今回は、社会人の強い味方である教育訓練給付金で行ける大学院や講座をご紹介していきたいと思います。
2024年8月末現在、日本には教育訓練給付制度という非常に有益な制度が構築されています。
教育訓練給付制度とは、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に、受講費用の一部が支給される制度です。
つまり、国民の教育費用の一部を、国が負担してくれる制度です。
この教育訓練には、専門実践教育訓練、特定一般教育訓練、一般教育訓練の3種類が存在します。
それぞれ簡単に説明します。
専門実践教育訓練とは、特に労働者の中長期的キャリア形成に資する教育訓練のことをいいます。
社会人が通うことを想定した大学院等もこの類型に属していて、給付金が最も高額になります。
具体的には、受講費用の50%(年間上限40万円)が訓練受講中6か月ごとに支給されます。
大学院の修士課程のほとんどは2年間の通学になりますので、2年間で上限80万円の給付金が出ます。
そして、講座受講後に無事資格取得等した場合(大学院でいうと修士号を取得した場合)で、かつ、訓練修了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合は、受講費用の20%(年間上限16万円)が追加で支給されます。
なお、失業状態にある方が初めて専門実践教育訓練(通信制、夜間制を除く)を受講する場合、受講開始時に45歳未満であるなど一定の要件を満たせば、別途、教育訓練支援給付金が支給されることもあります。
細かい金額についてはハローワークで個別に聞いていただかないといけませんが、一般的な大学院の修士課程であれば概算で約100万円程度の給付金を受け取ることになります。
特定一般教育訓練とは、特に労働者の速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する教育訓練のことをいいます。
この類型は、比較的短期で終了する講座が対象となっています。
給付金としては、受講費用の40%(上限20万円)が訓練修了後に支給される形式です。
一般教育訓練とは、上記(1)(2)以外で、雇用の安定・就職の促進に資する教育訓練のことをいいます。
給付金としては、受講費用の20%(上限10万円)が訓練修了後に支給される形式です。
以上3つの類型があるので、ご自身で受講したいと思っている講座等がどの類型に属するのかを確認してください。
なお、本記事では専門実践教育訓練に該当するものを中心にご紹介していきます。
教育訓練給付制度の詳しい内容については、以下のホームページをご覧ください。
専門実践教育訓練給付の対象となっている有名大学院をまとめていきます。
なお今回は社会人が通うことを前提にしておりますので、ロースクールを除外してご紹介していきます。
また、2024年8月現在で対象となっている大学院の修士課程をまとめますので、より正確な情報を必要とする場合は、以下の検索サイトで大学院名等を用いて検索してご確認ください。
https://www.kyufu.mhlw.go.jp/kensaku/
それでは、日本の北側から順次ご紹介していきます。
経営学という分野で、小樽商科大学を知らない人はあまり居ないのではないかと思うほど有名な国立大学です。
北海道では唯一の国立MBAですので、北海道・東北のビジネスマンでMBAを取るならここ一択です。
私が調べた限りでは、東北地方や北関東には専門実践教育訓練給付金の対象となる有名大学院がなさそうでしたので、いきなり関東に飛びます。
関東の有名な大学院として一橋大学大学院があります。
一橋は専門実践教育訓練給付の対象講座が多く、以下の3つのコースが対象となっているようです。
https://www.ics.hub.hit-u.ac.jp/jp/programs/mba/
一橋大学大学院は、プログラムやコースの仕組みが複雑で、ホームページもわかりにくいことで有名な大学院です。
きちんと調べないと受験すらできないので、一橋を受験しようと思っている方は、早い段階から調査及び準備を進めることをお勧めいたします。
ちなみに、一橋大学のMBAとして最も有名な「一橋大学大学院 経営管理研究科 経営管理専攻 経営管理プログラム」というメジャーなプログラムは、2024年8月末時点で検索した限りでは、専門実践教育訓練給付の対象になっていないようです。
こちらは一般教育訓練給付のみなので、上限10万円の給付金となっています。
また、一橋大学大学院はどのプログラムもとても人気が高く、倍率も高い大学院となっているので、一発合格にこだわらずに、合格するまで受験し続けるというスタンスでいた方が良いと思います。
関東で一橋大学と並んで人気があるMBAとして筑波大学があります。
このプログラムは国際経営を対象としているので、授業のほとんどが英語で実施されるコースとなっています。
なお、筑波大学大学院の人文社会ビジネス科学学術院では、他にも経営学学位プログラムや法学学位プログラムが開講されておりますが、これらはすべて一般教育訓練給付のみの対象となっているので、給付金が極端に少なくなります。
このように、同じ大学院の同じ研究科(学術院)であっても、専門実践教育訓練給付金の対象となるコースとならないコースがありますので、詳しく調べた上で受験するかどうかを決めてください。
私大のMBAとしておそらく日本で最も人気と知名度がある大学院は早稲田大学大学院です。
専門実践教育訓練給付金の対象講座も多いため、関東のビジネスマンにとっては最有力候補となる大学院です。
経営管理研究科のプログラムでは、以下の4つが専門実践教育訓練給付金の対象となっています。
すべて専門実践教育訓練給付金の対象なので倍率も毎年のように高いですが、何度か受験を続けていればいつかは受かると思いますので根気強く受験を続けてください。
経営管理研究科以外にも、法学研究科において知的財産分野のLLM(法学修士号)のコースが用意されています。
こちらも知財分野の法曹及び法務に人気のコースなので、知財分野に興味がある人は受験をご検討ください。
理系特化型の大学である東京理科大学も専門実践教育訓練給付金の対象となっています。
理科大のコースは「技術経営専攻」で、一般的には「MOT」(Management of Technology)と呼ばれているコースです。
MOTはMBAの理系版だと思っていただければ良いと思います。
MOTの課程(修士課程)では、既存の技術及びテクノロジーをどのようにして経営に活用していくのかという視点で研究していくため、エンジニアや技術職で腕を磨いてきた30代~50代の人たちが、経営層として更に高みを目指すために通う大学院です。
その中でも理科大はトップクラスに人気の大学院なので、関東にお住まいの理系職種の皆さんは一度検討してみると良いと思います。
MARCHの中でも特に人気がある青山学院大学も専門実践教育訓練給付金の対象講座を持っています。
青学のMBAは、昼間に通うデイタイムコースと主に夜間に通うイブニングコースがあるのですが、専門実践教育訓練給付金の対象となるのはイブニングコースだけです。
社会人が働きながら行くとすればイブニングコースだと思いますので、受験の際は間違わないように注意が必要です。
あまり知られていませんが、中央大学にもMBAコースがあります。
一般的なMBAは平均年齢が30歳~35歳程度なので、若手のビジネスマンを中心としています。
MBAでは頻繁にディスカッションが行われますが、そのレベルも若手ならではの議論が多い印象です。
一方で中央大学MBAは、学生の平均年齢が40歳と比較的高めで、管理職が多いという特徴を持っています。
そのため、一般的なMBAと比べると経営層に近い視点で議論が展開されます。
その点が中央大学MBAの特徴であり、強みでもあると思います。
また平日の夕方に行う講義の多くがオンラインで実施されており、管理職クラスの社会人でも通いやすい教育体制が構築されています。
これは全国的にも非常に珍しいことで、中央大学レベルの知名度を誇る大学院でオンライン講義を織り交ぜてカリキュラムを構築している点は最先端と言っても過言ではないと思います。
今はまだ中央大学にMBAがあるということ自体があまり認知されていない状態ですが、これだけの教育体制を整えている大学院は珍しいので、今後認知度が上がっていくにつれて倍率が少しずつ高くなっていくと思われます。
明治大学にも専門実践教育訓練給付金の対象講座があるのですが、若干特殊な研究科が含まれますので個別に説明していきたいと思います。
ガバナンス研究科という名称からもわかるとおり、一般的な大学院の研究科とは少し異なります。
こういう大学院を公共政策大学院といいまして、主に国家・地方公務員等が通うことを想定している研究科です。
明治大学も半数が公務員または議員等になっていますので、多くの学生が公的政策に関与する人たちです。
学ぶ分野も若干特殊で、公共政策学という分野を学びます。
公共政策学は、国の内外における政策課題の現状分析や情報収集を行い、そこから得られた情報を基礎にして効果検証や新しい政策の創造を試みる学問です。
とても広い視野で政策研究を行うので、既存の一般的な学部でいうと政治学や国際政治学が最も近い分野かもしれません。
修士号としても公共政策修士号というあまり耳慣れない修士号が授与されます。
非営利団体や公的機関等で働く人にとってはとても面白い分野だと思うので、選択肢の一つになり得るかもしれません。
なお、ガバナンス専攻には、英語コースと夜間コースがありまして、専門実践教育訓練給付金の対象となるのは夜間コースのみとなっています。
この点には注意が必要です。
このプログラムは、グローバル・ビジネス専攻とはなっていますが、カリキュラムと教授陣を見る限り基礎的な科目が多く、かつ、日本人教授が担当しているようなので、おそらく内容としては普通のMBAだと思います。
詳しくは大学院の説明会などでご確認ください。
また、この研究科には、税理士試験の科目免除申請ができる制度もあるようなので、これが専門実践教育訓練給付金の対象となるのかという点は大学院側に確認が必要だと思います。
気になる方は問い合わせをしてみてください。
続いて少し南下して神奈川県の有名大学をご紹介します。
横国は説明不要なほど有名な国立大学ですが、MBAを開講しているというのはほとんど知られていません。
その原因は募集定員の少なさにあります。
横国のMBAは毎年12名しか募集していないので、卒業生が圧倒的に少なく、OBからの情報がなかなか得られない大学院となっています。
私もまだ卒業生に出会ったことがありません。
ただ、横国はネームバリューも研究実績もある大学院なので、横浜付近に住んでいる社会人にとっては良い選択肢になるはずです。
定員はとても少ないですが、志望校の一つとして検討の余地はあると思います。
それでは西日本側に移りましょう。
日本で2番目に賢い大学として有名な京大も専門実践教育訓練給付金の対象講座を一つだけ開講しています。
公共政策大学院なので一般的な民間企業のビジネスマンが通いたい大学院ではないかもしれませんが、その学問研究レベルの高さや京大というネームバリューを考えると、行く価値は十分にあるのではないかと思います。
ただし、入試は普通に筆記試験(法学系・政治学系・経済学系科目のうちの2科目)と口述試験がありますので、相当勉強をしないと合格できません。
京大の公共政策は日本でもトップクラスの難易度ですので、入学前後を通してある程度勉強に時間を投資する必要があります。
関西で最も有名な私大である同志社大学も専門実践教育訓練給付金の対象講座を持っています。
関西の大学院なので卒業生が周りにおらず、詳しいことはわかりかねますが、同志社MBAでは京都と大阪で同じ授業が受けられるようで、社会人が通いやすい配慮がなされているようです。
2箇所で講義を受けられるというのは非常に魅力的で、関西付近に在住のビジネスマンにとっては有力候補の一つとなると思いますので、募集要項をよくご確認の上、受験を検討してください。
関東でも同志社大学と同等の知名度を誇る立命館も専門実践教育訓練給付金の対象講座を持っています。
立命館はホームページを見る限りだと4つのプログラムを用意しているようですが、専門実践教育訓練給付金の対象となるのはマネジメントプログラムのみとなっているようです。
今後立命館が申請等を行って対象講座を増やす可能性もあるので、受験を検討している方は大学院に問い合わせて最新情報を入手してください。
同志社・立命館に続いて、同じく関西地方から関西学院大学の講座もご紹介します。
関西学院大学も同じ研究科内に会計専門職専攻や国際経営専攻などのコースを用意しているようですが、専門実践教育訓練給付金の対象となっているのは企業経営戦略コースだけのようです。
年度によって変更もあり得ますので、受験を検討している方は最新情報をご確認ください。
最後に九州地方の大学院を一つご紹介します。
西日本では京大に次ぐ知名度を持っている九州大学のMBAです。
九大のMBAが専門実践教育訓練給付金の対象になっているのは、九州地方にお住まいのビジネスマンにとっては有り難い話です。
九州地方は大学院自体が少ないので、給付対象講座を見る限りでは九大一択になりそうです。
毎年の入試倍率などの公式データが見当たらなかったですが、九大以外に現実的に通えるMBAが見当たらないので、おそらく2倍以上にはなると思います。
そう考えると、受験を検討されている方は複数回の受験も覚悟した方が良さそうです。
ということで今回は、専門実践教育訓練給付金の対象となる大学院(修士課程)を特集してみました。
皆様の大学院選びの参考になれば幸いです。
WARCで働きたい!WARCで転職支援してほしい!という方がもしいらっしゃれば、以下よりご連絡ください。
内容に応じて担当者がお返事させていただきます。