マネージャーによってマネジメントの方法は人それぞれなので、様々なマネジメントスタイルが存在しています。
しかし、初めて部下を持った新人マネージャーにとって、これは非常に学びにくい状態で、何をどうすればいいのかわかりにくいと思います。
特にベンチャー企業においては社員全体の年齢が若いので、マネジメントスタイルに関するノウハウが乏しい所も多いです。
そこで今回は、ベンチャー企業おける代表的なマネジメントスタイルを類型化してみようと思います。
ベンチャー企業で新しく部下を持つようになった若手マネージャーの皆様の参考になれば幸いです。
ベンチャーでよく見るマネジメントスタイルとして、指導型(カリスマタイプ)が挙げられます。
この類型は、マネージャーのカリスマ性で組織運営を行うマネジメントスタイルで、ベンチャーの創業者であるCEOやCOOなどが主に用いるスタイルです。
ベンチャーの経営者にはビジョナリーで魅力的な人が多く、話を聞いているだけでなぜかモチベーションが上がっていくという不思議な現象がよく起こります。
このような特殊な能力をフルで活用したマネジメントスタイルです。
しかし、このマネジメントスタイルは真似をしようとしてもできるものではありません。
持って産まれた才能やリーダーとしての資質がないとできないでしょう。
若い人でもわかるようにいうならば、覇王色の覇気を持っているマネージャーです。
それゆえにこのマネジメントスタイルを採用できる人は極々少数です。
代表的な例としては、HONDAの創業者である本田宗一郎さんやソフトバンク創業者の孫正義さんが該当します。
師弟型(レクチャータイプ)は、マネージャーが部下を教育し、師弟関係を築くことで組織をまとめるマネジメントスタイルです。
このスタイルは教えることを前提にしているので、現時点での部下の力量をあまり気にしなくて良いというメリットがあります。
そのため、新卒採用や若手採用に適したマネジメントスタイルであるといえます。
大手企業の多くではこのスタイルが採用されていることが多いです。
他方で、このスタイルは師弟間の人間的相性の問題が発生しやすいため、相性が悪い組み合わせだと部下があまり成長しません。
また、仮に相性が良かったとしても、一人前に育つまでに時間がかかります。
そのため、メンバーが組織に加入して、実際に一人前になって活躍するまでの間は辛抱が必要となるスタイルです。
さらに、このマネジメントスタイルは教育できる人材がいることを前提にしていますが、残念ながら教育力のある人はなかなかいません。
それゆえに人材獲得における競争力がまだ乏しいベンチャー企業ではなかなか採用しづらいスタイルであるといえます。
並列型(パートナータイプ)は、組織の上下をあまり明確に定めず、それぞれがプロフェッショナルとして並列で存在するというマネジメントスタイルです。
このような組織では、マネージャーはただの「タスク管理担当」という役割でしかありません。
そのため、どちらが上か下かという概念も薄く、組織内の多くの人材が並列なので、チームとしてとても上手く機能しやすいマネジメントスタイルです。
このスタイルは小規模なスタートアップやベンチャー企業に適しており、実際に多くのベンチャーで導入されています。
しかし、組織の規模が大きくなり、年齢層もバラバラになってきた段階で、どうしても役職上の上下関係ができあがっていきます。
なぜなら、プロフェッショナルじゃない人も組織に入ってくるからです。
そういう人たちに対しては、他のマネジメントスタイルを採用せざるを得ません。
経験上、並列型で組織を回し続けられるのは、100人くらいまでが限界ではないかと思います。
早ければ20名くらいからこのマネジメントスタイルは崩壊しますので、あくまでも小規模の組織でのみ使えるスタイルだと思っておいた方が良いです。
なお、会社の中に小規模の組織を複数作った上で、それぞれの組織内では並列型で運用するという方法は可能です。
その他にも、複数のプロフェッショナルが関わるM&Aプロジェクトや新規事業プロジェクトなどでも活用できるスタイルです。
友情型(フレンドリータイプ)は、友情関係によって組織をまとめるマネジメントスタイルです。
この類型は、並列型と異なり、プロフェッショナルであるかどうかを問いません。
年齢も役職も関係なく、友情関係で組織をまとめます。
このスタイルが成功すると、組織内が友人だけで満たされている状態になるので、非常に働きやすい組織ができあがります。
そのため、従業員の定着率の向上やモチベーションの維持などに貢献するスタイルです。
ベンチャーでも比較的多く取り入れられているスタイルで、大学発ベンチャーや学生時代の同級生や先輩後輩で創業したベンチャーなどでよく採用されています。
しかし、この類型は良くも悪くもお友達関係なので、ビジネス色はかなり薄くなります。
それが悪い方向に作用してしまった場合は、利益を出せない組織になってしまいがちです。
また、この類型は、周りの状況を観察して今自分が何をすべきかを把握できる人ばかりが在籍している組織では非常に良く機能するのですが、明確な指示・命令がないと動けないという人が多い組織では機能しづらくなります。
したがって、組織の規模が大きくなっていくにつれて、徐々に機能しづらくなっていくスタイルといえます。
支配型(ドミネイトタイプ)は、従業員を精神的に支配することで組織をまとめ上げるマネジメントスタイルです。
このマネジメントスタイルでは、人を恐怖や罰、アメとムチ、その他巧みな言葉で言いくるめて、精神的に支配していきます。
精神的に支配された部下は、上司の言うことを忠実に聞くので、上意下達の組織が構築されやすいです。
そのため、体育会系の組織又は営業職が中心となっている組織で採用されやすいマネジメントスタイルです。
このマネジメントスタイルを採用した場合、合わないと感じた人は会社を去っていくので、最終的に残るのは、その会社の経営者や上司が言っていることを盲信できる信者のような人しか残りません。
ただ、残った人に関しては、マネージャーのいうことを100%聞くので、思いのままに動かせます。
私はこのスタイルを妥当なマネジメントだとは思っていませんが、実際問題として多くの組織で採用されています。
良く言えば昭和型のマネジメントスタイルで、悪く言えばパワハラ系マネジメントスタイルです。
いろいろと問題の多いマネジメントスタイルですが、それでも未だに無くならないのは、経営者から見ると非常に都合の良い組織になるからだろうと思います。
自分のいうことをよく聞く人間しかいない組織ですから、極めて動かしやすいのです。
恋愛型(ロマンスタイプ)は、恋愛関係によって組織をまとめるマネジメントスタイルです。
このスタイルは、恋人同士で事業を興す場合や、夜の商売などでよく見られます。
極めて高い確率で長くは保ちませんが、上手く行っている間だけは楽しく過ごせます。
異性でも同性でも恋愛感情は成立しうると考えていますが、いずれにしても、相思相愛の状態は信頼関係を強固に構築している状態です。
それはきっとマネジメントという観点から見ても一種の完成形なのだろうと思います。
相思相愛の状態だと、相互に相手のことをよく理解した上で行動できますから、業務も円滑に回ることが多いです。
ただし、すべてのカップルが上手く行くわけではないですし、殆どのカップルは別れます。
そして、破局した瞬間から組織がギクシャクし始めて崩壊していくことになります。
したがって、夫婦で創業した場合や家族経営の会社でもない限りは、あまりオススメはできません。
家族型(ファミリータイプ)は、その名の通り、家族(またはそれと同等の関係性)で組織運営を行うマネジメントスタイルです。
このスタイルは、同族企業や小規模の中小企業でよく見られるマネジメントスタイルです。
社員の多くが血縁者で構成されていて仲がよく、同じ釜の飯を食うくらいの距離感で組織運営を行っています。
しかし、組織内の人間の距離が極めて近いので、合う合わないがハッキリ出ます。
特に血縁関係がない人からすると気持ち悪さが出てくることも多いので、離職率の向上を招く可能性があります。
他方で、家族型でも気にしない人や家族型の方が合うという人だけで組織が構成された場合、極めて強固な組織となって機能します。
私の知る家族型の組織では、20年以上安定して経営している会社も多いので、ハマれば強いマネジメントスタイルだと思います。
ベンチャー企業の一部でも採用している会社は存在するので、一つの類型知識として頭に入れておきましょう。
業務型(ビジネスライクタイプ)は、業務上必要な範囲だけ関わることで組織運営を行うマネジメントスタイルです。
このスタイルでは、組織内の人間に必要以上には関わらない、話しかけない、踏み込まないことを徹底します。
業務遂行上必要な報連相のみで運営するイメージです。
そのため、人の入れ替わりが激しい業種や受託開発系のエンジニア組織などには向いているマネジメントスタイルだと思います。
しかし、このスタイルが採用された組織は、従業員間の関係がとてもドライです。
それゆえに離職率という部分にはある程度目を瞑って組織運営を行う必要があります。
そして意外かもしれませんが、ベンチャー企業にはこのスタイルの組織は比較的多く存在しています。
ベンチャーの離職率は、大手企業と比べるとかなり高いですし、急拡大をしている最中はどんどん新しい人が入ってきて、同時に辞めていきます。
そのような組織でマネジメントを担う人が一番採用しやすいマネジメントスタイルが業務型です。
そうだとすると、あえて業務型を採用しているというよりは、組織運営上それしか方法がなかったという方が正しいのかもしれません。
いずれにしても、どこかのタイミングでマネジメントスタイルを進化させないといけませんので、組織が転換点を迎えるタイミングで新しい組織運営のあり方を考える必要が出てきます。
最後に、上記のマネジメントスタイルを一覧で掲載いたします。
いずれも一長一短あるスタイルなので、まずは自分にもできそうなスタイルを採用してみましょう。
ちなみに、優れたマネージャーの多くは、上記の2つ以上を上手に使い分けて組織をマネジメントしています。
プロフェッショナルに対しては並列型、まだ経験不足の後輩たちには師弟型という具合いに、人に応じて変えていることも多いです。
本記事が皆様の参考になることを願っております。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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