本連載では、ビジネスで活用できそうな経営学理論や重要なキーワードをご紹介しております。
今回はマクロ分析の代表的なフレームワークであるPEST分析について解説していきます。
PEST分析とは、経営分析及び調査に活用するマクロ分析フレームワークです。
おそらくマクロ分析の分野でフレームワークの中では最も有名なフレームワークだろうと思います。
なお、PESTとは以下の単語の頭文字を取ったものです。
これは調査の範囲を分野ごとにまとめたものなので、自分で必要だと思う分野を付け足したり、不要だと思うものを省略したりしても問題ございません。
フレームワークに関するよくある誤解として「フレームワークをそのままつかわないといけない」というものがあります。
フレームワークは所詮思考の枠組みでしかないので、いくらでも自由にいじって構いません。
むしろ自社に合わせたオリジナルのフレームワークを使わないと分析の意義が半減しますので、どんどん改良していきましょう。
なお、この記事では、原則型であるPESTについて、簡単に解説させていただきます。
以下、それぞれの分野でどのような情報を集めるのかをまとめます。
政治分野の調査では、主に以下のような分野の調査を行います。
など
この分野では、一企業レベルではどうすることもできないような大きな政治変化について調べます。
企業が営む事業の種類によって重要度が変わってくるので、各要素の調査濃度はその都度調整してください。
個人的には法改正分野が特に重要であると考えています。
規制業種を選んで事業を行っている会社では、最重要分野の一つです。
弁護士等の力を借りて年に1回は調査を行いたいところです。
なお、法改正自体は国会で行われるため、PEST分析ではPoliticalの分野に組み込まれていますが、その重要度の高さからLegalという分野を別個独立に設けたPESTLというフレームワークもあります。
日本でもあり得る話ですが、今まで自由に参入できていた事業が、突然許可制になったりしますので、調査は必須です。
そして、法改正は政策に基づいて行われることが多いので、政策等の進捗状況を確認しつつ、事業戦略・マーケティング戦略を練ることが重要になってきます。
政策や法改正の情報は、基本的には政府のホームページで入手します。
各省庁が出しているお知らせを日々チェックしたり、政府の委員会が発表している議事録を読んだりして、政策の進捗状況を調査します。
経済分野の調査では、主に以下のような分野の調査を行います。
など
この分野の調査も、満遍なくすべての分野を調べるのではなく、自社の事業への影響度の高いものを優先的に調べる必要があります。
この分野の調査については、どこのサイトに行けばどのような統計資料が得られるのかを知っているだけで格段に早く情報を集められるので、できれば若いうちにソースリスト(情報源リスト)を作っておくことをオススメします。
大学院で研究する際にも非常に役に立ちます。
よく使われるものとしては、官公庁が公開している統計資料や経済白書、矢野経済研究所や野村総合研究所等のシンクタンクが公開している資料、各種学術論文やその他有料資料などがあります。
英語が得意な方は海外の論文や統計資料も集められるようにしておくと便利です。
社会分野の調査では、主に以下のような分野の調査を行います。
など
この分野の調査は抽象度が高い内容ばかりなので、大きな枠組みのSocialとなっています。
ここでも調査方法は他の分野と同じです。
自社の事業への影響度で優先順位をつけて調査してください。
なお、Socialという枠組みを使う必要もありません。
Trend(流行)でもいいですし、Population(人口)でも構いません。
より重要な分野の頭文字を取って、自社独自のフレームワークを作成してください。
技術分野の調査では、以下のような分野の調査を行います。
など
ベンチャー企業の多くがIT企業であることを前提にすると、ベンチャーにおけるPEST分析で最も重要な分野はこの分野かもしれません。
私自身もIT企業に勤めて長くなってきたのですが、それでもまだスピードについていけていません。
それくらいトレンドが高速で変化し続けています。
ある分野が流行り始めたという情報を入手して調べ始めると、あっという間に新しい別の何かが開発されます。
一つを学ぶ終わる頃には、別の何かがもう始まっているのです。
毎年のように驚くべき進化を遂げていくので、私のような人間はただの傍観者となっています。
なお、事業家がこの分野を調査する場合、自分自身で新技術を開発するという視点よりは、様々な新技術をどう事業に応用するのかという視点の方が重要です。
例えば、大学等の研究機関は、研究は大得意ですが、儲けるのは非常に苦手です。
そこで事業家として大学側と協力して、産学連携型の共同事業を興すという方法もあり得ます。
最近では、ベンチャー企業と大学が連携して共同研究を行う事例も増えてきているので、大学発ベンチャーの創業が相次いでいます。
上手く行っている事例はまだまだ少ないですが、世代交代が進んで若い研究者との連携が増えれば可能性は広がると思います。
また、最近のベンチャー企業では、オープンイノベーションの考え方もだんだんと根付いてきているので、企業や研究機関の垣根を超えた連携がなされるケースも出てきています。
オープンソース化(誰でも自由にソースコードを使える状態にすること)も進んでいるので、広い視野と思考で調査を進めてください。
以上、PEST分析の4分野における主な調査対象を例示させていただきました。
上述のとおり、調査対象はPESTである必要は全くありません。
例えば以下のような分野を調査対象にすべき事業もあります。
など
他のどんな分野の頭文字でもいいので、自社ならではの調査対象をフレームワーク化してみてください。
情報を集め終わったら、それらの情報を整理して、戦略に活用できる状態にしなければなりません。
ここでも別のフレームワークがいくつか存在しますが、まずは簡易的に以下の3つの種類に分けると思考の整理に役立ちます。
有利な情報はチャンスになりますし、不利な情報は新しい課題の発見に繋がります。
どちらとも言えない情報は一旦置いておけば良いです。
調査の結果得られた情報を整理して分析していくと、更に追加調査が必要だということがわかることも多いですが、それもまた大きな前進です。
PEST分析などのフレームワークは、情報の整理ツールの一つなので、まずは情報をキレイに整理整頓して、自社にとって何が重要なのか、どのような情報がわかれば戦略を具体化できるのかを見極める事が重要です。
そして、自社にとって重要だと思われる情報について、更に深く調査を行い、戦略の核心となる情報を見つけ出していきましょう。
ということで今回はマクロ分析における有名なフレームワークであるPEST分析について解説させていただきました。
今後もフレームワークはいくつか取り上げていこうと思っていますので、お楽しみに。
それでは今回も最後までお読みいただき誠にありがとうございました。
また次回お会いしましょう。
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