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2024/07/10 更新

【ビジネス用語】プラットフォーム型ビジネスモデルについて解説します

はじめに

本連載では、ビジネスで活用できそうな経営学理論や重要なキーワードをご紹介しております。

今回はすでに一般的な名称として定着しつつある「プラットフォーム型ビジネスモデル」について解説していきます。

1.プラットフォーム型ビジネスモデルとは

プラットフォーム型ビジネスモデルとは、自社とは別のプレイヤーが存在することを前提としたビジネスモデルであって、他のプレイヤーの商品・サービス・情報等が一体となって価値を生み出すビジネスモデルを意味します。

ただし、プラットフォーム型ビジネスモデルは多義的で、経営学上も定義が確定しておりません。
そのため、暫定的な定義だと思ってください。

そして、プラットフォーム型ビジネスモデルには、以下の2つの類型があると考えられています。

  • 基盤型:他社のビジネスの基盤となる製品やサービスを生み出すモデル
  • 媒介型:他社同士の繋がりを媒介するモデル

基盤型プラットフォームとして有名な事例は、任天堂やSONYが作るゲーム機本体です。
これは他社のソフトが存在することを前提としていて、それらのソフトがあるからこそゲーム機本体にも価値が出てきます。
したがって、ゲーム機本体がすべてのソフトの基盤となっているプラットフォーム型ビジネスモデルモデルといえます。

一方で、媒介型プラットフォームとして有名な事例は、App StoreやGoogle Playなどが挙げられます。
これらのサービス内では大量のアプリが販売されていて、他社のサービスの存在が前提となっています。

そして、プラットフォームの運営者であるApple又はGoogleは、自社以外の第三者同士の取引(アプリの売買契約及びアプリ内課金)を媒介していて、それで手数料をもらうというビジネスモデルです。
したがって、他社(他者)同士の繋がりを媒介するプラットフォーム型ビジネスモデルといえます。

もっとも、Apple及びGoogleは、それぞれ「iPhone」又は「Pixel」というスマホ本体を販売しているので、そういう意味では基盤型ともいえます。
先程の任天堂やSONYも、自社のオンラインプラットフォーム内でゲームのダウンロードができるようになっていて、第三者同士を実質的に媒介しているので、媒介型ともいえます。
つまり、最近は、基盤型と媒介型を明確に区別できるようなものではなくなってきています。
そのため、第三者の商品・情報・サービスを前提していて、それらが一体となって価値を生み出すようなビジネスモデルはすべてプラットフォーム型ビジネスモデルだと思っておいた方が良いと思います。

なお、ベンチャー企業の皆様がより深く理解しておかないといけないのは媒介型プラットフォームです。
そのため、今回の記事では、媒介型プラットフォームを中心に取扱います。

2.プレイヤーの整理

ビジネスモデルを理解しようとする際に、最初にやるべきことはプレイヤーの整理です。
プレイヤーを整理しておかないと頭が混乱して、その後の分析も混乱しやすくなります。

では、今回は媒介型のプラットフォーム型ビジネスモデルの基本的なプレイヤーを整理しましょう。

媒介型のプラットフォーム型ビジネスモデルには、以下の3プレイヤーが存在します。

  • 自社:プラットフォームの運営者(プラットフォーマー)
  • 顧客A郡:プラットフォームの利用者A郡
  • 顧客B郡:プラットフォームの利用者B郡

自社はプラットフォームの運営者なので、基本的には「プラットフォーマー」と呼ばれます。
そして、プラットフォーマーは、A郡とB郡のユーザー同士の取引を何らかの方法で媒介します。
最もわかりやすいのは、前述したApp Storeです。

なお、A郡は法人又は個人のいずれか又は両方、B郡も法人又は個人のいずれか又は両方があり得ますので、組み合わせとしては以下のようなパターンが考えられます。

  • A郡:個人  B郡:個人
  • A郡:法人  B郡:法人
  • A郡:個人  B郡:法人
  • A郡:法人  B郡:個人

どのようなパターンの取引でも問題なく媒介可能ではありますが、厳密には適用法令が変わってくるので、ビジネスモデルとしては別の類型と考えた方が良い場合もあります。
このあたりのお話をすると長くなってしまうので今回は割愛します。

いずれにしても、媒介型プラットフォームにおいて重要な点は、自社はあくまでもプラットフォーム内での取引を媒介しているだけという点です。

プラットフォーマーは、自社のプラットフォームを立ち上げて、A郡とB郡の取引をしやすくしてあげているだけなので、顧客からいただくのは基本的に手数料(別途利用料として月額報酬をもらうこともある)だけです。
この手数料が自社にとっての「売上」になります。

ということは、媒介型ビジネスモデルでは、自社の売上が、原則としてA郡とB郡の取引額(取引件数✕平均単価)に依存するということになります。
そのため、売上の限界値が市場規模に依存してしまうことになり、どれだけ素晴らしいプラットフォームであっても、市場規模そのものが小さければ売上はすぐ頭打ちになります。
そうすると、プラットフォーム型ビジネスモデルの成否は、(市場規模がある程度あることを前提として)いかにしてA郡・B郡の数を増やし、取引額を拡大させ続けられるかにかかってくるということになります。

3.プラットフォーム型ビジネスモデルの弱点

ある程度プレイヤーの整理が終わったところで、プラットフォーム型ビジネスモデルの弱点についても触れておきます。

今まで、多くのベンチャー企業が媒介型のプラットフォーム型ビジネスモデルに挑戦して来ましたが、その多くが市場規模の不存在またはユーザー(A郡+B郡)の獲得に失敗して、市場を去っています。

これには様々な理由がありますが、そもそもの問題として、市場規模があることが明確な市場だと競合他社が大量に現れてしまうという問題があります。

たしかに、新規市場の初期開拓段階であれば、まだ誰もその市場に気づいていない段階なのでスタートアップでも勝負できます。
しかし、スタートアップが一生懸命市場を開拓して新市場を創造したとしても、その市場が儲かるということがわかった瞬間に大手企業が参入してきて根こそぎ顧客を奪われるということがよく起こります。
事例としては、QRコード決済市場においてPayPayが行ったキャンペーンをイメージしていただければわかると思います。

また、プラットフォーム市場を拡大するためには莫大な広告宣伝費も必要になりますし、何が正解か(当たるか)わからないため、ギャンブルに近い側面があります。

したがって、プラットフォーム型ビジネスモデルは、原則として成功するまでにかなりの額の投資を行う必要があり、かつ、仮に成功し始めても資本力のある企業の参入によって一気にレッドオーシャンになり得るというリスクを抱えたビジネスモデルであるといえます。

4.ネットワーク効果

プレイヤーの整理とビジネスモデルの弱点も理解した上で、それでもなおプラットフォーム型ビジネスモデルが人気である理由について解説していきます。

プラットフォーム型ビジネスモデルにおいては「ネットワーク効果」と呼ばれている効果が発生します。

ネットワーク効果とは、プラットフォーム内のユーザーが増えれば増えるほど、そのプラットフォームの価値が増加(又は減退)する効果のことをいいます。

そして、ネットワーク効果には、以下の2つの種類があります。

  1. サイド内ネットワーク効果
  2. サイド間ネットワーク効果

以下、それぞれご説明いたします。

(1)サイド内ネットワーク効果

サイド内ネットワーク効果とは、プラットフォームの顧客の片方サイドで発生するネットワーク効果のことです。

前述した媒介型プラットフォームでいうと、顧客A郡のみ、又は顧客B郡のみで発生する効果です。

例えば、App Storeで、アプリを制作する側の顧客(一般的にはアプリ開発会社などの法人)がどんどん増えて行くと、その人気ぶりを見て、他の会社も「今はアプリが儲かるらしい!うちも開発しよう!」となって参入してくる、という効果です。

実際にこれはApp Storeが出たばかりの頃に起こったことです。
今までアプリ開発なんてしたことがない企業ですらもアプリ開発をし始めて、あっという間に世界的な流行になりました。

なお、これはポジティブな意味(プラットフォームの価値が増大するという意味)でのサイド内ネットワーク効果です。

一方で、サイド内ネットワーク効果には、ネガティブな意味の効果も発生し得ます。

例えば、転職サイトの場合、登録している求人企業(顧客A郡)が多くなればなるほど、他社も「あの転職サイトは人気があるようだ。採用効果が高いのかもしれないからうちも登録しよう」と考えて登録してきます。
その結果、求人企業が増加していき、転職サイトというプラットフォームの価値が増大します。

しかし一方で、求人件数が増えれば増えるほど、強敵となるライバルが増えるということを意味しますので、ベンチャーなどの中小企業はその転職サイトを使う魅力が低減していきます。
その結果、もっと自社が優位に立てる転職サイトを探そうという動機が生まれやすくなります。

これはサイド内ネットワーク効果のネガティブな方の効果だと考えています。

したがって、サイド内ネットワーク効果は、ポジティブとネガティブどちらの効果も併発して発生し得るということです。
ただし、原則はポジティブな効果の方が多いと考えて問題ないと思います。

(2)サイド間ネットワーク効果

サイド間ネットワーク効果とは、プラットフォーム内の顧客A郡・B郡の枠を超えたネットワーク効果のことをいいます。

例えば転職サイトの事例でいうと、求人企業(顧客A郡)が増えれば増えるほど沢山の求人案件が掲載されるため、プラットフォームとしての価値が高まり、求人側(顧客B郡)も増えていくという効果です。

その逆で、求人側(顧客B郡)がどんどん増えていった結果、良い人材がたくさん集まっているらしいという噂が流れ、求人企業(顧客A郡)も増えるという現象もサイド間ネットワーク効果です。

平たくいうと、顧客の片方の郡の数が増えれば増えるほど、もう片方の郡にもポジティブな影響を与えるという効果を意味します。

なお、こちらに関してはポジティブな効果が中心で、ネガティブな効果はあまりありません。

App Store、転職サイト、婚活アプリ、動画配信サイト、ECサイトなどのいずれのプラットフォームであっても、片方の顧客群が増えれば増えるほど、もう片方の顧客群にとってもポジティブなことが多いので、結果として相乗効果で両方の顧客群が増加していきます。

このように、プラットフォーム型ビジネスモデルでは、サイド内・サイド間のネットワーク効果が期待できるため、ある程度の規模まで成長出来さえすれば、あとは勝手に口コミで顧客群が増えていきます。
そのフェーズまで持っていければ、広告宣伝費をかけなくても利益がどんどん拡大していくのです。
そういう夢のあるビジネスモデルだからこそ、多くのベンチャー企業が挑戦しているのだろうと思います。

おわりに

ということで今回はプラットフォーム型ビジネスモデルについて解説させていただきました。

今回は少し長くなってしまいましたが、最後までお読みいただいてありがとうございました。

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瀧田桜司

役職:株式会社WARC 法務兼メディア編集長/ 学歴:一橋大学大学院法学研究科修士課程修了(経営法学)及び京都大学私学経営Certificate/ 資格:司法試験予備試験・行政書士など/ 執筆分野:経営学・心理学・資格・キャリア分野のコラム記事を担当させていただく予定です