今回は、若手ビジネスマンが組織論を学びたいと思ったときに読むべき書籍を紹介していこうと思います。
しかし、組織論は学際的(複数の学問分野にまたがっている分野)なので、まずは組織論の全体像を把握した上で書籍を選定した方が学習しやすいかと思います。
そこで以下では、組織論の全体像から語っていきます。
組織論は前述のとおり、複数の学問領域にまたがる学際的な学問です。
主なものでいうと、社会学、心理学、経済学、経営学などの分野でそれぞれ組織に関する研究がなされています。
それぞれ着目する視点が異なるので、それぞれ名称が異なります。
例えば、単なる「組織論」と記載されている場合は、主に組織の構造的側面に着目した研究がなされていることが多いです。
その中でも組織の管理に着目した研究の場合は「経営管理論」又は「経営組織論」という名称になったりします。
また、組織の構成員の心理及び集団心理に着目した場合は「組織心理学」という名称になりますし、組織心理学の中でも産業分野に特化したものを「産業組織心理学」といったりします。
そして、行動の傾向や特徴などにも着目したものは「組織行動論」と呼ばれることがあります。
さらに、組織の中の様々な利害関係を経済学的に解明しようとする研究分野があり、その分野は「組織経済学」などと呼ばれています。
名称は様々ですが、それぞれの研究分野にはある程度重なる部分があって、それぞれが密接に関連しています。
そのため、私の中ではこれらすべてが「組織論」に包括されるものだと考えています。
どんな名称を使おうが組織について研究していることには変わりがないからです。
組織論という大きな枠組みがまずあって、その中で様々な着眼点・研究方法が存在し、細かくジャンルが分かれるのだと考えた方がわかりやすいでしょう。
例えば以下のように分類するとわかりやすいかもしれません。
このように分類して覚えると全体像を把握しやすいと思います。
学者の皆さんからの異論があるかもしれませんが、そう考えた方が実務家にはわかりやすいです。
学問研究者にとっては「あそこと一緒にするな!」とかいろいろあるでしょうけど、この連載はあくまでも実務で役に立つことを主眼としているので、お許しください。
それでは、組織論の全体像がわかったところで、早速書籍紹介に移りましょう。
初めて組織論を学ぶ場合は、とりあえず入門書をいっぱい読むことをオススメしています。
入門書は高校生が読んでもわかるように書かれていることが多いので、社会人であれば誰もが読める内容に抑えられています。
そのため、入門書を複数冊読み漁っておけば、その分野の概要、歴史、重要論点、重要理論等がざっと学べるはずです。
組織論の入門書としては上記5冊を読めば十分かと思います。
万人が楽しめる内容かといわれると怪しいですが、この5冊を楽しんで読めるという人は組織論という分野に向いているかもしれません。
一般的なビジネスマンにとって必要な範囲は、上記の入門書にすべて含まれておりますので、通常は入門書だけで十分だと思われます。
もし組織論という分野に強い興味を持って、更に深く学んでみたいという方がいらっしゃれば、以下でご紹介する中級~上級の書籍を読破してみてください。
大学院等で研究する人たち向けの書籍なので、自分の研究テーマを探すようなイメージで読んでいけば、得られるものも多いと思います。
ただし、組織論は全般的に抽象度が高く、机上の空論であることも多いので、組織論の理論がそのまま実践で役に立つかどうかは怪しいところです。
この書籍は、ピーター・M・センゲ (Peter M. Senge)教授のベストセラーで、組織論の分野ではかなり有名な書籍です。
センゲ教授は、マサチューセッツ工科大学(MIT)経営大学院の教授で、現在は上級講師という役職に就いています。
この書籍で扱われている「組織学習」というテーマがここ10年くらいの大きなトレンドで、組織の学力(学習力)をどれだけ高められるかが好業績を出し続けるカギだと考える学説です。
その方法論を説いた書籍なのですが、海外書籍あるあるで非常に読みづらいです。
本文がそもそもおかしいのか、翻訳が難しかったのかはわかりませんが、もっと短くわかりやすく書けたでしょと思える部分が多々あります。
ただ、重要なところだけを要約して読めば役に立つ理論ではあると思うので、一度読んでみると良いかもしれません。
主な著者は、金井寿宏 教授(神戸大学名誉教授)と高橋潔 教授(立命館大学総合心理学部教授)のお二人です。
一般向けの雑誌に掲載されていた連載なので、学術書特有の堅苦しさは若干抑えられています。
組織行動論をちょっと深めに学んでみたい、考察してみたいという人には最適な書籍だと思います。
入門書で基礎的な論点を抑えておけば、ある程度理解しやすい書籍なので中級者向けです。
こちらの書籍は服部泰宏 准教授(神戸大学大学院)の作品で、服部教授は今40歳くらいだと思うので、研究者の中では若手です。
40歳で若手というのは皆さんにとっては違和感があるかもしれませんが、40歳は全然若手です。
しかも、有名な国立大学院の准教授に30代の頃になれている時点で相当凄いので、服部教授は若手の有力研究者の一人ではないかと思います。
書籍としては若干難易度高めなので中上級レベルだと思います。
今回ご紹介する書籍の中で難易度は最高レベルです。
この書籍は経済学的側面から組織を研究するという組織経済学分野の書籍です。
そして経済学という分野は、文系の学問というよりは理系に近い学問で、数学や数式を多用する学問です。
こちらの書籍も所々で数式を用いて説明されています。
頑張ってわかりやすく書いてくださってはいますが、最後まで読了できる人は10%いるかどうかというところです。
その上で、実務で役に立つかは怪しいです。
あくまでも学問として楽しむ書籍なので、経済学が好きだという上級者向け書籍です。
なお、著者は以下の3名です。
難易度は上記の組織の経済学と同レベルです。
こちらはTHE組織論という内容で、抽象度が高く、かつ、理解が難しいです。
著者は日本の経営学者の最高位にいる野中郁次郎 教授と竹内弘高 教授の両名です。
お二人の説明は不要だとは思いますが、念のためご紹介させていただきます。
野中郁次郎先生は、一橋大学名誉教授で、SECIモデル(組織論の有名な理論の一つ)の生みの親です。
博士号(経営学)はカリフォルニア大学バークレー校で取得されています。
SECIモデルは組織論の中でも最も実践難易度が高いモデルではないかと個人的には思っていますが、言わんとしていることは実務的にも理解しやすく、かつ、有効だろうと思われる理論です。
上記書籍は主にこのモデルのことが記載されています。
組織の中で「知識」をどのようにしてマネジメントしていくのか、どう活用していくのかについて研究する「知識経営」というジャンルを作った先生です。
形式知・暗黙知というたまにビジネスでも使われる言葉を作ったのも野中先生です。
一方で、竹内弘高先生は、同じく一橋大学名誉教授であり、かつ、ハーバード大学経営大学院教授です。
元々はMBAだけを取りにカリフォルニア大学バークレー校に行ったそうですが、在学中に野中教授と出会って研究者を志したそうです。
運命の出会いというやつですね。
現在は国際基督教大学理事長をされています。
この2人が書いた書籍ですから、内容はかなり高度です。
一度読んで理解したつもりになることは簡単なのですが、実践となるとほぼできないと思います。
この理論が提唱されてから20年以上が経っていますが、未だに企業は組織内の知識を上手く管理できていませんし、個人が持っている「ノウハウ」の多くを組織内に落とし込めておりません。
したがって、極めて難しい分野を研究している書籍と言って良いと思います。
だからこそ読む価値がありますし、現にこの書籍のベースとなった論文(1995年に英語で発表された論文)は多くの学術論文で引用され、各種の賞も受賞しています。
会社の経営者、組織を統括する立場のすべての人がSECIモデルをある程度理解すべきだと思います。
もし実践レベルまで落とし込めたら、あなたは凄いマネージャーです。
今回は組織論に関する書籍を10冊ほどご紹介させていただきました。
10冊すべてを読了するのは大変かと思いますが、頑張ってください。
WARCで働きたい!WARCで転職支援してほしい!という方がもしいらっしゃれば、以下よりご連絡ください。
内容に応じて担当者がお返事させていただきます。