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【心理学】組織開発でも使える単純接触効果

2024/02/02 更新

はじめに

本連載では、ビジネスで活用できそうな心理学理論や重要なキーワードをご紹介しております。

今回は、何度も接しているうちにいつの間にか好感を持ってしまうという心のメカニズムを説明した「単純接触効果」についてご説明させていただきます。

1.単純接触効果とは

単純接触効果とは、人が特定の刺激に触れれば触れるほど、それに対する好感度が増していく現象のことをいいます。

例えば、毎朝通学路で出会う同級生と「おはよう」という一言を掛け合うことが1年ほど続くと、なぜかお互いに好感を持ち始めるなどの現象です。
実際にそういう状況になったことがないのでなんとも言えませんが、イケメンや美女ならあり得るかもしれないなと思います。

この他にも、同一の機能を有する商品AとBがあった場合に、Aの方は何度もCMで見かけているが、Bについては見たことがないという状況下では、Aの方が選ばれやすいという現象も単純接触効果の一例です。

この現象は、ザイアンス(Zajonc, R. B.)氏が1968年の論文で発表して、今日まで研究され続けています。
今では心理学だけでなく、経営学や経済学の分野など様々な領域で研究されているので、論文をいくつか読んでみると現在の関心領域がわかるかもしれません。

また、単純接触効果は実務でもかなり認知度が高く、マーケティングの専門家なら誰もが知っているような理論です。
特にCMや広告の分野での活用が目立ちます。

そもそもCMや広告を打つ主な目的は、当該サービス・製品の「認知度向上」にあります。
そして、認知度向上の先には、好感度の向上があり、好感度の向上は購買意欲に繋がっていきます。
最終的なゴールは購買意欲の向上及び現実の購入なのですが、その前提として認知度が上がらないとどうしようもないので、莫大な広告費をかけて何度も何度も目に触れるようにCM等を流すわけです。

この「何度も何度も目に触れる」という部分が単純接触で、認知度及び好感度の向上が効果です。
もちろん、どんな広告でも繰り返し見せるだけで好感度が上昇するのかというとそうではないですが、よほど変な広告でもない限りは単純な接触を繰り返した方が好感度も上がりやすいといわれています。
しかし、広告の効果を検証するのはとても難しく、実際にその単純接触で好感度が上がったと言えるのかはハッキリとしません。

確かに、広告やCMを見れば見るほど「認知度」は上がると言えると思いますが、それによって「好感度」まで上がるのかという点は追加の研究が必要だと思います。
すなわち、単純接触の回数と認知度については因果関係が認められると思われるのですが、単純接触の回数と好感度についてはどうなのだろうかという疑問があります。
不快な単純接触であっても、本当に好感は上がるのだろうかと。
おそらく誰かがすでに調べているはずなので、論文を探してみるのも面白いかもしれません。

2.組織運営に応用

単純接触効果が広告やマーケティングの分野で有益な理論であることは理解できましたが、ビジネス実務、特に組織開発や組織運営においてどのような活用ができるでしょうか。
この点について少し検討してみましょう。

そもそも単純接触効果は、単純な接触の繰り返しによって好感度が上がるという現象でした。
ということは、チーム内の人間関係にも応用できるかもしれません。

例えば、毎週又は毎月1回30分程度、チームで集まってzoom等で雑談をする時間を設けるという施策が考えられます。
私が所属するベンチャー業界は、リモートワークが根付いているところが多いので、社内の人であっても1年間全く会わない、顔も見たことがないという人も結構います。
そのようなケースでは、毎週どこかで顔を見て、声を聞けるという場面があるのは非常に助かります。
これは小さな組織定例のようなものでもいいですし、事業部を横断したシャッフルMTGのようなものでも良いと思います。
ただ、あまりに規模が大きくなりすぎると費用対効果が悪いと思うので、5~10名程度の小規模な集まりの方がコスパも良いかもしれません。

そして、このような単純接触が繰り返されることで、少なくとも「顔と声と名前がわかる」という状態になるため、全く知らないよりは好感度が上がります。
したがって、単純接触効果の有効な使い道ではないかと考えます。

ただ、毎週又は毎月行う定例のようなものの中で、毎回仕事の話をされたり、ダメ出しをされたり、自慢話をされたりするのは苦痛ですよね。
おそらく、そういう接触は逆効果(好感度を下げる効果)を生むと思います。
そのため、定例では、以下の2点を意識して運営すると良いと思います。

まず一つ目が、ポジティブな話題を中心に取り扱うことです。
単純接触効果を最大化するためには、その接触が好感につながるものであるべきだと考えますので、ネガティブな接触よりはポジティブな接触の方が効果的でしょう。
そこで、運営側としては、極力ポジティブな話題を振って明るい話に持っていくと、より良い効果が得られるだろうと思います。

次に、参加者それぞれに満遍なく接触点が生まれるようにすることです。
そのためにも少人数にしておいた方が運営しやすいです。
大人数の会合だと、一方的なコミュニケーションになりやすいため、双方向型の接触点が生まれにくくなります。
もちろん、それでも工夫によって単純接触効果は発生すると思いますが、より効果的な接触点を生み出すためにも、双方向型で会話をした方が良いと思います。

以上の2点に注意して運営していけば、少なくとも従業員間の相互認知度は向上するはずなので、単純接触効果の恩恵を受けやすくなるのではないかと考えられます。

おわりに

ということで今日は、比較的有名な「単純接触効果」について簡単にですがご説明させていただきました。
単純接触効果はまだ研究の余地があって、おそらくザイアンス氏が提唱していた頃のままの効果は発生しないだろうなと思います。
なぜなら、単純接触によって好感が発生するとは限らないからです。

例えば、我々のうち98%くらいが苦手としているG(あの黒光り虫)を何度も見たところで、あいつに好感が発生するとは思えません。
私はきっと一生嫌いです。
単純接触によって「認知度」などは上がると思いますが、それを超えて好感が発生するかは別問題です。

この点については様々な実験が必要で、どのような単純接触であれば好感が発生しやすくなるのか、という点を研究しないといけません。
心理学研究科でそのような研究を行うのも一つの手だと思いますが、自社の組織内で実験してみても良いと思います。
そういう意味では、単純接触効果はビジネスでの実用がし易い理論かもしれません。
広告、IR・PR、組織運営、チームビルディングなど、実証実験の場は無数に考えられます。
これを機に、自社でも何らかの施策をしてみてはいかがでしょうか。

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株式会社WARC

瀧田桜司

役職:株式会社WARC 法務兼メディア編集長 学歴:一橋大学大学院法学研究科修士課程修了(経営法学)及び京都大学私学経営Certificate 資格:司法試験予備試験・行政書士など 執筆分野:経営学・心理学・資格・キャリア分野のコラム記事を担当させていただく予定です