本連載では、ビジネスで活用できそうな経営学理論や重要なキーワードをご紹介しております。
今回は、最も有名なマーケティング理論の一つである「STP理論」について解説していきます。
STP理論とは、自社が効率的に開拓できる市場を見つけるために、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)という3つの要素を分析するというマーケティングフレームワークです。
この理論の提唱者は、フィリップ・コトラー教授(Philip Kotler, ノースウェスタン大学のケロッグ経営大学院教授)です。
コトラー教授は、MIT(マサチューセッツ工科大学)で経済学の博士号を取得後にマーケティング分野で実績を出している教授です。
それでは、コトラー教授のSTP理論の3要素について解説していきます。
セグメンテーションとは、マーケティングにおける自社の戦う市場を細かく分割することを意味しています。
分割の切り口はマーケターによって様々ですが、代表的なものは以下のような要素があります。
これらの要素を複数使用して市場を細分化していき、自社がターゲットとすべき顧客層を明確にしていきます。
ターゲティングとは、セグメンテーションによって細分化された市場の中で、自社がターゲットとすべきセグメントを確定させることを意味します。
別の言い方をすると「自社の顧客は誰か?」に答えることです。
しかし、自社にとっての顧客を特定するのはとても難しいことです。
まず、ターゲティングによって顧客を特定するということは、それと同時に他のセグメントを捨てるということも意味するので、決断(ターゲットにしない顧客層を決めること)が求められます。
日本人は特にこの決断が苦手なので、結局はターゲティングを曖昧なままで終わらせることが多いです。
その結果、誰が顧客なのかが曖昧なままで戦略を組むことになり、ふわっとした商品開発が行われます。
これによって明確な差別化ができずに、その他多くの商品の中に埋もれてしまうことが多いです。
また、仮に良いセグメントを見つけたとしても、母集団があまりに少ない又は市場の成長可能性が乏しいなどのケースが往々にしてよくあります。
さらに、せっかく見つけた良いセグメントであっても、確実に儲かる市場であれば競合他社も同様に乗り込んできますので、すぐに価格競争に巻き込まれます。
このように、自社にとっての顧客は誰かという問いに明確に答えるのは非常に難しいことです。
ポジショニングとは、自社がターゲティングした市場における競合等をしっかりと調査し、自社がどの位置(ポジション)を狙うのかを明確にする作業のことを意味します。
例えば、需要が安定していて、不況にも強い「X」という商品市場を狙うことに決めたとします。
そして、このXという商品市場には、A・B・Cの3社の競合が存在しているとします。
この3社の内、A社はとにかく安く売ることに集中している業者で、品質はよくありません。
一方で、B・C社はA社ほど安くはないですが、品質は普通です。
このような市場で、Aと同じように安さを追求するポジションを狙うのか、それとも安さと品質を両立するポジションを取りに行くのか。
もしくは、徹底的に高品質にこだわって高級路線のポジションを狙うのかを決めないといけません。
ポジショニングは、自社の目指すべき場所を決めるプロセスなので、理想と現実の調整を図りつつ決定する必要があります。
以上がSTP理論の概要です。
STP理論は、頭で理解すること自体は全く難しくないのですが、実際にセグメント、ターゲティング、ポジショニングを考えろと言われると非常に難しくなります。
自社の狙うべきセグメントを割り出すだけでも大変なことですし、その中でターゲティングを決めるのも勇気が必要です。
さらにポジショニングまで決めるとなると、様々な戦略知識(法規制に関する知識や予算管理を含む)が必要になってきます。
そういう意味では、経営戦略論や法律・会計などの総合的な経営知識が必要になってくるので、STP理論を本当の意味で使いこなせるようになるためには長い時間がかかると考えられます。
ということで今回はSTP理論について解説させていただきました。
本記事がマーケターの皆様の参考になることを願っております。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
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