本連載では、ビジネスで活用できそうな経営学理論や重要なキーワードをご紹介しております。
今回は、M&A実務について、全体的な流れを解説していきたいと思います。
それに伴って、M&A実務でよく使う用語なども随所で解説していきます。
M&Aという活動は、大きなお金が動くこともあって、非常に難易度の高い活動といえます。
そのため、様々な分野の知識を総合的に身につけておく必要があります。
まず、M&Aにおいては経営権の移動が伴うので、経営全般に関する知識が必要です。
特に経営戦略論の分野に深く関わります。
そして、経営戦略という分野は、MBA(経営学修士号)で実施される講義の中でも最も難しいと言われている分野の一つです。
そのため、極めて高度な専門知識がないといけません。
また、多くの利害関係者が絡む契約となる上、会社法上の組織再編が伴うことが多いので法律分野の中でも企業法務(ビジネスロー)に特化した知識が必要になります。
このビジネスローという分野も非常に難易度が高く、弁護士の中でも専門家は少数です。
さらに、M&Aは一般的に多額の資産が移動する行為でもあるので、会計・税務分野・ファイナンスに関する深い知識が必要です。
これらの分野の専門家は、公認会計士・税理士・銀行・投資銀行・証券会社などになってきますが、ここでもM&A実務に携わったことがある士業・専門家は少数派です。
その上、売手・買手が出会わなければそもそもM&Aは成立しないので、通常は豊富な人脈を持ったM&Aアドバイザーが必要になります。
このアドバイザーの皆さんの中で、本当の意味でプロフェッショナルと呼べるような人は、多く見積もっても1割もいません。
これらの専門分野を全部高い次元で修めている人なんて、日本国内に数えられる程度しか存在しないでしょう。
そのため、M&Aは、原則として様々な専門家の力を借りながら段階的に実行されていきます。
このような一連のM&A実務を「ディール(Deal)」といいます。
“Deal”とは「取引」という意味ですが、M&Aでは一連の実務全体をディールと表現しています。
今回の記事では、このM&Aディールの流れに沿って解説していきます。
なお、ディールの流れはM&Aのスキーム(手法)や担当者の熟練度、売手・買手の親密度等で変わります。
したがって今回ご紹介する流れは、よくある一般的な流れの一例だと思ってご覧ください。
M&A実務は長いプロセスを踏むので、まずは全体像を押さえておきましょう。
以下の画像を御覧ください。
今から、上記画像の1から15までの流れを一つずつ説明していきます。
かなり長くなりますので、書く方も読む方も大変だと思いますが、最後まで頑張りましょう。
それでは、M&A実務の流れに沿って説明していきます。
M&Aディールは、M&Aを行うという意思決定を行うことから始まります。
ここでいう意思決定は、売手側でいうと「自社又は子会社の株を売る意思決定」を意味し、買手側でいうと「どこかの会社の株式を買う意思決定」を意味します。
なお、今回はわかりやすく「株式会社」のM&Aで考えていますが、合同会社などのM&Aでは、持分譲渡という方法によって経営権を取得します。
ただし、M&Aのほとんどは株式会社を対象としているため、本記事でも株式会社を対象としたM&Aを想定して解説していきます。
さて、意思決定を行う際に重要なことは、M&Aを目的にしないということです。
M&Aはあくまでも、経営戦略を実現するための「手段」でしかありません。
したがって、M&Aというものは、何らかの経営上の目的があって、それを実現するためにM&Aが合理的だと言える場合に、単なる一手段として候補に挙がってくるものです。
「M&Aが流行っているから当社でもやってみたい」という軽いノリでやるものではありません。
しかし、実務上は経営戦略のないM&Aが実施されることがよくあります。
そしてそのようなディールの多くが失敗に終わっているので、M&Aを行うならば経営戦略をしっかりと練って、優秀な専門家の力を借りて慎重に行うべきだと思います。
M&Aを行う場合、通常はM&Aアドバイザーの選定を行います。
これはもちろん必須ではありません。
社内にM&Aに詳しい人がいて、幅広い人脈を持ち、専門家集団との連携も取れているのであれば、M&Aアドバイザーを使わずにM&Aを実現することもあり得ます。
ただ、そういう会社は少数派だと思います。
一般的には、M&Aアドバイザーを選定してM&Aを進めていくことになります。
ただし、その選定は慎重に行うべきです。
M&Aは、アドバイザーの質で成否が分かれると言っても過言ではありません。
アドバイザーと経営者との相性などもあるので、アドバイザーとじっくり話し合って「本当に信頼できるパートナーである」と思える人を選定してください。
M&Aアドバイザーを選ぶ際に、着目すべき事項については、一般的には以下のようなものが挙げられます。
上記の条件をよく吟味して、信頼できる人を見つけてください。
アドバイザーの選定が終わったら、そのアドバイザーとNDA及び仲介契約(またはFA契約)を締結します。
まず、NDAとは、秘密保持契約書のことです。
英語で “Non-Disclosure Agreement” というので、短縮してNDAと呼称されています。
次に仲介契約とは、仲介契約書のことを意味します。
M&Aの売手と買手を仲介する業務を委託する契約書のことです。
続いてFA契約とは、ファイナンシャル・アドバイザリー契約書のことを意味します。
上場企業が行うM&AやクロスボーダーM&A(国境を超えたM&A)では、M&Aで動く資金の額が大きくなるため、通常FA(ファイナンシャルアドバイザー)がつきます。
このFAは、売手又は買手のどちらか一方の専属アドバイザーとしてつくので、仲介業務は行いません。
そのため、売手と買手にそれぞれのFAが付くことが多いです。
FAは、M&Aの金額面やスキーム(方法)等に対する専門的なアドバイスを行ってくれる人たちで、大手企業のM&Aなどでは投資銀行や証券会社などがFAとしてつくことが多いかと思います。
NDA等の締結が完了したら、さっそくM&Aの相手方を探索することになります。
ここからは売手側の場合と、買手側の場合で、少し話が変わってくるので、分けて書いていきたいと思います。
まず、自社が売手側だった場合の相手方探索は、原則としてM&Aアドバイザー(FAを含む。以下同様)が買手候補となりうる企業をリスト化してくれます。
M&A仲介を生業としている会社の多くは、自社内に売手・買手の候補リストを持っているので、今回のディールに合いそうな会社を選出して、一覧表にしてくれることが多いです。
初期段階の候補者リストには、多いときは100社以上の候補先が掲載されています。
これをロングリストといいます。
その後、実現可能性の高い会社を絞り込んでいき、最終的には10社程度まで絞っていきます。
そうやって出来上がったリストをショートリストといいます。
ここまでくれば、売手型としては準備万端です。
次に自社が買手側になる場合は、アドバイザー側で売手の候補リストを限定して提示してくる(最初からショートリストくらいの数)ので、このあとの(5)に以降します。
まず売手側の話ですが、売手は、上述のとおり買手の候補となる企業を絞り込んでショートリストにして、各社にアプローチをかけます。
このとき、いきなり自社の名前や業績などを相手に伝えるのは得策ではありません。
なぜなら、買手候補がM&Aを検討しているのかどうもまだわからないからです。
M&Aでは、同業他社(ライバル)に買収してもらうというケースが多いため、初期段階で自社の情報をすべて公開してしまうと、ライバルに自社の情報を自発的に流すような形になってしまいます。
それだとリスクが高いので、最初は自社の情報をあえて伏せてアプローチをかけます。
このとき使われるのが「ノンネームシート」という資料です。
ノンネームシートとは、M&Aの売手側の情報をあえてぼかして記載している匿名の企業情報のことをいいます。
ニッチな市場の企業だとすぐに特定できてしまうような場合もありますが、原則として特定されないようにぼかした書き方をした資料となります。
これを使って、買手候補先の買収意志を確認して回ります。
これを買手側の視点で見た場合、買手側はロングリストやショートリストを作成するまでもなく、アドバイザーからノンネームシートを受け取ることで相手方を探索できる場合があるわけです。
そもそもM&Aという特殊な取引市場は、売手側の数が極端に少ないので、買手側は限られた案件の中から選ばないといけません。
稀にM&Aを一切検討していない会社に対して「御社の株を売ってくれないか」というアプローチをかけることもありますが、そのような狙い撃ちM&Aは少数派だと思います。
したがって、基本的には売手側が乗り気にならない限り、案件もスタートしません。
さて、ノンネームシートを提出または受領する際に極めて重要なことが一つあります。
それは、アドバイザーの守秘義務に対する整備体制を事前にチェックしておくことです。
M&A市場には、素人同然の自称アドバイザーが山のように存在しています。
彼らは法律にも会計にも全く詳しくないただの営業マンなので、NDAの内容すら理解していないことが多いです。
そのようなアドバイザーは、秘密保持に対する認識も甘いため、ノンネームシートの趣旨を理解せずに、会社名などを簡単に買手に伝えることがあります。
自社を売りに出すという情報を広く知られても問題ないような案件の場合はそれでいいのですが、極秘に進めたいM&A案件だとその時点で致命傷となります。
過去に私が経験した事例でいうと、一斉メールでノンネームシートを送りまくっている人がいました。
ノンネームシートで情報をぼかしたとしても、特定の業種の場合はプロが見ればすぐにわかりますので、一斉メールなどで送られた日にはすぐに売却の噂が流れます。
このようなことが自社で起こらないようにするためにも、自社が売手側になるときは、アドバイザーの質をしっかりと見極めて選びましょう。
買手側がノンネームシートを見て、興味があるとなった場合はネームクリア版の資料が提示されます。
この時点で初めて売手の会社名が買手候補に明かされます。
これをネームクリアといいます。
この段階になると具体的なM&Aのディールが進んでいく段階になるので、売手・買手双方でアドバイザーとのNDA締結が終わっている段階になります。
この時点でもまだNDAを締結していないのは、かなり危ない(おそらく素人の)アドバイザーです。
ネームクリアが終わって、お互いに買収・売却の意思がある場合は、より具体的な交渉に入っていきます。
その場合、売手側から買手側に対してM&Aに関する資料が開示されます。
この資料には、直近数年間の財務諸表や事業計画書などが含まれます。
そして、資料の提示に合わせて、売手側から買収希望価格が提示されることが多いです。
買手側はこれらの資料を熟読して、買収希望価格が妥当なのかどうかを吟味します。
M&Aに慣れている買手の場合、資料を読んだ後くらいのタイミングで、株価算定又は事業価値算定等を公認管理会計士等に委託して行うことが多いです。
これを「バリエーション」といいます。
客観的に見てどの程度の価値があるのかをこの時点で知っておけば、買収価格の上限値をある程度予想することができるので、交渉がスムーズに進められます。
M&Aに関する資料を読み終わって、それでもまだ買収の意思があるという場合は、売手・買手双方のCEO同士で面談を行います。
M&Aを主導するのがCFOである場合は、CFO同士の面談という場合もあります。
このときに注意すべきことは、相手を敵対視してはいけないという点です。
M&Aに慣れていない経営者の場合、交渉の相手方を「自社を安く買い叩こうとしている敵」又は「高く売りつけようとしてくる敵」だと認識してしまうことがよくあります。
たしかにそういう側面があることは否定できませんが、それを態度や表情に表してしまうと、大抵の場合交渉が決裂(ブレイク)してしまいます。
そのような事態を避けるためにも、売手側は買手を「自社のビジネスを引き継いでくれる後継者」だと考えてほしいです。
そうすれば正当な後継者に高く売りつけてやろうとは思わないでしょう。
一方で買手側は、売手のビジネスや従業員を大切に引き継いでいくという意思表示をしましょう。
そうすれば買い叩いてやろうとは思わず、正当な価格で引き継ごうと思えるのではないでしょうか。
イメージでいうと、結婚相手のお父さんにご挨拶に行くような雰囲気です。
内心としては敵同士かもしれないですが、大人の礼儀として、きちんと誠実に対応しましょう。
売手のCEOにとっては、自分のビジネスも従業員も我が子みたいなものだと思うので、どこの馬の骨かわからんような人に買ってほしくないと思うものです。
だからこそ、買手側が誠実な対応を見せれば「この人になら託せる」と思いやすくなりますし、価格交渉も上手く行きやすいです。
また、売手側も自社のビジネスにバイアス(偏見)が必ず発生していることを自覚しましょう。
誰よりもよく知っているビジネスだからこそ評価が甘くなりがちで、一般的な算定価値よりも高く認識しがちです。
しかし、買手の立場で自社のビジネスを見ると、内部情報がほとんどないがゆえに未知の部分が多く、高い価格を出しづらいのです。
売手・買手が、双方相手の立場を理解して行動すれば、M&Aの交渉はよりスムーズに進みますから、お互いに歩み寄って行きましょう。
トップ面談が上手く行き、双方の意思確認ができたら、買手から売手に「意向表明書」が提出されることがあります。
これは、買手側から売手側に対する「私は御社を●●円で買う意思があります」という意思表示です。
ただし、原則として意向表明書には法的拘束力がありません。
買手側も弁護士を入れていることが通常なので、意向表明書内に必ず法的拘束力に関する事項や購入条件等を明示してきます。
そのため、実質的な意味としては、将来において購入条件がすべて満たされた場合に、一定の金額の範囲内で買う意思がありますよというただの意思表明だと思ってください。
売手・買手である程度交渉が進んで、購入の条件が固まってきた段階で「基本合意書」を締結することになります。
基本合意書とは、これまで交渉してきた内容を今の時点で一旦まとめて、合意部分を明文化しましょうという程度の契約書です。
そのため、意向表明書と同様に様々な条件が付されることが普通です。
なお、基本合意書は英語では “Letter Of Intent”(通称LOI)や “Memorandum Of Understanding”(通称MOU)などと呼ばれています。
M&A実務で横文字を使いたい場合は、LOIやMOUと呼称しても良いと思います。
しかし、個人的には「基本合意書」と呼称することをおすすめします。
なぜなら、英語の定義が論者によって違うからです。
LOIを意向表明書として認識し、MOUを基本合意書と認識している人もいますし、LOIもMOUも同じもので、最終契約書の前に締結される拘束力の弱い書類の総称だと認識している方もいます。
このような定義が曖昧な単語を使うのは、プロ同士の現場では相応しくありません。
双方の認識に齟齬がないように、できる限り日本語で呼称した方が良いですし、プロの法律家ならそうしていると思います。
続いて、基本合意書の意義について簡単に触れておきます。
基本合意書は、主に買手側のために締結される書類です。
なぜなら、基本合意書のほとんどに独占交渉条項及び優先権条項が入っているからです。
まず、独占交渉条項とは、一定の期間、特定の買手とのみ交渉ができるという条項です。
そして、優先権条項とは、基本合意書を締結した日から一定の期間内に、買手が一定の価格帯で買うという意思表示をしたら、売手はそれに応じないといけないという条項です。
いずれの条項も買手には有利ですが、売手には不利です。
それゆえに、基本合意書は主に買手のために締結されるものだと認識されています。
実務上も基本合意書はほとんど買手側がドラフト(草案)を作成して提示してきます。
買手としてはここまで交渉をしてきたことを無駄にしたくないし、この次に控えているデュー・デリジェンスにもコストがかかるので、損をしないようにしておきたいのです。
しかし、売手側からすると交渉相手を制限される上に、売却も強制されてしまうのでなかなか受け入れ難いです。
そのため、基本合意書の段階で交渉を入れることが多いです。
少なくとも私が売手型の法務なら、そのままの内容で受け入れることはしません。
独占交渉権については3ヶ月以内の期間に限定しますし、優先権条項は基本的に削除します。
M&Aは売手市場なので、ある程度強めに交渉をしても問題ないことが多いです。
基本合意書の締結が完了したら、いよいよDDに入ります。
DD(デュー・デリジェンス:Due Diligence)とは、買手側が行う買収監査のことを意味します。
DDには、主に以下の3つの種類があります。
それぞれ、財務的問題がないか、法的問題がないか、事業的問題がないかを監査していく作業です。
財務は公認会計士・税理士、法務は弁護士等、ビジネスDDは経営者等がそれぞれ監査しますが、外部の専門家を交えて行うことが多いため、原則として多額のコストがかかります。
なお、DDを社内のメンバーのみで行うこともできますが、社員からするとかなりしんどい作業です。
日常業務に乗っかる形で対応しないといけない上に、期限も短いことが多いので、大抵夜中まで働くことになります。
私も何度か行ったことがあるのですが、かなり大変な作業です。
そのような負担を軽減するために、基本的には外部の専門家+社内のメンバーでDDを行うことが多いです。
DDの費用としては、時間数 ✕ 20~30万円程度のコストがかかります。
売手の会社の規模によりますが、たとえば合計30時間(約4日間)で売手の財務・法務・事業のリスクをチェックできたとしたら、600~900万円程度のコストとなります。
売手企業の規模が大きければ、DDだけで1ヶ月くらいかかることもあるそうで、その場合は億単位でコストがかかることもあります。
知人のM&Aの専門家(弁護士)が対応したクロスボーダーM&A案件では、1件のDDで2億円の報酬をもらったことがあるそうです。
10人ほどの弁護士で対応したそうですが、毎日早朝から翌朝まで対応して、ほとんど寝ずに働き続けたそうです。
買手のDDが無事に終わって、財務・法務・事業それぞれで大きな問題がないとわかったら、最終契約に進みます。
最終契約の名称は様々ですが、M&A実務上は8割くらいが「株式譲渡契約」です。
難易度が高いスキームを選んだ場合は、合併契約、事業譲渡契約、新設分割契約などの契約が発生しますが、そのような特殊なケースでは、必ず弁護士等に間に入ってもらいましょう。
クロージングとは、最終契約書の締結から1~3ヶ月以内に行われる引き渡し手続のことをいいます。
手続の中には取締役会決議、株主総会決議などが含まれます。
M&Aスキームによって決議すべき事項も主体も変わるので、このあたりの論点については必ず弁護士と公認会計士を入れて、手続に不備がないように履践していきましょう。
そして、法人の経営権の移転が伴う場合は、ほとんどのケースで登記が必要になるので、司法書士にも立ち会ってもらって、登記手続を進めていきます。
クロージングが無事に完了したら、決済(支払い)を行います。
小型のM&Aであれば、通常は自己資金で決済を行いますので、ネットバンキングでポチッとするだけで完了です。
一方で大型のM&Aの場合は、決済前に銀行等からお金を借りる必要が出てくる場合もあるので、その場合は資金調達手続というフローがクロージングの中に盛り込まれます。
また、100億円以上の大型のM&Aでは、決済の日に関係者全員及び銀行の人間がそれぞれ一箇所に集まって、全員で書類をすべて確認して、双方のCEOが承認をその場でしたことを確認した上で送金をするという、大層なイベントが開催されるらしいです。
いずれにしても決済が終わればM&Aが一段落します。
決済が完了したら、引継ぎやPMIの作業に移ります。
まず経営関係の引継ぎは、短い場合は6ヶ月程度、通常は2年ほどかけて行います。
そのため、売手側の経営者は、しばらく会社に残って経営を続けないといけないケースが多いです。
そして、引継ぎと同時進行で行われる重要な作業として、PMIがあります。
PMI(Post Merger Integration)とは、買収後の経営統合を意味します。
主に買手側が行う作業で、一般的には以下の3段階で作業が進んでいきます。
経営レベルの統合では、買収後の経営戦略等の統合を行います。
株式譲渡にしろ、合併にしろ、M&A後は買手側のグループに参画することになるので、原則として経営戦略等も統合しないといけなくなります。
業務レベルの統合では、売手・買手という別々の法人の業務プロセスの統合を行います。
会社にはそれぞれ独自のルールがあって、独自の稟議申請ツール及び各種SaaSがあるので、それらの情報とフローを統合していく作業です。
文化レベルの統合では、売手・買手という別々の法人内部の文化の統合を図ります。
この作業はどちらかというと人間関係などの心理的な部分が大きいので、長期的なプロセスになっていきます。
以上のようなPMI作業を1~3年ほどかけて行っていき、グループとしての連結を強め、相乗効果(シナジー)を得られるよう努力します。
これらが無事上手くいけば、M&Aが成功したということになります。
お疲れ様でした。
ということで今回は、M&Aの実務プロセスを15の段階に分けて解説させていただきました。
だいぶ長くなりましたが、参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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内容に応じて担当者がお返事させていただきます。