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ハイレベルなマネジメント理論「XY理論」(組織心理学分野)

2024/02/02 更新

はじめに

本連載では、ビジネスで活用できそうな心理学理論や重要なキーワードをご紹介しております。

今回は組織心理学の分野から実用難易度の高い「XY理論」をご紹介していこうと思います。
組織開発やマネジメント、教育等でお困りの方にとって参考になれば幸いです。

1.XY理論とは

XY理論は「X理論」と「Y理論」の2つの理論から構成されています。
この理論は、アメリカの心理学者兼経営学者であるダグラス・マレイ・マクレガー氏(Douglas Murray McGregor 1906年 - 1964年、マサチューセッツ工科大教授)によって提唱された理論です。

原典を読みたい方は以下の書籍を御覧ください。


「企業の人間的側面―統合と自己統制による経営」


そして、X理論・Y理論を説明するためには、先にマズローの欲求5段階説という仮説を説明しないといけません。
今ではこの5段階説は否定されていますが、マクレガー氏がXY理論を出したのは1970年のことで、当時はまだマズローの5段階説(1950年代の理論)が一定の支持を得ていた時期です。

2.マズローの欲求5段階説

マズローは、人間の欲求を5段階に分け、低次の欲求が満たされて初めて次の次元の欲求に移るという仮説を提唱しました。
最も低次のものから順に説明すると、以下のようになります。

5段階目:食欲や睡眠などの「生理的な欲求」
4段階目:身の安全や経済的安定を望む「安全の欲求」
3段階目:集団に属して仲間を必要とする「社会的欲求」
2段階目:他人から評価されたいという「承認欲求」
1段階目:自分らしく生きたいという「自己実現欲求」

しかし、現実的な人間を観察してみると、この5段階の欲求は低次のものから段階を踏んで発生するものではなく、並列的に発生する場合もあるし、高次の段階から低次の段階へ下がることもあるため、今ではあまり支持されていません。

ただ、XY理論が提唱されていたのは、今より50年以上前なので、当時は有力な仮説でした。
そのため、XY理論でも、この5段階説を参考にしつつ述べられています。
これらを前提として、X理論とY理論の解説をお読みください。

3.X理論とは

X理論とは、命令と統制による管理方法を意味します。
X理論は、人間という存在をかなりレベルの低い存在として捉えています。
すなわち、人間は、元来仕事が嫌いで、責任から逃れたいと思っており、大望なども抱かず、とにかく安全であることを求めるものだと考えています。
上記の5段階欲求の中で、低次の「生理的欲求」や「安全の欲求」を重視しているということです。
そのため、他人を管理するためには、強制・命令・懲罰・脅しなどの強制的手段が有効であると考えられてきました。

労働者が十分に働かないなら解雇すると脅したり、懲罰等を与えたりすることで、個人の生理的欲求や安全の欲求を脅かし、それによって管理者側のいうことを聞かせようとしたわけです。
実際、1970年代当時の工場経営などでは、X理論的な手段が多く用いられており、今とは比べ物にならないほど厳しい労働環境でした。

このようなX理論による手法をマクレガー氏は、功を奏しないやり方だったと批判しています。
なぜなら、X理論によるマネジメントでは、従業員は仕事を通じてより高次の欲求を充足することが難しいため、従業員のモチベーション(動機づけ)が上がらないからです。
それどころか、従業員は上司・経営者に対して不満を抱くようになり、最終的には如何にして命令を回避し、抵抗するかに目を向けるようになるだろうとも指摘しています。
実際そのとおりで、産業革命以降徐々に労働組合が結束され、労働闘争などが頻繁に行われるようになっていきました。

4.Y理論とは

Y理論とは、自己統制による管理方法をいいます。
X理論が、命令と統制による管理方法でしたから、やり方としては真逆といえます。

そして、XY理論の肝はこのY理論の方なので、少し詳しく説明していきます。
まず、Y理論ではX理論と異なり、以下のことを前提にしています。

(1)人間は自ら定めた目標のために努力をする(自己統制する)
(2)条件が揃えば人間は自ら進んで責任を取ろうとする
(3)人間は自己実現の欲求が満たされるのであれば自ら進んで行動する
(4)創意工夫や知恵は多くの従業員にも備わっているものである

上記の前提を見てわかるとおり、Y理論は人間をより高次の存在として捉えており、5段階説でいう1~3の段階にいることを前提にしています。
そのため、Y理論は人間への信頼で成り立っている理論であるともいえます。

そして、この理論の重要な点は、会社と従業員の進むベクトルが同じ方向を向いている(統合の原則)と考える点にあります。
すなわち、会社と従業員の目標は統合されていて、同じ方向を向いているのだから、従業員の成長や自己実現が会社の利益にもなると考えるのです。
したがって、会社側はY理論に基づいてマネジメントを行い、従業員の目標と会社の目標を上手に統合させて、従業員の成長が会社の成長にも繋がるような環境を整えていけば良いということです。
それがY理論を用いた理想的なマネジメントスタイルです。

5.Y理論を実務で応用するのは難しい

確かに、Y理論は素晴らしい考え方だと思います。
もし実現できるのであれば、従業員の頑張りが会社の業績に繋がっていくため、従業員にとっても会社にとっても有益な循環が生まれます。

しかし、実際にそれを実現できている会社はほとんどないでしょうし、2020年代半ばに差し掛かった今でも明確な方法論は確立されておりません。
そのため、若干机上の空論感はあります。

そもそも、Y理論が前提とする人間像に疑問があります。
人は皆、自ら定めた目標のために努力するような生き物でしょうか。
また、自己実現を皆が望んでいるとも思えませんし、進んで責任を取ろうとする人も少数派です。
そのため、Y理論が前提としている人間像そのものが若干現実とズレています。

実務の世界で生きていると、やる気も目標もなく日々を過ごしている人の方が多いと感じるはずです。
そもそも自ら進んで学習をしたり、能力を磨こうと努力したりしている人自体が少数派です。
もちろん、一部の優秀な人材については、自ら目標設定を行い、自分で計画を立て、実行していきます。
しかし、それは本当に極一部の人材に関しての話です。
全体としてみると、X理論が前提としている人間像の方が実態にあっているかもしれません。
そのため、Y理論だけに依拠したマネジメントでは限界があると思われます。

もしY理論を基礎としたマネジメントを行いたいのであれば、採用段階から相当に優秀な人材のみを選別する必要があります。
5段階説でいう1~2ぐらいに到達している人であって、当該人材の目標と会社の目標が一致しているような人材に絞って採用すべきです。
それに成功したとしたら、Y理論に基づいたマネジメントも功を奏する可能性が高いです。

しかし、人間というものは年月と共に変わっていくものであるため、永続的な適用は難しいだろうと思います。
20代前半の頃は情熱に溢れていた若手社員も、30代で結婚や子育てに追われる生活の中で、いつの間にか情熱を失っていくものです。
そうなってしまったときでも組織を回せるように、制度を整えておかないといけません。
そのため、Y理論のみに基づいたマネジメントは、特定の条件下であれば一時的には機能すると思われるものの、長期的なマネジメントスタイルとしては若干難易度が高いと思われます。
現実的には、X理論とY理論を併用する形になってしまうでしょう。

ただ、Y理論の考え方自体はとても参考になるため、高度な人材(やる気も能力もある人材)をマネジメントする際には参考になる理論だと思います。

おわりに

ということで今回はXY理論を解説させていただきました。
実務での応用については難易度が高い理論なので、明日すぐに応用できるというものではございませんが、これから組織を構築していこうとしている場合にはある程度活かせる部分も多いかなと思います。
ハイレベルな人材だけで構成された組織であれば、Y理論は最強のマネジメントスタイルになり得るため、知っておいて損はないと思います。
運良く素晴らしい組織に属している方はぜひご活用ください。

ではまた次回🎵

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株式会社WARC

瀧田桜司

役職:株式会社WARC 法務兼メディア編集長 学歴:一橋大学大学院法学研究科修士課程修了(経営法学)及び京都大学私学経営Certificate 資格:司法試験予備試験・行政書士など 執筆分野:経営学・心理学・資格・キャリア分野のコラム記事を担当させていただく予定です