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コラム
2024/03/21 更新

組織を崩壊させる怖い現象「ゆでガエル理論」

はじめに

本連載では、ビジネスで活用できそうな心理学理論や重要なキーワードをご紹介しております。

今回は、かなり有名な「ゆでガエル理論」とそれを防ぐための「学習プロセス」をご紹介します
ゆでガエル理論は、日本では身近で多く発生している現象です。
その恐ろしさをよく理解した上で、自己のキャリア形成に活かしていただけると嬉しいです。

1.ゆでガエル理論とは

ゆでガエル理論とは、会社内の組織が少しずつ変化して危機的状況に陥っても、多くの人が変化を拒否するという現象を徐々に茹で上がっていくカエルに例えた比喩表現です。

たぶん試したことがある人はほぼ居ないでしょうが、カエルをいきなり熱湯に入れると驚いて大暴れしたうえに逃げ出してしまいます。
でも、不思議なことに、常温の水に入れて少しずつ水温を上げていくと逃げ出すタイミングを失って最後には茹でガエルになって死んでしまうという作り話から派生した表現です。
日本人にとって身近な例でいうと、生きたカニを調理するときに同じことがいえるかもしれません。
グロい繰り返しになるので、説明は省略します。

ちなみに、アメリカの国立自然史博物館の公式見解としては「カエルは熱湯に入れたら死にますし、水に入れた場合でも温度が上昇してくると逃げます」と真っ向から否定しています。
なので、例え話から名前をつけた理論だと思ってください。
良い子は絶対に試さないように!

さて、本題に入りましょう。
ゆでガエル理論は我々にとっては身近な現象で、潰れかけの会社に行けばいつでも見ることができる現象です。
私も過去に何度も見たことがあります。

一般的な組織では、過去の成功体験や成功法則のようなものに執着する傾向があり、それが「正常性バイアス」という認知バイアスを発生させます。
これは、人間が自分自身の心を守るために発達させてきた防衛機能みたいなもので、多少の異常事態が起こっても、それを正常の範囲内としてとらえ、心を平静に保とうとする機能です。
これによって、小さな変化に心を対応させていくのです。
そのため、少しずつ少しずつ下がっていっている業績やおかしくなっていっている組織に対して、寛容的になっていきます。

そして、この正常性バイアスが進行していくと、自分にとって不都合な情報をあえて見ようとしなかったり、見て見ぬ振りをしたりし始めます。
そこから更に状況が悪化すると、さすがにヤバいなと思い始める人も増えますが、今度は変わらないといけないとわかっていても変わることができないという状態に陥ります。
これを「現状維持バイアス」といいます。

本人は、変わるべきだとも思っているし、状況がかなり悪化しているという認識もあります。
しかし、変化を起こそうとして失敗したり、責任を取らされたりすることを恐れて現状維持を望むのです。
その結果、組織の大半の人がゆでガエルになります。
優秀な人たちは資格や学位を取ってさっさと転職していきます。

組織とは本当に不思議なもので、業績が好調に拡大している企業の方がピリピリとしていて危機感を持っていることが多く、業績が低調または下降している組織の方がのんびりしていることが多いです。
ゆでガエル状態から脱却できた組織も何度か見たことがありますが、その大半が、CEOが一念発起して外部と内部の専門人材を巻き込んで改革に励んだときです。
最終的に、組織を変えられるのは、CEOだけなのかもしれませんね。

2.学習プロセス

次に、自分がゆでガエルにならないためにどうするべきか、という論点についても書いていこうと思います。
この点について、組織論及び組織心理学の分野である程度効果があると考えられている理論があります。
それが、アンラーニング、リラーニング、リストラクチャリングという3ステップで行う学習理論です。
組織でも行うことができますし、個人でも行うことができます。

では、以下の3つのステップについて解説していきます。

(1)アンラーニング(Unlearning)
(2)リラーニング(Relearning)
(3)リストラクチャリング(Restructuring)

(1)アンラーニング(Unlearning)

アンラーニングとは、古くなった知識やノウハウを組織が自ら放棄する活動のことをいいます。
ここでいう「放棄」は完全な放棄を意味し、中途半端に残存させることを想定していない考え方です。
もちろん、記憶の中には残りますので、必要になったらいつでも再活用することができます。
それでも、一旦は古くなった知識やノウハウを放棄することが必要です。

しかし、人間はこの放棄が非常に苦手です。
アンラーニングの過程で正常性バイアスや現状維持バイアスが発動してしまい、過去の成功やノウハウに引っ張られた意思決定をしてしまうことが非常に多いのです。
それはある意味、経験から学んでいるということでもあるので、悪いことばかりではないのですが、自分の成長という意味では障害となることが多いです。

そして、このアンラーニングを組織で行おうとする場合、一度捨てると決めたことをわざわざ拾う人が出てきます。
組織の長が「捨てる」と決めたとしても、過去のやり方、ルール、価値観に固執して絶対に手放したくないという反対勢力が現れるのです。
だからこそ、組織で学習を行うのであれば、アンラーニングが最初の難関といえます。

アンラーニングを成功させるコツとしては、変化耐性が高いメンバーでまずは小規模に行うことです。
そして、役職の高い人(できればCEO)が率先してアンラーニングをやってみせることが重要です。
これらの条件が揃わない状態で行っても、おそらく中途半端に過去の知識やノウハウが残ることになると思います。
なお、個人で行う場合は自分自身がCEOですから、スパッと捨て去って、リラーニングの段階に移行しましょう。

(2)リラーニング(Relearning)

リラーニングとは、再学習のことです。

再学習の方法は様々です。
新しい分野の実務経験によって学習するという方法や、書籍を買って独習する方法、または大学院等に通って座学で知識をインプットする方法などがあります。

しかし、このリラーニングも苦手とする人が多いです。
なぜなら、多くの社会人に学習習慣がほとんどないからです。

リラーニングを成功させたいのであれば、まずは学習習慣を身に着けましょう。
一日30分でもいいので、毎日本を読むという習慣をつけると良いと思います。
もしくは、ハイレベルな社会人大学院に通って、強制的に論文を読まされるという環境に身を置いても良いかもしれません。
少なくとも年間20~30冊程度の読書ができるようになっていれば、リラーニングも比較的容易くなります。

組織でリラーニングを行う場合でも同様の課題を抱えることになります。
私の知る限り、多くの組織が学習スキルの低さで思うような結果が出せずに終わっています。
会社側が学習の機会や研修等を提供しても、組織内の個人の学習スキルが低いため、リラーニングが思うように進まないのです。
勉強という行為は長い時間をかけて訓練をしない限り上手にならないスキルなので、まずは日々の学習習慣を身に着けさせることから始めるべきです。

(3)リストラクチャリング(Restructuring)

リストラクチャリングとは、古くなった知識やノウハウをアンラーニングし、新しい知識・ノウハウをリラーニングして、最後にそれらの新しい知識やノウハウを使って自身の価値観をリストラクチャリング(再構築)していくことです。
新しい常識を構築すると表現しても良いかもしれません。

組織としてリストラクチャリングを行う場合は、組織内の各人がアンラーニング及びリラーニングを経て得た新しい知識やノウハウを総動員して、新しい常識や価値観を再構築していきます。
リストラクチャリングといっても、そこまで大きな作業は必要なく、ビジネスマンが日頃から行っているPDCAを回すだけです。
新しいやり方や制度を仮で組んで、実装させてみて、不都合があれば修正していくといういつもの業務プロセスです。
アンラーニングとリラーニングさえしっかりできていれば、組織も変革に対して寛容になっているはずですので、リストラクチャリングは比較的スムーズに進みます。
あとはどれだけこのプロセスを継続できるかです。

業績を出し続ける組織は、定期的にアンラーニングとリラーニングを繰り返していて、新しい価値観を形成し続けています。
これらの学習プロセスを組織内に根付かせることができれば、ゆでガエルになる心配はほとんどありません。
かなり難易度の高い話ですが、実際にできている組織は存在するので、できないことではないと思います。
少なくとも、個人単位で見ればそこまで難しいことではないので、今日からすぐにアンラーニングを始められます。

ぜひお試しあれ。

おわりに

ということで今回はゆでガエル理論と、それを防止するのに役立つ学習プロセスについて解説させていただきました。
皆様のキャリア形成、または組織構築の役に立てば幸いでございます。

では、また次回の記事でお会いしましょう。
ありがとうございました。

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株式会社WARC

瀧田桜司

役職:株式会社WARC 法務兼メディア編集長/ 学歴:一橋大学大学院法学研究科修士課程修了(経営法学)及び京都大学私学経営Certificate/ 資格:司法試験予備試験・行政書士など/ 執筆分野:経営学・心理学・資格・キャリア分野のコラム記事を担当させていただく予定です