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【認知心理学】ダニングクルーガー効果の原因及び対処法について解説します!

2024/01/23 更新

はじめに

本連載では、ビジネスで活用できそうな心理学理論や重要なキーワードをご紹介しております。
今回は、認知心理学の分野から「ダニング=クルーガー効果」という理論をご紹介いたします。

1.ダニングクルーガー効果とは

ダニングクルーガー効果(Kruger Effect)とは、ダニング教授(David Dunning:ミシガン大学教授)とクルーガー教授(Justin Kruger:ニューヨーク大学スターンビジネススクール教授)が共同で執筆した論文によって提唱された認知バイアス(勘違いや錯覚のこと)の一形態です。

正式なタイトル等は以下のとおり。
Kruger, J., & Dunning, D. (1999). Unskilled and unaware of it: How difficulties in recognizing one's own incompetence lead to inflated self-assessments. Journal of Personality and Social Psychology, 77(6), 1121–1134.

この論文の重要な点は以下の2点です。

(効果1)無能な人間ほど、自己評価が高くなる
(効果2)有能な人間ほど、自己評価が低くなる

この2つのダニングクルーガー効果は、今では多くのビジネスマンが常識的に知っている理論なので、特段真新しいことではないのですが、改めて考えさせられる理論だなと思います。

そして、私個人としても納得感がある理論です。
ビジネスの世界でも、無能な人が「自分はできる」と錯覚しているパターン(過信型)と有能な人が「自分なんてまだまだ」と錯覚するパターン(萎縮型)、どちらもよく目にします。

私もつい先日「まだ若いから走れるだろう」と過信して自転車で20km先のお店まで買い物に行った結果、翌日全身が筋肉痛で死にかけました。
完全に自己の能力を過信しておりました。
いくつになっても、自分自身のことはあまりよくわからないものなのかもしれません。

このようなプライベートの失敗なら全く問題ないのですが、ことビジネスの世界においては、過度な過信や萎縮は命取りになり得ます。
そのため、できる限りダニングクルーガー効果を抑えて、正確に自己を客観視できないといけません。

そこで今回は、ダニングクルーガー効果を抑制するために、様々な視点から考えていきましょう!

2.ダニングクルーガー効果の原因

ダニング=クルーガー効果が発生する原因は、メタ認知能力の不足にあると考えられています。
ここでいう「メタ認知」とは、自己の認知能力(自分自身がどの程度理解できているか、考えられているかなど)を客観視する能力です。
このメタ認知能力が不足している場合、ダニングクルーガー効果が起こりやすくなります。

なお、メタ認知という言葉を最初に使ったのは、Fravell氏(元スタンフォード大学教授)で、“Metacognitive aspects of problem solving. Nature of intelligence. 1976, 12;231-236”という論文で初めて登場しました。
その論文を東京大学の中山助教授らが翻訳してくださっていたので参照させていただくと、以下のように定義されているそうです。

「メタ認知とは認知過程及びその関連事物(情報やデータなど)に関する自分自身の知識をさす。例えば、私がAよりもBの方が学習が困難であると気づいたとしたり、あるいはCが事実であると認める前にそれについて再確認しようと思いついたとしたら、それはメタ認知を行っているということだ。」—J. H. Flavell (1976, p. 232)

翻訳の引用元:
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%83%A1%E3%82%BF%E8%AA%8D%E7%9F%A5#.E3.83.A1.E3.82.BF.E8.AA.8D.E7.9F.A5.E3.81.A8.E3.81.AF

この文章を読んで一発で意味を理解できたとしたら、文系研究者に向いていると思います。
ちなみに私はよくわかりませんでした。
このような難解な文章の解読については一旦研究者に任せるとして、今回は極力わかりやすい言葉でお伝えすることに専念したいと思います。

まず、ダニング=クルーガー効果の発生原因は、メタ認知能力不足にあります。
そして、メタ認知能力とは、自己の認知能力を客観視する能力のことをいいます。
今回はこれがわかれば十分です。

次に、メタ認知能力の不足についてもう少し噛み砕いて話していきます。
メタ認知能力とは、自分がどのようなことを知っているのか、どのようなことができるのか、どのような認識を持っているのか、どのような理解をしているのか、そういう一つ一つの自己の認知に対して、客観的に分析する能力のことを意味します。
つまりは、自分の能力に対して客観的に分析する能力のことです。

この能力が不足している場合、自分の能力を過度に信じてしまったり、過度に低く見積もってしまったりします。
ということは、自分の能力を客観的に分析できる能力を磨けば、ダニングクルーガー効果は発生しづらくなるということです。

では、自己に対する客観的分析能力を上げるには、どうすればいいかを考えてみましょう。

3.自己を客観的に分析する能力を上げる方法

自分を理解することは、とても重要です。
かのシェイクスピアも「お気の召すまま」の中で、以下のように述べています。

「愚か者は、自分が賢いとうぬぼれる。だが、賢者は、自分が愚か者であるのを知っている」

シェイクスピアの時代は、1500年代終盤から1600年代初頭なので、その頃から人間はあまり変わっていないようです。
ただ、上記のシェイクスピアの言葉に大きなヒントが隠れています。
それは「賢者は、自分が愚か者であることを知っている」という点です。
つまり、自分がどれだけ無知であるかを思い知れば、メタ認知能力は上がっていくと考えることができます。
そうだとすると、自己を客観的に分析する能力を上げるためには、学習し続けることが効果的であるといえます。

そして、自己の無知について、客観的な意見をもらうことも重要です。
したがって、ダニングクルーガー効果を抑制するためには、以下の2つの方法が考えられます。

  • (1)学習し続けること
  • (2)積極的にフィードバックをもらうこと

他にも様々な対処法が考えられると思いますが、今回は上記2つの方法について説明していこうと思います。

(1)学習し続けること

ここでいう「学習」には、ただの座学だけでなく、実践による勉強やスポーツの練習など、学びがある活動がすべて含まれます。
様々な方法で学習をし続けることで、自分が今まで何もわかっていないくせにわかったつもりになっていたという事実に気付かされます。
その度に、謙虚な気持ちにさせてもらえます。

さらに学習を続けると、自己の無知を何度も思い知らされることになるので、引き続き学び続けなければならないと感じるでしょう。
このような、学習による「無知の知」を繰り返すことで、メタ認知能力が向上していきます。
それによってダニングクルーガー効果が発生することを抑制できるはずです。

(2)積極的にフィードバックをもらうこと

上記の学習に加えて、定期的に他人からフィードバックをもらうことも重要です。
自分という存在が他者からどう見られているのか、どう見えているのか、という点について信頼できる人に聞いてみましょう。
このとき、何でも本音で話してくれる人に聞いた方が良いとは思います。
日本人は本音と建前を上手に使い分ける民族なので、ネガティブなフィードバックは特に苦手です。
だからこそ、日頃から本音で語ってくれる友人を持ちましょう。

他者からの客観的意見を聞いたら、極力素直に受け入れて、自己に対する自己の認識を改めていきましょう。
それを繰り返すことによって、メタ認知能力は向上していくので、ダニングクルーガー効果は発生しづらくなっていきます。

4.マネジメントに応用する場合

自己に対するダニングクルーガー効果の抑制方法はある程度わかりましたが、今度はそれを他者に応用することを検討してみましょう。
具体的には、自分が管理職に就任した場合に、部下にダニングクルーガー効果が発生してしまっている状況を想定します。
そのような状況で、どうやってダニングクルーガー効果を抑制すれば良いでしょうか。

まずおさらいとして、ダニングクルーガー効果とは、以下の2つの効果の総称でした。

  • (効果1)無能な人間ほど、自己評価が高くなる
  • (効果2)有能な人間ほど、自己評価が低くなる

そこで今回は、ダニングクルーガー効果を上記2つの類型に分けてそれぞれ検討していきたいと思います。
まず(効果1)の方を「過信型」といいます。
そして(効果2)の方を「萎縮型」といいます。

では、それぞれ検討していきます。

(1)過信型の場合

過信型の場合、メタ認知能力が不足しているがゆえに『自分は優秀な人材である』とか『自分はデキるビジネスマンだ』と勘違いしている状態です。
しかし、残念ながら現実はそうではなく、あまり有能ではない人材です。
これが全くの他人であれば放置すると思いますが、自分の部下だったとしたらそういうわけにもいきません。

過信型の場合、遅かれ早かれ失敗して問題を起こすことになるので、極力早い段階でメタ認知能力を上げてもらって、謙虚に学んでいただく必要があります。
ではどうやって部下にメタ認知能力を上げてもらえばいいでしょうか。
この点については、2つの手段があると考えられます。

一つが数値化することで、もう一つが、細分化することです。

まず数値化することについてですが、これは業績等を客観的に数値に落として提示するフィードバック方法を意味します。
いくらの売上・利益を上げているのか、何回ミスがあったのか、何個のタスクを期限内に処理できているのか。
そういう定量化できるものを徹底的に数値に落として、本人が言い訳できない状況を作り出します。

このとき、非難や中傷は一切不要です。
一旦感情を排除して、淡々と数値化してみましょう。
部下が最低限のメタ認知能力を持っていれば、たいていはこれらの数値を示せば勝手に自認識を改めてくれます。
自分という存在の無価値性、無知・無能を理解できます。
その結果、折れる人(辞める人)と努力する人に分かれますが、この点についてはコントロールが難しいので、努力する人にだけしっかり手を差し伸べるのが効率的でしょう。

なお、メタ認知能力がある程度向上した段階で、努力することの重要性を認識できるように、努力で数値を改善することができるという点を教えるのも効果的です。
この際は、マネージャー自身がどのような努力をすればいいのかという点について、目に見える形で示してあげることも必要になります。
過信型の人は、努力の方法を知らないことが非常に多いので、具体的に何をどうすればいいのかまで教えてあげないと能力が向上していかないことが多いです。
それが以下で述べる「細分化」に繋がります。

細分化については、課題を細かく分解してあげた上でフィードバックをするということを意味します。
抽象的な指摘や曖昧な物言いをせず、できる限り具体的かつ的確にフィードバックを行うことです。
このとき、今までの活動で何が課題だったのか、そして次に何をどうすればいいのかまで細かく指導してあげた方が成長も早くなります。

例えば、以下のように何がその人の課題だったのかという点を明確にしていきます。

  • 期末時点で年間目標を達成できていない
  • 半期の時点で進捗率が50%に到達していなかった
  • 第1四半期の時点で、進捗率が10%だった
  • 第1四半期の初月時点で他の同僚と比べて進捗率が8%低かった
  • 第1四半期の初月の第1週の時点で、同僚の中で唯一成約ゼロだった
  • 各月平均の顧客へのアプローチ数が他の同僚と比べて半分以下だった

こうやって少しずつ分解していくと、この部下は、最初の1週間で既に怪しい空気が出ています。
そして、その原因は単純な活動量の不足にありそうです。
ここまでわかりやすい例だと、この部下の問題というより、ここまで放置してきたマネージャーが悪いともいえます。

このような状況でのフィードバックは、以下のようにするべきでしょう。

「数値が上がっていないことにもっと早く私が気づくべきだった。手助けが遅れて申し訳無い。今後、毎週末にそれまでの業績とアプローチ数を報告してもらってもいい?そして、成約に至らなかった原因を早い段階で分析していこう。私もお客様が興味を持たなかった理由を知れると勉強になるから教えてもらえると助かる。一緒に改善策を考えて、実行していこう」

このようなフィードバックを与えると、部下からすると、自分が次に何をすべきか具体的に見えてきます。
毎週末に業績とアプローチ数を報告しないといけなくなるので、他の同僚たちより少ないアプローチ数だったらその理由を説明しないといけなくなります。

また、もし上記の週1報告を繰り返すことができれば、少なくとも週に1回はフィードバックをもらえる機会が生まれますから、自分に何が足りていないのかを知る機会を得ます。
それが最終的にメタ認知能力を向上させます。

なお、部下の中には「週1報告」そのものが信頼されていない証であるとか、管理されているという感覚を持ってしまい、逆にモチベーションが下がるということがあり得ます。
特に過信型の場合は無駄にプライドも高いことが多いので、その傾向が強いです。
しかし、数値管理ができない人だからこそ実績が出せていないということは明らかなので、もし週1報告が嫌だというのであれば、ビジネスマンには向いていない可能性が高いです。
そうだとすると、転職を検討していただいた方が良いと思います。
したがって、若干厳しい話にはなりますが、報告義務についてはマネジメント側が折れない方が良いと思います。

(2)萎縮型の場合

次に萎縮型について考えてみましょう。

萎縮型に対するフィードバックで重要なことは、心から称賛することです!
ただし、萎縮型の場合はその人の性格によってダニングクルーガー効果ではない可能性があるので、その点には注意が必要です。

例えば、自己の能力を客観的に分析できていて、かつ、周りの人間より優れていることは十分にわかっているが、目指している理想が更に高いところにあるため、結果として「自分は無能だ」と感じている場合があります。
この場合、メタ認知能力自体は十分に備わっているため、ダニングクルーガー効果とは別の現象と言って良いと思います。
そのため、このような人に対しては、心からの称賛をしたとしても、その人にとっては「そこは当然の前提としてのレベルなので褒められても意味がない」と感じる可能性があります。

このような崇高な目標を持っている人の場合は、称賛よりも協働の方が効果的かもしれません。
同じ目標を見据えて、その人がより高みに登れるように、最大限のサポートをしていけば、少しずつ仲間意識が芽生え、チームとしてまとまっていくでしょう。

一方で、自分の能力を客観的に分析できておらず、自分が周りの人間より優れているということに気づいていないような場合は、通常のダニングクルーガー効果の事例なので、具体的に数値化して称賛することが効果的です。

例えば、その人の年間の業績を月単位で折れ線グラフにして、全社平均等のグラフと比較することで優位性を示してあげると、本人の自己肯定感が高まり、メタ認知能力も向上する可能性があります。

そもそも萎縮型は、基本的に自分の能力を低いと考えています。
周りの人間も自分と同等以上に努力していて、自分は元々が劣っているのだから、人の倍以上努力しないと駄目だという誤解をしています。
良い業績・成績を出しても「たまたま運が良かっただけ」と考えます。
その繰り返しでメタ認知能力が低くなってしまい、ダニングクルーガー効果が発生します。

たしかに、萎縮型のままでいても単に謙虚な人という印象になるだけなので、そこまで支障はありません。
しかし、それが進行して過度な萎縮型になってしまうと、自己の能力を信じられずに「挑戦そのもの」を避けるようになっていきやすいので、適度な範囲で留まってくれるように、定期的に称賛を与えましょう。
自己に対する認識を正確に持ってもらって、自信をもって業務に取り組んでもらえるようにマネジメントしていければ、チームとしての業績も向上しやすくなるはずです。

おわりに

ということで今回は、ダニング=クルーガー効果についてお話させていただきました。
自分自身が勘違いしないようにという点が第一ではありますが、それ以上にマネジメントに活かすことが重要だと思います。
自分の部下が過信型なのか萎縮型なのかを早期に見極めて適切なフィードバックを行いましょう!

ではまた次回。

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株式会社WARC

瀧田桜司

役職:株式会社WARC 法務兼メディア編集長 学歴:一橋大学大学院法学研究科修士課程修了(経営法学)及び京都大学私学経営Certificate 資格:司法試験予備試験・行政書士など 執筆分野:経営学・心理学・資格・キャリア分野のコラム記事を担当させていただく予定です