本連載では、ビジネスで活用できそうな経営学理論や重要なキーワードをご紹介しております。
今回は「効率的市場仮説」について解説させていただきます。
効率的市場仮説(The Efficient-market hypothesis)とは、現時点での株式市場における株価には、利用可能なすべての新情報が直ちに織り込まれるため、超過リターン(投資家が取っているリスクに見合うリターンを超えるリターンのこと)を得ることはできず、株価の予測も不可能であるという仮説です。
非常に難易度の高い仮説で、きちんと説明しようと思ったら本1冊分くらいの文量になってしまいます。
今回はできる限りわかりやすく、平易な言葉で書いていきますので、お付き合いいただけますと幸いです。
まず、効率的市場仮説は、1970年にシカゴ大学のユージン・ファーマ教授(Eugene F. Fama, シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネス教授, 金融経済学)が提唱しました。
ファーマ教授はこの効率的市場仮説で2013年にノーベル賞を受賞しています。
効率的市場仮説で重要なことは、日本語でも英語でも「仮説」(hypothesis)となっている点で、まだ証明されていない点にあります。
賢い人たちが何百人と集まっても、50年以上証明できていないのです。
それでもなお、重要性を保ち続けている仮説なので、概要くらいは知っておいても損はありません。
効率的市場仮説には、主に以下の3つの類型が存在します。
以下、それぞれ簡単に説明いたします。
ウィーク型とは、現在の株価は過去に公開された取引価格が反映されていると考える仮説です。
これは比較的感覚に沿った仮説です。
市場で日々刻々と取引される株式の価格が反映されるのは当然だからです。
セミストロング型とは、過去に公開された取引価格に加えて、過去に公開された財務情報も(瞬時に)価格に反映されていると考える仮説です。
ここからはちょっと怪しくなります。
過去に公開された財務情報も瞬時に価格に反映されるという点が少し怪しいです。
たしかに、銘柄によっては株価が瞬時に反応して織り込むこともあると思いますが、そもそも注目度の低い銘柄であれば、財務情報が価格に反映されずに放置されるということもよくあるからです。
ストロング型とは、過去に公開された取引価格、財務情報に加えて、内部者しか知らないインサイダー情報すらもすでに価格に反映されていると考える仮説です。
これはかなり無理がある仮説だなと思います。
銘柄によってはインサイダー情報も反映されている場合もあり得ますが、市場全体には妥当しない仮説だろうと思います。
仮に、ストロング型が正しいと証明されてしまった場合、それはもうインサイダー情報がダダ漏れしているということですから、株式市場が全く信頼できない市場であることが証明されることになります。
そうなってしまうと誰も株式投資を行わなくなるので、ストロング型が仮に真実だったとしても、証明が世に出されることはないだろうと思います。
効率的市場仮説の概要がわかったところで、ついでに全く異なる視点からの仮説もご紹介しておきます。
ここ数年で知名度を上げてきているのは、株価は感情で動くという仮説です。
この分野の研究は、現在心理学と経済学の両分野に跨って行われていて、学問領域としては「行動経済学」という名称で広まっています。
金融街でも行動経済学に着目している研究者が増えてきているので、もしかしたらすでに効率的市場仮説よりも支持を集めているかもしれません。
そもそも効率的市場仮説では情報が瞬時に株価に反映されるため、投資家が儲けにくい構造になっています。
他方で、感情で動くという説では、株価が感情で動くからこそ、プロの株式投資家が市場の歪み(感情的な誤ち)を利用して儲けられます。
現にプロ投資家の多くは市場の感情的な歪みを利用して稼いでいます。
そう考えると、現在の株式市場の実態に即しているのは感情で動くという説だろうと思います。
もっとも、これからAIによる取引が発展していくと、そこに感情が入る余地がなくなっていくので、効率的市場仮説の方に近づいていきます。
果たしてどちらの仮説が勝つのか。
今後の趨勢に注目したいところです。
ということで、今回は効率的市場仮説という少し難しい仮説について解説させていただきました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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