卓越した業績を出すカリスマ的なリーダーたちにはどのような特徴があるのでしょうか。
この点について調査した研究が存在します。
今回はその研究を参考にして、カリスマリーダーの特徴をご紹介いたします。
本連載では、ビジネスで活用できそうな心理学理論や重要なキーワードをご紹介しております。
今回は、MBAでも人気が高い科目の一つであるリーダーシップ論の分野から「カリスマ的リーダーの特徴」に関する理論をご紹介いたします。
この分野の研究は、1940年代から盛んに行われてきましたが、未だによくわかっていないというのが現状です。
そのため、この要件さえ揃えばカリスマになれるという保証はありません。
しかし、カリスマ性のあるリーダーには、こういう特徴が揃っているという目安にはなると思いますので、参考情報としてご参照いただけると幸いです。
1900年代初めの頃は、カリスマ的な人物、経営者、政治家などになるためには、何らかの資質や特性が必要だと考えられていました。
ここでいう資質や特性は、持って生まれた特徴を意味します。
王家の血統などと同様の概念です。
1940年代頃になってもその価値観は残っていて、当時の経営学(まだ経営学と呼べるものではなかったかも)でも、カリスマ的な人物については、何らかの持って産まれた特徴があるはずだと考えられていて、その特徴とは何かという研究が行われていました。
そこで研究されていた特徴は以下のようなものが挙げられます。
その後、1940年代後半になって、ストッグディル教授(R. Stogdill, オハイオ州立大学教授)が、3,000を超える文献を研究して、カリスマ的なリーダーたちの客観的な特徴を研究しました。
その結果、リーダーとしての成功に、ある程度関係していると思われる項目はあったものの、リーダーとそれ以外の人達に際立った客観的特徴の差は見られなかったという研究結果を発表しました。
つまり、見た目や出身階級などの特徴とリーダーとしての成功との間には因果関係がないということです。
その後も経営学及び心理学の分野で、カリスマ的なリーダーには性格的特徴があるのではないか?とか、行動に傾向があるのではないか?など、様々な視点から研究が進められています。
その中で、私が面白いなと思った研究を一つご紹介いたします。
それが、クレアモント・マッケ大学のコンガー氏(Jay A Conger)とカヌンゴ(Rabindra Kanungo, マギル大学)教授の研究です。
この研究では、カリスマ的なリーダーシップを発揮する人物が、どのような行動的特徴を持っているかについて、心理テスト(尺度)を用いて分析するという手法が採用されました。
心理テストは、アメリカとカナダにいる750名の管理職に対して実施され、その結果、優秀なリーダーには以下のような特徴が見られたそうです。
以下、それぞれ簡単にではありますが、解説いたします。
ビジョンの表明とは、自己のビジョンを明確に表明するという特徴です。
カリスマ的なリーダーの多くは、フォロワー(経営仲間や従業員のこと)を鼓舞するような組織的目標を全員に対して示す傾向が強いようです。
その他にも、優れたリーダーたちは、フォロワーの意識を高める言動を多く行い、フォロワーが組織のメンバーの一人として活動することに対して重要性を感じたり、モチベーションを高めたりする言葉をかけるそうです。
この際、フォロワーの心を上手に動かす語り方で話す人が多いようなので、話術にも長けているといえます。
その上、組織の将来のために、新しいアイデアを継続的に生み出す傾向が強く、新たなビジネスチャンスを捉える敏感さも有している人が多いらしく、既にこの時点でスーパーマンではないかと思います。
少なくとも私はそんなリーダーに出会えたことがほとんどありませんので、アメリカとカナダにはとんでもない人がいるということなのでしょう(本心でいうと若干疑っています)。
環境に敏感とは、自分の置かれている環境を熟知しているという特徴です。
ここでいう環境とは、内部環境と外部環境という2つの意味を有しています。
まず内部環境とは、自組織におけるヒト・モノ・カネ・情報の保有状況や自組織内にいる従業員の技能及び文化に関する情報を意味します。
そして外部環境とは、自社の行う事業の市場動向、競合他社の趨勢などを意味します。
カリスマ的なリーダーは、この2つの環境を敏感に察知し、常に情報収集を行っています。
その結果、自分の置かれている環境をよく理解しているという特徴を有しているそうです。
型破りな行動とは、例えば、組織の目標を達成するために型にとらわれない行動に出ること、組織の目標を達成するために従来の方法にとらわれないこと、フォロワーを驚かせるようなユニークな行動をしばしばとることなどが該当します。
ただし、カリスマ的なリーダーの中にはそういう型破りな行動をとる人がいるというだけで、後の研究でも型破りな行動が良い結果に結びついているかという点については、因果関係が薄いという結果が出ているようなので注意が必要です。
こちらはそのままの意味で、リスクがあっても好んで取る傾向が強いようです。
なお、ここでも注意すべき点が一つあります。
それは、何をリスクだと感じるのかは人によるという点です。
たしかに、カリスマ的なリーダーたちの多くは、リスクを好んで取るという特徴を有しているのかもしれません。
しかし、これは彼らが自分たちの行為をリスクの高い行為だと思っているということを意味しません。
むしろ、リスクだと思っていないから取っているだけということの方が多いと思います。
卓越した業績を上げる人の多くは、一般的な人たちと見る視点が違うので、リスクに対する評価も一般とは異なるのです。
そのため、この特徴は、リスクを好んで取るというよりは、他人と違う視点で物事を見ているという特徴に近いかもしれません。
メンバーのニーズに敏感とは、自分の組織のメンバーの感情を敏感に察知することを意味します。
具体的には、カリスマ的なリーダーの多くが、メンバーの感情や要望に対して個人的な関心を持っていることを伝えて、実際にそれらの感情や要望に応えようという活動を行うという特徴を有しています。
このようなリーダーがいれば、部下と上司で相互に好意を抱く関係性が構築されていき、良いチームが出来上がる可能性が高いです。
その結果、良きリーダーとして良い業績を出すのだろうと考えられます。
以上5つがカリスマ的なリーダーの特徴です。
良きリーダーを探すとき、または自分自身が良きリーダーになるときに参考にしていただければと思います。
ということで今回は、カリスマ的なリーダーたちの特徴について、ストッグディル教授らの研究を参考にして解説させていただきました。
参考になれば幸いです。
では、また次回の記事でお会いしましょう。
WARCで働きたい!WARCで転職支援してほしい!という方がもしいらっしゃれば、以下よりメッセージをお送りください。
内容に応じて担当者がお返事させていただきます。