大手企業からベンチャー企業へ転職する場合、組織内の様々な違いによって驚くことが多いかもしれません。
そこで本記事では、転職をする前に最低限これだけは知っておいた方が良いというベンチャー企業の類型論と基本的な組織構造について解説していきます。
大手企業からベンチャー企業へ転職する場合、大手とベンチャーではその組織構造に大きな差異があります。
その構造的差異によって様々な点で驚くことも多いかもしれません。
私自身も大手企業からベンチャー企業へ転職した一人なのですが、最初は戸惑うことの方が多かったです。
そもそもベンチャー企業の組織構造は、少人数で大きなことを成し遂げるための組織であるため、様々な点で大手企業と異なっており、かつ、流動的(変化が激しい)です。
昨日まで存在していた組織が、ある日突然名前が変わったり、解体されたり、統合されたりします。
それがベンチャーの日常ですし、よくあることです。
大手企業でならば大きな事件と認識されるような変化でも、ベンチャー企業では比較的日常的に発生する変化です。
そのようなベンチャーならではの特徴を理解しておくことは、転職者にとってはとても重要なことだと思います。
そこで今回は、ベンチャー企業の基本的な組織構造について、簡単に解説していこうと考えています。
ベンチャー企業への転職を検討されている皆様の参考になれば幸いです。
まず「ベンチャー企業」とはどういうものなのか、というところから始めていきます。
一般的にベンチャー企業とは、これまでにない独自のサービスや製品を開発し、世に提供しようとしている新興企業のことをいいます。
そのためかなり広い概念で、創業間近の小さな企業から、創業10年以上のIPO(Initial Public Offering:新規上場)済み企業まで広く含むことができます。
極端な例でいえば、我々WARCのような創業10年未満の小さな企業もベンチャー企業ですし、日本の時価総額TOP10に入るほどの規模になったソフトバンクグループも事業の内容的にはベンチャー企業に含めて考えることができます。
このようにベンチャー企業という概念はとても広いもので、学術的にも明確な定義がされているかというとそうでもないというのが現状です。
そのため、筆者ごとにニュアンスが微妙に異なることがあります。
また、最近良く使われている「スタートアップ」という言葉も、ベンチャー企業に包摂され得る概念ではありますが、こちらも筆者によってニュアンスが異なります。
そのため、本記事ではわかりやすいように「ベンチャー企業」を比較的狭く捉え、独自のビジネスモデルやサービス等を世に提供しようと努力している新興企業であって、まだ規模が小さい企業のことを意味する言葉として使用します。
どこまでの規模が小規模なのかという微妙な問題がありますが、それはあえて放置させてください。
目安でいうと従業員数300人未満の企業というイメージで読んでいただければ結構です。
ただし、単純に従業員数だけで区分けすることも難しいので、あくまでも目安として捉えていただければと思います。
ベンチャー企業についてよりイメージを持ちやすいように、ベンチャー企業の様々な類型について簡単に解説させていただきます。
私がよく耳にするベンチャー企業の類型は以下のとおりです。
※類型をすべて網羅しているわけではございませんので他にも様々な類型論が存在します。
以下、一つずつ簡単に解説させていただきます。
「上場ベンチャー」とは、すでに上場しているベンチャー企業のことをいいます。
2022年からグロース市場が創設されましたが、ベンチャー企業の多くはこのグロース市場へのIPOを目指すことになります。
ここ数年で最も規模の大きなIPOといえば、ビズリーチで有名なビジョナル株式会社だろうと思います。
ビジョナル社は、ビズリーチという素晴らしいサービスを通じて、日本に「ダイレクトリクルーティング」という新しい採用手法を定着させました。
ダイレクトリクルーティングとは、企業が候補者を直接スカウトするという採用手法で、アメリカでは一般的でしたが日本では全く普及しておりませんでした。
しかし、ここ10年でダイレクトリクルーティングは様々な企業に根付き、ベンチャー界隈では当然の採用手法として認識されています。
このように、日本でダイレクトリクルーティングが定着したのは完全にビジョナル社の功績だと思います。
ビジョナル社は、現在もグロース市場の時価総額ランキングのトップに君臨しております。
【ビジョナルホームページ】
https://www.visional.inc/ja/index.html
グロース市場にはビジョナル社以外にも、2023年10月30日現在で約550社が上場しています。
これらすべてがベンチャー企業というわけではないですが、一般的にはグロース市場に上場している新興企業 ≒ ベンチャー企業と考えて良いと思います。
そして、これらの上場企業を「上場ベンチャー」と呼称することが多いです。
次に「大学発ベンチャー」とは、大学が協賛しているベンチャー企業のことを意味します。
大学発ベンチャーの多くは、大学が、自校の学生起業家を資金的・設備的に支援するという形で誕生します。
その他にも、大学の研究科と共に共同研究を行う形で支援したり、大学が保有する特許を無償で使用させるという形で支援を行ったりします。
ここ10年ほどで大学発ベンチャーの数は爆発的に増えており、本記事執筆時点で3782社(以下「大学発ベンチャーデータベース」参照)も存在しています。
そして、これからも増加を続けることでしょう。
【大学発ベンチャーデータベース(経済産業省)】
https://www.meti.go.jp/policy/innovation_corp/univ-startupsdb.html
現在のところ、大学発ベンチャー数が最も多いのは、東京大学(371社)、次が京都大学(267社)となっています。
さすがの二大巨頭です。
私立大学では、慶應義塾大学(236社 全体3位)と東京理科大学(151社 全体7位)が健闘しており、全体としての顔ぶれを見る限りは大学受験時の偏差値との相関関係が認められそうです。
ベンチャー事業の分野としては、バイオ・ヘルスケア・医療・IT分野が多いです。
おそらく、今後のベンチャー界隈を盛り上げてくれるベンチャー企業の多くは、この大学発ベンチャーから生まれると予想できるので、今のうちからチェックしておくのもありかもしれません。
続いて、ここ数年で少しずつ知名度を上げてきている類型として「地方創生ベンチャー」があります。
「地方創生ベンチャー」とは、事業の主たる目的として地方創生を掲げているベンチャー企業のことをいいます。
最近では「熱意ある地方創生ベンチャー連合」なる団体もできてきており、様々な企業が協賛しています。
【熱意ある地方創生ベンチャー連合ホームページ】
https://netsui.or.jp/
日本はこれから人口が確実に減少していきますので、国際競争力をほぼ確実に失っていく国です。
人口減少による影響を最も大きく受けるのは地方ですから、その地方を何とかして経済的に盛り上げないと、おそらく日本の未来はないでしょう。
地方創生ベンチャーとは、そういう大きな問題に今まさに立ち向かっているベンチャー企業です。
前述の地方創生ベンチャーと似た類型として「地方ベンチャー」という類型も存在します。
「地方ベンチャー」とは、地方に本店所在地を置いているベンチャー企業のことで、地方創生を主目的として掲げているわけではないという点が地方創生ベンチャーと異なります。
ただ、地方ベンチャーが事業を拡大して成功を収めれば、結果的に地方創生に繋がっていくことになりますから、役割としてはとても似ています。
元地方ベンチャーとして活躍し、現在では大成功を収めた企業は多数存在しますが、個人的に好きな企業として株式会社ニトリホールディングスがあります。
皆さんご存知「お、ねだん以上。」のあのニトリです。
ニトリは今も札幌に本社を置いている地方企業ですが、元々は地方ベンチャーと呼んで良い存在でした。
今では日本全国だけに留まらず、世界の主要各国にも店舗や子会社を保有する巨大なグローバル企業です。
今後も地方からニトリのようなスター企業が出てきたら、日本の未来も少しは明るくなるだろうにといつも思っています。
【ニトリホールディングスホームページ】
https://www.nitorihd.co.jp/
次に「メガベンチャー」とは、規模的にはすでに大手企業といえるが、中身はまだまだベンチャースピリット(挑戦的)がある企業をいいます。
最近の企業では、楽天グループ、サイバーエージェント、GMOインターネットグループ、メルカリ、エムスリー、マネーフォワードなどが該当するかと思います。
20代の人たちからするとこれらの企業は昔からある大手企業と変わらない認識かもしれませんが、我々世代及びそれ以上の世代からすると、ついこの間まで小さなベンチャー企業だった会社です。
ちょっと目を離した隙にあっという間に大きくなり、時価総額も1000億円を超えて(エムスリーと楽天に関しては1兆円超)、神がかった成長速度を見せつけてくれました。
ベンチャー業界の片隅でひっそりを生きている私達にとっては憧れの存在です。
他にも、xTech(クロステック)ベンチャーと呼ばれている類型も存在します。
これは、そのベンチャー企業の事業領域ごとに名称が変わる、ちょっとカッコいいタイプの類型分けです。
例えば以下のような類型が存在します。
この他にも次々と新しいxTech分野が生まれているので、今ではベンチャー業界で日常的に使われている言葉です。
ちょっとかっこいいので若い社員も進んで使いたがる傾向があるので、これからも広まっていくでしょう!
ちなみに、WARCはCFOなどのハイクラス層の人材紹介事業に強く、ダイレクトリクルーティングサービスの「SYNCA」や公認会計士などを中心とした副業マッチングプラットフォーム「WARCMORE」なども運営しているため、HRTechカンパニーを自称しております。
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最後に「大人ベンチャー」について解説させてください。
「大人ベンチャー」とは、すでに若手とは言い難い年齢に達しているメンバーによって創業された、ちょっと年齢層の高いベンチャー企業のことをいいます。
勘の鋭い方はすでに気づいているでしょう。
そうです。
WARCです。
WARCは、若い頃にベンチャー企業のCFOとして活躍し、IPOを達成した2人の公認会計士が創業したベンチャー企業です。
しかし、ベンチャー企業を立ち上げた当初からすでに30歳を超えていて、創業時のメンバーのほとんども30代後半以降の人たちだったので、世間的に見るとベンチャー企業っぽくないなという年齢に達していました。
一般的には、ベンチャー企業の多くは20代を中心に回っているので、30代半ばになってくるとなかなか……
でも、内心ではベンチャー企業と思ってもらいたいわけです。
そこで、苦肉の策として「大人ベンチャー」という言葉を生み出した次第です。
まだ創業して5年も経っていないのに、平均年齢が30歳を超えている会社は大人ベンチャーだと思ってください。
大学発ベンチャーが量産されたことで、学生起業家が増えた結果、最近のベンチャー企業の低年齢化が著しいので、大人ベンチャーはベンチャー業界ではマイノリティ(少数派)だと思います。
ただ、大人ベンチャーにもメリットがあります。
それは、通常の若いベンチャーよりだいぶ落ち着いているという点です。
イケイケのベンチャーの場合は、毎晩のようにお酒を飲んでウェイウェイしていることが多いですし、我々も若い頃はそういう若造でしたが、30代を超えてくると体がついてきませんし、家庭がそれを許しません。
その結果「最近2歳の息子が言葉を覚えてさ」とか「最近腰の調子が悪くて」などの大人の会話が中心になってきます。
また、大人ベンチャーのメンバーは、大抵が大手企業の出身者なので、大手企業で身につけてきた様々なスキルを活用して事業を運営していきます。
WARCもそうで、メンバーの多くが公認会計士・税理士として長年監査法人や外資コンサル等で活躍してきたメンバーです。
それゆえに極めて高度なスキルと幅広い知見を保有している人が多いです。
そういう人たちから様々なことを学べる環境があるので、専門家同士の知の共有が盛んです。
もしかしたら若干の加齢臭が若干漂っているかもしれませんが、20代の若手にとっても良い環境ができつつあるのではないかと思っています。
それもあって、最近では20代の社員も増えました。
有り難いことです。
今も会計コンサル・M&Aコンサル・キャリアコンサル領域の採用を行っているので、ぜひご検討ください。
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では最後に、ベンチャー企業の基本的な組織構造について解説してまいります。
前述のとおり、ベンチャー企業には様々な類型があります。
ただ、どこのベンチャー企業も似たような組織構造をしておりまして、規模が近い会社や業種が近い会社ではかなり似通った組織になっています。
一般的には、以下のような3つの組織があると考えて問題ないと思います。
(1)経営陣(取締役や執行役員):経営を執行するメンバーで主に創業メンバー
(2)経営管理部:経理・財務・法務・労務・人事などの専門職メンバー
(3)事業部:営業・開発・マーケティングなどの事業を直接執行しているメンバー
一般的なベンチャー企業には、この3つの組織が存在して、それぞれが連携しあって活動しています。
事業が複数ある場合は、●●事業部とか、●●チームという名称でいくつかの部署に分かれることもあります。
そして、ベンチャー企業の多くは、ギリギリの人数で事業を回していることがほとんどなので、あまり役職の階層がなく、それぞれが並列的・補完的に助け合う必要があります。
私は、ベンチャー業界に入る前は、軍隊のように上下関係に厳しい大手企業にいたので、最初は戸惑いました。
その企業では、他部署と会話することもほとんどなく、連携なんてほぼあり得ない状態で、それぞれの部署の上層部にそれぞれの派閥があるような感じだったので、他部署と連携して助け合うなんてことはドラマの中だけの話でした。
それがベンチャー企業に入った途端、みんな私服勤務で誰が上司かもわからないような組織で、部署なんてほとんど関係なく助け合うんですから、最初のカルチャーショックはなかなかのものでした。
もちろん、私はベンチャー企業の組織の方が好きですし、働きやすいです。
ベンチャー企業では、一般社員と経営陣との距離が極めて近いので、軽い気持ちで経営陣に話しかけることができます(会社にもよる)。
年齢も近いことが多いので、笑いのネタにも困りません。
我々世代だったら、ドラゴンボールかONE PIECEかHUNTER×HUNTERの話を振っておけば何とでもなります!
SLAM DUNKやNARUTOも効果的です。
ベンチャー企業では、社員間の年齢が近いということがかなりプラスに働いていると思います。
私が初めて入ったベンチャー企業なんて、一般社員である私の真後ろに取締役CFO(その後WARCを創業した人)がいるような席の近さでしたから、物理的にも心理的にも距離が近かったです。
大手企業では取締役と直接会話することなんて数年に1回くらいしかなかったので不思議な感覚でした。
しかも、取締役も我々一般社員と同じ机とモニターで、特別な感じがないのでパッと見は誰が上司なのかわからないような感じでした。
社長室や役員室なんてものもありませんから、偉そうな人もあまりいません。
むしろベンチャー企業で偉そうにしている人や先輩風を吹かせている人は、とても恥ずかしい人です。
ベンチャー企業では、年齢も過去の経歴も関係がないので、良くも悪くも実力社会です。
今の時点で結果を出していない人がどんなに偉そうにしても、後輩や部下はついてきません。
私が過去にいた大手企業では、執行役員以上になると個室が与えられ、かつ、綺麗な秘書までつくので嫉妬しか湧かなかったですが、ベンチャー企業ではそういう非効率的な会社はほとんどありません。
ベンチャー企業の肩書は半分フィクションのようなもので、何なら「自分で勝手に決めていいよ」という会社すらあります。
そのため、肩書だけカッコいい人なんていくらでもいるので、実態があまり反映されていません。
かろうじて、経営陣に意思決定の権限があるくらいです。
それも単に役割の違いに過ぎず、偉さとか偉大さとは別物です。
大手上場企業が「管理と統制」というイメージならば、ベンチャー企業は「協働」というイメージです。
それぞれが自己の専門性やスキルを最大限発揮し、互いに協力し合いながら事業を推進していくのです。
ベンチャー企業の最大の魅力は、この協働文化にあるのではないかと思います。
協働文化を根付かせられていないベンチャー企業はあまり上手くいかないので、組織内に協働文化が根付いているかどうかが、良いベンチャー企業を見分ける一つの基準でもあります。
互いに助け合って働くことが好きな人にとっては、ベンチャー企業はなかなか良いところだと思います。
しかも、フレックスタイム制やリモートワークを導入している会社が半数近くあるので、働きやすさも抜群です。
また、ベンチャー企業は多様性を認めてくれる企業が多く、年齢に関係なくやる気と実力があればいろんなことを任せてくれるので、様々なことに挑戦したい若者にとっても良い環境だと思います。
ということで、今日はベンチャー企業の一般的な類型と基本的な組織構造について簡単に解説させていただきました。
これからベンチャー企業への転職を検討している皆さんの参考になれば幸いでございます。
では、また書かせていただきます。
WARCで働きたい!WARCで転職支援してほしい!という方がもしいらっしゃれば、以下よりメッセージをお送りください。
内容に応じて担当者がお返事させていただきます。