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2024/10/17 更新

ベンチャー企業はハード?ベンチャー企業の特徴と楽しみ方について解説

はじめに

私は約10年間ベンチャー業界にいるのですが、ベンチャーは特殊な世界だなと未だに感じることが多いです。
その特殊性によって、ベンチャーに合う人と合わない人が明確に分かれます。

合う人はベンチャーの世界にすぐに馴染んで、周りの環境を利用して活躍の場をどんどん広げていきます。
他方で、ベンチャーに合わない人は、あまりに激しい変化の日々に疲弊していきます。

もし自分がベンチャーに合うのかどうかという点を事前にわかっていれば、より妥当な転職先を選べるはずです。
そこで今回の記事では、ベンチャー業界の特殊性を踏まえつつ、ベンチャーの楽しみ方や向いている人の特徴などを述べていきたいと思います。

1.ロールモデルは存在しない

ロールモデルとは、自分にとって模範となるような人物のことを意味します。

大手企業などでは、ピラミッド型の組織構造で、しっかりと年功序列制度が構築されています。
それゆえ、課長なら30代後半から40代、部長なら40代後半などというレンジ(年齢幅)がある程度決まっていることが多いです。

こういう組織では、自分が数年後になっているであろう姿を上司に重ねることができるので、今後どういう状況になっていくか、どう成長していけばいいのかが簡単に想像できます。
良い意味で、将来像が見えやすいので、将来設計を立てやすくなります。
安定した大手企業の最大のメリットは、この将来設計の立てやすさにあると思います。
ロールモデルがいくらでも見つけられるので、将来を予測しやすいのです。

一方、ベンチャーにはロールモデルなんてものは存在しません。

1年後に誰が生き残っているのかもわかりませんし、3~5年後になるとほぼ別の会社になっていると思います。
それくらい変化が激しい世界です。

ベンチャーの世界に向いている人は、こういう劇的な変化を楽しめる人です。
何が起こるかわからない未来で、生き抜く力を身につけたいと本気で思っているような人は特に向いています。

大手企業にいる中高年の先輩たちを見て、自分のロールモデルにはしたくないし、きっとこの人たちと同じ生き方をしていたら生き残れないと気づける人が、ベンチャーに行くべきだと思います。
我々がこれから生きていかないといけない時代は、今の中高年の先輩たちが生きてきた時代とは全く異なります。
変化のスピードが極めて早いため、新しいことを学び続けないと生き残れない時代です。
そんな世界で努力し続ける覚悟を決められた人であれば、ベンチャーの変化を楽しめるのではないかと思います。

2.ポジションは創るもの

ベンチャー企業では、安定したポジションはあまりありません。
肩書もほとんど幻想ですし、ある程度自由に付けられます。

だからこそ、ベンチャー企業では「自分でポジションを創り出す」という発想が重要になってきます。
受け身の姿勢でポジションを待ち続けても、良いチャンスはなかなか巡ってきません。

会社の事業計画等をよく理解して、会社にとってメリットがあり、かつ、自分の成長に繋がるようなポジションを自分で生み出すくらいの感覚でいた方が良いです。
ベンチャーは経営者と従業員の距離がとても近いことが多いので、従業員からの提案を受け入れてくれるケースも多くなります。
理に適った提案であれば、少なくとも検討はしてくれると思うので、自分でポジションを創るという発想を持っておくと良いです。

3.基本的にハードモード

ベンチャー企業は基本的に、ハードモードでプレイするRPGのようなものです。

これは普通に考えたら無理ではないか?と思えるような目標を達成し続けないといけません。
普通のやり方、普通の感覚では達成できないことばかりです。

通常よりも早いスピードで知識を習得することが要求されますし、家に帰ってからも勉強し続けないと業務で支障が出ます。
かなり早いスピードで自分自身を成長させないと対応できないので、日々があっという間に過ぎ去っていきます。

しかし、その成長スピードに一度慣れてしまえば、大手企業で通常は5年ほどかかる成長を1~2年で達成できるようになります。
そうなれば成長そのものを楽しめるようになりますし、困難な課題に直面したときに複数の達成経路を思いつけるようになります。
そういう自分になりたいと思える人は、ベンチャーを楽しめるのではないかと思います。

4.独立する人が多い

大手企業では、独立なんて滅多に見かけません。
もっと別の言い方をすると、独立せざるを得ないような人しか独立しません。
つまり、転職ができず、社内にも居場所がない人が個人事業主に追いやられるケースです。
これは大手企業にいる頃にたまに見た事例です。

一方でベンチャーでは、優秀な人ほど独立します。

ベンチャー企業で数年間修行をした後、自分自身でもベンチャーを立ち上げるのです。
そのとき、元いた会社のCEOが出資者になってくれたり、オフィスの一部を転貸してくれたりもします。
ベンチャーでは独立に対してかなり寛容で、協力的な人が多いです。

私も今までに独立した人たちを100人近く見てきているので、日常的な出来事として認識しています。
ベンチャーにはそもそも独立心が旺盛な若手が多いので、将来自分で会社を経営したいと思っている人の方が馴染みやすいかもしれません。

5.安定とは無縁の世界

ベンチャー企業で働きたいと思うなら「安定」「定期昇給」「食わしてもらおう」という考えは捨てた方が良いと思います。
そういう考えの人は、いても苦しくなるだけです。
採用されるかは別として、大手や公務員に向いていると思うので、ベンチャーは避けた方が良いだろうと思います。

ベンチャー企業は、常住坐臥サバイバルゲームをするところです。

いつクビになっても独力で生きていけるようになりたいと思っているような人たちが集まるところだと思った方が良いと思います。
ベンチャー企業はそういうスキルを身につける養成所だと思っています。
常にビジネスについて考えて、新しい何かを生み出す努力をし続ける場所です。

ベンチャーでは、自分自身の常識すらも疑って、自ら変化を起こし続けないといけません。
変化をし続けることでしか、生き残れないからです。

安定などを求めだすと途端に居心地の悪い場所になってしまうと思うので、常に変化を求めている人の方が楽しめるでしょう。

6.回遊魚的思考

回遊魚の代表格として有名なマグロは、口を開けたまま泳いでいるのですが、それは、エラに海水を通すことで呼吸をしているからです。
そのような呼吸方法を取っているため、マグロは自分自身でエラを動かすことができません。
そのため、泳ぐのを辞めてしまうと呼吸ができなくなり窒息死します。
回遊魚全部が死ぬわけではないのですが、マグロは止まると死にます。

ベンチャーでは、このマグロのように「止まったら死ぬ」という思考を持っていることが重要です。
常に変化と成長を繰り返さないといけません。

従業員一人ひとりも、それぞれが自分に必要なことを学び続けて、アウトプットし続ける日々です。
変化や成長に貪欲になれない人はベンチャー企業には向いていません。
変化のない日常こそが恐ろしいのだと知っている人たちが集まる場所です。

そういう仲間たちと楽しく回遊できる性格の人は、ベンチャーに向いています。

7.イレギュラーがレギュラー

ここまでお話してきたとおり、ベンチャー企業は変化が激しいです。
朝令暮改は当たり前で、朝令昼改くらいのペースで意思決定が変わることがあります。
そのため、イレギュラーがレギュラーになっていきます。

最初のうちは、なぜこんなに意思決定をコロコロ変えるのだろうかと不思議に思うかもしれませんが、それは状況や情報が刻一刻と変化していっているからです。
さっきまで正しいと思っていた情報が、昼には変わっていることがありますし、ベンチャーの変化速度が早いため、状況そのものも変わり続けています。

その瞬間瞬間で正しいと思われる「仮説」を立て、情報が少ない状況下で無理矢理選んでいるような状態なので、後々新情報が出てくればそれに対応して意見が変化します。
それを理解して、対応できるようになってくるとベンチャーを楽しめるようになってきます。

先々起こり得る変化を予想して、いかようにも対応できるような下準備をするようにもなります。
これが優秀なベンチャー社員の特徴でもあります。

先々起こり得る変化を予測し、対応可能な「余裕」をいつも確保しているのです。
優秀な社員の多くは、いつも60くらいの力しか出していません。

ベンチャーでは忙しさに大きな波があるので、優秀な社員はいつでも大波に対応できるように「余裕」をあえて作っています。
イレギュラーがよく起こって急に忙しくなるので、休めるときにきちんと休んでおける人がベンチャーに向いています。

おわりに

長々書いてしまいましたが、上記がベンチャー企業の特徴です。
これらの特徴を楽しめそうだと思えるような人は、ベンチャー企業に向いていると思います。

個人的な意見ではありますが、私は結構楽しんでいます。

あまりに変化が激しいので、合わない人には苦しい場所かもしれませんが、合う人には最高に楽しい場所です。
半強制的に変化し続けないといけないので、毎年何かを学び続けないといけない状況に追いやられます。
そういう環境の方が成長も早い気がするので、成長を強く望む人はベンチャーに行くのもありだと思います。

ちょっと衝撃の強い記事になってしまったかもしれませんが、この記事が若手ビジネスマンの皆さんの意思決定の補助になれば嬉しく思います。

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瀧田桜司

役職:株式会社WARC 法務兼メディア編集長/ 学歴:一橋大学大学院法学研究科修士課程修了(経営法学)及び京都大学私学経営Certificate/ 資格:司法試験予備試験・行政書士など/ 執筆分野:経営学・心理学・資格・キャリア分野のコラム記事を担当させていただく予定です

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