味します。
まずはその事業で成し遂げたいことを決めて、そこから逆算する形でその事業にいくら投資して、何を開発して、どう売り込むのか、そしてそれらを実現するためにどのような能力・人材が必要なのかなどを検討していきます。
私の個人的見解としては、ビジネス戦略レベルでこそMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を策定すべきだと思っています。
多くの企業では、コーポレートレベルでのみMVVを作成していて、事業部レベルでは作っていません。
小さいベンチャーならコーポレートレベルのみで足りると思うのですが、事業が3つ以上になってきたら事業部単位でそれぞれMVVを作らないと整合が取れなくなっていきます。
各事業の目指すべき道や理想像をMVVとして落とし込んで、それに整合した経営戦略を策定した方が、組織内に経営戦略の内容が浸透しやすいのではないかと思います。
チーム戦略とは、経営戦略の最小単位で、一つのチームまたはユニット単体の経営戦略のことを意味します。
このレベルの経営戦略は、各部署のマネージャークラスが策定します。
上記のビジネス戦略を基礎として、自分のチームの役割を明確化し、どういうタスクをどういう人材に任せることで役割を果たすのかを決めていきます。
このレベルの経営戦略は、多くの管理職の皆さんがすでに経験していることだと思います。
ただ、あまり裁量がないことが多いので、戦略の策定に頭を使うというよりは、どうやってノルマを達成するかに頭を悩ませることの方が多いかもしれません。
以上が経営戦略の4段階レベルの話ですが、日本の企業では、基本的には上から順番に経営戦略が策定されていきます。
すなわち、まず(1)グループ戦略でグループ全体の目標が設定され、次に各子会社にその目標が降ろされて(2)コーポレート戦略が策定され、その後に各事業部に目標が割り振られて(3)ビジネス戦略が練られ、最後に、各部署に目標が割り振られて(4)チーム戦略が練られるという構造です。
言い換えると、大抵の人が「上から押し付けられた目標」を達成するために、無理矢理戦略を作らされているという状況です。
そういう経営戦略に意味があるのかについては疑問が残りますが、サラリーマンである以上は作らないといけないことも多いと思います。
ただ、本来の経営戦略のあるべき姿としては、誰かに押し付けられた目標ではなく、現場の現実を正確に把握した上で自分たちの到達し得る最高の目標を模索して作成すべきだと思います。
そういう意味では(1)から(4)に進むのではなく、(4)から徐々に(1)に向かって戦略が練られていくべきです。
少なくとも各レベルを頻繁に行き来して、双方の折衷点を探すべきだと思います。
実際にそうなっている会社をほとんど見たことがないですが、本来的にはそうあるべきだと思っています。
ということで今回は経営戦略のレベルについて書かせていただきました。
グループ戦略やコーポレート戦略に携われる人は少数(主に経営層が策定する)なので、転職市場でもその分野のプロに出会える機会は多くありません。
そのため、経営戦略に携わりたいと思っている若手の皆さんは、大手企業の経営戦略に携われるコンサル企業に入るか、又は事業会社の経営企画を目指しましょう。
また、もう一つの選択肢として、ベンチャー企業の管理部門を狙うという方法もあります。
ベンチャーでは人数が少ない分、経営管理部門のメンバーでも経営戦略に携われるチャンスが増えます。
ベンチャーの経理・財務・経営企画などで経験を積んでいくと、経営戦略の策定に参画する機会が必ず出てくるので、狙ってみても良いかも知れません。
この記事がその際の参考になれば幸いです。
では、また次回の記事でお会いしましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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