ビジネスの世界では、私たちは常に誰かに評価され、その評価が仕事や報酬に影響していきます。
このとき「自分が思う自分の価値」と「他人から見た自分の価値」が大きくズレてしまうと、人事評価で納得できないということが増えて、働くモチベーションが低下していきます。
これがもし部下の多くで発生してしまった場合、組織が機能しづらい状態に陥ります。
組織をマネジメントする立場にいる場合に、このような事態を防ぐためにはどうすれば良いのでしょうか。
今回はこの論点について、マネージャーの視点から検討していきたいと思います。
まずは主観的評価について考えていきましょう。
主観的評価とは、自己に対して有する自身の評価のことをいいます。
この主観的評価は、残念ながら当てになりません。
人は、自分のことを他者より優れていると錯覚しやすいからです。
自分に対する認知にバイアス(偏見、錯覚)がかかってしまうのです。
認知心理学では、このような錯覚を「ダニング=クルーガー効果」と呼びます。
そして、客観的評価が低い人ほど自分の能力を過大に評価する傾向があります。
主観的評価と客観的評価が一致しない人、特に「上司や同僚が自分を認めてくれない」と思っている人は、自分の無能性を理解していない可能性が非常に高いのです。
そこをまず理解する(させる)必要があります。
スラムダンクの安西先生の言葉がその本質をついております。
「下手くその上級者への道のりは、己が下手さを知りて一歩目」
まさしくこのとおりです。
マネージャー視点でいうと、自分は優秀だと思い込んでいるような認知バイアスが強い人を採用してはいけません。
間違って採用してしまった場合は、どうやって能力不足を理解してもらうかを検討する必要が出てきます。
しかし、残念なことに、自己の能力不足を理解させることは非常に困難です。
なぜなら、そういう勘違いをする人というのは、自分の能力を客観視できないからです。
そもそも自己の不足・欠点を認知すらできていないがゆえに自己評価が高くなるわけですから、そこを気づかせるというのは大変な苦労が伴うのです。
一歩間違うとパワハラにもなりかねないので、細心の注意を払って本人が納得できるように伝えないといけません。
ここまでの労力をかけても、気づかない人は気づかないままです。
他方で、客観的評価が高い優秀な人は、自分の能力を過小評価する傾向があります。
これは、優秀な人達が『自分ですら簡単にできたことだから他人にもできる』と思い込みやすいということを意味します。
自分が特別な能力を持っていると気づいていないのです。
マネージャー視点で言うと、こういう人材こそ採用すべき人材です。
次に客観的評価について考えていきましょう。
客観的評価とは、他者から見た自分の評価のことを意味します。
この客観的評価も、実は当てになりません。
他人の能力や優秀さというものは、あくまでも相対評価でしかないからです。
ここでいう相対評価とは、周りにいる人と比べての評価です。
組織内の人間の評価は、どうしてもその組織内の他の人間と比べることで評価を下すことになります。
そうすると、比べる対象(集団)の平均的な能力によって、評価は大きく変わってきます。
例えば、社内に公認会計士がたくさんいるような会社で、日商簿記2級までしか持っていない若い社員がいたとします。
この人の評価が公認会計士より高くなることは、おそらく一生ありません。
比較対象が公認会計士なので、どう頑張っても勝てないと思います。
その後に一生懸命頑張って日商簿記1級まで取得したとしても、その組織にいる限り、時間単価で公認会計士を超えることはできないでしょう。
比べる対象(集団)の能力値が高すぎると、努力を正当な価値として評価しづらくなるのです。
だからこそ、マネージャーは、被評価者(部下)の「働く目的」を深く理解する必要があります。
仮に部下が「組織内で高い評価を得て、高所得を得る」という目的を持って働いているのであれば、公認会計士ばかりがいる組織にいさせると不都合が発生しやすくなります。
そういう人は、もっと平均的能力値が低い組織(自分でも勝ち上がれる組織)に属するべきなので、採用すべきではない人材だと思います。
一方で、部下が「公認会計士から会計・財務の実務知識を学ぶ」という目的を持っているのであれば、組織内での評価が公認会計士より低くても全く問題ないと考えるはずです。
このように、部下がどのような目的を持って働いているかで、評価の受け取り方が変わってきます。
だからこそマネージャーは、被評価者の目的を考慮に入れた上で組織に組み込む(採用する)ようにするべきだと思います。
ここまで書いてきたことを簡単にまとめていきます。
まず、主観的評価として、自分自身を優秀だと思い込んでいるタイプの人を採用するべきではありません。
このような人を組織に入れてしまうと、主観的評価と客観的評価のズレが大きくなってしまうので、高確率でトラブルが発生してしまいます。
次に、客観的評価については、組織内の他の人間たちとの比較になりやすいという点に注意が必要です。
つまり、組織内に極めて優秀な人材が多い場合は、一般的に優秀と思われる努力をしても平均以下の評価しか得られません。
他方で、組織内の平均的な能力が低い場合は、普通の努力をしただけでも高く評価される可能性があります。
このように、客観的評価がただの相対評価なのだと認識しておくことが重要です。
そして、組織に新しいメンバーを迎えるときは、被評価者の働く目的を深く理解する必要があります。
その目的が組織に適合している限りは、主観的評価と客観的評価のズレは生じづらくなります。
以上のことをマネージャー側が理解していれば、主観的評価と客観的評価のズレによって発生するトラブルを未然に防げるのではないかと考えます。
今日は主観的評価と客観的評価について検討してみましたが、参考になりましたでしょうか。
別の視点や見解もあると思いますので、自分自身が行う人事評価における主観と客観について考えてみると良いかもしれません。
それでは最後までお読みいただきありがとうございました。
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